危うくpart4いくところだった…。
いや、この文字数ならそうするべきだったのか?
ともかく楽しんでください。
「ふん!」
三又の矛がミィヤに向かって投げられる。
2mもある大きな矛は重さもあるはずにもかかわらず、ミィヤに向かって一直線に向かう。
何かを纏っているわけでもない普通の矛。
だが、それはリョウの腕力のみで恐ろしい威力を誇っていた。
しかし、距離がある。
ミィヤは難なくかわす。
「雷記電礼!」
よけた勢いを使い、札を投げつける。
本当は名前はしゃべらなくてもいいらしいのだが、ミィヤのこだわりだそうだ。
札はリョウに向かっていく。
あたる前に回避するべく、矛についた鎖をひっぱりながら移動する。
札はリョウの少し横をかすめて行った。
「まだまだ!」
札をさらにたくさん取り出し部屋のあらゆる方向に投げる。
避けるスペースがないわけではないが、リョウのいるところからではよけきれない。
ヒュニスを使い、自分の前に来る札を手前で止める。
しかし、ヒュニスで止めた瞬間、札が爆発する。
2つ、とめたもんだからバランスを崩し下のほうへふっとぶ。
「ウォーター!」
ミィヤがスキができたリョウに向かって魔法を唱える。
まだ残っているヒュニスを使い、激流を抑える。
リョウには一滴も当たらず、ヒュニスの精密さが伺える。
「やっぱり私の魔法じゃ力不足かしら?」
「いや、十分だよ。これ以上威力が上がると耐えられそうにない」
「ならこれやってみようかしら…」
ミィヤの周りに火でできた槍が出現する。
いや、火でできたというより赤い槍だ。
全部で3つ。
ミィヤは水を放出したままリョウに接近する。
ミィヤ接近戦と得意としないため、このような行動をとってきたのは予想外だった。
リョウはヒュニスで水を止めたままミィヤの接近に備える。
残り5m弱というところでミィヤが槍のみをリョウに向ける。
しかし、それは槍の動きというよりは剣の動きだった。
振り下ろすように動かす。
リョウはそれを腕で抑える。
刃がついていない棒の部分、ましてやドールがついていればなんてことはない。
「まだ2本あるわよ!」
今度は振り下ろすのではなく横に振り払うようにしてきた。
同じく、手で押さえる。
「最後の一本!」
リョウの体に向かって刃先を向けた槍を入れようとする。
しかし、ここで先ほど跳ばされたヒュニスが帰ってくる。
槍の刃先を止め、持ちこたえる。
「あら、まだ動いたの?」
「あれくらいで壊れるほど軟じゃないさ。それより―――」
リョウが次の言葉を言い終える前にミィヤが気付く。
先ほどまでミィヤの激流を止めていたヒュニスがミィヤのいるところに襲い掛かる。
「自分の身を案じてみろよ」
ミィヤが札を取り出す。
「断罪界円!」
ミィヤの周りに結界が張られすべてのヒュニスをはじく。
少しずつヒビが入り始めるがまだ時間はかかりそうだ。
「青龍は使わないのか?」
「何言ってんのよ?ここでそれ使ったら私が勝てないって言ってるのと一緒じゃない」
「でもこのままじゃやばいんじゃないのか?」
「本番は…ここからよ!」
ミィヤが一枚の札を取り出す。
「必雷断界!」
結界が黄色くなる。
さらにミィヤは指を鳴らした。
と、同時に無造作にばらまかれていた札がすべて光り始める。
身の危険を感じ、5つのヒュニスを戻す。
槍は音と同時にミィヤのもとへ帰っていく。
「さぁ、始めるわよ…!」
札全てが電気を帯び始める。
「嘘だろ!?」
電撃があらゆる場所からリョウを襲う。
いや、あらゆる場所で発生しリョウはどこにいても当たった。
ヒュニス6つを高速で自分の周りで回転させる。
リョウ自身、水で体を覆う防御魔法は知っているのだがただ知っているだけ。
あいにくまだ実用には至っていない。
リョウはさらにヒュニスを回しながらヒュニスからレーザーを使う。
札にあたるたんびに札が減っていく。
「これなら…」
と、ここでリョウに電撃が少し当たる。
何が起きた?と状況を確認しようとして驚く。
ヒュニスの速度が下がっている。
「まさか…!?」
「私が何もなしに札をばらまいたり、水をたくさん使ったりしたと思う?」
