異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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はぁ…。
休みが…、1ヶ月の休みがほしい。


罵声

「死ねぇ!」

「死ねぇ!」

 

炎の剣と刀がぶつかる。

 

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!」

 

さっきからずっとこうだ。

マートとミミがこうやって暴言を吐きながら戦い続けている。

クロはもう怖くて入っていけない。

もともと入るつもりはなかったのだがここまで醜い争いになるとは思ってもみなかった。

これだからクロは初めての女子とはどうしてもぎこちなくなる。

こういうのを見るたんびに同じ人間なのかと疑問を持つ。

 

「さっさと燃えカスになっちゃいなさいよ!」

「黙りなさい!あなたこそさっさと死になさいよ!」

「うるせぇ、ババァ!!」

 

マートが炎の剣からすごい勢いの火を噴出させ文字通り燃えカスにしようとする。

ミミは水魔法を使い、マートに向かって放ちながら後ろに後退する。

 

距離が開き、2人は息を切らせながら睨み付け合う。

 

「はっ、アンタ本当にネーム持ち?さっきから弱い魔法ばっかで加減困るんだケド?」

「ネーム持ちは本当よ、餓鬼。私が弱い魔法か、刀を使うのは可憐な大人の戦い方ってやつを貴方に教えるためよ」

「死ねっていう暴言を吐くのが可憐な大人?笑わせんなよ、オバさん!」

「それは貴方の聞き違いね。熱に負けて鼓膜がおかしくなったんじゃないかしら?」

「胸だけでかいババアがどんなでかい口たたいても全然響かないノよ!」

「それは妬みかしら?そんなんだから餓鬼って呼ばれるのよ、クソガキ!」

「うるせえ、ブサイク!」

 

最後はまとめてブサイクといってしまったマート。

剣を一振りして炎の波をミミに飛ばす。

ネーム持ちというだけあってその範囲は計り知れない。

生きてるかのごとく、炎は確実にミミに近づく。

ミミも水魔法で応戦する。

 

「そんなんでアタシの炎をどうにかできると思ってんの!?」

 

空いている左手からさらに炎を吹き出す。

普通に考えれば炎+炎をしても別に何か起きるわけではない。

だが、マートの場合は違うらしい。

目に見てわかるように威力が上がる。

 

「アチチッ!」

 

結構離れているはずのクロにまで熱さが伝わる。

がれきがすでに溶け始めているものもあり、クロは避難を余儀なくされる。

すでにミミの姿を確認することはできない。

 

「もう消えちゃったぁ?」

 

マートがうれしそうな声でミミに聞く。

もちろん返答はない。

 

「…返事しろよ、オバさん!」

 

マートがミミがいたであろう場所に向かって炎をぶつける。

 

「あははははははは!」

 

これではもうどちらが悪役かわからない。

マートが炎の剣を消し、手を何かを押し込めるかのように自分の目の前にかざす。

 

「終わりだぁ!」

 

マートが手にぐっと力を入れる。

するとさっきまでバラバラに動いていた炎が1つの高温物体になる。

それを確認するとマートが手から力を抜く。

それと同時に炎の球が爆発する。

 

一瞬、世界が真っ白に包まれ、視界が奪われる。

音も奪われる。

わかるのは焦げたにおいとものすごい熱気。

やがて視力が戻り、耳も聞こえるようになってきた。

 

「…」

 

戻った視力で、あたりを確認する。

マートには傷一つない。

まぁ、もともと自分な魔法で攻撃をしていたのだ。

それを制限できないなんて間抜けにもほどがある。

 

「(…あいつ大丈夫カナ?)」

 

冷静になりクロのことを思い出すがすぐに頭から消す。

別に死んでいようが生きていようがどうでもいい。

死んでれば敵に殺されたと、生きていれば一緒に帰ればいいだけの話だ。

あたりにミミは見当たらないし、どうとでもなる。

今は姉貴のところに行き苦戦してるのならば加勢するべきだと思い、転移装置を探す。

 

「加減し忘れたけど、壊れてないよネ…?」

「ええ。しっかり起動してるわ」

 

独り言で呟いたはずなのに返事が返ってきたことに驚き、あたりを見渡す。

しかし、クロはおろか敵すらいない。

だが、今の声は確かにあの女だった。

 

「守るの大変だったわよ?」

 

再び声がする。

どこにいるのか確認ができない。

 

「テンメェ…!」

「隙だらけよ?」

 

刹那、後ろに突然炎が出現する。

 

「!」

 

防ぐ時間はない。

体でもろに食らう。

しかし、傷は大したことはない。

もともと炎魔法が得意なのだからこれに対する耐性もある。

だが

 

「この威力…!」

 

