異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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「…」

目をこすりながらマーシャは目覚める。
6時過ぎ。
外は明るくなり始めたばかりだ。

階段を降り、自分で朝食を作る。
リョウたちにも作ろうかと思ったが、冷めては不味くなってしまうと思いやめる。
着替え、朝食も済ませたころジュゼルが起きてきた。

「マーシャ、今日は早いな?」
「叔父さんおはよう。私、今日午前中はママのところ行ってくる」
「成程、それでか。12時ごろまでには帰ってくるんだよ」
「ええ、分かってる。じゃ、行ってきまーす」

マーシャは家を出て目的地へ向かった。


新しい戦場
短い休養


朝7時過ぎ。

リョウは起床する。

だが、今寝ていたところは学校の寮ではない。

マーシャの叔父にあたるジュゼルの家だ。

学校が終わり、今は軍に入るまでの少しの休養だ。

この家、学校と違って木でできているところも有り結構落ち着く。

 

いつもはもうちょっと遅く起きるのだが居候ということもあって早めに起きる。

この家の主はもっと早く起きるので迷惑はできる限りかけたくない。

 

「おはようございます」

「おはよう、リョウ君」

 

すでに料理が出来上がってテーブルに並んでいる。

そしてここの日課でリョウがマーシャを起こしに行くことになっている。

すでに20過ぎなのに違和感がないことにリョウ自身疑問を覚えていた。

 

「じゃ、マーシャを起こしに…」

「ああ。今日は必要ないよ。もう家にいないしね」

「?」

 

確かに食卓を見るとマーシャの席に皿はない。

いつも一番最後に起きるマーシャがあり得ないとリョウは驚く。

 

「何かあったんですか?」

「たぶん…、報告に行ったんだと思う」

「…報告?」

「命日ってわけじゃないが…、卒業したからね」

 

命日、となると誰かの墓参りだろう。

 

「差支えなければ、だれの命日でしょうか?」

「母親だよ、あの子のね」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

マーシャは墓地にいる。

そんな暗くてジメジメしたようなところではなく、むしろ今は暑い。

墓石だってほとんど同じ形をしているが白くてきれいなものを使っている。

 

「何で今日に限って暑いのかしら」

 

こんなことなら帽子でもかぶってくるべきだったなと思う。

手には桶を持っており、水が入っている。

目的地が分かっているのか足取りはしっかりしている。

1つの墓の前についた。

 

「…久しぶりね。ママ」

 

墓前の前に花を供えたり掃除をしたりしながら話を進める。

学校での出来事はとても濃い。

 

「それでね、リョウったらまた無茶をしてね、危うく死ぬところだったの」

 

積もる話が山ほどあり、いくらあっても話が尽きなかった。

墓参りにきてもここまで長い間話す人は居ないだろう。

 

ある程度話すとマーシャは少しためらいながら言った。

 

「…ねぇママ。私、軍に志願したの。ママはやめてって言うかもしれないけどやっぱり、あいつを…、殺すまでは…、絶対無理だから」

 

明るく話していたのが暗くなるのが分かる。

だれか居れば声をかけるかもしれない。

 

「で、でも大丈夫よ。ちゃんとケジメつけたら違う職に変える用意もできてるから」

 

はっとして表情を戻す。

 

「ご、ごめんね。こんな暗い話するつもりなかったのに」

 

依然として太陽はカンカン照りで人影はマーシャ以外見当たらない…わけではなかった。

謝った直後マーシャの頭がちょっとした力で押される。

 

「きゃ!?」

 

慌てて振り向くとリョウが居た。

 

「リョウ…叔父さんに聞いたのね」

「帽子を持ってってやれって言われたからな」

 

頭に麦わら帽子がのっかっている。

この時期なら普通この帽子は時季外れもいいところだが、今日はちょうどいいだろう。

 

「…母さんの墓前か?」

「それ以外ないわよ。ところで今何時かしら?」

「10時過ぎるぞ」

「そんなに…、話し込み過ぎちゃったわね」

 

マーシャが立ち上がる。

 

「少し、俺もいいか?」

「ええ。ママもあなたの顔は見ておきたいだろうしね」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ママが死んだのは私が6歳の頃なの」

 

帰り道、マーシャはリョウに話す。

 

「優しかった。パパともうまくやってた。けど…」

 

そこで少し黙る。

言いにくいのは目に見えて分かる。

 

