異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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「…何の用だ、敵陣に」
「これ以上、私の世界を壊さないでほしいの」

どこかわからない玉座にミリーナとカザキがいる。

「なぜ、俺がその要求をのむ必要がある?お前は神にでもなったつもりか?」
「この世界を事実上作ったのは私のパパなの。あなたが今こうして生きながらえてるのもパパのおかげ」
「気に食わないなら俺を殺せばいい。お前なら出来るだろ?」

カザキは余裕の表情を浮かべている。

「…」
「いや、すまん。それはもう300年以上前の話だな。今のお前では無理か」
「なんで…、そこまで私の世界を壊そうとするの?」
「うざいから」

即答だった。
簡単に言い放つ。

「お前は俺の肌に合わなかった。勿論親父さんもな。感謝はしているが、それとこれとは別だ」
「…ふざけてるの」
「生理的に無理ってやつ、あるだろ?それだよ。で、話は終わりか?ならさっさといなくなってくれ。ったく、どうやって入り込んだんだか」
「…また来るの」

ミリーナは消えた。
カザキはこの施設の欠陥を調べ始める。

「…ったく、どうやって破壊結界を通り抜けたんだか」

ミリーナは止めようとしていた。
止められないと分かっている戦争を。


本気

「リョウ、頑張ってね?」

「もちろんだ、ここで負けたらいろいろまずいからな」

 

ミュレス当日、リョウは今クロと待機中だ。

今まで何度もこういう風に対戦を待つ、ということはあったので普通はもう緊張なんてない。

だが、今回は賭けてるものが大きすぎた。

 

「1日ミィヤの人形とか…、俺マジでやばいぞ」

「なら勝てばいいんでしょ?リョウなら出来るよ」

 

周りに人はいない(クロを除いて)。

この部屋にあるのは模擬戦闘体験装置のみ。

対戦相手と同じ部屋で待機はおかしいということでそこは別々になっている。

この静かな空間がより一層、リョウの緊張を駆り立てる。

 

「…クロ、紙と筆記用具はあるか?」

「なんで?」

「遺書ぐらいは残していきた「リョウ、応援に来たわよ~」」

 

マーシャとリリアが入ってきた。

友達の出入りは自由になっている。

 

「あら、ミィヤはいないの?」

「今回はケイトの応援だ。あいつとしては絶対そっちの方が嬉しいだろうしな」

「残念。この空間で何か良い記事でも取れるかと思ったのに…。レックスは?」

「あいつは準備運動中だ。シューレスと戦うんだからな」

 

ちなみに今回選ばれた4人はケイト、シューレス、レックス、リョウの四人になった。

クリティウス姉妹は「めんどい」ということでこの戦いには不参加。

そうなれば必然的にこうなってくる。

 

「で、リョウ。あなた、勝機はあるの?」

「当たり前だ。この戦場でなら俺の方が有利だしな」

「そうなの?」

 

ケイトは不死身ではない。

頭を吹き飛ばす、心臓をえぐる、多量出血などうまくやれば殺せるのだ。

そして今回の勝敗は機械が判定する。

一度でも殺せればそれで終了なのだ。

さらにケイトは身体能力が高いわけではない。

この戦場はケイトにとってデメリットが多すぎるところなのだ。

なぜ、彼が出ているのかリョウにはわからない。

 

「だってよ?心配して損したわね、マーシャ」

「な、別に私は心配なんか…」

「ああ、もしリョウが負けたらどゴフッ!?」

 

リリアの腹にマーシャの鉄拳が入る。

ここで足が出ないということは少しは加減しているのだろうか。

 

リリアが痛みに悶えている間に試合開始のブザーが鳴る。

 

「じゃ、行ってくる」

「頑張ってね、リョウ」

「人形になんてなるんじゃないわよ?」

「わ、私的には…、人形になってもハバッ!?」

 

リョウが装置の中に入っていくとき、最後に見えた光景が痛々しかったのは言うまでもない。

 

 

 

装置に入り、一瞬意識が飛んだかと思うと気づけば戦場だ。

ケイトはすでに待機中だった。

周りにいる観客がリョウを見て盛り上がる。

 

「あっ、リョウ。今日はよろしく」

「ああ。今回は勝たせてもらうぜ?」

「別にいいよ。俺、そんな勝ちには執着するつもりないし」

 

ケイトのやる気のなさに少しガクッ、と体勢を崩す。

え、こいつ、参加希望したのにやる気ないの?

