異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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「ふぅ…、ここね」

1人の女性が軍の正門の前に立っている。
後ろに黒い紳士服を着た2人の男性と女性の姿が見える。
荷物持ちはこの2人のようだ。

「ねぇ、呼ばれたから来たんだけど?」

女性が門番らしき人に話しかける。

「予定では1週間後のはずだが?」
「早く来るのに問題ないって書いてあったわよ」
「…招待状を提示しろ」
「どうぞ」

招待状と思われる紙を門番が受け取り「待ってろ」と言うとその場を後にする。

「あっちが呼んだってのに…、何よあの態度」
「仕方ありません。分かり切っていたことでしょう、早く参ったことですし」
「…まぁいいわ。もうすぐ会えるんだから」

ネックレスを触りながら言う。

「リョウ、元気にしてるかしら?」


子供は純粋

バタバタと走ってくる足音が聞こえる。

それは扉の向こう。

カザキが鎮座しているこの部屋は無音という音がふさわしいほど、少しの音も出してはいなかった。

 

「主君!」

 

珍しく急いだジークがノックもせず扉を押し開けた。

バタンと大きな音を立てて扉が開く。

それに対しカザキは興味を示そうとしない。

 

「Pの兄弟がいなくなっています。密室だった部屋で魔力を使用したようです」

「知ってる」

 

最初の派生以外は声のトーンが元に戻っている。

 

「知っているのならばすでに何か対策を?」

「別に、何もしてない」

「大切な本物のネーム持ちです。いらないのですか?」

「生憎教育をしている暇はない。奴らもそろそろここを嗅ぎつけるころだと思うからな」

 

大きなあくびをするカザキ。

まったくと言っていいほど興味がないらしい。

 

「しかし…、遅かったな。気づくのが」

「申し訳ありません。魔力の痕跡からしてすでに3日は経っているかと…」

「5日だ」

 

頬杖を突きながら右手で画面を映し出す。

そこにはいくつかの機体が映っている。

 

「αタイプの機体…ですね?」

「いい実験場だ」

 

片手で画面を操作するカザキ。

画面に映っていた機体が5台、動き始める。

 

「5台も…よろしいのですか?」

「確かに大した数はないが、雑兵は使いどころが大事だからな」

 

画面越しでも分かるような滑らかな動きをする機体。

人のように頭、足、腕がありドールを思わせるが人の姿は見当たらない。

動き出した機体を確認するとカザキは画面を閉じる。

 

「で、要件はそれだけか?」

「はい」

「なら下がれ」

「…お騒がせしました」

 

ジークが部屋を後にする。

それを確認するとカザキは目をつむる。

 

「お前の望みがもうすぐ叶うぞ、カザキ」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「おおおおおおおお!」

「はあああああああ!」

「おっと!」

 

リョウの拳とマーシャの蹴りが空を切る。

イプシンを狙ってはなったその攻撃は当たらない。

だが、代わりに2人の攻撃がぶつかり合った。

リョウとマーシャが反対方向に吹き飛ばされる。

 

壁にぶつかりマーシャとリョウが反対側で仲良くのびる。

イプシンは訓練場の中心に立って辺りを見渡す。

攻めてくる敵は…なし。

 

「ん~…、確かに伸びとしてはこんなものが普通なんだけど」

 

グネズトに付き合っている人がいるという事実が発覚してから5日。

リョウたちは相変わらずである。

 

すでにレックスも体力を使い果たし、クロは一番最初に体力切れで「吐く…」と言って訓練場を離れて早20分。

最初と比べてみんなの体力も確かに上がってはいるがまだ2週間ほどしか訓練はしていない。

そりゃイプシンも、すぐに体力はつくものじゃないし自分を本当に打撃のみで退けるのならかなり時間は必要だとも分かっている。

だが、今はそんな悠長なことは言ってられない。

時間がないのが分かってるのだ。

 

「手法を変えたほうがいいのかな?」

 