「嫌なら別に…」

「いえ、私が軍に入る理由の一つだし、決意表明とでも取っておいてほしいの。…私の実家、ここからは離れたところにあるんだけどね、どちらかというと田舎な感じだったの。だからかしら。知らない人たちが押しかけてきたの、その村に」

 

言いにくそうではあるが決して震えたりはしていなかった。

 

「何か要求したのか、或いは人を探していたのか、物を探していたのかそのころの私は小さかったから何も知らない。そいつらは家に入ってきたと思ったら迷わずママを殺した。パパは首を絞められ、私も刀で一突きされて危なくなった…、けど何かあったのか突然動くのをやめたかと思うと引き返していったの。不思議なことにきれいな死体は持って帰ってたわ」

 

「なんでかしらね?」と付け加えて作り笑顔をする。

誰にでもわかる作り笑顔だ。

 

「後は違う人たちが来て助けてくれたの。状況は小さいころだったからそれくらい大雑把なことしか覚えてない。…けど今でも鮮明に覚えていることが2つ。1つは敵の中にいたやつの1人が右腕と右目が機械のごとく鉄のような色をしていたこと。もう一つはそいつ以外の敵からは拭いしれない恐怖を感じたこと」

「そいつ…以外?」

「機械のような奴からも恐怖は感じた、けど他の奴からはまた違う恐怖を感じたの。なんでかは覚えてないけど…、似たような恐怖を依然、ミューズデルが侵攻された時も感じた」

「そいつらが、居たのか?」

「あくまで似たような恐怖よ。何かが違うの。ただ、途中で消えちゃったけど」

 

転移装置の前までたどり着く。

ここは墓場。

そんな場所が、ミューズデル内に設置されているはずはない。

転移装置で移動して初めてすぐにたどり着く。

それでも2時間近くかかるのだが。

 

「私は決めた。そいつを見つけ出し、殺すと。物騒な話だけど私は今でもそいつが憎くて仕方ないの。正体不明の敵を憎むってまた変な話だけどね。私が多少体術を使えるのも、軍に志願するのもそれが理由なの」

 

転移装置の前で立ち止まり話を続ける。

 

「リョウは…こんな私をどう思う?」

「…決意表明を聞いているんじゃなかったのか?」

「そうね。でも聞いておきたい。 大切な相手として…」

「感想は…強いな、だ」

「それだけ?」

「ああ。変な奴とも思わないし、見下したりもしねぇよ。俺がそんな感想持つと思うか?思ったのは純粋に強いなっていうことくらいだ」

 

驚いた顔をした。

それを聞いてマーシャがふく。

 

「おかしなこと言ったか?」

「そこは気遣って何かいいこと言うところじゃない?」

「よく言うぜ。俺が変なこと言ってもお前なら分かるだろ。むしろ俺は本音をぶつけたほうがお前は喜ぶと思ったんだが」

「…否定はしないわ。本音といってもけなすのような本音だったら蹴りを入れるけどね」

 

マーシャが足を振って見せる。

リョウはこれを見るだけで少し、ぞわっとする。

あれは本当に痛い。

 

「お前、それだけはマジでやめてくれ。男子の大事なところは本当に痛いんだから…」

「考えておくわ。今はケイトもいないしやるなら加減はするわよ」

「頼むぜ…。じゃ、帰るか、ジュゼルさんも待ってる」

「そうね」

 

先にリョウが転移装置に乗る。

 

「ママ…、またね」

 

マーシャもその場を後にした。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「ハックション!」

「なんだ、風邪か?」

「いや、噂されてるんだろ」

「噂されるってこたァ、お前のことを知っている奴が生きてるってことだなァ?それとも死後の世界からかァ?」

 

マーシャたちがちょうど墓地の中を話しながら帰っていた頃、違う場所で円卓会議が行われていた。

その部屋に窓はなく、基本的には閉鎖的な部屋だった。

響くつくりなのか、くしゃみがよく響いた。

 

「まぁ、俺が逃したやつも覚えてるだけで5人は居るからな。それより兄貴、まだ始めねぇのか?」

「主君がくるまで待ってろ。そんなにかからないはず―――」

 

転移装置のところに人影が現れた。

それを見て全員が立ち上がり頭を下げる。

 

「みんな楽にしてくれ」

 

カザキだ。

そう言われ全員が頭を上げる。

カザキが席に着くと他の人も全員座る。

 

