異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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…一週間も空けたというのにまさかの茶番回。
夏といえど、1日中暇という日はそう多くないですね。


巫女は変わり者

「ぬるいのよ、あんたたち!」

 

リリアの罵声が部屋に響く。

説教されているがのごとく正座をさせられているフィリアとマーシャはビクッと肩をすぼめる。

3人がいるのはリリアの部屋。

部屋の中は子供が好きそうなぬいぐるみが並んでいて、その中に似つかわしくないごっついカメラがある。

いくつかあるタンスのようなものにはほとんど南京錠がかけられており、厳重に守られている。

中に入っているものはおそらく写真の類なのだろう。

 

「だ、だって仕方ないじゃ無ですか!ケイトさんは部隊が違うから会える機会が少ないですし、施設も違いますし…遠距離恋愛は辛いんです!」

「あんたが遠距離恋愛してるっていうなら私はこんなことしないわよ。それにちょっと手続き踏めばすぐにその施設に行けるのよ?本当の遠距離恋愛してる人に謝りなさい!」

 

うっ、とフィリアが反論することができずただ黙る。

 

「ねぇリリア、いったいどうしたのよ?私たちを突然呼び出したと思ったらこんなこと?」

「こんなこと?じゃないわよ。マーシャ、あなたはいつまで乙女でいるつもりなの?」

「ど、どういう意味よ?」

「あなたはもう20歳過ぎてるのよ、あっという間に30歳になるわ。恥ずかしいから、なんて理由で黙ってるんじゃないわよ!あんたたち、男を待ってるだけだと今におばさんと言われる世代に―――」

「そんなこと言わないでください!」

 

そんな事実、聞きたくないとでも言うようにフィリアが耳を塞ぐ。

 

「心が成長してないわ、心が!」

「あんただって人のこと言えないでしょ、別に好きな人がいないから関係ないとか―――」

「私はもう付き合ってる人いるわよ?(嘘だけど)」

「「何!???」」

 

耳を塞いでいたはずのフィリアですら反応する。

別に強がるつもりはない。

だが、こうでも言わないとこの2人は何かと言ってくるだろう。

本当にこの人がいいという人がいないのだ、それをどうしろというのだろう。

 

「私、この人が好き」なんて発言が今まで一回もなかったリリアからの衝撃告白に驚きを隠せない2人。

開いた口が塞がらないとはこのことだろう。

 

「だ、誰と?」

「あんたたちは知らないわよ、この施設の人じゃないし」

「どこで知り合ったんですか?」

「休みの日にいろいろな所回ってたら話しかけられた。で、話が合ったから何回か会ったあと告白されたから付き合ったわ」

「「(こいつ…できる!)」」

 

案外そういう人も少ないのだが、この2人が恋愛について話すのはリリアぐらい。

ありえない事実を目の前に、言葉を失った。

 

「なんで付き合うってことができないのかしら、別に付き合ったって体を許すってわけじゃないのに」

「だ、だってフラれたりしたら…」

「フィリア、それが心が成長してないって言うのよ。その理由も学生の頃聞いたわ」

「うっ…」

「ともかく、あんたたちは恵まれた環境にいるのよ。好きな人は知り合い、しかも職場が同じ。行動を起こしなさい!」

「せ、戦争が終わったら動きますよ」

「…戦争があるから言ってるのよ」

 

はぁ…とため息をついて気落ちしたリリア。

 

「あなたたちには本当に好きだって言える対象がいるのよ。そんな人が突然いなくなったら…って考えたことはないの?ケイトもリョウもゲームの主人公じゃないのよ」

「そ、それは…」

 

フィリアもマーシャも理解している。

いや、しているつもりだけなのかもしれない。

 

