暑かった時期も雨季になったため過ぎ、ちょうどいい温度です。
夏ももう少し涼しかったらなぁ…。
誰でも期待する。
リョウだってあまり言いたくはないが期待した。
だって髪長かったもん。
しかも結構。
生憎それ以外分からなかったが小さい子とかならそんなに長くして個を出したりはしない。
そう思った。
だが、リョウはどうやら地球の感性が6年経った今でも抜けきっていないらしい。
それを思い知らされた。
この幼女によって。
「括目せよ、男子共なの!」
バンッ!と大きな音を立て、扉を開くミリーナ。
その音に反応してみんな、一瞬ミリーナを見る。
男全員「…」
すぐに目を背ける。
別に「女性の体を見てしまった」という反応ではない。
「つまらないものだから見ないことにした」の反応だった。
マグタランとリョウに至っては期待がデカすぎたのかため息をつく。
「ちょ、何この反応!?そこ、ため息つかないでほしいの!」
「いや、だってさ…」
「私の裸が見れてうれしくは思わないの?」
「嬉しく思ったときは俺の最後だ」
相手は700年以上生きているとはいえ、5、6歳の外見をしているのだ。
そんなのに欲情できるほど、リョウは腐っていなかった。
というか、年だけを聞いても外見だけを見てもちょっと無理がある。
「折角女に縁がないかわいそうな男どもだと思って一肌脱いであげたのに…」
「余計なお世話だ。だいたい一肌脱ぐってならもうちょっと成長させて来い」
リョウはミリーナの対応をしているが気づけばマグタランは遠くにいた。
以前からの嫌なことからは足音を立てず逃げるという癖は変わっていないらしい。
レックスとクロ、スノーはミリーナという存在は認識しているが気にしない。
スノーは使い魔だが、竜であり性別が男とはっきりしているのでこっちにいる。
ケイトはまだ1人でお酒を飲んでいて興味なし。
グネズトは少し不機嫌そう。
シューレスに至っては存在そのものを認識する気がないのが態度でわかる。
リョウもこれを見ていると対応している自分が馬鹿らしくなってくる。
「大佐、少しお話し―――」
「ちょっと、私を放置しないでほしいの!」
「なんで?入りたきゃ入ってろよ。別に気にしないから」
「ぐぬぬぬ…、かくなる上は…!」
ミリーナがお湯に浸かっているリョウの近くに行きしゃべる。
「お兄ちゃん、大好き!」
ばっちり上目遣い。
外見を生かした完璧な攻撃を始める。
「ねぇ、お兄ちゃん。私1人じゃ体洗えないの。洗ってほしいの、隅々まで♪」
満面の笑みでリョウにしゃべる。
しかし、内面は黒い。
「(ふ、これを言われて落ちない男なんていないの。多少、知識が足りないかもしれないけどリョウに妹がいなかったのはすでに調査済み。この妹タイプのキャラからの甘えたお願いを断れるはずないの。最後に仕掛けた「隅々まで♪」が決定打な―――)」
「うん、なら練習も含めて頑張れ」
「なんでなの!?」
予想外の反応にミリーナが嘆きの声を上げる。
リョウは特にさっきの行動をなんとも思っていないようだ。
「妹キャラのかわいい私が洗ってって言ってるの!なんでなんとも思わないの!?」
「黙れ700歳」
「そこは言わないでほしいの!」
「お前が巨乳のスレンダーなお姉さんだったら俺も落ちるかもしれないけど、胸ない幼女じゃ無理だよ」
あっち行けという感じで手を振るリョウ。
しかし、ミリーナにだって意地があった。
こんなところで退くわけにはいかない。
「なら…」
「ん?」
「なら私は今まで読んだエロ同人の知識を豊富に使うの!」
「その外見でなんてもん読んでるんだ、お前!?」
「黙るの!」
「待て、この作品のタグにR-18はついてない!」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんの―――」
卑猥な言葉出ようとした瞬間、ミリーナの頭が掴まれた。
突然の出来事にミリーナの口も止まる。
「ミリーナ、俺の前で何言おうとしてる?」
「…(汗)」
グネズトがミリーナの頭をすごい力で掴んでいる。
ミリーナの顔は「やってしまった…」と言っていた。
グネズトが片手でミリーナを持ち上げる。
「グ、グネズトさん。私、子供なの。おしおきは軽いものに…」
「安心しろ。前ほどひどいことは―――」
そう言いながらミリーナを湯に戻す。
そこでミリーナはホッとしたのだがそれは間違いだった。
「しない」
そう言うと思いっきりミリーナを上空に投げた。
ミリーナの悲鳴が聞こえる。
やがてミリーナは宙を放物線を描きながら女子の方に落ちて行き見えなくなった。
その後少し女子の方が騒がしくなったが気にしない。
