異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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ふぅ…、最近は夏にしては涼しい日が続いています。
ですが馬鹿なのかそれにもかかわらず布団をはいで寝て、風邪をひいたせいで喉を傷めてしまいました。
別に声優とか喉が命の職についているわけでもないし、別にいいんですけどね。


機械人形の部屋

「リョウ、待ってたのー!」

 

ショッピングモールのエレベーターよろしく「チン」という音が鳴ったかと思うと扉が開き、目の前にはミリーナがいる。

いつも同じ外見なのには特にツッコまない。

むしろ変わっていたら違和感を感じるだろう。

 

「お前…こんなところに住んでいるのか?」

「こんなところって、十分住み心地はいいの」

「いや、ここは生活空間っていうより…」

 

扉が開いた先はすぐミリーナの部屋らしかった。

土足であるのに怒ったりはしない。

 

リョウが部屋かどうか疑った理由はその設備にあった。

広がっていたのは一面機械機械機械。

コンピュータが並んでいるのはもちろん、無数のコードが乱雑に放置されていて、何かを入れるような容器が3つある。

部屋は涼しい気温を保っており、冷房は常に稼働しているのだろう。

子供の部屋(700歳以上)以前に、人の住む部屋ではない。

 

「あー、ここはまぁ台所みたいなものなの」

「台所…」

「私室はあっちの部屋なの。ぬいぐるみがたくさんあるの」

「…なんでお前、700年は生きてるのに子供みたいなんだ?」

「そうプログラムされたからなの。おかげで肌は永遠にピチピチ」

「そりゃよかったな」

 

可哀そうにと思いながら言った。

 

サクは初めて来た一面機械の世界に少し興奮気味。

 

「ミリーナ殿、あの部屋は?」

「あそこは無重力を体感できる部屋なの」

「無重力?」

「入ってみたほうが分かりやすいの。やる?」

 

サクがリョウの顔を見る。

耳はピョコピョコ動き顔は「いい?」と訊いている。

しっぽがあればそれも元気に動いていただろう。

リョウが頷くと顔を明るくし、ミリーナについていった。

「まだ子供だな」と改めて思う。

 

部屋に入るとすぐ、ミリーナがスイッチを押す。

たったそれだけの行動で無重力になったのかサクの体が浮いた。

最初は焦っていたサクだが慣れると笑顔になりながら文字通り宙を泳いでいる。

人ならば「空を飛んでる!」なんて言いながら喜ぶのは分かるが、サクは竜。

竜の姿になれば飛ぶことなんて造作もないことなのに人の姿ではやはり新鮮味があるのだろうか。

 

「リョウも入るの?」

「いや、空を飛ぶ感じは嫌というほど味わってる。それにそんなことのために俺を呼んだわけじゃないだろ?」

「そうなの。ここなら時間もたっぷりとれるの」

「活動時間ってやつか?」

「もともとそれに制限はないの。ただ外に出ると瞬間移動装置のエネルギーが常時減っていくの。学校なんかでそれが使えなくなったら帰るのが大変なの」

 

ミリーナは無数に並ぶキーボードをいじる。

リョウが知っているキーボードの倍以上は押せる部分があるだろう。

するとどこからともなくコップを2つもったスムーズに動くロボットがやってくる。

人のように足があるわけではなく、下は平べったいように見える。

にもかかわらず、下のコードに引っかかることがない。

 

「…まず謝るの。ごめんなさい」

 

突然頭を下げてきた。

何の事だか分からず戸惑うリョウ。

 

「何のこと言ってるんだ?」

「あなたを直感で連れてきてしまったことなの」

「……何年前の話だ?」

「いつも、ずっと謝らなければならないと思ってたの。突然訳も分からない世界に連れてこられて殺し合いをしろだなんて…あの時の私はどうかしてたの」

 

連れてこられたころのリョウならそんな詫びなんて聞き入れなかっただろう。

「さっさと元の居場所に返せ」とそれの一点張りは間違いなかった。

 

「…別に今言われてもな」

「それでも、私には謝る義務があるの。あなたは私のしてほしいことを成せば元の世界に戻れる。でも失敗した場合はあなたの人生を歪めてしまうことになるの」

「でもお前は知ってるだろ?俺はこの世界も好きだ、いい出会いもたくさんあった。サクがそのいい例だ」

 

