もう遅くなるとか書かなくていいかな…。
知らない世界。
いや、知っているけど理解はできないであろう世界。
これが自分が創ったものだというのだから笑ってしまう。
自分で創った物のことを理解できないなどありえないに決まっている。
だが、仕方のないことだ。
「珍しい…。自分から来るなんて」
「入り方、よくわかったね?」
水と影(名前です)。
相変わらずの外見で水は胸が大きなお姉さん。
影は体が真っ黒だが依然と比べて身長が縮んだような気がする。
リョウはその世界に座り込んでいた。
「精神統一ってやつをやってみたらできたぞ」
「…さすが異邦人」
影が抑揚なく驚きの言葉を述べる。
「で、何か用かしら?来るっていうことはそれなりの用があるんでしょ?」
「なんで俺は7段階目に到達できない?」
影と水が顔を見合わせる。
影の表情はリョウには分からなかったが、水は少し渋い顔をしていた。
2人だってわかっていた。
誰もが目指す7段階目。
リョウが目指さないはずがないのだ。
「…教えられないわ」
「なぜ?」
「貴方はすでに特別なの。今まで周りで私たちのような存在についての話をしたことがある?」
「いや、ないな」
「それが普通なの。だって私たちドールの中の存在は本来ドールが7段階目になったときはじめて完成するから」
「…ならどうして?」
「分からないわ。貴方が異邦人だからじゃないかしら?」
影も頭を縦に振る。
「なら、お前らは何のために存在するんだ?7段階目といえば完全体だろ」
「…それは私も考えてたの。私たちの知識、基本的なことはもとから備わってるわ。あとは貴方が体験したことを一緒に学ぶ感じで増えていく。でもそれに関しての知識は存在してないの」
「影も知らないか?」
「…私の知識内容は水と同じ」
首を横に振る影。
「そうか」とため息をつくリョウ。
体を鍛えることで戦闘力は上がる。
だがそれではあまりに遅い。
一番手っ取り早く上げる方法はドールの強化。
リョウ自身、7段階目の力を2回手にした。
あれは異常と言ってもいいほどの力だ。
1,2,3,4と上がっていくドールの段階。
上がるたんびに強くなっていると理解する。
だが6段階目からの7段階目は隔絶された世界だ。
恐ろしいほど上がる力、速さ、動体視力。
避けようと思えば弾丸も避けられるかもしれない。
あれさえあれば敵などいないとさえ思う。
「じゃ、俺は訓練に戻るとするよ」
不思議と分かる元の世界へ戻る方法を始める。
「…リョウ、1つだけ」
「?」
「そこまで7段階目になりたいなら、戦うのがいい」
「戦う?」
「これ以上は答え、だから言えない。でもそれが一番の近道…」
それだけ言うと影は顔を俯けた。
何かを伝えたがっていた。
でもこれが限界とでも言うのように手を握っている。
水はよくわかっていないかのように影を見て首をかしげていた。
―――――――――――――――――――――――――――
ベッドの上で目が覚めた。
寝ていたわけではない。
胡坐をかいて下を向き、目をつぶっていた。
これを精神統一と言うのはいささか問題があるだろう。
隣ではサクも同じように精神統一的なことをしている。
正座をして足には刀をのっけていた。
どちらかというと雰囲気的にはこちらのほうが精神統一といえるのかもしれない。
時計を見る。
針は2時過ぎを示していた。