「…大佐、あれ普通の人なら死んでますよ?」
「問題ない。昔、腕を2本ともちぎってやったがピンピンしてた」
「へ、へぇ…」
この時リョウは大差を怒らせてはならないと理解した。
おそらく、卑猥な言葉がアウトなのだろう。
聞いていてイラつくのか、吐き気がするのか知らないがこれを訊いても自分も腕を持っていかれそうな気がしたので訊かないことにした。
「で、なんだ?話があるのだろう?」
「はい、マクアドル先生や、カザキ、ミリーナ、大佐についてなんですけど…」
「…そうだな。俺が知ってることだけでも話すか。の、前に」
グネズトが自分の腕をいじくる。
するときれいに腕が外れた。
切れたのではなく、外れたのだ。
「俺が体の大半を機械にしていたのは?」
「何となく。俺の攻撃も紙一重でしたし、銃弾も見えてるようでしたから」
それを確認すると腕をくっつける。
特にくっついたような音はしなかったがグネズトは少し腕を動かすとOKだと思ったのか温泉のなかに座り込む。
「とりあえず、俺がこの世界に来てからについて話そう。質問は挟むな、すべて話し終わった後聞いてやる」
俺がここに来たのは、4、500年前だ。
俺を連れてきたのはミリーナではなく、カザキだ。
だから俺は最初は帝国にいた。
最初こそ戸惑ったが、この世界は悪くない。
今はほとんど覚えてないが地球での生活は俺にとって苦だったからな。
だから、俺はここに俺を連れてきたカザキに感謝し付き従った。
その頃は争いなんてなかったからミリーナなんて知らなかった。
だが、100年ほど前からカザキが準備を終えたのか行動を初めてな、俺はそれに疑問を持った。
そんな時、だいたい40年ほど前だ。
マクアドルが、ミリーナに飛ばされてきた。
運悪く帝国内に突然現れてな、状況も掴めないマクアドルを俺は殺しかけた。
その時にミリーナとマクアドルを知った。
さらにその時、ミリーナからいろいろ事実を教えられてな。
戦争なんてふざけてやがるっていうのが俺だったからしばらく迷った。
そして30年ほど前、俺は考えるために1人で帝国を抜け出し結果こうなった。
「質問は?」
「この世界で地球を知っている人は説明がおおざっぱですね…」
「ないのか?」
「カザキは地球からこちらへ人を飛ばしてこれる技術を持ってるんですか?」
その問いにグネズトは首を横に振る。
「いや、あったにはあったが俺を飛ばしてきた時に壊れたそうだ。実験だったらしいが成功したものの、装置自体が破損。最初は直そうとしていたが、どういうわけか中断した」
別に地球から来た人間は特別にはならない。
もちろん中には特別になる人もいると思う。
だが、60億人以上の中からそれを探し出すのはおそらく不可能だ。
予想ではあるがこれで間違いはないと思う。
「他には?」
「…どうしてそんな体になろうと?」
それを聞いて目を丸くするグネズト。
リョウにもなんとなく答えは分かるが自分自身はあまり興味がない。
不死不老というのには。
「その時は魅力的に見えた。誰だって不死不老には興味があるだろう?」
「俺はあまりほしいとは思いません。そんな力は」
「お前のような奴は変わり者と言われるぞ。この体にされた後知ったが力も手に入った。うまい話だろ」
「その点では、まぁ…」
力はほしい。
だが、グネズトを見ていて思う。
あまりいいものではないのではないのかと。
ただでさえ、あまりしたくないことを経験者が嫌な顔をしていたらなおのことやりたくなくなる。
「まぁ、俺はお前をこんな体にするつもりはない。だからお前は自分の力を磨け。できる限り早くな」
「はい」
するとグネズトがふとリョウがいる方向とは違う方を見る。
そこにいるのはケイト。
あれからお酒を飲んでいるが酔っている感じは…しない。
「…本当に強いんだな。リョウ、何とかしてあいつをこちらに引きずりこめ」
「さっきまで真剣な話してたのに」
「今も十分真剣だ。あいつは戦力になる。リリアがいる以上、自分はいらないとか言っていたがそんなことはない」
「リリアがいる以上?」
ケイトは回復を得意とする(今回は自爆魔法の方だろうが)。
対してリリアは銃を使う。
比べるにしては無理があるのだ。
何を基準にしているのか分からない。
「攻撃力だ、簡単に言えばな」
「?」
「リリアの傷は見ただろう?自分の銃弾で負った傷だ。傍から見ればただの馬鹿で終わるが、あれは跳弾であるにも関わらずSバリアをいともたやすく貫いたという事実を残していた」
Sバリアは学校に入学した時点から渡され、強度も少しずつ学年が上がるにつれ変わっていく。
軍隊で、しかも実践となれば最大出力となる。
それをいともたやすく貫いたとなると攻撃力は計り知れない。