疑問を投げかけようとして後ろに激痛が走る。

 

「グっ…!?」

 

背中を切りつけられていた。

傷は深いわけではないが痛む。

後ろを振り返るが敵はいない。

しかし…

 

「…何よそれ」

 

空中のあるところから血が垂れていた。

血が宙に浮いているわけじゃない。

突然現れて滴り落ちるかのように落ちていっているのだ。

 

「あらバレちゃった。まぁ、手負いの雑魚1人くらいならいいかしら」

 

ミミが姿を現す。

刀を持っていてその刀から血が滴り落ちている。

 

「…姿を消すのがアンタのネームの能力かしら?」

「残念。そんな弱い能力じゃないわよ。これは帝国の科学技術の結晶よ」

 

体を再び消す。

そしてまた現す。

 

「聞いたことないわよ…!」

「あらそう。Vは確かこれを使ったけど負けたって聞いたのに。ま、ただの学生に教えられるわけないわよ」

 

背中が痛む。

マートは平然と話してはいるが顔は苦痛で歪んでいる。

なのに…

 

「アンタ…、どうして」

「あなたのさっきの攻撃のこと?これを使ったのよ」

 

ミミが手をかざすと半透明な円の盾が現れる。

 

「…それは?」

「もうわかってるんじゃないの、あなたは」

「…」

 

さっきの炎。

威力はかなりのものだった。

Uのネーム持ちでなければ致命傷間違いなしの破壊力だった。

それほどのものを瞬時に出した。

まるで自分の攻撃をそのまま返したかのような…。

 

「真似か…、或いは私の攻撃を反射させたか」

「まぁ、正解といっておきましょう。ガキでもそこまでヒントを出されればわかるわよね。私のネーム、Hの能力は相手の攻撃を吸収、そしてそれを好きな時に使えるっていうものよ。ま、魔法限定だけどね」

 

炎を出して見せる。

大した威力はないからマートにはまったく意味をなさない。

 

「でもまぁ、この光学迷彩があれば私の能力なんて必要なさそうだけど」

「ネーム持ちのくせにそんなものまで使うなんて…」

「ずるいって話?いいえ、使えるものは使うのが可憐な大人よ」

「血の付いた刀を持って、濃い化粧をして、無駄にでかい乳持ってるババアが可憐な大人?ただの姑息なブサイクよ」

「まだ無駄口がたたけるのね。ならさっさとその口、二度ときけなくしてあげるわ」

 

再びミミが消える。

マートも魔力をたどってみるがこれでは正確な位置までは特定できない。

 

「ヴッ!」

 

再び斬りつけられる。

背中ではなく、真正面か斬りつけられた。

 

「な…めんなぁ!」

 

体の周りに炎を作り出す。

これをすればしばらくは相手は近づけないはずだ。

だが、相手のネームは厄介だった。

 

張ったはずの炎の壁が破られる。

いともたやすく。

 

「!」

「あまい!」

 

再び斬りつけられた。

 

「アアアァ!」

 

今回は深い。

全身から汗が吹き出し、宙に浮いているのがやっとだ。

 

「悪いけど」

 

声がした。

 

「おしまいよ」

 

どうにかして相手を止めたいが、場所がわからない。

再び炎の壁を作り出す。

さっきよりも広い範囲を壁にする。

 

「(これなら…!)」

「くだらない」

 

作った壁がすべて消える。

 

「なっ!?」

「誰が消せる範囲を教えたのかしら?」

 

確実に近づいてくる。

 

「終わりよ!」

「(くそ!)」

 

死を覚悟したその時、大きな影がマートに覆いかぶさる。

バキン!という音がして刀が止められたのがわかる。

上を見上げるとそこにいたのは

 

「石の…人形?」

 

ゴーレムが覆いかぶさっていた。

今、この場でこれを出せるのはただ1人。

 

「マートさん、大丈夫?」

「…クロツェフ?アンタ、どうやって?」

 

クロがネーム持ちということは実はごく少数にしか知られてない。

理由はクロが敵であったというのを伏せるためだ。

少なくとも学生時代の間にばれれば支障が出るのは間違いない。

どうしても何人かの人にはばれてしまったがそういう人たちはみんなクロを理解してくれた。

今までの振る舞いがみんなの心をつかんでいたのだろう。

 

「ケイトから聞いてない?僕、実はネーム持ちなんだけど」

「ウッソ!?初耳よ?」

「ドールも使うけどね」

 

クロのドールは3段階目。

正直実践としては使い物にはならない。

自分の耐久力を高めるために使うことはできるが。

 

