ある部屋で2人が話している。
「…本当にいいんだな?」
「なんども言わせるな。俺がいいと言っている」
「だが、これは規定違反だろ?」
「後でよかったと思うに決まってる。始めろ」
「…了解」
「あ、あなたは…!」
鉄のような色と硬そうな腕。
今でも鮮明に覚えている。
別にあいつにやられたわけじゃない。
だが、敵の中であいつだけ異質だったから覚えてる。
いや、あいつだけ違ったから覚えている。
「その顔と反応、まさか覚えているのか?」
相手の口がニヤッと吊り上がる。
「…右目は?」
「ばっちしだ。覚えてるのか」
男が手を右の眼球に当てる。
眼球を触り始めた。
次、手がどけられて目が見えた時には右目は鉄のような色に変っていた。
「…見つけた」
「マーシャ?」
マーシャの顔が怒りに満ちている。
今、マーシャの中にあるのはあいつを殺すという目的のみ。
怒りに身を任せドールを展開し、接近する。
「マーシャ!落ち着け!」
耳に入っていない。
男が両手を広げ、魔力の放出を始めた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「…あなた何者よ?」
「…」
「答える気はないみたいですね」
ここもリョウたちと似たような場所。
いるのはリリア、フィリア、そして1人の女。
顔は仮面をかぶっていてわからないが髪の毛は金髪で長い髪が風によってたなびいている。
「ここは何よ?」
「…」
「ちょっと!答えなさいよ!」
女は仮面をかぶっているためどんな表情をしているのかわからない。
さっきから地面に立ったまましゃべらないどころかアクションすら起こさないからわからない。
本当にこいつはなにがしたいんだと思う。
「…銀髪」
すると女がしゃべった。
指でフィリアを指している。
「私?」
「私はあなたは選んでない。なんでいるのかしら?」
「いや…そう言われましても…」
明らかに声には、なんだよお前という負の感情が含まれている。
別にフィリアは来たくて来たわけじゃないのだから困る。
「あなたは小さい。それにおとなしいから興味ないの」
「は、はぁ…?小さい、ですか」
「ズバッと言うならあなたは男か?」
「がはッ!?」
フィリアがそう言いながら崩れる。
小さいというのが胸のことだと気づいたのだ。
身長のことならまだしも胸はフィリアにとっては大きなコンプレックスだ。
「それにひきかえ…」
「ん?」
リリアの方を見る女。
この時リリアは、以前感じたことがある嫌な雰囲気を感じていた。
「胸は…CかD。すらっとした体つきは銀髪もだけど活発そうな雰囲気。そしていい感じの顔」
おい、まさかこいつ…とリリアが構える。
「…タイプだわ」
「また女なのぉぉぉぉぉぉぉ!?」
一応危ない状況なのだがリリアは叫んでしまった。
クレアに引き続き2人目だ。
こんな人、そうそういないだろう。
「なんで男子からはそういう声が聞こえないのよぉぉ…」
こんなことなら男子に生まれたかったと思うリリア。
男子の立場としてならば嬉しいのだろう。
だがリリアは女。
相手も女。
リリアはそういうのは否定するつもりはないが、リリアにその気はない。
「今日はあなたをお持ち帰りするつもりなのだけど?」
「絶対嫌!私のはじめては好きな人にあげるの!」
「…クレアさんからはギリギリ守ってるんですか?」
「ギリギリね…」
女が構える。
「なら力づくで連れて帰るわ。ほしい物は意地でも手に入れる主義なのよ、リリア・アリアさん」
「既に調べてるのね…あなたの名前は?」
「私は、ナタリー・F・フラムよ」
「ネーム持ちね」
「仲良くやりましょう?」
「絶対嫌!」
――――――――――――――――――――――――――――――
「…」
「…」
「…なんでお前ら、何も言わねぇんだァ?」
場所は他と似たようなところ。
ただ、ここに入った2人はなんか…間違ってた。
「いや、だってよ…」
「オカシイじゃん、この組み合わせ」
今、跳ばされてきた2人はレックスとウリスだ。
なんでこのペアになったのかよくわからない。
「もう1人は増えるだろうとはァ思ってたが、お前ら仲はよくねぇのかァ?」