今、グネズトの部隊は正直力がない。

個々の力が強いのは事実だが、リョウ達程度では数には敵わない。

イプシンの目標としてはネーム持ちと7段階目を除いた軍の人と全面戦争をしても勝てるようになってほしい。

イプシンほどの強さがあれば勝てないこともないのではないかと希望が見え始める。

だからそれくらいまで強くなってほしいのだがやはりそううまくはいかないのだ。

 

「とりあえず、今日はここまでだね」

 

イプシンは気絶しているリョウとマーシャを担ぐ。

ドールのおかげで力は増強されており、担ぐのは簡単だが体がアレだ。

リョウたちのほうが身長が高いのでどうしても足を引きずってしまう。

レックスは意識こそあるものの、疲労がひどく担ぐなんて無理だ。

 

「ルー君、行くよ」

「…1つ、質問いいですか?」

「なに?」

「あなたは本当に…人ですか?」

「体は100%人の構造をしてるよ」

 

分かり切っていた答えを聞いてため息をつく。

あの子供のような体型のどこから自分たちを退けるほどの力が出るのかと常に疑問を抱いている。

 

疲労困憊の体に鞭を入れ、立ち上がる。

訓練でフラフラになるなんて今まで考えたこともなかった。

 

「さっ、明日に備えて今日も体を休めて」

「本当に力ついてるんですか?」

「それは保証するよ。近いうちに体壊すかもだけど」

「それじゃ元も子もないじゃないですか」

「天パ(ケイト)がいるからその時は治してもらえばいいよ。いやぁ、本当に今年入ってきた人材は―――」

 

言いかけたところで大きな音に声が遮断される。

ブーブー!とけたたましく警報が鳴り始めた。

 

「なに?」

「なんだ?」

 

さっきまで気絶していたはずのマーシャとリョウが起き上がる。

顔こそ真剣ではあるが担がれているのでなんか面白い画になっている。

 

『正門にて敵襲あり。正門にて敵襲あり。数は2。策敵機がさらに5体の増援と思われる反応を感知している。各隊は部隊長の指示を待て。繰り返す―――』

 

「…最悪のタイミングだな」

 

思わずリョウが呟く。

一番の戦力にならなければならないリョウたちがこれでは戦えそうにない。

 

「どうするんですか?」

「後輩たちが戦えなくてもまだマグたんやフラちゃん、それにシューたちもいるんだよ?問題ないよ」

「…先輩、大佐とマグタラン先輩、フラットさんは今日はいませんよ?」

「え?なんで?」

「敵の拠点の捜索で1週間は戻らないって言ってたじゃないですか」

 

現在、グネズト、マグタラン、フラット、そしてフィリアが捜索で外に出ている。

敵地の絞り込みが本格化しているだけあって強い人材が欲しかったらしくグネズトたちが駆り出された。

上の人が持っているネーム持ちを投入すればいいのでは?と思うが上の人間は我が身が一番かわいいが故、そんなことのために自分のボディガードを手放したりはしない。

 

「…じゃあシューたちにでも―――」

「俺たちは遠慮します」

 

この時間は訓練していることを知っていたシューレスとクリティウス姉妹が集まってきた。

 

「なんで?いい実戦経験になるよ?」

「今回の敵は俺たちと比べて相性が悪い、メリー」

「はい」

 

何もなかったはずの空間にメリーが姿を現す。

 

「今回の敵は2人、外見は子供。Pのネーム持ちと思われます」

「P?」

「水魔法特化のネーム持ちです」

 

チッ、と舌を鳴らすマート。

ウリスは顔をしかめただけにとどめたが嫌なのは伝わってくる。

 

「なるほど…。で、なんでシューレスはダメなんだ?」

「こいつらの戦い方がな…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「アハハハハハ!いっぱいいるね」

「ここが天国ってやつかな?」

「たぶん正解だよ!」

 