この時代になっても最終的には人対人で、機械対機械にはならない。

限界があるのだ。

自立型にしたって人をすべて真似できるわけではない。

ただ、内蔵された戦闘に対するマニュアルみたいなものが働いているだけ。

ロボットの勝負の後には人との戦闘が始まるし、有効的にやるならロボットをロボットにぶつけてる間に空爆でもなんでもすればいい。

結局、人を殺ってしまったほうが早い。

ロボットが有効なのは相手が人である場合のみだろう。

 

軍人になった2人。

そのことを理解しているからこそリリアの言葉が重くのしかかる。

 

「想いを伝えられるのは生きている者だけの特権よ。幽霊になって泣いても生者には戻れないわ」

「……リリアさんの言いたいことは分かりました。でも1つ疑問があります」

「なに?」

「なんで今なんです?初めは齢がどうとか言ってましたけど違いますよね?」

「鋭いわね。今回の原因はマーシャよ」

「わ、私?」

 

原因になるようなことをした覚えがないマーシャ。

「???」が頭の上に浮かぶ。

 

「分からないの?今日がなんの日か」

「今日は………あっ!」

「ミィヤ以外の巫女が来る日よ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、レリスさん」

「ミィヤか、ずいぶん大きくなったねぇ…」

 

客をもてなす部屋にて、4人の巫女が勢ぞろいしている。

そんな様子をリョウやマーシャなどのいつもの組み合わせが隠れるようにしてみていた。

巫女を蔑むこの世界。

部屋への案内など最低限のことはするがほとんどの人は関わろうとしない。

 

だから物珍しく見ている人なんてリョウたちぐらいだ。

そんなリョウたちは驚いていた。

ミィヤが今話していたのは巫女の中では年長者に見える80は過ぎているであろう人。

年功序列があるとはいえ、丁寧に話すミィヤをまともにリョウたちは見たことがない。

 

「リリンもススも久しぶりね」

「本当だね…、かれこれ4、5年ぶり?」

「彼氏を追いかけて学校入学なんて…本当に物好きですわね」

「何言ってんの、普通よ。ね、レリスさん」

 

ミィヤが同い年ぐらいの巫女にリョウのことを紹介する。

 

リョウが見るのをやめて少し離れたところで体育座りをする。

 

「ね、ミィヤの彼氏ってどれなの?」

 

ススと呼ばれる巫女がマーシャたちの方を見る。

すでにいたのはばれているようだ。

 

「あの雰囲気変わっている人じゃなくて?」

「さすがリリン、今連れてくるわね」

 

リョウの姿は見えていないはずなのに透視しているかのように普通に話す。

ミィヤは迷わずマーシャたちの方に駆け寄る。

「気」がわかるというのは便利ならしくすぐに少し離れたところにいるリョウを見つける。

すぐに手を取ってリョウを連れて行く。

今回はマーシャも止めなかったし、リョウも「はぁ」とため息はつきながらも抵抗はしない。

 

「へぇ、この人が…」

 

物珍しそうに3人してまじまじと見る。

普通の人から見れば名前以外は普通に見えるのだが巫女ではわけが違うのかもしれない。

 

「面白い『気』をもっているのぉ」

「確かに…、見たことないわ」

「ど、どうも。リョウ・アマミヤです」

「…私、好みですわ」

 

ミィヤが血相を変えてグリンッという効果音がつくかのようにリリンを見る。

 

「リリン~?」

「初めましてアマミヤさん、リリン・アイーシャですわ。突然ですけど私の彼氏になってくださいません?」

「は、はぁ!?」

「……私も候補に挙げてもらっていい?」

「ススゥゥゥ?」

 

さすがに老人となっているレリスは面白そうに笑顔だけ浮かべて眺めている。

「若いとはいいのぉ」なんて言ってたがリョウとしては助けてほしい。

 

それらを遠巻きに見るマーシャたち。

「ほら私の言った通り」とリリアがマーシャに囁く。

リリアが2人を招集した理由はこれだった。

 

ミィヤは今ではリョウのすべてに惚れているが最初は青龍が出せたとか『気』に惹かれたのだ。

もしかすると巫女を引き付けるのでは?なんて思ってみたら案の定だ。

 