「さて、今日集まってもらったのは…次に挨拶する日が決まったからだ。ジーク」

「はい」

 

円卓の中央に大きな画面とそれぞれの前に中央と同じ画像が映し出される。

 

「みなさんにはだれか1人、この中から選んでいただきます」

「選んだ相手とはどうするのかしら?」

「殺し合いに決まってます」

「こっちが選んでいいのね。太っ腹~♪」

「この顔はいったいどういうつながりがあるのですか?」

「今年軍に入る奴らだ。もちろんミューズデルのな」

 

カザキが答えるが皆が納得していない。

なぜなら映ってる顔が少ないからだ。

9人しかいない。

確かに強いであろう顔もあるが知らない顔もある。

 

「先に言っておくがこれはただの挨拶だ。殺しても構わんが最低5分は死なずに押さえろよ」

「しかし…なぜ顔を出しに行く必要が?」

「こいつだ」

 

リョウの顔を大きく映し出す。

もちろんこの場にリョウを知らないやつは居ない。

 

「エジリスを殺った奴…ですね?」

「こいつは俺を倒す最終兵器だそうだ。簡単に言えばな。そんな奴が軍に入る。その入隊式に俺が出ないわけにはいかないだろう」

「主君ー、私はこの可愛い子を所望しまーす」

 

1人の女が1人画面から選んだ。

 

「裏切者を選んだか…。いいだろう、クロはお前に任せよう」

「ありがとうございまーす!」

 

それを機に他のメンバーも画面から相手を選び始める。

といっても、情報はネーム持ちか否かぐらいしかなく、結局は顔で選ぶことになる。

 

先ほどくしゃみをした男も画面を眺める。

しかし、興味はないらしく画像を大きくしては戻すを繰り返す。

 

「リプト、もっと真剣に選べ」

「でも兄貴、こいつらの中に俺の興味を引きそうな奴なんか…」

 

画面を流していて一人の顔が目に留まった。

どこかで見覚えがある顔らしい。

 

「…そんな奴、選んでどうする?」

「なんか目がうずくんだよ。ちょっと待っててくれ」

 

そういうとリプトは目をつぶる。

5秒ほど目をつぶり続ける。

そして目を開けるとまたその画像を見る。

 

「…適合率72%か。兄貴、こいつ、他に外見について情報ないか?」

「そいつなら確か…、髪を染めているな。以前は金髪だ」

「…」

 

リプトの口がニヤッと吊り上がる。

 

「主君、私はこいつにします」

「分かった。他の者も早く決めてくれ。もっとも、どれでもいいというやつは私が後で適当に振り当てるが」

 

カザキがまだ決めていないやつらとやり取りを始める。

 

「リプト、そいつは?」

「俺の目の記憶が正しければ、殺し損ねている人間の1人だ。かなり前だけどな」

「そうか。あっちは覚えてると思うか?」

「いや、かれこれ16年前の話だ。こいつは小さかったから覚えてないだろうな」

「それでは少し楽しみが減るな…」

 

ククク、と笑う。

 

「兄貴、趣味が悪いぜ?」

「Tのつく家系は決まって趣味が悪いのだ。お前も少しは残念に思うのではないか?覚えてなかったら」

「…確かに、せっかく目の前で母親を殺してやったのに覚えてないんじゃ面白くないな」

 

「皆、決定したな」

 

ちょうどカザキが全員の要望を聞き終えた。

 

「では、これにてこの会議は終了する。作戦日時は後で知らせるからそれまでは業務に戻っていてくれ」

『了解しました』

 

全員が立ち上がり答える。

その後、立ったままカザキがこの部屋を出ていくのを待った。

出ていくと全員が緊張を解き、それぞれの行動に移る。

 

「ではリプト、俺は業務があるから戻るぞ」

「その前に1つ」

「なんだ?」

 

リプトが画面を指さしながら質問する。

 

「こいつの名前は?」

「マーシャ・クリーシャだ」




使い魔紹介



ライル
人間の姿での実体は一切作らない。
年齢不明。
性別不明。
基本はグネズトの腕時計の形をしており、人として実体を持つ時は誰かを真似る。
会話することは少なく、言われたことに対して言葉を返す或いは行動を起こす。
時計としていることが多いため、体内時計もかなりしっかりしておりライルに聞けば正確な時間が分かる。


これで使い魔は一通り紹介し終わったかな?
次からは…どうしようかな。
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