でも勝とうとしていた。
この状況を打破しようとしていた。
リョウは砂煙の中、準備していた。
この状況からフィリアに勝つために。
(よし、準備はできた。あとは俺の才能次第だな)
一瞬で勝負を決めなければ勝ち目はない。
フィリアは降参の返事が来ないので待っていた。
(腕は飛ばした。最低でも一本。うまくいってれば二本とも木端微塵になっているはず。それでもあきらめないなんて、リョウさんはすごいですね)
砂煙が晴れたら叩く。
そう決めて待っているとリョウが砂煙の中から一直線で向かって来た。
さっきしゃべったのでばれたのか、と少し悔やむがたいした問題ではない。
腕を失ったドールなんて敵ではないのだ。
しかし、リョウは足ではなく手をこちらへ向けている。
(なんで手を?マシンガン?でも照準が定まらないはず。あるいは最後の武器に何か?)
回避行動がすぐとれるよう半歩下がりながら手で殴る。
ところがリョウはガードすることなく接近してきた。
予想は出来ていたので足からの攻撃を遮るため足を蹴り飛ばす。
しかしリョウはこれも無視した。
(!なんで!?確かにこの程度では壊れないけど)
するとリョウは手をフィリアの前に掲げた。
「フラッシュ!」
目の前が光に包まれた。
「うそ!?リョウがフラッシュ使えるの!?」
マーシャは驚いていた。
魔力があることはともかく、フラッシュを知っていたことに驚いた。
ライトこそ見せたことはあるがフラッシュは話したことはない。
それに練習だって必要だ。
名前を聞いたくらいでできるわけない。
(リョウ、あなたはいったい…?)
「嘘でしょ!?」
フィリアは動揺していた。
視界が奪われたも驚きだが魔法を使ってきたことに驚いた。
(フラッシュ。確かライト系のランク2に位置する魔法。ランク1ならまだしも2を使ってくるなんて!)
急いで音のみで状況を確認する。
が、そんなの訓練したわけでもない人にできるわけがない。
止まって音に集中しようとしたのが仇となった。
背中で音がする。
しかしそれはロボットが動くような音ではなく、ピッピッという電子音だった。
背中に何が仕掛けられたか理解する。
そしてそれは仕掛けられたが最後、回避できないものだということを。
(シークラップ。使用するのに3秒という時間を必要とする爆弾。でも着けられたが最後絶対にはずれない。なんでそんな人気のないものを持ってるんですか!)
心の中でそう叫ぶと同時に背中の爆弾が爆発する。
「きゃあ!」
核までは壊れなかったものの丸見えになってしまった。
マシンガン一発でも当たれば試合終了だ。
(視界がもとに戻らない!でもマシンガンは使えないはず)
かろうじて見えるが視界はぼやけている。
背中のほうに向き直すと向かってくる影があった。
「早とちりしすぎですよ、リョウさん!」
フィリアは最後の武器を取り出す。
相手の動きを一時的に封じるイーストッパーだ。
ネットランチャーのような感じである。
範囲も広く、当たるだろうし、腕を失ったリョウが抜け出すのは困難だ。
イーストッパーは当たった。影が落ちていく。
(あとは視界がもとに戻るまで待てば私の勝ち)
勝利を確信した。
しかし、背中を押された感じがあった。
後ろを見ると影がある。
「えっ?」
「照準が定まらなくても、対象に押し付ければ当たる」
何が起きたかフィリアには理解できなかった。
次の瞬間、銃声がしてフィリアは落ちていった。
――――――――――――――――――――――――
「いやー、楽しませてもらったわ。ありがとフィリア」
「俺には何もなしか」
「そりゃあ、あんな無慈悲に攻撃しちゃね」
「ああしないと負けてたんだよ、でもフィリア大丈夫?」
フィリアは少し離れたところでドールの調整をしている。
「あっ、はい、私は。リョウさんこそドールの状態はどうですか?」
「俺のは、2日休ませれば元に戻るよ」
「まぁ、体のパーツ3つも壊しちゃそうなるわよ」
リョウは両腕と左足のパーツを切り離していた。
リョウは視界が回復していないフィリアに左足を切り離すという方法で騙したのだ。
フィリアは引っ掛かり後ろに気が回っていなかったのだ。