 

「ならなんで出てるんだよ?」

「うちの家系はね代々病院を経営してるんだけど、決まって最低5年は軍隊所属が暗黙の了解になってるんだよね」

「それが?」

「僕はもう就職先決まってるから上司も決まったんだけど、そこの上司がこれやってこいって。僕、衛生班に入ったはずなのになんでだろう?」

 

これもグネズトの手が回っているのだろう。

大佐なんだからそれくらい大したことないはずだ。

だが、これはリョウにとってありがたいことだ。

ただでさえここでは本領発揮できないのにやる気がない。

 

「まぁ、良いところで勝ちは譲るよ。どうせシューには勝てないし」

「そ、そうか?ありがとう」

 

ミィヤから何か言われているはずなのだが、ケイトには関係ないようだ。

マイペース極まりない。

やる気がないと観客はブーイング間違いないが良い感じに盛り上げれれば十分だ。

そんな事情、観客にはわかるまい。

 

『ただいまより、リョウ・アマミヤ対ケイト・N・フェニーチェの試合を始めます』

 

会場にアナウンスが鳴り響く。

 

「じゃ、とりあえず派手な魔法から」

「…はい?」

『5,4,3,2,1…』

 

ケイトが手を上にかざす。

 

『…ファイト!』

 

試合開始の合図と同時にケイトのかざした手の先に7つの球ができる。

それぞれ色が違う。

 

「よっと!」

 

ケイトが手をリョウの方に流す。

するとそれぞれの球体から無数の光線が飛び出す。

確かに、カラフルで派手だ。

 

「お前、勝つ気まんまんだろぉ!?」

 

リョウの悲痛な叫びが響く。

しかし、盛り上がっている観客の前にそれはすべて打ち消される。

とりあえずヒュニスを盾のごとく構える。

すべての光線がそこで遮られる。

 

「ほら、守ってばかりじゃ意味ないよ?」

 

ケイトが指を鳴らすと次はリョウの周りに火の球が無数に現れる。

移動できるスペースがない。

だが、リョウだってこれで終わりではない。

 

「ウォーター!」

 

矛を取り出し水をまとわせる。

誰にでもわかる。

火を消すなら水を使うのが一番早い(風もありか?)。

しかし、リョウは勘違いしていた。

この火の球をただの火であると。

 

水をまとった矛で火の球に触る。

すると、球が爆発する。

 

「なっ!?」

 

回避行動なんてとる暇はない。

さらに連鎖爆発のごとく周りの球も爆発していく。

リョウに避けるスペースはない。

 

観客は盛り上がるがこれを見ただけでは普通、相手が死んだと思う。

しかし…

 

「あれ?」

 

ケイトが首をかしげる。

爆発したところに人影がはっきり見えるからだ。

リョウが立っている。

ふらつくことなく、しっかりと。

 

「…」

 

リョウ自身も驚いていた。

あれだけの爆発、データで作った爆発でなければ会場がところどころ抉れているはず…。

いくら身体能力が上がったからって体がそんなに丈夫になったとは思えない。

っていうかSバリアのエネルギーが思ったより全然減っていない。

 

「…あ」

 

リョウが答えに達したころ、違う場所でその試合を見ている人がいた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ほらな、言った通りだろ?」

「…確かにあれでは騙されてしまうな」

 

シューレスとグネズトだ。

シューレスは見抜いていた。

ケイトにやる気がないということを。

もともとケイトは攻撃魔法全般が苦手。

だから自爆魔法を覚えたのだ。

それなのにそれを使わず、爆発魔法という派手な演出をしている。

はた目から見ればリョウがすごいように見えるがそれは違う。

ケイトがダメダメなだけなのだ。

 

「このままいけばあと5分以内には勝負がつくぜ」

「…それでは訓練にならんな。なんとかして本気を出させたいところだが、何かないか?」

「あるにはある、が俺は出来ればやりたくないな。脅しになるし」

 

長年付き合ってきた仲だ。

ケイトに本気を出させる方法は一応ある。

 

「だが…、なんで軍隊のお偉いさんがわざわざリョウとケイトをぶつけるんだ?」

「俺は今リョウの訓練をしている。最近までは主に動体視力について上げてきた」

「それで?」

「ケイトは体を一瞬で回復できるNのネームを持っている。つまりやつを殺すにはちまちました攻撃ではなく重い一撃、或いは正確な一撃が必要だ。鍛えた動体視力を全開で使い、倒せれば次の訓練に移れるのだが…」

 

シューレスにはリョウの置かれている状況について話してある。

 

「それで、リョウを本気にさせるため負けた時の条件を酷くした、がケイトまでは操れなかったと?」

「ネーム持ちなのだから負けたくないというプライドがあると思っていたのだが」

「あいつは痛いのを嫌がる戦闘には向かない人材だぜ。負けに対するプライドなんてほとんどないさ」

 

グネズトはこれで訓練の成果を確認しようとしていた。

だが、これでは意味がない。

他の確認方法もあるがこれが一番信用なるのだ。

 

「シューレス、お前も軍隊志望だったな?」

「そうだが?」

「上官命令だ。ケイトに本気を出させろ」

 

言われたことに目を丸くする。

シューレスも同じくネーム持ちで就職先は軍隊と決めているが、上官はまだ決まっていない。

いや、普通決まっていないのだ。

ケイトのだって実は正式ではない。

 

「俺はあんたの下についた覚えはないぜ?」

「俺の直属の部下は決まって戦闘能力が高い。俺が選んでいるからな」

「それは合法か?」

「俺がルールだ。で、お前もすでに俺に下につくことは決まっている。俺の命令には従え」

 

シューレスはケイトと違ってプライドが高い。

自分を操り人形のように扱うこいつはあまり好きではない。

だが、同時にシューレスは冷静沈着。

 

