異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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結局、長い間更新できず申し訳ありません。
いっそのこと、更新不可ですと言うべきでしたね…。

これからもよろしくです。


体はロリ、頭脳は女性

「ほら、みんな!次はどうしたの?」

「…イプシンさん、マジで休憩ください」

「え~…、じゃあ1分」

「10分は欲しいです」

「みんな体力ないなぁ」

 

イプシンがドールを展開してリョウたちの相手をしている。

今は訓練中。

あの楽しかった温泉旅行の時とは打って変わって地獄の特訓をしている。

時間は無制限。

イプシンを4人で退けろ。

これが今、やっている特訓だ。

 

イプシンのドールは7段階目。

対して戦っていたのはレックス、マーシャ、クロ、リョウだ。

全員がへばって地面でぐったりしている。

ダメージによるものではなく、疲労によるものだ。

一番体力があるリョウでさえ、地面に四つん這いになっている。

イプシンは多少汗をかいているものの、顔は「まだまだこれから」と言っていた。

 

「大佐が訓練つけてくれてたんじゃないの?」

「ここまでは…、さすがに…」

 

イプシンのドールに見た感じではこれといった特徴はない。

本人は「本気は出さないから」と言っていたので、隠しているのは間違いない。

一方リョウたちは武器や特殊な攻撃を使うことを除けば本気で来てもいいと言われていた。

クロもあまり使わないドールを使った。

いくらみんなのドールがイプシンに劣るとはいえ、これだけの数の差があればいけるかと思ったが全然歯が立たなかった。

あらゆる点で劣っているのは百も承知だった。

しかし、それを踏まえてもあり得ないほど攻撃が当たらなかったのだ。

 

経験の差というやつなのか、あるいは天性の才能かイプシンの動きは速さだけではなかった。

攻撃は当てることができず、イプシンも笑いながら逃げに徹した。

ここまでくるとなんか泣きたくなる。

 

「ここまで圧倒的なら、人増やしてもいいじゃないですか」

「あとの人はだめなの。リアちゃんは銃専門だし、シューやウリちゃんたちは魔法使うでしょ。まな板のドールは打撃のみだと戦力にならないから」

 

もっともらしい理由を並べられるとなにも言えない。

今はあくまで体力を作るための訓練中だ。

打撃が得意でないのなら違う方法で体力をつけるのがいい。

 

「さっ、10分経ったよ。みんな立った立った!」

 

まだ完全には取れていない疲れを抱えながらリョウたちは訓練に励む。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ハァ…」

「お疲れね?」

「みたいですね」

 

女子3人が集まって、自由時間を過ごしている。

ただ、マーシャはお疲れのようだ。

 

「あの幼女、どれだけ体力あるのよ…。あんなの人のもつ体力の限界を遥かに超えてるわよ」

「そんなに?」

「異常よ。大して体は筋肉質には見えなかったはずだけど…」

「大変ですね」

「あんたたちは疲れないの?」

 

ケロッとした2人を見て尋ねる。

マーシャだけかなり疲れている。

2人はさほどには見えない。

不公平ではないか。

 

「私はドールがないと戦闘能力ほとんど0なので体力というよりは戦い方の訓練ですね」

「私は的当てかしら。大佐って結構優しいわよね♪」

「…理不尽だわ」

 

マーシャが顔を机に伏せる。

納得できる理由とはいえ、自分だけここまで疲れるのはいかがなものかと。

これからあるであろう戦争に向けてなのはわかる。

だが、嫌なのだ。

勉強は将来必要になるのは分かる。

だが、嫌だ。

そういうことだ。

 

「コラコラ、女子なんだから公の場で顔を伏せない。髪型崩れるわよ」

「もともと崩れるような髪型にしてないわよ」

「…マーシャさん、髪のびました?」

 

ここにきてフィリアが気づく。

今までショートだった髪型が明らかにのびている。

ロングではないが、ミディアムより少し短いくらいか。

 

「ああ、これ?少し髪型いじろうかなって思ってね」

「マーシャさんの髪が長いなんて…、なんか新鮮ですね」

「こ、ここにきてまたイメチェン!?」

「右のほうで結んでみようかなって思ったんだけど…、なんかもうどうでもいいわ」

 

今は髪型云々よりも疲れをとるながい休養がほしい。

気づいてくれたのもフィリアが初めて。

つまり誰も髪を少しとはいえのばしても気づかなかったのだ。

それだけでもため息モノなのにこの疲れがあると思考回路もおかしくなる。

 

「しっかりしなさい。今日は上の人が来るんだから」

「上の人?」

「覚えてないんですか?近いうちにあるであろう戦いに備えて1人紹介したい人がいるそうですよ」

 