先ほどまで水を浴びていたヒュニス。
さらにギリギリの防御をしていたので少なからずダメージはあった。
そこに電撃が通りやすくなったヒュニス。
たとえドールの一部といえどももとは機械。
壊れることだってあるのだ。
やがてヒュニスでかばいきれなくなり、リョウにあたり始める。
「くそ!」
「夜、一緒に寝てくれるならやめてあげるわよ?」
「悪いが、ウ?!もうきたのか?」
電撃がもろでリョウにあたり始める。
いくらデータになっており、本体は無傷といえども痛みは感じるようだ。
「止めてあげたい…。でもここで止めては夫をしりには敷けないわ。耐えるのよ、ミィヤ!」
「まだSバリアは効いてるんだけどな…。だが…」
エネルギーがものすごい勢いで減る。
それほど威力があるのだ。
「…許せよ、ミィヤ!」
リョウが矛を投げつける。
「?」
ミィヤは周りが黄色い結界で覆われているため、よく見えない。
と、目の前に矛が来ているのを理解する。
しかし、よける時間はない。
「オフッ!?」
バリアが体に張ってあったため貫かれることはなかったが、バリアの外にはじき出される。
壁に当たりようやく止まる。
「イタタ…。ってヤバッ!?」
バリアの外にはじき出されたのだ。
ミィヤも電撃の対象となる。
急いで電撃をやめた。
「なんで矛投げたのよ?」
「お前のバリアの名前、聞き覚えがあったからな。以前、戦闘で似たようなの使ってたろ?火だったかな?そこで確か、そのバリアは限定した対象にしか効果がない的なこと言ってたような気がしてな」
「覚えてたの?さすが将来の私の夫♪」
再び赤い槍を作り出す。
「またそれか?なんで赤いんだよ?」
「手を見れば分かるわよ」
手を見てみる。
すると、さっきまでその槍をつかんでいたところが溶けていた。
ヒュニスに至っては穴が開きそうなほどに。
「溶かすのか、その槍!?」
「メルトアローっていうんだけど、まだ不完全よ」
「まだ強くなるのか?俺も魔法使いたいなぁ」
「特訓してあげてもいいわよ?」
「本当?」
「今日、ベッドで♪」
「却下!」
リョウは使いづらくなった5個のヒュニスを外し、1つで戦うことにした。
鎖を引っ張り、矛を引き戻しながらミィヤに接近する。
接近戦ならリョウの勝利は揺るがない。
リョウは矛を手に戻し、構えながらミィヤに体当たり。
と、ミィヤが避けようとしないどころか構えもしないことに違和感を抱く。
矛が当たる直前、ミィヤが叫ぶ。
「サリス、ノリス!」
リョウの横にサリスが現れ、リョウを蹴り飛ばす。
リョウの軌道が変わり、ミィヤから離れる。
「セコッ!」
「青龍は使わないって言ったけど、使い魔を頼らないとは言ってないわよ」
ノリスが続いて、拳を加える。
リョウは避けることかなわず、さらに跳ばされる。
Sバリアのエネルギー残量が少ない。
「そろそろ終わらせるわよ!」
「俺がな!」
しかし、リョウにはまだ手があった。
サリスとノリスが近づいてきたので、矛を振り回す。
鎖をつかみながら回すので距離がすごいことになっている。
だが
「リョウ様、隙だらけです」
そのせいで隙だらけだ。
ミィヤにもさすがに届かない。
このままでは。
「ライトチェーン!」
リョウが使える魔法の一つ。
突如、リョウの手に輝く鎖があふれる。
「オラァ!」
思いっきり、力に任せて回す。
矛についている鎖が伸びていた。
ミィヤまでとどかなかったはずの矛がとどく長さになる。
しかし、ミィヤはそんなことには気づかない。
近くまで矛が迫って初めて気づく。
「え?」
「いっけぇぇぇ!」
ミィヤに高い身体能力はない。
サリスとノリスも気づくが時すでに遅し。
ミィヤの頭に運悪く矛が横殴りにあたる。
そのまま吹っ飛び、ミィヤは気絶した。
――――――――――――――――――――――――――――――
「…今何時?」
「そろそろ8時過ぎる頃です」
マーシャ、リリア、フィリアの3人は今、リョウがチケットを取っている展望台に先回りしている。
夕食のシーンも見ておきたかったのだがマーシャを落ち着けた後、6時ころ戻ってみるとすでに2人の姿はなし。