ちょうどいい時間だと思い、ベッドから降りる。
サクが揺れに反応して目を開ける。
「時間…ですか?」
「そうだな。珍しい大佐からの招集だ。遅れるわけにはいかないよ」
「お供致します」
「いつものこと…っていうわけもないか。じゃ、今日はよろしく」
「はい!」
いつもはイプシンの訓練でヘトヘトになって帰ってくるので部屋で家事をしていたサク。
それも悪くはないのだがやはりついていくほうが好きなのだ。
主と一緒にいられるほど喜びにあふれた時間はない。
襲撃から3日。
施設内はまぁ、ところどころ壊れてはいるが機能していなわけではない。
仮に機能していないのなら違う施設に行けばいいだけの話なのだが。
サクはあの後起きると冷静になったのか顔を真っ赤にして土下座をしてきた。
最終的には「切腹」なんて口走ったもんだからハラハラしたのは記憶に新しい。
部屋を出て、歩きで指定された部屋へ向かう。
この点は学校と比べると不便になったなと思わずにはいられない。
比較的被害が少ない区画での集合になっている。
「あら、リョウ」
部屋を出てすぐ、マーシャとリンに鉢合わせる。
別に学校ではないので女子と男子を分けたりはしていないらしい。
3日前、ミィヤを連れて行ってからはどうもマーシャの部屋には近寄りがたく会っていたのは訓練の時だ。
正直、あれだけのことがあってから1日の間を置くことなく「訓練する!」なんてイプシンが言い出した時は正直正気か?と疑った。
あれだけの実行力と元気を持ち合わせているのはイプシンぐらいだろう。
疑ったと言えばもう1つ。
ミィヤを連れていった次の日からマーシャが髪形を変えてきた。
右のほうで束ねていた。
触れるべきか否か迷っていたところ、リリアが「女子はそういう違いにも気付いてほしいのよ」なんて言ってきたので「似合ってるね」的な感想を述べたところその日のイプシンを退ける訓練が悲惨もいいところだった。
顔赤くしてものすごい蹴りが肋骨に入ったときは死を覚悟したほどだ(4本ほど逝ってました)。
「おう。今日の集合、内容は聞いてるか?」
「いいえ。でもフィリアたちが帰ってきたんだし、それに関することじゃない?」
グネズトをはじめとする偵察部隊は2日前に帰ってきていた。
もちろん襲撃されたことに関して驚いた。
だがグネズトは被害の確認よりも最初にイプシンの説教に動いたことにリョウたちは驚いた。
その隣でグネズトをなだめているシェリーいたのだが、傍から見ると子供を説教する父親をなだめる母親の画にしか見えなかったというのは全員が思った。
「ここだよな?」
「そうね」
「失礼しまーす」
部屋を見つけて扉に手をかける。
扉を開くとすでにほとんど集まっていた。
来た順に座っているのか、うまい具合に2つ並んで空いている。
リョウが奥から座る。
使い魔の席がないのでサクがリョウの膝の上に座る。
人のままで座ってきたのだが、顔が嬉しそうだったので何も言わないことにした。
隣ではマーシャが座っているのだが…
「リン…、人のままでもいいのよ?」
捕まえた当初なら蛇の姿でありがたいのだが、今では人の子供1人ぐらいなら丸呑みできるレベル。
マーシャが今にも食べられそうである。
こっちの場合は人のほうがいいのかもしれない。
ハハハ…隣で苦笑いをしながらサクの頭に手を置く。
すると変な感触が手に当たる。
頭の感触ではない。
………………手?
