異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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もう8月か…。
早いものかな、遅いものかな?


戦闘よりも思惑

スノーの目の前にいる1体の機体。

人気は感じられない。

おそらく無人機。

まぁ、ミューズデルではいまいち戦闘に関する技術が進んでいないためこのような機体を見るのは初めてだったが。

 

「…なんですか?」

 

しかし、人型というだけあってどうしても声をかけてしまう。

 

スノーは今、虫の居所が悪かった。

理由はもちろん、自分の力不足…だと思う。

もともと自分の種族は龍の中でも弱いほうだということは理解している。

それも受け止めていた。

気にもしていなかった。

だが、今回はそれが理由で置いてけぼりを食らった。

 

使い魔は自分の主の命を守るのが使命。

見返りは主それぞれだ。

いい生活をくれる人だっているし、物のように扱う者もいる。

だが、どんな扱いになろうとそれに文句をつける使い魔は数少ない。

理由は自分が認めた人だからだ。

でも別に龍は使い魔になる必要なんてない。

1人でも全然やっていける。

 

なんでそのような主従関係を龍が認めるのかはいまだに謎そのものだ。

龍自身にも分からない。

本能とでもいうべきなのだろう。

生きるのに必要ないのに本能というのもどうかと思うが。

 

「さっさと目の前から消えてください」

 

受け入れられるはずのない言葉をかける。

ただでさえ人でもない機械に。

 

機械の目らしき部分が点滅する。

すぐに機体が動いた。

 

しかし、スノーの方に向かってではない。

進んですらいなかった。

目の前にこけるようにして倒れる。

 

「やっぱりあなたにそういう台詞は似合わない」

 

細い糸が機体の足にまとわりついている。

このような糸の類の武器を使うのはただ1匹。

サクだ。

 

物陰からワイヤーと刃だけで30cmはあろう刃物を手に持っている。

 

「サク、リョウさんと一緒じゃないんですか?」

「リョウ殿が毎日疲れて帰ってくるので最近は家事仕事をしてたの。そしたらこの事態。リョウ殿はいずこに…」

「自分の主の魔力くらい感知できるようにしておきなよ」

「緊急時はどんなに離れてもビンビンかじるんだけどね」

「今は?」

「実戦訓練」

「…へぇ」

 

建物ボロボロにされているのに実践訓練と言ったサクについ肩の力が抜ける。

 

と、倒れていた機体が動き始める。

すぐにサクが機体の首元に刃をあてる。

最近刃の長さを変えたサク。

前の2倍ほどになったがこっちのほうが使いやすく、なぜ今まで気づかなかったのかと疑問を持つ。

 

「サク、それは…」

「分かってる、無人機なんでしょ?脅しがわかるのかと思ってやってみたんだけど…」

 

機体は止まらない。

所詮はただの人形のようだ。

手に力を入れ首を切り落とした。

しばらく動いていたがやがて停止した。

あっけない終わり方だろう。

 

サクがすぐにワイヤーと刃物をしまい、正門に向かう。

 

「何しに?」

「まだ敵が残ってるわ。この程度、リョウ殿の敵にはならないと思うけどリョウ殿の命を守るのが私の使命」

 

この時ほどサクをうらやましいと思ったことがスノーにはなかった。

だが、スノーがうらやましいと思ったのは力についてではない。

さっきので見る限り、おそらくスノーでもあの機体なら倒せた。

常に自らの主といるということについてだ。

別に力なんていらない。

フィリアに恋をしているわけでもない。

だが、隣にいたい。

 

「あなたはこないの?」

「…主がいないですし」

「…スノー、あなたもう少し決意みたいな物を持つべきだと思う」

 

この場でなにを言うんだ?とサクに目線を向けるとすぐ目の前にいた。

顔の距離5cm。

 

「うおお?!」

「ほら、気が抜けてる。今の私の速さならあなたに追えないことはないはず」

 

思わず後ろに下がる。

 

サクの自慢の速さは成長するにつれだんだん下がっていく。

成長により体が大きくなったことが原因である。

ノティスは小さいころ、速さで天敵から身を隠すのだ。

だが成長すればそれなりに強い竜になる。

速さは必要なくなってくる。

だんだん遅くなってしまうのだ。

それでも速いことに変わりはないのだが。

 

「あなたはね、足りないのよ。決意が」

「?」

「フィリアさんをね、守りたいって気持ちは伝わるわ。それに自分がどちらかというと弱いっていうことも受け止めてる。文句なんてないし、むしろそれに関しては尊敬する。でもあなたはそこで止まってる。私たちは使い魔。主を身を挺してでも守らなければならない」