「巫女って全員ああなのかしら?」

「…目の前に全員いますから見たとおりかと」

「リョウには選択肢があって羨ましい限りだな、なぁクロ?」

「でもリョウってどんな人が好みなんだろ?」

「俺も聞いたことないな」

 

マーシャはなんかもう負の感情は起きなかった。

諦めともとれるかもしれない感情だろうか。

今すぐにでも飛び出していきたい気がするが、そこからどうしろというのだ。

「私が彼女です」なんて意味の分からない爆弾発言でもしろというのだろうか。

だが、マーシャにそんな勇気はない。

 

「何やっているんだ、お前ら」

 

ふいに後ろから声をかけられたマーシャたち。

後ろを見ると怪訝な顔をしたグネズトがいた。

 

「私たちはミィヤ以外の巫女を見たことがなかったので物珍しさから。大佐はどうしたんですか?」

「もともと巫女を呼んだのは俺だ。上の人間は挨拶なんて最低限のことで済ませたがってるから俺が行くしかないだろう」

 

それだけ言うと巫女たちのほうに向かう。

レリスとミィヤ以外の2人が一瞬、嫌な顔をする。

しかし、グネズトを知っているのかすぐに表情を戻し無表情ながら嫌悪している雰囲気は出さなくなる。

 

「皆さん、今回の呼びかけに応えてくださりありがとうございます」

「あたりまえのことじゃよ。儂ら巫女はもともとそのためにおるのだから」

「それを踏まえてもかたじけない話です」

「……で、実際ぶつかるのはいつなの?」

「不明です。あなたたちがどれくらい早く準備できるのかにかかっています」

「鏡侵空域に敵はいると聞きましたわ」

「それに関してはある程度解決できています」

「私たちはなにすればいいのよ?」

「いろいろだ。場所を移したいのですが、いいですね?」

 

「なんで私にだけ敬語なしなのよ」と言いたいところだったが口に出すのをやめる。

理由はレリス。

巫女の中では最年長でさっきも言った通り、年功序列は大切なもの。

どうでもいいことをツッコんで話をそらすのはよくない。

 

レリスがグネズトの言葉に頷いて応える。

グネズトについていくようにして4人がその場を去る。

 

「リョウ君、また今度ねー」

「ぜひ食事でもしましょう」

 

残されたリョウはなんか疲れ切っていた。

サクがすぐに駆け寄り「大丈夫ですか」と声をかける。

 

「サク…、俺もうだめかもしれない」

「どうしたのですか、今までミィヤとはギリギリでも行為までには至らずやってきたではありませんか」

「前回はお前に助けられたな。あの時のお前のお願いなら足でも舐めてたと思うよ、でも…」

 

ミィヤに危うく貞操を奪われそうになったミリーナの部屋を出た後のこと、サクがギリギリで助けに来てくれた。

久しぶりにリョウはサクが隠密竜(ノティス)と呼ばれる理由を理解した。

サリスとノリスがいたにもかかわらず、速さの勝負で2人を圧倒したのだ。

倒すことはできないが手持ちのワイヤーで一時的に動きを止めることは簡単。

映像があればあと1、2秒でモザイクが必要になるところで助けに来てくれた。

 

「ミィヤが3人に増えた。無理だ」

「大丈夫ですよ、きっと他の2人はちょっと積極的な普通の人です!」

「……だといいんだが」

 

しかし、リョウは分かっていた。

この世界の人はそんなに甘くはないということを。




ネーム紹介


A(風魔法の強化)
応用できれば実は最も強いかもしれないネーム。
単純に考えれば暴風や竜巻などになるが、使い方によっては空気の圧縮を使って物を創り出したり発火、電気を操ることも可能。
他にもシューレスの使う幻覚魔法も風魔法が元なので極めた場合、音、視覚、触覚を操れる。
ただ、今までそれらすべてをを使いこなしたものはいない。
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