そのあとも探したのだが見つからなかったので先回りすることにしたのだ。
「お腹すきました」
「我慢しなさい。すべては記事のためよ!」
「私達、新聞部じゃないですよ…」
6時半頃、ここに来たので晩飯は食べていない。
「マーシャ、さっきから何黙ってるの?」
「…この光景がちょっとね」
窓から見える景色。
戦争の爪痕が残っている。
爪痕というよりついさっき、戦争があったかのように廃墟ばかりだ。
「あれは、ひどかったわよね…」
「また、こんなことがあるのかしら」
「どうしてそう思うの?」
「敵の親玉は倒した。それは私がこの目で見たから間違いないわ。でも、あくまでそれは先遣隊の隊長」
ミューズデルではこの戦争が終わった後も正式に危険は去った、と政府からの放送がなかった。
本来ならそういうのが一番楽なのに言わない。
おそらく、上なりに考えはあるのだろうがマクアドルからリョウほどではないが聞いていたマーシャたちにとって、それは戦争が確実にまたあることを意味していた。
マクアドルからの話がなければ政府からの報告が遅れているだけだと考えられたかもしれない。
だが、事情を知っていてはそうは思えなかった。
「…こんなことになるなんてね」
「ほんとね。私、普通に学生生活送って後はどこかに就職する。それしか考えてなかったんだけど、なかなか大きな岩が立ちふさがっちゃったわ」
「その岩をどかせるまで生きてられるかしら?」
「じゃなきゃ、リョウを手に入れられないわよ」
「だ、だから、私はそんなんじゃないって言ってるでしょ!」
「まだ否定してるんですか?」
バレバレにもほどがあるのに未だに否定している。
「バレバレなのにね」
「リリア、あんたまで…!」
「あっ、あれリョウさん達じゃないですか?」
ついにリョウ達が姿を現した。
――――――――――――――――――――――――――――――
「まさか、2人を使っても勝てなかったなんて…」
「お前、思ったよりセコイことするな」
未だにミィヤはさっきの戦いを引きずっていた。
さっきの晩飯の時も反省点を探っていた。
リョウとしてはありがたいのだが、これはなんか申し訳なくなる。
「私の予定ではあの電撃の嵐で決着していたのよ。なのにまさかあのバリアの弱点を知っていたなんて…」
「反省は構わないけどいいのか?お前の楽しみにしてたデート、あと4時間切ったぞ?」
「嘘!?そんなに?」
ようやく現実に戻ってきた。
「リョウ、帰るわよ!」
「まだここ来て5分経ってないぞ?」
「ここでしたいの?確かに人は少ないけど…」
「あと3回は矛で殴っておいたほうがいいようだな?」
「あれ、結構痛いのよ?」
矛に殴られて10分ほどミィヤは起きなかった。
体に傷はつかないのだが、意識はつながっているので気絶すると面倒なのだ。
「しかし、ここも絶景とは…言い難いな」
「そうね…」
目の前にあるのはひどい景色。
マーシャたちが今見たのと同じ、戦争後の景色。
「一年で本当に直るのか、これ」
「ここの技術をなめちゃいけないわよ。私の寺なんて実は1週間で直ったから」
「…それでよく寺の人はお前を学校によこしたな?」
「私が無理言ったの。まぁ、将来の夫を見つけたんだから彼らも結構簡単に許してくれたわよ」
「そいつらも、止めなかったのか…」
そこで会話が止まる。
人も少ないので2人の周りに静寂が広がる。
「リョウ、あなたに言っておかなきゃいけないことがあるの」
ミィヤが口を開く。
「なんだ?」
「私が巫女なのは知ってるわね?」
「当たり前だろ」
「私は、あなたたちといられるのはあと2年もないの」
「…どういう意味だ?」
ここに来て初めての真剣な空気。
「あなたたちは軍隊だったり、警察だったり、いろいろつける職業はあると思う。でも私には巫女という職業しかないの」
「…」
「私の寺、どこにあるか知ってるでしょ。あそこは職につけばそう簡単に行ける所じゃないわ」
アメミリア森林までの距離はかなりある。
以前、合宿に行った時は近いところまで転移装置を使ったのだ。
しかし、それがあるのは学校の行事がある時だけ。
普通、行く手段は徒歩か車だ。