「何やってるんですか、フラットさん」
隣に座っているフラットがサクの獣耳を触っていた。
「触りたかったから触ってるけど?」
「さも当たり前のような感じで言わないでください。確かにマッサージとしてはありかもしれませんけど…、必要以上過ぎません?手つきが」
「気持ちいいもの、かわいいもの」
「…好きなんですね、獣耳」
肯定する代わりにフラットのポケットから絵にでも書いたような小さな可愛らしいキャラが顔を出す。
ケイトの使い魔であるクゥの小さい状態とよく似ている。
ただ姿が…
「…サクは人気者だな」
サクを二次元で描いたような感じになっていた。
よほど気にいっているのだろう。
「初めまして、アールといいます。土の妖精です」
「この子は戦わないの。私の守るべき大切な子供…みたいな存在ね」
「その子供を原型がないとはいえ、サクに似せるんですか?」
「獣耳はもともとだけど顔ごと似せたのはこの子の意思。その点では美的感覚が似てるのかもしれないわね」
サクから手を放し、アールを撫でる。
小さい体であるが故、指1つで撫でることができる。
ニコッと笑顔を浮かべながらアールは照れる。
これを見て思うのが、使い魔と主に悪い関係というのは本当に存在しないのか?ということ。
使い魔は主を選ぶがそれでもソリが合わないことくらいはあると思うのだが。
「そろってるな」
扉が開く音がしたかと思うとグネズトが入ってくる。
「集まてもらった理由は大方予想がついていると思う。今回の偵察での成果とやらだ」
他人事のように話すグネズト。
「成果は……皆無だ」
「「「「はぁ!?」」」」
思わず言ってしまった。
マグタランは苦笑し、フラットは顔色1つ変えない。
フィリアだけが「え?」と思考が追い付いていなかった。
彼女には成果というものがあったように感じたらしい。
「す、すみません大佐!」
「なんだ?」
「いろいろありましたよ!本拠地の絞り込みとか、敵軍とも戦闘になりましたよね!?」
「今回の目的は本拠地の確認だ。それが見つけられなかった以上、成果はゼロだ。もっとも途中で奇襲をしかけてきた帝国同盟軍の屑どもの死体なら手に入ったがな」
縮こまってしまったフィリア。
それを気にせずグネズトが話を続ける。
「あとは俺たちの仕事ではないから無視してかまわん」
「違う部隊が捜索を?」
「外から客人が来ているだろう?巫女に任せる」
「…忌々しい」
フラットがぼそりと呟いた。
ここにも巫女嫌いはいるらしい。
むしろこれが普通なのだが。
「悪かったわね、忌々しくて」
「!」
フラットが後ろを振り向く。
いつの間にか立っているミィヤがいた。
後ろにはサリスとノリスも待機している。
フラットの表情は珍しく、顔に嫌悪を表す。
ミィヤがそれを無視してグネズトの隣に立つ。
3日前、何があったかは知らないが特に変化は見えない。
「あなた、3日ぶり♪」
笑顔で手を振ってきた。
絶好調この上ないようだ。
マグタランがヒューと口笛を鳴らす。
「先輩、分かっていながら―――」
「悪いがリョウ、後にしてくれ。今日の招集はこっちが本命だ」
「大佐、こんな奴に手助けされずとも…」
「…フラット、神とやらが気持ち悪いのは分かるがこっちは切羽詰まってる。あと3人、4日後に来る。その態度は何とかしておけ」
「青龍の美しさがわからないなんて…哀れね」
「ミィヤ・ケリニアス、お前も煽るな。それよりさっさと始めろ」
はいはい、と言う代わりに手で合図をする。
サリスが1枚の紙を広げた。
大きな紙1枚いっぱいに魔法陣らしきものが描いてある。
「時代遅れね」
「その時代遅れをあなたたちの技術は解析できてないでしょ?それよりこれ見て」
ミィヤが魔力を送り込むと魔法陣が輝きを帯びる。
次の瞬間、立体的な映像が映し出される。
丸い球体のようなものが中心に見える。
「なんだそれ?」
「これが、敵の本拠地よ」
「「「「はぁ!?」」」」
全員が素っ頓狂な声を上げる。
「苦労したわ。4人いても半日かかるのに1人だと丸2日かかるんだもの。リョウのためじゃなきゃ絶対やってないわね」
「巫女ってそんなことできるのか?」