ケイトの自爆魔法では最大出力のSバリアをそこまでいともたやすく壊すのは無理があるらしい。
ケイトは広範囲に攻撃、に対してリリアは範囲こそ狭いがそれ以上の破壊力を持っている。
だからケイトは自分はいらないと言った。
分かり切ってはいるがそれは建前で本当に痛いのが嫌なだけなのだが。
「ケイト自身、自分の自爆魔法が負けたことには驚いていた。その点で見ればリリアで十分かもしれないが…」
グネズトの部隊は弱り切っている。
個々の実力こそ本物だが、数で押されれば負ける。
そんな時に人がほしいのは当たり前だし、使うのは広範囲を対象にする攻撃魔法。
ほしい気持ちは分からなくもない。
『信乃さん、そろそろ時間です』
「そうか。なら上がるとしよう」
時計のままくっついてきていたライルが時間を知らせる。
グネズトが立ち上がり、脱衣所に足を向ける。
「リョウ、他の奴らにも知らせておけ。15分以内には上がれと」
「大佐は早いですね?」
「ケイトの酒のアルコール濃度を上げておく」
「酒以外の方法はないんですか…」
それには答えずグネズトはその場を後にした。
話す相手がいなくなると、突然静かに感じる。
「なぁ、リョウ」
グネズトがいなくなったからか、クロとレックスが近寄ってくる。
この2人を見るとさっきまでの緊張が解けるような気がする。
やはり友達は気楽に接せるからなのだろう。
そういえばクロは男なんだよなと初めて確信できたような気がする。
「大佐が15分以内には上がって食事場に向かえって言ってたぞ?」
「そうか。それよりリョウ、お前ってミィヤと寝たことあるか?」
「…はぁ?何言ってんだお前?あるわけないだろ」
「ほら、僕が言った通りじゃん。リョウは遊ばないんだよ」
「つまり童貞か?」
「…」
なんでそんな話題になったのかと質問したいところだが、男子だけ集まればそんな話題になってもおかしくない。
下ネタ連発していないだけましだろう。
「なんであんな美人と何もないんだ?」
「俺はそういうのはあまり好きじゃないんだよ」
「本当か?揺れたりしなかったか、その決意的なもの」
「…少しは」
自分にあそこまで気を持ってくれた人はおそらくいない。
そんな人が何度も迫ってくればリョウも多少は揺らぐ。
何とか耐えたが。
「折角の機会をもったいないな、お前は」
「うるさいな。お前だって童貞だろ?」
「いや、20過ぎてそんなわけないだろ」
「…クロは?」
「僕は女性と付き合ったことなんてないよ」
「一応スノーは?」
「こんな時期に使い魔に恋愛をしている時間はありませんよ」
ちょうどシューレスが上がろうとしていたので訊いてみる。
「シューレス、お前は?」
「今まで寝た女は17人」
「どこの漫画の世界の人間だよ。ケイトは?」
「俺が女子と付き合うわけないだろぉ?」
「…少し酔い始めたな」
少し顔が赤くなり口調が変わりつつあるケイト。
グネズトの策略通りにならないことを一応願っておく。
「先輩は…彼女いそうですね」
「1年前に結婚してるぞ」
「そうなんですか?おめでとうございます」
なんかそう言われると少し焦る。
結婚したくてもできない人ってこういう気持ちなのかとこの年になり、馬鹿にしていた一部の大人の気持ちを理解する。
でもここで疑問ができる。
仮にこの世界で彼女ができた場合、俺はどうするべきなのかと。
未だに地球に帰るかどうかは悩んでいる。
この年で帰るというならすぐに突っぱねるのだが元の年齢で、元の場所。
この世界もいいところだが、リョウはこの世界に来たおかげで地球の良さも知った。
だから帰りたいとも思うのだ。
「ケイト、酒はもうやめて上がれ。大佐の思惑通りになるぞ」
「…シューがそう言うなら仕方ないね」
しかし、この疑問に答えを出してもカザキに負ければおしまい。
リョウに後はない。
「俺たちも上がるか」
「そうだね。リョウも行こう」
「…ああ」
リョウに時間はない。
でも、彼が今の疑問の答えを出すのはおそらく最後の最後だろう。
男全員がその場を去るとそこには誰もいなくなり、温泉の湧き出る音のみが響いていた。
ドール紹介
マーシャ・クリーシャのドール(5段階目)
あまり類を見ない足を主体にしたドール。
上半身の方はほとんど強化されてないので足が使えないと辛い。
足には強化パーツが常時着いており、Sバリアのエネルギーを使用することでアクセルや足の攻撃力を上げることが可能。
近距離戦のみではなく、足からSバリアのエネルギーを使った遠距離攻撃が可能。
ただ、銃でいう引き金が足を振ることなので固定されていると使えない。
大佐、R-18のタグ追加の危機を防いでくれて感謝します!