結果勝つことができたがパーツを壊してしまった。
一度切り離したパーツは、ドールを休ませるだったり修理しないとただの部品になってしまう。
しかし木端微塵になった両腕は一から作らないといけないので時間がかかるのだ。
「でもフィリア、あなたも核を壊されたんでしょ?」
「少し穴が開いただけだから足と合わせて18時間だそうです」
核は人間の心臓や脳と同じくらい重要なので修理には時間がかかる。
「しかし、さっきのはお前らしくない戦い方だったな、リョウ」
「相手が戦略家なんだ。こっちも考えなくちゃ勝ち目はないだろう」
今話しかけてきたのはレックス・ビルジェンタ。
このクラスの魔科祭の主将、つまりこのクラス一強いドール使いだ。
「俺だったら変わらないけどな」
「じゃあ負けることになるよ」
「相性の問題だってあるさ。それにどんな小細工も力でねじ伏せれる自信もあるしな」
何を言っても意味ないようだ。
チャイムの音が聞こえた。
「楽しませてもらったわ、フィリア、リョウ。下校時刻だしもう寮に戻りましょう」
「そうだな。疲れたしさっさと帰るか」
「それじゃ、また明日ね」
「きょ、今日はありがとうございました」
女子が帰るとレックスと2人になる。
帰る準備を済ませ転移装置へ向かう。
「なぁリョウ」
「なんだ?」
「お前どっちがタイプだ?」
「はぁ?何言ってんだお前?」
馬鹿みたいな会話をしながら歩く。
地球にいた時のように。
―――――――――――――――――――――――――
「早く行こうよリョウ!」
魔科祭当日。クロはハイテンションだった。
始めてピクニックに行く小学生のように。
「そんな急がなくてもいいだろ。今日俺が出るのは午後からだぞ?」
「午後からはリョウの試合を見るんだから。午前中に出店回らないと」
「クロは出店回っててもいいんだよ?」
「でも友達が出てるんだよ?応援するべきでしょ!」
なんていい子なんだ。
この年になっても純粋な人、日本じゃ見たことないよ。
「そうか、ありがとな、クロ」
「どういたしまして」
満面の笑みを見せる。
考えてみればクロは暗い顔を見せたことがなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「~で、最後は俺だ。何か質問はあるか?」
誰も何も言わない。
今リョウは試合会場にある控室にいる。
一回戦目が始まろうとしていた。
相手はF組だった。
それを聞いたとき、なんで英語を知らないのに、しかもSバリアをエスバリアって書くのにクラスやコースでは英語が使われるのだろう?と疑問に思ったリョウだった。
準備しながらふとそれ思い出したのでフィリアに訊いたところ
「リョウ君は余裕があるね、私はそれどころじゃないよ。緊張しまくりで…」
答えはかえってこなかった。
「そろそろ行くぞ」
どうでもいい疑問を考えながら試合会場に向かった。
――――――――――――――――――――――――
実際、一回戦目は余裕で勝ってしまった。
本来ならば明日やるはずだった二回戦目も今日やってしまった。
それほどに時間が余ってしまったのだ。
明日は完璧に空いてしまった。
クロにそれを話すと、とても喜んでくれた。
「明日は一緒にずっと回ろうね」
と言っていた。
本当にこんな兄弟がほしいなと思った。
しかし、今日は他の友達と回る予定があるようだ。
出店の所は1年生から6年生まで全員集まるので人の数がすごいことになっている。
知り合いはおそらくそこにいるだろうと思い暇だと考えていると
「リョウ君は出店に行かないのかい?」
声をかけられた。
マクアドル先生だ。
「このタイミングできますか」
「今までは面倒くさかったんでね。それに今ならお酒もあるし」
袋を見せてきた。
「それよりどうだい?一杯付き合ってくれないかい?」
「質問に答えてくれるなら」
「交渉成立だ。いい場所を案内するよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リョウは学校の屋上に案内された。
教師でなければ入れない場所なので人はいなかった。
教師でもあまり来たくないのだろうか。