「ああ…、そんなこと言ってたような気がするな」と思い出す。

 

「そろそろ行かない?遅れると何言われるか分からないし」

「そうですね。新人が遅れるわけにはいきませんし。マーシャさん、行きますよ」

「ミリーナの瞬間移動装置が欲しいわ」

「無い物ねだっても意味ありませんよ」

 

マーシャは重い腰を上げ、集合場所へと向かった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「今日紹介したいと言ったのは彼女のことだ」

 

グネズトの隣にいる女性が頭を下げる。

長い髪。

特徴的なのが笑顔…だろうか。

無表情ではなく、ファーストフード店でカウンターにいた会計で求められそうな顔。

軍人にとっては正直無縁なので珍しい。

 

「はじめまして、シェリー・K・ノルアといいます」

 

あと服も戦闘向きには見えない。

ピシッとした服装をしていて動きにくそう。

下もスカートになっている。

 

「リョウ、戦いにおいて…特に戦争のような時間がかかる場合、重要になってくるものは何かわかるか?」

 

突然の問いだが、別に焦ることはなかった。

 

「…情報、ですか?」

「そうだ。戦場では常に新しい情報が求められる。だがこれは、戦争において勝つために重要なものでもあるが、それ以上に自分が生き残るために必要なものだ」

 

「大佐、力の方が重要だよ!」とピョンピョンと跳ねながらイプシンが抗議するがグネズトは無視する。

 

「上は勝つ気でいる。それは当然だ。だからこそ、俺はこいつをお前らに紹介した」

「意図がつかめないんですが…」

「クロ、では戦争で勝つために情報以上に重要なことはなんだ?」

「…思い通りに動く駒を持つこと」

 

グネズトが頷く。

効率的に勝つならば死を恐れない、自分の命令を完璧にこなす人材、或いは道具が欲しい。

Tを見てきていたクロにはすぐにわかった。

 

「ただ勝つためなら情報が必要なのは上の人間のみだ。下に与えては無駄な恐怖心を植え付ける。俺は自分より上の人間は信用していない」

「それ、私の前で言っていいの?」

「俺はお前らを生きて帰らせる、そのうえで勝つ。そのためにこいつを紹介した」

 

グネズトがシェリーの方に手を置く。

シェリーの顔が赤くなる。

全員が珍しい行動に心の中で驚く。

 

「大佐、それセクハラ~」

 

イプシンが笑いながら言った。

全員が「馬鹿野郎!」と心の中で叫ぶ。

 

「何を言っている。自分の付き合っている人の肩に手を置くことくらい構わないだろう」

「付き合ってる?そっか、なら仕方ない…」

 

「え?」と全員が止まる。

前からいたイプシンやマグタラン、フラットにクレアも少なからず動揺している。

この人が女性に興味があるなんて誰も想像していなかった。

 

「つ、つきあ…え?付き合ってる?」

「…シェリー、これが俺の部隊だ」

「随分と賑やかね。いい子たちばっかり」

「今賑やかだったのはイプシンだけだったと思うが?」

「見た感じ」

 

ほほえみながらグネズトを見る。

グネズトは目を合わせた後、微笑を浮かべ話を続ける。

 

「大佐が笑った…」と全員が驚いた。

 

「俺が信用しているのはシェリーだけだ。そしてこいつは外見で分かる通り、戦闘には出ない。通信士みたいなものだ」

「…そんな仕事、聞いたことありませんけど?」

「シェリーは特例だ。ネームの力がな」

『Kの力は攻撃特化じゃないの』

 

突然頭に直接声が響くような感覚に襲われる。

耳から来た声ではない。

 

「テレパシー?」

『そう。特定の条件を満たすことで相手と話ができるの。もっとも、声を出さなくてもいいのは私だけだけど』

「…なんか不思議な感覚です」

 

ネームには種類がある。

そして文字通りA~Zまである。

すでに途絶えたものもあるがそれに間違いはない。

そしてこれは本当に多種多様で、クリティウス姉妹のように元ある魔法の攻撃力を上げるものからシューレスのように直接攻撃には関わらないもの、ケイトのように単体では戦闘には不向きなものもある。

だが、大抵のものは何かしらの応用を加えることで1人でも戦闘に大きく貢献できるようになるものが多い。

そんな中でも特殊になってくるのがテレパシー。

もっといくと相手の位置を正確に把握するものなどがある。

上記の2つのように広範囲の人を対象にできるネームは使っている間、大抵行動に制限がかかる。

 