「あら、そういえば忘れていたわ。ごめんね、クロちゃん」

「…なんで?」

「ん?」

「なんでこんなことを?」

「クロちゃんは優しいのね。理由は簡単よ。そいつが邪魔したから」

「…」

「うざかったから。ガキだったから。うるさかったから。生理的に受けつけなかったから。まだ聞く?」

 

クロがゴーレムを動かす。

 

「あら、健気ね。かわいい♪でも私を見つけられないのにどうやって私と戦う気なのかしら?」

「…僕のこの生活はリョウのおかげ」

「ん?」

「だから僕は今訊いた。もしかしたら貴方も強制されているんじゃないかと思ったから。でも、違うみたいだね」

「…何が言いたいのかしら?」

 

クロが周りのがれきに魔力を送り込む。

 

「本当は戦いたくはない。けど、貴方は今僕の、リョウの仲間を殺そうとしている。何の理由もなく」

「理由なら―――」

「僕は決めてるんだ。二度とリョウに辛い思いはさせないと。だから僕は、自分の決意を貫くため貴方を殺す」

 

ゴーレムに粉々になっているがれきが集まっていく。

 

「…かわいいだけじゃないのね」

「………いくよ!」

 

オォォォォォォォォォォ!とゴーレムが叫ぶ。

ゴーレムの一撃が何も見えない空を切る。

しかし、そこには確かにミミがいた。

 

「おっとぉ」

 

すんでのとこでかわし、距離をとる。

ミミには手がたくさん残っていた。

マートには対して効かないからと残しておいたさっきのマートの炎魔法。

かなり有り余っている。

クロの後ろに回り込む。

 

「(かわいそうだけど…)」

 

炎を出そうとする。

が、ここで予想外のことが起こる。

クロのゴーレムの手が見事にミミの場所をとらえていたのだ。

 

「!」

 

急いでかわすことで致命傷を避けた。

 

「(…なんで?まぐれ?)」

 

再びクロに向かって炎を放とうとする。

だが、ゴーレムは確かにミミをとらえていた。

離れて撃とうとしていたにもかかわらずゴーレムは腕を伸ばしミミに向かって攻撃を加えてきた。

すぐにこれも回避するがゴーレムの腕は1つではない。

2つ目の攻撃を許してしまう。

よけた先で体の右側からコンクリートでできた拳の一撃を食らう。

 

「が…!?」

 

吹っ飛ばされ、地面にたたきつけられるミミ。

たたきつけられた衝撃でところどころ骨にヒビが入る。

吐血もしてしまい予想外の展開だ。

 

「なんで…!」

「残念だけど僕にその手の攻撃…じゃないかな?ともかく一切効かないんだ」

「質問の答えになってないわよ」

「貴方だって自分の魔力の場所の特定ぐらい造作もないでしょ?」

「魔力…?」

 

そう言われて気づく。

自分の服についている微弱な自分のではない誰かほかの人の魔力。

基本的に他と戦っていれば必ず入り混じるのだから気にはしない。

だが、今ついているのは自分にまとわりつくように離れない。

 

「僕は命ない物の一部を使って新しい何かを作り出す。でもこれは応用すれば相手の発信機みたいなものにも出来るんだよ」

「私についてる無数のがれきの破片にでも自分の魔力を送り込んでるってわけね。簡単に見えて思ったより高度な技術のはず…、思ったよりやるのね」

「それが僕のネームの能力だからね」

 

痛む右側の体をかばうように立ち上がる。

光学迷彩はクロには効かない。

まだ自分のネームの能力があるが。

 

「貴方は僕とはかなり相性が悪いみたいだね?」

「…なんですって?」

「貴方はさっきからマートさんの炎を出して戦おうとはしてるけど吸い込もうとはしない。僕のゴーレムが嫌なら吸い込むべきだと思うよ」

「…」

「でも出来ないからしないんでしょ?理由は不明だけどね」

「…言ってくれるじゃない。まったく、かわいいだけじゃないのね。誤算だったわ」

 

ミミが目の前に半透明な円を作り出す。

範囲が広い。

 

「残念だけど、殺すしかないみたいね…」

「降伏してください。貴方はもう―――」

「かわいい顔して降伏なんて言わないでよ。それに、私は負けないのよ!」

 

円から炎が頭をのぞかせ始める。

 

「いくらあなたでもこの炎を止めることは出来ないでしょ?」

「…僕の決意は聞いたよね?」

「さぁ?忘れちゃったわ!」

 

炎がクロの襲い掛かる。

攻撃してくるのはUの出した炎。

威力は計り知れない。

 

クロがゴーレムを使い壁を作る。

 

「グ…!」

「そんな脆い壁でどうにかできると思ってんの!?」

 

ゴーレムはがれきでできている。

そこにUの魔法なんかを食らえばどうなるか。

 