「愛の力さえあればできないことなんてないわ!」
「…やっぱりお前の愛は重い」
サクがうなっているので撫でて抑える。
こいつだけなのか、それとも巫女全体なのか敵を作るのがうまいらしい。
「で、この球体なんだけど。
「鏡侵…?」
リョウの呟きが耳に入らなかったのか、ミィヤはそれをスルーして話を進める。
代わりにマーシャが答えてくれた。
「前言ったでしょ?この世界は空の外には行けないって。リョウの言っていることが本当なら空の奥には宇宙っていう空間があるみたいだけど簡単に言えばその間にある空間、それが鏡侵空域よ」
「その中にいる…?」
「そうね。ミィヤが言っていることが本当なら普通はいることができない空間にいることになるわ。もっともその空間だってあるかどうか証明されたわけじゃないけど。中には1枚の膜のようなものがあるだけで空間と言えるような大きなものはないって説もあるし」
「~だから詳しくは突き止められないわ。分かるのは徐々に近づいているってわけね」
魔法陣が輝きを失い立体的な映像が消える。
「これらから分かったことは正直俺たちが最初にあっち手を出すのは不可能だということだ」
「つまり…、また俺たちは相手から襲撃を待つということですか?」
「悪いが俺はそのつもりがない。そのためにあの老いた機械人形がいるんだからな」
ミリーナのことを言っているのだろう。
「まぁ、これが今回呼んだ理由だ。呼ぶほどではないと思ったがこうしたほうが楽だった」
「腕輪があるじゃないですか」
「たまに応答しないやつがいる。それに時間を取られるのは腹が立つ、では解散」
本当に雑だなとリョウは思ったが、イプシンたちは慣れているのか体を伸ばしたりしながら授業終わりの生徒のごとく部屋を出ていく。
「じゃ、サク。俺たちも―――」
「リョウ、悪いがお前にはもう1つ用事がある」
サクが膝から降りたと同時に、グネズトに呼び止められた。
「なんです―――」
「ちょっとグネズト!リョウはこの後私といいことするんだから」
「お前は客人ではあるが同時に傭兵も同然だ。雇われた以上、俺の指示には従え」
「私がそんなのに囚われるわけないじゃない!2日間の仕事の癒しのためにも―――」
「フラット」
グネズトの呼びかけと同時にミィヤの体が地面に押し付けられる。
だが、だれも乗っかったり押し付けたりしていない。
ミィヤ自身何が起きたかわかっていない。
「な…によこれ!」
「Cの力、そうそう簡単には打ち消せないわ。大佐、あとは任せてください」
「頼む。リョウ、ついてこい。サクもかまわん」
部屋を後にするがしばらくの間、ミィヤの「リョウーーー!」という叫び声は消えなかった。
廊下を無言で歩いていく。
ただ、そこはリョウが歩いたことないところだった。
思わず尋ねる。
「あの大佐。これからどこに?」
「すぐに着く。そこについたら話そう」
続く廊下。
しかし、突然何もないところでグネズトが止まる。
壁に顔を向ける。
少しの間、手を壁につけ何かを探す。
と、壁の一部が凹んだ。
小さな地響きをたてながら壁が開くようにして移動する。
「隠し扉だ!」と心の中で感動するリョウ。
「こっから先はお前らだけで行け」
「え?でも…」
「入ればすぐにエレベーターのように下に降りる。すぐに目的地だ。生憎、俺は許可されない」
「その、目的地というのは?」
大佐という権限を持ちながらも立ち入りを許可されない限り入れない場所。
どこなんだ?と緊張しながら訊く。
「緊張の必要はない。目的地は700年以上伴侶を持てなかった外見幼女の部屋だからな」
ドール紹介
イプシン・チェレバドルのドール(7段階目)
7段階目というだけあって力、耐久性、俊敏性などあらゆる点で圧倒的な力を持つ。
ただ、ドール固有の能力は不明で使っているところを見たことあるのはクレア以外の、以前のミューズデル侵攻を生き延びた3人のみ。
ただ、聞いても誰も話してはくれないのでリョウたちは知らない。
人前に姿を現す唯一の7段階目のドールを持つ人物。
他にももう1人いるといわれているが大佐よりも上の人に取られているといわれ、また表舞台で戦わないので不明。