「それくらい…分かってるよ」

「分かってない。現にあなたはいい意味でも悪い意味でも力に執着がない」

「…だから決意を持てと?」

「そういうこと」

 

決意1つで力が上がるほどこの世の中は簡単にできてはいない。

でも、なにかビビッと来るものがスノーにはあった。

 

「決意…」

「何か使い魔としてのものをね。なんだっていい。私だって『リョウ殿を守る』が決意よ」

「それは使命じゃないの?」

「私にとって使命でもあり決意でもある。こればかりは個人によって変わるから保証できないけど私は決意があればあなたは変わる。そう思う」

 

励ましなのか、あるいはほかの意図があるのか?

スノーには分からなかった。

 

だが、探してみる価値はあると思った。

決意とやらを。

 

「…そうだね。少し考えてみるよ」

「ま、一番簡単なのは力をつけることなんだけど」

「それに関しては辛いものがあるね」

「常に火事場の馬鹿力?出せるようにしたら?」

「できたら苦労しないよ…。それよりいいの?リョウさん探さなくて」

「ああ!?」

 

顔だけでも「ヤベェ、忘れてた!」というのが読み取れる。

たった1,2分のことだったがそれでも急いで駆けつけなければならないこの事態に1,2分はでかい。

というかさっき実践訓練とか言っていたのだから駆けつける必要はあるのかと疑問を持つスノー。

 

「で、スノー。あなたはどうするの?」

「…行くよ。でもサクは先に行ってて、僕に合わせると遅くなる。僕は僕のやり方で探してみます」

「そうこなくっちゃ。少しはいい顔になったわ」

 

それを言うとサクが走り出す。

姿は確かに目で追うことができた(本当に速かったが)。

 

言葉の類1つでここまで変わるのかとスノーはしばらく止まっていた。

しかし、スノーも動き始める。

決意とやらを見つけるために。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「…部長、まるで悪魔みたいです」

 

戦闘が起きているところからは離れたところで銃を構えながら呟く。

未だにこの呼び方も使ったりするので今も思わず出てしまった。

まぁ、3,4年これで呼んでいたのだから当然だろう。

 

リリアの目はクレアと1体の機体をとらえている。

2体いたはずの機体のうち1体は戦闘が始まって30秒ほどで壊れた。

もともと無人機ということもありマニュアル通りの動きしかしないらしく、弱いというのもあったが悪魔だと言ったのはそこではない。

クレアのそのあとの行動だ。

右半分がぐしゃぐしゃになった機体を捨てることなく、持ち上げている。

腕は全部で6つあるのだから別に不利にはならない。

だが捨てたほうが絶対に戦いやすいはずだ。

 

そしてもう1つ思っていたことを呟く。

 

「私、必要あるのかしら?」

 

 

 

一方クレアは敵の弱さに少し拍子抜けしていた。

倒した敵を持っているのはなんとなくだ。

なんか持っていると落ち着くというかなんというか…。

本人もよくわかっていないのだ。

 

そして今、クレアの意識はあまり敵に向いていない。

リリアの落とし方を考えている。

 

「(そろそろ限界が近いな…)」

 

クレアは今までいろいろな女子と付き合ってきた。

クレアが狙いをつけた女子で落ちなかった人はいない。

リリアを除いて。

別にそっちの気がなかった人もクレア限定で好きになった。

だがリリアはならなかった。

だから知らない。

あまり多くの落とし方は。

 

リリア以外の女子は外見とサバサバした性格で落としてきたのだ。

だから今まで粘ってはきたものの実は手探り状態でもあった。

それで結局未だに落ちない。

だから最近、今まで手を出さなかった方向でやってみようかと思っている。

 

「(貞繰を守っていてはだめなのかもしれないな…)」

 

そのためクレアの部屋には今、何冊かの薄い本とそれと似たような内容が乗っている雑誌がある。

リリアが見れば卒倒することなく、軍の施設から逃げ出すレベルだろう。

本当に危険だと感じ取ったときは卒倒なんてしない。

 

そんな考え事をしていると、目の前の機体が動きだした。

クレアの意識が自分から遠ざかったと感じ取ったからかもしれない。

無人機にしてはそれが感じ取れるのなら上出来だろう。

 

だがクレアは意識が少し離れていただけであって完璧に離れていたわけではない。

何より戦場で油断などしない。

 

敵のこぶしが放たれるが、クレアの残った5つのうちの1つの手で止められる。

残った手は4つ。

相手は腕をつかまれ動けない。

手数はこっちのほうが上。

勝つための条件はそろった。

 