おもむろにそこに転がっている人を持ち上げる。

体はところどころ穴が開き、死んでいてもおかしくないが…

 

「ヒッ!」

「まだ生きてるでしょ?死んだふりは面白くないよ?」

 

顔は笑っている。

子供の笑顔はかわいいというがこれは違った。

笑顔から感じ取れるのは負の感情のみ。

 

「これだけ穴が開いてまだ生きてるんだ?痛みも我慢できるなんてすごいね」

「た…助け―――」

「うん、無理」

 

足を水の弾が貫く。

持ち上げられた兵士の右足がちぎれ落ちる。

 

「アアアアアアアッ!?」

「ほらほら、もっといくよ!」

 

的確に即死には至らない部位を狙う。

腕、足から順に攻撃をする。

子供にはこの行為に罪悪感などもちろんなくただ楽しんでいる。

純粋にこの行為を楽しんでいるのだ。

 

「いつまでこの玩具はもってくれる―――」

「…」

「なんだ、もうおしまいかぁ」

 

死んだとわかるとすぐに投げ捨てる。

どこからあの腕力が生まれるのかは分からないが危険ということだけは分かる。

 

 

すでに2人は正門を突破し、内部に入り込んでいた。

数々ある隔壁は、相手の水の弾丸によっていともたやすく崩れ落ちる。

その光景をリョウたちはカメラ越しで見ていた。

 

「むごい…」

「感傷に浸っている暇はない。すぐにここに来る」

 

リョウたちはモニタールームでカメラを見ている。

今回戦うことになったのは

 

「それなら問題ないだろ。今イプシン先輩が向かったし」

 

幸い相手は一本道を通っている。

イプシンとの接触は避けられないはず…だった。

 

「…でもそれはこのまま直進した場合でしょ?」

「道は一本だぜ?」

「見て」

 

子供の1人が壁を指さしている。

隔壁と壁の違いは明らかなはず。

それにもかかわらず道なき方角を指さしてしゃべっている。

 

「おいおいおいおい…、冗談だろ?」

 

子供たちが巨大な水の塊を作り始める。

方角はもちろん道なき方向。

 

そして何のためらいもなく、水を投げつける。

その瞬間あまりの衝撃にカメラの映像がゆがんだかと思うと映らなくなった。

 

「だぁぁぁ!やりやがった、あの餓鬼ども!」

 

もともとここに配備されていた警備員が悲痛の叫びをあげる。

リョウたちは急いでイプシンと連絡をとる。

 

「イプシン先輩、聞こえますか!?」

『おお、後輩。どうしたの?』

「相手が進行方向を変えました。B-3隔壁の部屋で―――」

『ん?こう…い、よく聞こえ…よ?』

「先輩?どうかしました?」

 

突然聞こえにくくなる。

自分たちのテリトリーにいるにも関わらず聞こえにくくなるのは異常だ。

通信システムを管理する機材は少し離れたところにある。

先ほど子供2人がいたところからはどんなに急いでも10分はかかるはず。

 

「敵、さらに5体侵入!内、1体が電波妨害をしている模様」

「映像出ます!」

 

画面に正門の映像が映し出される。

5台の機体が映し出される。

 

「これはガチか?」

「本当に落とそうとしてるならもっと来るはずよ。でもこれで最後ならおそらく遊びでしょうね」

「シューレス、お前も出たほうが…」

「…機体相手ならいいか」

 

そういうとシューレスがモニタールームを後にする。

 

「お前たちはいいのか?」

「私たちハ今回はヤメとく」

「もしも子供と会ったらオワリだしネ」

「お前らならごり押しで勝てそうな気がするけどな…」

「あんたたち、ちゃんと見てた?あいつラの戦い方」

 

水を使うということくらいしか、特筆する点は見当たらなかったような気がする。

リョウ、マーシャ、レックスには理解できなかった。

科学側にいたのだから視点が違うかもしれない。

ウリスがため息をついて説明をする。

 