ふわふわと人の姿で無重力を楽しんでいるサク。

リョウの視線に気づいて笑顔で手を振る。

 

「今の俺はお前のことを恨んでなんかいない。だからそんなことはやめろ」

「…本当なの?」

「嘘をつく意味がない」

 

それを聞いて頭をようやく上げたミリーナ。

ただ、本当に申し訳ないと思っているのか顔はどこか浮かない。

 

「お前はそんなこと考えないやつだと思ってたのに…、子供らしくないな」

「これでも700年生きてるの。それに子供だって口では謝らなくてもどこか申し訳ないとは思ってるの」

「…さっきも言った通り、恨みなんてない。むしろ俺は感謝している」

 

「え?」という顔をしながらミリーナがリョウを見る。

 

「サクに出会えた、マーシャに出会えた、クロに出会えた、ミィヤは…まぁこれも嬉しいことだ。この世界にいる人間は地球にいたら絶対会えなかった人たちばかりだ」

「でも、あなたは幾度となく死ぬかもしれないところに投げ込まれたの」

「何言ってんだよ。俺はお前に選ばれたんだぞ、この世界の創始者と言っても過言じゃない奴の子孫に。そんな奴がそう簡単に死ぬかよ。今までのなんて死にかけた、には入らないな」

「……本当にそう思ってるの?」

「ああ、感謝しているのは間違いない」

「…そう」

 

顔を再び伏せるミリーナ。

何か悪いこと言ったかな?と再び焦るリョウ。

しかし次にミリーナが顔を上げた時、その顔は曇っていなかった。

むしろ晴れて笑顔になっている。

 

「ならよかったの。私に感謝するといいの」

「…なんかイラっとした。感謝の気持ちもかなり減ったぞ?」

「それに関しては置いておいて、私がリョウをここに呼んだ理由は2つなの。1つは謝ること」

「もう1つは?(置いておいて…)」

「ドールについてなの」

 

ミリーナがコップを手に取り一口含む。

 

「リョウはこれについて疑問を持ったことはないの?」

「疑問というか…すごいなとは思ったよ。ドールの中?みたいなところに話せる相手がいるんだもんな、科学の領域を超えてると思ったぜ」

 

ただ装備して、力をつけるというのならまだ分かる。

だが、リョウが特別とはいえ7段階目になればドールの中の人に会える。

これはイプシンに確認したところ、「確かにいる」と言われた。

イプシンには身長が高い男性が見えるらしい。

 

「リョウは7段階目を目指してるの?」

「当然だ。そもそもそれがなくては勝てないとも思ってるしな」

「…先に言っておくの、7段階目じゃ勝てないの」

「…言い方を間違えると勘違いされるぞ。俺自身の実力が足りないと言うのなら―――」

「ドールには8段階目があるの」

 

一瞬耳を疑う。

 

「何?」

「聞こえなかったのならもう一度言うの。8段階目が、ドールにはあるの」

 

地球以外に人が生きれる星があると初めて教えられた時と同じくらいの衝撃が走る。

今までの常識が覆されたのだ。

 

「私があなたに嘘を教えた理由は簡単、他の人の常識に合わせるためなの」

「…いくらお前の話といえど信用ならないな」

「私は()のドールの設計者なの。それでも信用ならない?」

「また引っかかる言い方だな」

 

「今」と言った。

それでは昔のドールは誰か違う人が作ったみたいに聞こえる。

リョウには理解できない技術なのは間違いないのだが、おそらくどんな科学者でもこれを理解できる人は少ないだろうと思う。

 

「ドールの創始者はカザキなの。だから私はそれを改悪した、それが今のドールなの」

「仮に、お前が今のドールの設計者だとしてなんで改良じゃなく改悪を?それで8段階目への道が閉ざされたっていうならたまったもんじゃないぞ」

「理由があるの。もし、8段階目が極めて珍しいとはいえ存在してしまったら―――」

 

何か言おうとして黙る。

その先を聞きたいリョウとしては嫌な感じだ。

 

「ごめんなさい。本人がいる以上、これは話せないの」

「本人?」

 

ミリーナの目が腕輪を見ていた。

ドールのことを言っているのだろうと察する。

リョウは腕輪を外そうとするが

 