危険を感じ取ったのか暴れ始まる機体。

せっかく無人機にまでこぎつけたというのに本当にそれだけらしい。

殴る蹴る飛ぶということ以外何もできない。

 

「弱いなら来るな。ゴミめ」

 

それが機体の聞いた最後の言葉となる。

まず一撃機体の腹に拳が入る。

それで機体の腹はへこみ、つかまれた右腕が耐えられずちぎれる。

体が自由になった機体は自分の体が壊れかけてることなど目にも留めず新たな攻撃に入る。

 

足で蹴りを入れようとする機体。

だが勝敗は明白だった。

相手が人間ならよほど後がない限り、向かってなどこない。

クレアの体に届く前にドールの手に足をつかまれる。

そしてその手は機体の足を容赦なくへし折った。

ものすごく太い木が倒れるときになりそうな程大きな音が聞こえた。

だがクレアは機体の足をつまようじを折るくらい簡単に行う。

 

それによりバランスを崩す機体。

折れたのは左足。

そしてクレアは機体に次の攻撃を許してはくれなかった。

残った腕と足をつかむ。

そして思いっきり引っ張った。

反対方向にかかる力。

いくつもの導線がちぎれるような音がしたかと思うと予想通り腕と足がもげる。

つまり四肢が完全に機能停止した。

 

それでも機体は内蔵されている戦闘パターンを組み合わせ、戦い方を考える。

しかし、人型ということ以外何の機能もない機体。

四肢がない状態で作戦など思いつくはずもない。

 

突如視界が暗くなく機体。

クレアのドールがつかんでいる。

次にやることなど誰にでもわかる。

クレアは予想通り頭を握りつぶした。

 

モーターが大きな音を上げる。

それが断末魔ともいえただろう。

それを最後に機体は完全に停止した。

 

戦闘が終わりクレアが握りつぶした機体をしばらくぶら下げて止まる。

リリアはこのとき何をやっているのかと思いながらクレアのもとに向かう。

 

そんなことには気づかないクレア。

停止した機体を見てクレアは言う。

 

「無理やりはさすがに嫌われるか?それとも快感を体に覚えさせるという手も…」

 

まったく戦闘に関係ない言葉だった。

この時リリアは聞こえていないはずだったのになぜかぬぐいしれない寒気や不安に襲われたそうだ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「4体目か…」

 

映らなくなったモニターを見て呟くカザキ。

カザキ自身、送り込んだ機体は弱いというのは分かっていた。

だが、ここまで圧倒されるとは思っていなかった。

ましてや使い魔に不意打ちを受けたとはいえ負けた者もいる。

勿体ないことに金を使ったなぁとため息をつく。

 

今から予算修正したいところだがそんな時間はない。

もうじき始まるのだから。

雑魚でも数で押せば何とかなるかと頭で思い込む。

 

「主君、いらっしゃいますか?」

 

聞こえた声に振り向くと1人男が立っていた。

刀を腰にかけた男。

 

「Cか。なんだ?」

「いつ、私は戦えるのですか?」

 

再びため息をつくカザキ。

 

「主君には感謝しています。このような力を引き出してくださった、ですがそれを使えていない」

「もうすぐだと前にも言った」

「それは分かっています。ですが…」

「…あまりこういうことは言いたくないんだがな」

 

一拍おいて口を開く。

 

「雑魚は黙って俺に従ってろ」

 

それを聞いてCの背筋に悪寒が走る。

言葉だけで押さえつけられる。

それほどの実力者をCはカザキ以外見たことがない。

 

「他には?」

「…いえ、失礼しました」

 

外見でも震えているように見えないよう必死に耐える。

カザキには感謝している。

だが、彼が従っているのはこれ以外に恐怖という理由がる。

そういう理由を持つのは数少ないのかもしれない。

だが、少なからず持っている人はいる。

 

Cが部屋を後にする。

他にも要件はあったようだがおそらく要望なのだろう。

今のカザキを目の当たりにして何か言える人なんていない。

 

下らん茶番だったなと思いながら残り1つのモニターを見る。

しかし…

 

「!?」

 

モニターの画面が映らなくなっている。

つまり撃破された。

大した時間をとったつもりはなかったはずなのに…。

 

「何をされた…?」

 

カザキはモニターの巻き戻しを始めた。




さて、恒例になってきました投稿が遅くなる予告です!
しかも今回は3週間キャンペーン!
いや~…、もう嫌。

申し訳ないです…。
更新はできると思いますが遅くなるのは間違いないです。
でもおかげで8月はうまくいけばそんなことないかも。

何はともあれこれからもよろしくです。
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