「いい場所だろ?静かで。花火もどこに打ちあがっても見えるし」
ここでは祭りのときに使う花火の位置が毎回変わるらしい。
「他に人はいないんですか?」
「残念ながらね。ここがいいところと知っている教師達は今日はお仕事なんだ」
「一杯付き合うといいましたけどまだ未成年ですよ」
「ちゃんとお茶もあるよ。これでも教育者なんだからお酒は勧めないさ」
そう言うとお茶をコップに注いで渡してきた。
受け取ると今度はお酒を注いで飲み始めた。
「やっぱりいいねぇ。あとは花火が早く上がってくれればいいんだけどねぇ…」
「質問いいですが?」
「構わないよ」
「他にいる地球人について教えてください」
「他にいる…ねぇ。…まずこの学校にはいないよ」
「それはなんとなく分かってました」
「生きているのはおそらく2人だ。どこにいるかは分からないけどねぇ」
「連絡できないんですか?」
「連絡先を交換するほど仲良くなれたわけじゃないしねぇ。それに…」
マクアドルが言葉に詰まっている。
言いにくいことでもあるのかと思っていると
「殺されかけたもんね」
突然女の子の声が聞こえた。
振り返ってみると5,6歳前後の女の子がいた。
「そうでしょ?」と言いながらニッコリした。
なんでこんな女の子が?と思っていると
「ミリーナ…」
マクアドルが呟く。
「ミリーナ!?君が?」
「そうだよ。よろしくね、雨宮涼さん♪」
髪はストレートの金髪。
膝のあたりまで長い髪をしていた。
水色のワンピースを着ている。
でも顔は整っているがアジア系なので少し違和感がある。
「単刀直入に訊くよ。君が俺をここへ?」
「そうだよ」
あっさり答えた。
「なんで俺をここへ?」
「一言いえば直観かな」
「直観?」
「あなたならこの世界を救ってくれると思ったの」
「世界?」
「ごめんなさい、世界じゃスケールが大きすぎるね。正確にはこの国をなの」
「…どういう意味?」
「これから10年以内に戦争が始まるの」
残念そうに、寂しそうな顔をして言った。
「はっ?」
「他の国が攻めてくるの。このままじゃこの国はなくなってしまうの」
「いやいやいやいや…」
「私にはね、未来を予測する力があるの。天気予報と似たようなもんなの」
「話についていけないんだけど」
「それで涼を連れてきたの」
「いや、答えになってねえよ!なんで俺なんだよ!?」
「あなたならこの国を救える可能性があるからなの。そう直感が教えてくれたの」
「直観じゃん!その予報とやらじゃないの!?」
「予報はあくまで予報。外れることもあるの。それに私の予報はこの世界の人間しか対象にできないの」
「…俺を連れてきた理由はもういい。さっさと帰らせてくれ」
「嫌だ」
そっぽを向いてしまった。
「あなたはこの戦争に勝つために必要な人材なの。返すわけにはいかない」
「直観で連れてきて必要な人材!?笑わせるなよ!」
感情が表についつい出てしまう。
するとミリーナが今にも泣きそうな顔になった。
少し言い過ぎたようだ。
マクアドルの後ろに隠れてしまった。
「まあまあ涼君、見ての通りこの子は子供だ。うまく伝えられないことがあるのも大目に見てやりなよ」
「あなたは!あなたはここに突然飛ばされてなんとも思わないんですか!?」
「はじめはね、私も嫌だったよ。でも時間がたつにつれてこの世界に慣れた」
「それでいいんですか」
「便利だしね。悪いところじゃないし今は文句ないよ」
リョウにはマクアドルの言っている意味が理解できなかった。
「あの…、」
ミリーナが遠慮がちに出てきていった。
「私、もう帰らないといけないの」
「は?」
「話はまた今度にしてくれる?」
「ふざけるなy」
「ゴメンなさい。もう限界なの」
リョウが話しているのも気にしせず、そう言うと彼女は消えてしまった。
一瞬の出来事で何が起きたかわからなかったが少しするとマクアドルが
「…、お目にかかっちゃったねぇ、瞬間移動」
そう呟いた。
分からないことが増えた涼は茫然としていた。
いつの間にか上がり始めていた花火の音だけが屋上に広がっていた。
少し長めになってしまいました。
申し訳ありません。
楽しんでくれてたら幸いです。
早くも一日一話が終わってしまった…。