ゴーレムが溶け始める。

いや、消え始める。

 

「…!」

「知ってるわよ。クロちゃん、命ない物とは言ったけど液状の物は扱えないんでしょ?まぁ、あまりの高温に液体にすらなってないけど」

「これくらい…!」

 

ゴーレムを再び作り直そうとするが周りのがれきはゴーレムの一部になる前に溶けて消えていく。

 

「そんな!」

「降参しなさい、クロちゃん。そうすれば命は―――」

「隙だらけだ、くそババア!」

 

ミミのセリフの途中にマートの声が響く。

どこから聞こえたのかと後ろを確認したのが運の尽き。

半透明の円の奥から手が伸びてきてミミの頭をつかむ。。

それがマートの手だと理解するのに時間はいらなかった。

炎の中からマートが出てくる。

 

「消えろぉ!」

 

すんでのところで手を振り払うが間に合わない。

確実に深手を負ってもう戦えないはずだと、油断した。

 

「アアアアアアァァァァァァァァ!?」

 

炎が一瞬とはいえ、顔を包み皮膚が焼けただれる。

あまりの痛さに魔法を維持できず、半透明の円が消え地面でのたうち回る。

 

「クソクソ!くそぉぉぉぉぉ!ガキがぁ、よく私の顔をぉ!!」

 

マートの炎を食らったのにまだ生きている。

それだけで十分すごいといえるだろう。

 

「あらオバさん、さっきよりいい顔になってルよ?」

 

顔の左半分が焼けただれ、目はもちろん耳すら使い物にはならないだろう。

顔の表情は憎悪に染まっている。

 

「餓鬼がぁぁぁぁぁぁ!」

「可憐な大人が聞いて呆れるネ。むしろ服には手を出さなかっただけありがたく思ってほしいネ」

「アアアアァァァ!」

 

雄たけびをあげながら鉄の銛を作り出しそれをマートに向かって跳ばす。

しかし、突如盛り上がったがれきによりすべて止められる。

 

「…!」

「マートさん、助かったよ。僕の攻撃じゃ決定打を撃つのは苦労しただろうから」

「いいってことよ。むしろこっちも感謝ヨ。おかげであいつに一撃食らわせられたシ。ねーオバさん?」

「…」

 

ようやく落ち着いたのか、怒鳴るのをやめる。

しかし、顔によるダメージは結構大きい。

 

「ねーどうしたの、オバさん?さっきまでの威勢は。可憐な大人はどこいったのカナー?」

「…くそが。ァア!?」

 

頭に激痛が走り立っていられない。

 

「マートさん、あなただって傷は結構深いんだから休んで」

「クロツェフ、大丈夫だよ。確かに痛むけど…、これくらいならあの時と比べればどうということはない」

 

マートがミミに近づく。

 

「さっ、オバさん。さっさと降参して転移装置、元に戻してくれない?アタシ、姉貴のところ行かないと」

「…そんなことすると思うの?」

「選択肢はないわよ?」

 

歯ぎしりをするミミ。

マートはお構いなし。

勝負はすでについている。

敗者には死ぬか生きるかしかない。

 

「死にたいか生きたいか、選んでチョウダイ」

「…クソ!」

 

ミミは生きるという選択をした。

転移装置が起動したらしく、一筋の光が空に向かって上がった。

 

「懸命だねオバさん」

 

そう言うと転移装置の方に向かって歩いていく。

マートはミミを殺さないようだ。

マートの近くにクロが寄る。

 

「いいの?」

「これでも大人ダヨ?敵の情報は手に入れないと」

「…そうだね」

「もっとも―――」

 

マートがミミの方に振り返る。

槍をミミが手に構えている。

倒れながらも。

奇襲する気だったらしくミミの顔が青くなる。

 

「これ以上私に危害を加えなかった場合ネ」

 

マートが手をかざし、炎を噴射する。

ミミが半透明の円をだし、防ごうとする。

だが

 

「悪いけど、おしまいよ」

 

ミミの足元が赤く染まる。

何が来るのか理解した時には時すでに遅し。

防御は間に合わない。

 

「ち…ちくしょ―――」

 

ミミが叫ぶ前に地面から火柱が上がった。

生死など確認するまでもない。

だが、マートはしばらくその場でその火柱を見続けた。

 

「マートさん…?」

「…行こう、クロツェフ」

 

2人はその場を後にした。




どーもです。
今回は予約投稿にしました。
話はある程度は考えてあるのでいいのですが、実は私事がさらに一週間延びました。
マジであり得ないです、はい。

ということで出来る限りはとりあえず予約投稿しますが、後で今度は話がないということで投稿が遅くなるかもしれません。
今後ともよろしくです。
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