「生憎、話したことすらほとんどないよ」
「アタシ、マートと一緒に戦いたいんだケド」
レックスがウリスと最後にまともに話したのは1年生の頃が最後のような気がする。
あとの思い出はほとんどない。
「…まァいい。共闘しようがしまいが俺は知らねぇ。だが、レックス・ビルジェンタ。少なくともお前には戦ってもらうぜぇ?」
「上等だ。ウリス、そこで見てろ」
「はぁ?何言ってんのヨ?私もヤルシ、暇だから」
ウリスが手に炎を作り出す。
「馬鹿野郎。お前が戦ったら俺の力が半減するだろ」
「知ったことじゃナイし。私もこいつはぶっ飛ばしたいノ!」
ウリスの手の上でゆらゆら揺れる炎を眺める男。
「…成程ぉ。お前がUのネーム持ちかァ」
「あんたは?」
「俺はニゲル・I・ロップルトだァ…。本気で来いよぉ、でないと―――」
突如、ニゲルのいた空間が歪む。
そしてすぐにレックスたちの視界からニゲルが消えた。
「―――肉塊になっちまうぜぇ?」
楽しそうなニゲルの声がレックスとウリスのすぐ後ろから聞こえた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「キャー、やっぱりカワイイ!」
女が手をたたいて喜んでいる。
ピョンピョン跳ねているから大きな胸が揺れている。
「…ウリスさん?」
「残念ながら妹。マートだよ」
「マートさん、あいつは知り合い?」
「いや、アタシは知らないヨ」
クロとマート。
魔法という繋がりがあると言えばあるのだが話したことはほとんどない。
その2人の目の前にいるのは巨乳な女。
それを強調するためか胸元が開いた服を着ている。
「カワイくてもうどうにかなっちゃいそう、と言いたいところなんだけど、だれよあんた?」
笑顔がしかめっ面に変わりマートを見る。
「あんたたちが連れてきたんでショ?何よその目」
「アタシはクロちゃんは呼んだけどあんたみたいな売女は呼んだ覚えはないの。さっさと帰れよ」
「あぁ?乳だけデカいおばさんが何言ってんのよ?若い者に対する妬み?」
「おばさん?アタシまだ30過ぎなんだけど?」
「はっ、年齢じゃないわよ。派手な化粧してそれでシミ隠せたつもり?むしろキモくなってんのよ。化粧のやり方知らないノ?」
「青臭い餓鬼が。あんたみたいに美をどうでもいいと思ってる奴とは違うんだよ!」
「あぁ!?」
「あぁ!?」
クロをそっちのけで言い争いをしている。
クロはこういうのに入っていくのはまずいと知っているのでがれきで遊び始めた。
「もういい!ぶっ殺す!」
マートがいい加減キレたのか顔に血管を浮き上がらせながら笑っている。
「いい度胸じゃねぇか!餓鬼に大人ってやつを教えてやんよ!」
相手も同じようにしてキレている。
ここでクロは少し、悩んだ。
一応仲間が戦おうとしている。
ならば手助けするべきではないかと。
だがすぐにやめた。
別に勝ち目のない戦いに仲間を助けに行く。
これならすぐに入る。
だが、クロから見ると今起きようとしている戦いはそれ以上の物に見えた。
「マート・U・クリティウスよ!あんたは!?」
「ミミ・H・アイルバート!可憐な大人の戦い方ってやつを教えてあげるわ!」
ミミはクロと戦う予定だったのに、マートとの戦いが始まった。
――――――――――――――――――――――――――――――
「お前がDのネーム持ち…か」
「…」
シューレスを見下ろすように敵は立っている。
「画像を見て分かってはいたがただの餓鬼だな。つまんねぇ」
「…」
シューレスは黙ったまんま相手を観察している。
敵はおそらく男。
外見は黒い衣服等で体をすべて覆ってるためわからない。
「少しはしゃべれよ。戦いで俺を楽しませるのは無理なんだからせめて口でさ」
「…なぜ?」
「おお、ようやくしゃべったな?思った以上に低い声だな」
敵はようやく降りてきた。
頭をかきながら尋ねてきた。
「ところで…お前、俺に会ったことあるか?」
「…知らないな」
「だよな。どうも聞いたことある声のような気がしてな」
敵は構えることなく、ただ突っ立っている。
「さて、どうやらお前は話術は得意じゃなさそうだ。なら、始めるか」