「意味ないの。ドールとあなたは一心同体、そんなことしたってドールには見えるし聞こえるの」

「いったいどういう仕組みなんだ?」

「私自身もよく理解してないから説明はできないの」

 

理解もしていないものをよく自分の思う通りに改悪したなと思う。

 

「理由はあなたが7段階目になったら教えてあげるの。そのころには隠すことに意味なんてなくなるの」

「お前は疑問を増やすのが好きなんだな。ここにきて6、7年経つが頭の中がスッキリしたことが1回もないぞ」

「ミステリアスな方がモテるもん」

 

そんなこと聞きたいのではない。

ミリーナは分かっているが、しゃべりたくないのか核心を突かせようとしない。

 

「じゃあ次は私についての話でも―――」

 

言いかけたところでミリーナが止まる。

リョウから離れ、1つのコンピュータの前に立つ。

画面には「sound only」と出ている。

英語は存在しないはずなのだが。

 

「何なの、グネズト。300と27年ぶりのデートなの、邪魔はしないでほしいの」

『そうしてやりたいのはやまやまだがこっちの事情も飲んでくれ。ミィヤが抑えられん。あいつ、根性だけでCの力を跳ね除けた』

「…」

『リョウの位置も分かっているのかそっちに向かってる。そこに置いておくと部屋が滅茶苦茶になるぞ』

「…分かったの、そんな怪物は相手にできないの」

 

リョウも遠巻きからその話を聞いていた。

ネームの力を根性で跳ね除けるなど人間業ではない。

 

「じゃ、リョウ。すぐにここを出て行ってもらうの」

「…ここに隠れていたいんだが」

「またお話しできると思うの。じゃ、また今度」

 

何の前触れもなく、一瞬で景色が変わる。

「ここどこ?」と戸惑ったがすぐにエレベーター的なものに乗る前にわたっていた廊下だと気づく。

ミリーナの部屋なのだ。

瞬間移動装置があの部屋のどこからでも使えるのだろう。

恐ろしい費用がかかっているに違いないとうらやましく思う。

 

「…サクは?」

 

サクがいない。

まだ、無重力空間で楽しんでいるのだろうか。

だが今いないのは困る。

必死で壁を押したり触ったりしてみるが何も起きない。

 

「リョウ!」

「…遅かったか」

 

嬉しそうなミィヤの声がした。

逃げればよかったと後悔する。

 

「遅かった?ごめんなさい、あのババアの力を押しのけるのに時間がかかっちゃって」

「普通はそれ、できないことだと思うんだが」

「で、ここで待ってたってことは…ここでしたいの?」

「本当に考え方が吹っ飛んでるな、お前は」

「そんな、それほどでも」

「褒めてねぇよ!」

 

イマイチ理解していない空間にいるが逃げるしかないと判断する。

機をうかがっていたが、ミィヤの方が駒が多かった。

 

何の命令もなかったのに、サリスとノリスがリョウの腕をつかむ。

後ろから現れたのか、「お?」と思ったころには完全につかまれていた。

 

「長かったわ…。今日、初めてリョウの子種と初対面よ!」

「……………(これ詰んだ?)」

 

汗がダラダラと出てくる。

サクはいない。

ドールの展開だって、何もないときに訓練場以外でするのは規制されている。

腕は固定されている。

 

「ミ、ミィヤ待て!するなら部屋で、な?」

「やっぱり恥ずかしい?なら結界を張っとくわ。サリスとノリスに見えちゃうのは我慢してね」

「け、結界?え?」

 

ミィヤが一枚札を取り出し壁に貼り付ける。

札が輝きを帯び、リョウにも分かるように結界が展開される。

 

「じゃ、始めましょうか」

「落ち着こう、ミィヤ!1回落ち着こう!」

「じゃあまずはリョウの一物とご対面♪」

「ま、待って…。マジで、マジでやめてーーーーーーー!」




いや~…、ドールはもしかして全員紹介し終わりましたかね?
ふと書こうとして「あれ…、思いつかない」と思ったより早く来てしまった終わりに焦りました。

ということで、次からはネームについて書こうと思います。
A~Z、これだけ書ければそれなりに長い間この空間で悩むことはないはず!

もし、書き忘れが(ドール)あったらそっちを優先的に書きます。

これからもよろしくです。
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