「はじめは、あなたにこちらに来てもらおうとしてたんだけど…、無理みたいだしね」
「…」
「なに黙っちゃってんのよ?寂しいなら私のところに嫁ぎなさい」
「嫁ぐって…。いや、黙ってた理由は違うぞ」
「じゃあ何よ?」
「なんかどうでもいい話だったからな」
予想もしていなかった返答にミィヤは頭が回らない。
「え?」
「いや、だってさ、お前と会えずらくなるって話だろ?しかも2年後」
「あなたは私のこと、なんとも思ってないの?」
「違う違う。会うのが難しくなるだけで会えないわけじゃないんだろ?なら、全然悩みにも問題にもならないな」
「私は、寂しい」
ミィヤの言葉が暗くなる。
「私、これでも初恋だったの」
「…マジで?」
「今まで外から来た人なんて、全員ゴミとしか思ってなかったから。外から来るのは無粋なやつばっか、そう思ってたの」
「すごい極端だな」
「今ではそう思うわ。でも、その時はそうだったの。そんな時に問題製造機はきた」
はじめて会った時の話だ。
「懐かしい響きだな」
「なんであなたを好きになったのか分からないけど、これが恋だっていうのはすぐに分かったわ。友情や、愛情なんて持ったこともなかったのにね」
ミィヤがリョウの方を見る。
「リョウ、私と付き合ってください」
突然の告白。
ミィヤがリョウを好きなのは分かっていたがいざ言われると、リョウも恥ずかしい。
「話がとんだな」
「もともと私はこれを言うつもりだったの。デートしたら必ず。で、返事は?」
リョウは告白された経験がない。
した経験はあるのだが。
だから、こういう時に言うセリフを思いつけない。
少し黙って言った。
「…ごめん」
これ以外思いつかなかった。
「そう…。まぁ、それもそうよね」
「本当にごめん」
「何謝ってんのよ。まだ好きでもないのに付き合うって言われても私も困るわ」
「だけど俺はお前の…」
と、ここで1つ引っかかる言葉を耳にしたのに気づく。
「…お前、『まだ』好きでもないって言ったか?」
「ええ、言ったわよ。私がたった一回フラれただけで諦めると思う?」
いつものミィヤが戻っていた。
「切り替え早いな…」
「それが私よ♪あなたを想う気持ちも変わってないわ。頑張って好きにさせてみせるもの!」
強いな、と思う。
ここの世界の女子は特に。
フラれたら普通は誰でも気分が落ち込むだろう。
だが、彼女は顔には見せなかった。
心の中では落ち込んでいる…と思う。
でも顔には見せない。
じゅぶん強い。
「そうか。なら頑張ってくれよ。いや、頑張るな、か?」
「どういう意味よ?」
「もう少しおしとやかになったらどうだって話だ」
「私は自分を変えるつもりはないわよ。じゃなきゃ、意味ないもの」
「そうか。なら道のりは険しいな」
そこで1つのことをリョウは思い出した。
「あっ、タイミングずれたかな…?」
「どうしたの?」
「これ渡そうと思ってな」
袋を1つ渡す。
一番最初に行った小物店の袋だ。
「いつの間に?」
「トイレに行ったときな」
「…開けてもいい?」
「どうぞ」
袋を開ける。
ネックレスだ(この世界では小物といわれる)。
細い糸のような首をかける部分と羽をかたどったアクセサリがついていた。
シンプルだ。
「あら、悪くないじゃない」
「ならよかった。選んだ甲斐があったってもんだ」
「ねぇ、これつけてよ。首のところ難しいんだけど」
ミィヤがつけようとしていたので首のところをつけた。
「どう?」
「かわいいじゃないか」
うれしいらしく、笑顔になる。
本当にかわいい。
少し暗い感じのところにブルーライトが当たっているのでさらに良くみえる。
「よし、じゃあ部屋に帰るわよ。これつけたままやるわ」
「…雰囲気ぶち壊しだな。だいたいさっき―――」
と、呼び出しが鳴った。
「悪い、電話だ」
「ぶち壊しね…。まあいいわ。早くしてよ?」
リョウがそこを離れる。
ミィヤはしばらくもらったネックレスを触っていた。
そして声をかける。
「そこの3人。いつまでつけてるの?」
明らかに動揺した3人がビクッとする。
「バレバレなのよ。だいたい私は人それぞれの「気」が見えるのよ?変装なんて無意味よ」
「…か、完璧だと思っていたのに」