「…なめているのか?」
「もしかして俺は既にお前の幻術とやらにかかっているのか?だから余裕なのか?」
「知ってるのか?」
「こちらから出向いてるんだ。相手の情報ならいくらでも入る。お前は視覚を操るネーム持ちだそうだが…」
相手が仮面をとる。
そこにある顔に驚嘆した。
「…!」
顔の半分が皮膚ではなく、機械になっている。
「悪いな。俺がお前を選んだ理由は勝てるからだ」
「…」
「お前の魔法は相手の視覚を奪う。だが、聴覚までは奪えない」
相手が構えた。
その構えはドール使いを感じさせる構え方だ。
少なくとも魔法を使う構えではない。
「俺の名前はミグレッド・ケリニス」
「なめられたものだな」
「ネーム持ちじゃないからか?だが、今からお前はそのネーム持ちじゃない俺に殺されるんだぜ?」
シューレスも構える。
しかし、その構えはいつものシューレスからは考えられなかった。
「なんだおまえ?」
こぶしでやりあう人の構えをしていた。
シューレスは普通、こんな構えはしない。
「やめとけよ、得意魔法が使えないから格闘技?玄人相手に素人が勝てるわけないだろ!」
「素人なら…な」
――――――――――――――――――――――――――――――
本会場。
ここでは新入隊員が来るのを待っていたのだが来ないことに対して疑問を持って少し騒がしくなっていた。
「リョウ殿、遅いなぁ」
「何かあったんでしょうか?」
「面倒ごとー?」
「私おなかすいたー」
自分の主の出番を待っていた使い魔たち。
だが、主たちは予定時間になっても入ってこない。
もっと言うならだれ一人入ってこない。
「故障でもしたのかな?」
「この入隊式にですか?軍隊であろうものどもが…!」
「スノーこわーい」
「こわーい」
「…は!いや、すみません。主が心配で心配で」
スノーが謝っていると1人の人が転移装置から入ってきた。
しかし、
「…あいつ、軍服じゃないわね」
「嫌な感じがします」
それを確認した軍の人は全員が臨戦態勢をとった。
顔には驚きと疑問が入っているのが分かる。
「…挨拶に来ただけだというのに」
カザキがつぶやく。
周りを見渡し、1人の男に目をつける。
「久しぶりだな、グネズト」
グネズトだけは立ち上がっていなかった。
来るとわかっていたような顔をしている。
「何年ぶりかなぁ…、いや俺とお前の仲だ、数えるだけ無駄か」
「…」
「なんとか言えよ。驚きが大きすぎて口もきけないか?」
グネズトはしゃべらず、周りの軍の人も何もしない。
銃を向けているがグネズトの指示がない以上どうしようもない。
「まぁいい。それより、やっぱりお前らは平和ボケしすぎだな。こんなにも簡単に転移装置にハッキングできた。そして―――」
手を広げ画面を作り出した。
画面には戦闘中のリョウとマーシャが映っている。
「彼らだけじゃない。お前の下につく奴全員だ」
すぐに画面が消えた。
「まぁ、今日は挨拶に来ただけだ。少なくとも俺は―――」
しゃべろうとして何者かに攻撃を入れられる。
2人だ。
「…戦う気はないんだが?」
「リョウ殿をどこにやった…!?」
「マーシャはどこ?」
サクとリンが2方向から攻撃を加えている。
打撃だったがどちらともカザキは腕で軽く受け止めていた。
「悪いが、子守りは苦手なんだ」
「「!」」
突如、強い力によってサクとリンが地面にねじ伏せられる。
「寝てろ餓鬼ども」
「ぐっ…!」
「さて、グネズト。いい加減しゃべってくれないか?せっかく来たんだから」
「趣味が悪いな」
「第一声が…ん?」
カザキがグネズトの第一声に疑問を持つ。
「子供を地面にねじ伏せるなんて趣味が悪いんだな」
「…!」
何かに気づいたのか、画面を開き確認をしている。
周りには銃を構えた敵がいるのにお構いなしだ。
確認を終え、カザキが歯ぎしりをしながらグネズトを見る。
「貴様…!」
グネズトは勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
さて、久しぶりに本格的な戦闘に触れた気がします。
盛り上げられるよう頑張っていきますよ!
今後ともよろしくです!