『私はこれを使っている間、魔力を他のことに使えないの。ネーム持ちなんて自分の能力以外、他の人と何ら変わらないから。だからこの仕事なの』

「…なら軍隊に入らなくてもよかったんじゃ?」

『え…、それは…』

 

突然モジモジしはじめる。

顔を赤くしながら下を向く。

しかし、目は確かにグネズトをチラチラと見ていた。

誰もが「分かりやすい」と思いながらそれを見ていた。

 

「ともかく、戦いが始まった時シェリーがお前らを手助けする。あまり多い数はここに来ることは出来ないが、たまには来させる。同じ部隊の人間だと思って接してくれ」

 

見かねたグネズトがフォローに入る。

「以上だ」と言ってそのあとは話を打ち切った。

あまり付き合っていることについて聞かれたくなかったのかもしれない。

 

リョウとしては聞きたかった。

いや、その場にいた人間は聞きたかったはずだ。

1人を除いて。

 

「あのシェリ「ドーン!」オフッ!?」

 

訊こうとしてイプシンにそれを阻まれた。

腹に頭がめり込んできたもんだから痛い。

7、8m吹っ飛んだ。

 

「何するんですか!?」

「後輩!大佐の要件が終わったらすぐ訓練と言ったはずだよ!」

「いや、でも聞きたいでしょう?」

「うるさい、うるさい!私は聞きたくもない!」

 

耳をふさいで子供のように頭を振る。

 

「あと、付き合っている人いないの私だけだもん」

「え?」

 

頭を振るのをやめると今度は頭を抱え始めた。

少し震えている。

 

「マグたん(マグタラン)はすでに既婚者。フラちゃんは彼氏持ち」

「いたんですね、彼氏」

「クーちゃん(クレア)はリアちゃんと付き合ってるみたいだったけど、大佐まで…!」

「私、違いますよ!?」

「後輩たちの先輩で付き合っている人いないの、私だけじゃない!」

 

突然目を見開く。

 

「幸せ者の話なんて聞いてられるかー!」

「外見からは想像もできない発言ですね」

「今日は私も動けなくなるまでやるぞー!」

「冗談ですよね?」

「赤毛、ルーくん、クロ!やるぞー!」

 

叫びながらドールを展開するイプシンをシェリーが見て一言。

 

「やっぱり賑やかね」

「…否定できんな」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「暇だね?」

「うん」

 

「暇だね」と言った男の子は本を読みながら言った。

返事をした子は小さな車を動かしている。

明かりはあるが部屋全体を覆えるものではなく、部屋も6畳ほどしかない。

さらに部屋には悪臭が漂っている。

部屋に窓はなく、子供部屋というには無理があった。

 

「ジンちゃんは?」

「2日前に死んじゃった」

 

そう言いながら子供が指をさす。

部屋の隅のほうに死んだ動物の死骸が見える。

腐敗が激しく、四足歩行の生物ということくらいしか分からない状態だ。

 

聞いた子供はそれを見た後すぐに興味をなくしたのか、目をそらす。

 

「…暇だね」

「うん」

 

本を読んでいた子供は飽きたのか、本を地面に投げた。

 

「遊びに行こうよ」

「どこへ?」

「外」

「でも何にも連絡来てないよ?」

「早くても遅くてもやることは一緒だよ。それに、玩具がここにはないもん」

 

6畳ほどのこの部屋には先ほどまで2人がいじっていた玩具の他にあるのは動物の亡骸が1つのみだ。

 

「5日もすれば新しいのがくるよ?」

「僕たちだって子供じゃないんだから自分の玩具ぐらい、自分で探す。そうするべきじゃない?」

「…それもそうか」

 

2人とも立ちあがる。

しかし、不思議なことに見たところ部屋に扉が見当たらない。

地面も壁も天井も真っ白の部屋だ。

そんな部屋の壁の前で2人は手をかざす。

 

「いくよ」

「うん!」

 




ドール紹介




ヒューズ・マクアドルのドール(5段階目)
相手の力を分析してそれに合う武器を出来る範囲で作り出す変わったドール。
実はドールの外見は1回この能力を使うごとに変化するので元の姿は彼自身もよく覚えていない。
ただ、このドールは相手の力を分析して何かを作るまでに時間がかかるのでSバリア等で時間が稼げなければあまり使い物にならない。
また、これは敵1人に対してのみ有効で大勢いる場合、特に能力が多種多様だと辛かったりする。
強いといえば強いのだが、使いどころの判断が難しいドールである。


フィリアのドールどうしよう…。
別にスゲー能力が隠れてるわけでもないし、書いてもいいんだけど。
先延ばしにすると、あとで「こんな弱いもんかよ…」と落胆されそう…。
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