「リリアに至っては写真も撮ってわね。いいもの載せなさいよ?」
「そこも!?それは「気」じゃ分からないでしょ?」
「そこは私の観察能力よ」
そしてマーシャのもとに近づく。
「…なによ?」
「このネックレス、いいでしょ?リョウからもらったの♪」
「なっ…!」
「私が一歩リードよ」
「べ、別に羨ましくなんて…」
ネックレスをチラチラ見ている。
羨ましいようだ。
「そう?ならいいんだけど。だけど今日の戦闘は激しかったわぁ(いやらしく)」
「「「!!」」」
「最後は気絶しちゃったわぁ」
「そ、それってどういう…!」
「ミィヤ、すまん。待った…か?」
リョウの目の前に見知らぬ3人がいる。
「知り合いだったのか?」
「まだわからないの?この3人、あなたもよく知ってる人よ」
「嘘?見覚えないけどなぁ…」
1人ずつ見ていく。
金髪の女子が目に入る。
そして、ものすごい汗をかきはじめる。
ツインテールになっていて気付かなかった。
「…マーシャ?じゃあそこにいるのは、リリアとフィリア?」
「ご名答。じゃあリョウ、マーシャから一言あるそうよ?」
「…あんた、模擬戦闘体験装置でいろいろやってたそうじゃない」
なんかマーシャの笑顔が黒い。
「子供の遊び場でそんなことやっていいと思ってるのかしら?」
(絶対、本当の理由隠してますね…)
「へ?戦闘はしたけどそれのどこが!?」
「激しかったそうね?」
ミィヤが何か言ったのだと気づく。
「ミィヤ!何言った!?」
「リョウに激しくしてもらったって♪」
「おまっ、それはかなり言葉が抜けてる―――」
「この…変態がぁ!!」
マーシャの重い蹴りが、リョウの大事なところに入った。
~リョウ、部屋に帰還後~
「た、助かった…」
深夜0時30分、リョウは帰宅した。
危うくミィヤの部屋に連れ込まれるかと思ったが、マーシャたちのおかげで危機を回避できた。
既成事実を作らなくて済んだ。
帰った時、部屋は真っ暗。
まぁ、深夜なんだから普通だ。
疲れ切っていたリョウは、着替えることなく寝ようとする。
と、寝静まったはずの部屋で自分のベットに誰かが座っている。
「…サク?」
わざわざ起きていたようだ。
「お前、今日は俺遅くなるって言ったろ?そんな待たなくても…ってどうしたお前!?」
暗がりで遠くからはよく分からなかったが近くで見て気づく。
全裸だ。
人間の状態で。
「お、お前何やってんだよ!?さっさと服着ろ!」
目をそらす。
いくら使い魔といえどもサクは人間の姿だとただの女の子(猫だか狐だか分かりにくい耳がついている)。
胸もBカップあるので多少子供のような体つきは残るが女性らしさが出ている。
「リョウ殿、私は心の準備はできております」
「は?」
「この体、リョウ殿に捧げられるのなら本望!」
「待って!意味分からない!」
ミィヤを回避できたと思ったら次はサク。
リョウはもう何が何だか分からない。
「さあ、こちらへ」
「お願いだからいつものサクに戻ってくれ!俺、もう限界だから!」
「ならば私がそちらへ参ります」
ベッドから跳びはね、リョウに飛び込む。
「オフッ!」
10歳くらいの女の子が突然とびかかってくるときの重量は計り知れない。
「リョウ殿、まずは何をご所望でしょう?私も初めてですので…」
「寝たいだけだから!お願いだからただ寝かせて―――」
「ん~…。リョウ?こんな時間にどうしたのさ?」
クロが目を覚ます。
明かりが部屋にともる。
「…」
クロはリョウ達を見て5秒ほど静止。
そのあと電気を消し、何もなかったかのようにベッドに入る。
「クロ、待て!見なかったことにするな!助けろ!」
「これは夢これは夢これは夢…」
ぶつぶつと何か言っている。
助けを期待できそうにない。
「で、ではリョウ殿。雰囲気を考えてまず…接吻から」
「これに雰囲気もなにもあるか!頼むからやめてくれ!」
その後リョウは一晩中、サクをなだめるため格闘。
結局一睡もすることなく、次の日の授業は休んだ。
そして、この原因を作ったスノーにはフィリアからのお尻ペンペンという、超古風なお仕置きがあり改めて人間の常識を叩き込まれたそうだ。