「いい?あいつらは水を作り出して戦う」

「そうだな」

「でも、本当にみるべき点はそこじゃないノ。魔力の使い方なの」

「「「?」」」

「私たちは炎を作り出して戦う。でもこれは不便でネ…、常に作り続けないとすぐ消えちゃうノ」

 

手に火の球を作り出す。

すぐに魔力の供給をやめると見る見るうちに火が消えていった。

 

「でも水は違うノ。一回作り出せば、使用後も残る。あと石や鉄とかの類もネ」

「だから水気が満ちてお前らは嫌なのか…。でもシューレスは?」

「水気が満ちるのも嫌だけど私たちが注目したのはそこじゃないワ。言ったでショ、魔力の使い方」

「…すまん、わからん」

「そこらへんに水があるのにあいつラは常に作り出して戦ってるノ」

 

そこまできてようやく3人が納得する。

もともと存在する水を使うのと、新しく水を作って使う。

攻撃力がどちらも同じならどちらのほうが使う魔力が少ないか。

それは決まっている。

なのにわざわざ2人は作って攻撃をする。

 

「もともと魔力が多いのか、何か細工をしているのかは知らないけど私たちより魔力が多いのは間違いないワ。ごり押しはできない。シューレスは幻覚を使っても四方八方に無限に攻撃をされたらいつか当たるワ」

「不意打ちすればいいのに…」

「シューレスはそんな外道なことしないシ」

 

戦争だからそんなことは言ってられないだろうとため息をつくリョウ。

自分たちが戦えないことを我ながら恨む。

 

「おい…、これはやばいぞ」

 

少し離れたところでモニターをいじくっていた警備員が顔を真っ青にしながら呟く。

 

「どうかしました?」

「今日…、予定なら1週間後に来る予定だったはずの客人が来ているんだ」

「随分早いですね。それが?」

「さっき侵入者たちが進んだ方向、まっすぐ行けば客人が休んでいる部屋にあたる」

 

隣で聞いていた警備員が同じく顔を真っ青にしてどこかに連絡を始める。

ジャミング的なもののせいで出来るはずがないのに出来ることがこれしかない。

 

「こちらからはボディガードを2人しか配備していない。だがあいつらの実力では…」

「館内放送とか出来ないんですか?」

「馬鹿を言うな。それは攻められていると言っているのと変わらないではないか!それでは軍のメンツにかかわる」

「命がかかってるんですよね?一般人なんでしょ、知られたくないということは。むざむざ死なせる気ですか?」

「…一般人ではない」

 

少し嫌そうな顔をしてモニターをいじくるのをやめる。

 

「じゃあいったい誰が?」

「…こちらだって最後まで渋った。あんな化け物どもと共闘しなければならないなんて馬鹿げてるからな。だが、選択の余地がなかった。一刻も早く敵の位置を知るためにも、戦力のためにも」

「誰なんですか?」

 

警備員が立ち上がり書類の山をあさる。

すぐに出てきたらしく、一枚の紙をもって来た。

この時代での紙は機密事項を意味する。

外からのアクセスがききにくいからだ。

リョウたちに紙を差し出しながら言った。

 

「巫女だよ。青龍とかいう化け物を扱う奴だ」




ドール紹介




フィリア・リトルトリアのドール(5段階目)
これでもかと言えるほど速さのみに特化したドール。
急加速、急停止、急発進が可能。
エネルギーを使用すれば止まっている状態からでもいきなりトップスピードが出せる。
あまりの速さに一瞬とはいえ残像が残るほど。
もちろん体は耐えられるよう、ドールがカバーしてるし目や頭もついていけるようになっている。
トップスピードで突っ込めば人くらいなら穴あきにできるのだが、硬いものにあたると自分が肉塊に変わるかもしれないので戦うときは基本ドールの腕を使う。
武器を使いたいのだが、何かを持ちながらトップスピードを出すと気づいたときには粉々になっているのでそこが難点。

結局書きました。
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