「…分かったよ。ケイトに本気を出させればいいんだな?」

「話が早くて助かる。頼むぞ」

「手段は問わないぞ?」

「構わん。だが、犯罪にならない程度でな」

「じゃ、ちょっと行ってくる」

 

シューレスがそこから消える。

瞬間移動ではない。

 

「さて…、どうなるか」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

リョウとケイトが戦っている。

ケイトは依然、派手な魔法を使っている。

リョウは矛を投げたりヒュニスを使ったりとじわじわとケイトを追い詰めている。

 

「あれー、なんで効かないの?(棒読み)」

「そろそろ終わりだぜ、ケイト!」

 

ケイトは派手な演出に疲れたらしく、さっきから棒読みのセリフばっかりだ。

観客はそんなことには全然気づいていない。

リョウとしてはせっかく戦えたから、本気を出してくれないのは不本意だがミィヤの人形になるのと比べたらそんなことは言わない。

 

「オラァ!」

 

リョウが矛を投げた。

ケイトは勿論よける気はない。

顔に当たると少し残酷なので心臓を狙った。

矛がケイトに向かって行く。

確実にとらえていた。

 

バキィィィィィィィン!

 

という音と同時に矛がはじかれる。

 

「え?」

「なに?」

 

そこに1人、人が立っている。

 

「シューレス?」

「おう、リョウ久しぶりだな」

 

今回はケイト対リョウの戦い。

なのにシューレスが戦場に立っている。

 

「お前、何すんだよ?審判に何か言われるぞ?」

「ふっ、俺を誰だと思ってるんだ?Dのネームを持つ男だぜ?そしてDは幻覚を使えることを意味する」

「幻覚?」

 

リョウはこのことを知らない。

シューレス自身、あまり口外しないのだ。

 

「今、観客や審判には普通に試合が見えてるはずだ。問題はない」

「…で、何の用だ?」

「俺が用があるのは、ケイト、お前だ」

「僕?」

 

何のために来たのか全く予想ができず困惑するケイト。

 

「本気を出せ、ケイト」

「…シュー、そんな用事ならさっさといなくなってよ。僕は本気は出さない。我ながら本気は気持ち悪いし」

「そういうと思っていた。だが、俺にも事情がある。これで手を打たないか?」

 

シューレスが一冊の本を取り出す。

いや、手帳か、あれは?

ケイトが焦り始めた。

見られてはまずいものらしい。

 

「俺としては成長したなと、友達として親友として喜びたいところなんだが…。この喜びリョウと共有してもいいか?」

「な、ア…、な、なんでそれが…!?」

「盗る機会はいくらでもあったさ。で、どうする?この喜びをいろんな人と共有したいんだが?」

 

口をパクパクとさせ震えている。

 

「とりあえず、リョウに見せた後は当人かあるいは新聞部にでも」

 

ケイトが丸鋸を出現させる。

 

「…今度何か奢ってやるから、頑張れよ」

 

それを言うとシューレスが消える。

どちらに言ったのは分からない。

ケイトが高速に回転する丸鋸を1つ構えている。

 

「ケ…、ケイト?」

「ごめんね、リョウ。僕は本気を出さなくちゃいけないらしい」

「え?」

 

それを言うとケイトは丸鋸を動かす。

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

それはリョウの方には行かずケイトの左腕に跳んだ。

無防備だったケイトの左腕が体から離れる。

 

「ああぁ…!」

「!?」

 

断面から鮮血があふれ出る。

見ていた観客の一部が黙る。

しかし、一部の人、特にケイトの戦いを知っている人は歓声を上げる。

 

「ケイト?」

 

突如、ケイトの腕の断面が肥大化する。

 

リョウは警戒してすぐに下がる。

距離は50mほど。

 

肥大化したと思ったら、それが収束していく。

やがてケイトの腕に変わり、腕が元に戻る。

 

続いてケイトは黙ったまんま、切った腕を宙に投げた。

それが丸鋸で5等分に輪切りにさせる。

 

「リョウ…」

 

離れているはずなのに鮮明に聞こえた。

 

「少し…痛いから」

 

リョウの背筋にぞくっとした何かが走る。

いつものケイトからは考えられないようなことだ。

 

ケイトは輪切りにした腕をリョウに向かって投げつけた。

リョウまでの距離は約50m。

それをものともせず、リョウに近づいてくる。

リョウは逃げたかった。

だが、先ほどの恐怖がリョウの判断能力を鈍らせていた。

 

「くそ!」

 

ヒュニスを当てて軌道をそらせることにする。

5等分になってるとはいえ、所詮は人の腕。

ヒュニス1つで防げる。

 

ヒュニスで受け止めた。

と、同時にヒュニスを1つ失った。

当たった瞬間、輪切りの腕がすべて爆発。

かなりの耐久度があるにも関わらず、ヒュニスは一瞬でゴミになる。

 

「…マジかよ」

 

この時ほどリョウはシューレスを恨んだことはなかった。




最終章まであとどれくらいかなぁ…?
ここの枠はあまりとるつもりないんですけど、突然飛ばすわけにもいきませんし…。
いや、十分跳んでるか?

ともかく、これからもよろしくでーす!
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