持ち運び式のルーターを持ってやがった(今日しか貸してもらえないけど)。
インターネットがない環境、まだ1週間は続きそうです。
土曜、朝7時。
リョウはまだ眠っていた。
隣ではサクが竜の姿で眠っている。
一応サク用にも寝床はあるのだがもともと1人部屋なのでベッド2つは辛いため犬の寝床みたいになっている。
サクは口ではそれでもかまわないと言っているのだが、夜な夜なリョウのベッドに潜り込んでくる。
別にいかがわしい行為をするわけでもないし、リョウとしてはペットが入ってくる感覚なので今では少し自分が端によって入り込みやすくしてあげている。
外ではしっかりしているサクも甘えたいのだ。
で、そんな内では甘えたいサクの起床時間は早くはない。
みんなサクは絶対7時には起きて8時までにいろいろテキパキやっている竜だと思っているが違うのだ。
そんな安眠が許された時間にそれは来た。
朝早い7時過ぎ、チャイムの音が鳴る。
軍人たる者、いつ何時敵に襲われるかわからない以上ちょっとした音に反応して起きてしまう。
しかし、疲れ切っていたリョウは一瞬「音した?」なんて思って目を半開きにしたが10秒ほど待っても何も起きない。
気のせいだと判断して隣にいたサクを抱き枕感覚で掴み寝る。
しかし、再びチャイムが鳴った。
「…誰だよこんな休日の朝早くから」
重い体を動かしベッドから降りる。
それに反応してサクも眠そうにしながら首を上げた。
睡眠を邪魔されたのが嫌なのかうなっている。
「まだ眠っててもいいぞ?」
サクは首を横に振ると人の姿に形を変える。
「リョウ殿が辛い思いをして起きておられるのに私が眠るわけにはいきません」
「そうか。ならとりあえずこれでも着とけ」
サクから見ると少し大きめなシャツを渡す。
寝る時は服を身に纏うのが嫌ならしい。
どういうわけか、通常時はどんな仕掛けがあるのか竜の姿では一糸纏っていないはずなのに人の姿になると動きやすくアレンジされた着物を着ている。
なので人の姿で着衣をすべて脱いでから竜の姿になって寝るのだ。
何をどうやったらこんな仕掛けになるのかと不思議に思うリョウだったがサク自身も知らないようだった。
しかも服は洗濯機に入れて洗えるという優れものだ。
サクがシャツを着たのを確認すると扉に向かう。
リョウはパジャマだが別に相手がリリアでもマーシャでも、イプシンだって何とも思わない。
地球にいて普通に生活していれば、女子が来るかもしれない可能性があれば絶対に身だしなみを整えてから出迎えたに違いない。
扉の鍵をあける。
「こんな朝早くから…」
目の前にいたのは巫女だった。
「おはようございます、リョウさん」
「…リリンさん、でしたっけ?」
「嬉しいですわ、覚えてくださったのですか?」
「あなたは客人ですし…で、こんな朝早くから何か御用ですか」
内心ため息をつく。
ホレ見たことか、とサクを横目で見る。
「面倒くさい輩でしたね」とサクのアイコンタクトが手に取るようにわかった。
「7時が早い、ですの?見たところ疲れてるご様子、もしかしてそちらの使い魔と昨晩は楽しんでいらっしゃったのですか?」
「……巫女ってみんな似た者同士なんですね」
「私はミィヤと違って清楚でおとなしいですわ」
「はぁ、で要件は?」
「そうでしたわ!今日、午後2時ぐらいまで貴方と行動する権利を獲得したものですからそのお誘いに」
「…………サク、頭痛薬はまだ残ってるか?」
「たんまりと」
それだけ言うとサクは部屋の方に戻っていった。
リョウは心の中で頭を抱える。
この世界の巫女はせっかく外見がいいのにどうしてこう、常識はずれなことをするのだろう。
「俺と行動する権利ってなんだ?」
丁寧語を使うのも馬鹿らしくなってきたのでやめた。
「昨日、ススと話し合いをしたのです。それで朝は私が、夕方はススがということになりまして」
「うん、意味わからない」
「ええと…なんと説明したらいいんですの?昨日ススと―――」
「同じこと言わなくていいよ!俺が訊いたのはそこじゃなくてどうしてお前らだけで俺の予定を決めてるんだよ?」
「今日は暇なんじゃなくて?」
「何で知ってるんだよ?」
「ミィヤの手帳に貴方の予定が書かれてましたので」
「何それ、怖い」
とうとう粘着質なタチの悪いストーカーにランクアップしたのかと恐怖する。
しかし、それはミィヤがストーカーまがいの行動をして手に入れた情報ではなく、イプシンに一言「教えて」と言って手に入れた情報だ。
だから手帳にも「休日」としか記されていなかったのに、この話を聞く限りでは確かに危なくとってもおかしくない。
「ささ、何はともあれ早く準備なさってくださいな。時間がありませんの」
「…悪いけど俺、今日は一日中寝て過ごすから」
「まあ!いきなり、しかも日が昇っている内からそのような行為をご所望ですの?」
「違うよ!お前らって絶対姉妹かなにかだろ」
「違うんですの?なら早く着替えなさって」
「申し訳ないけど嫌だ。用がそれだけならさっさと―――」
「地球」
思わず反応してしまった。
「あらかた知っていますわ。大佐さんから聞きましたもの」
「それで?それを公言するぞってか?」
「いいえ、これでも私は巫女。真剣な話もしたいと思ってますのよ。ですから、ね?」
真剣な話、と言われると正直無下にはできない。
もしかすると重要なことかもしれない。
表情には別に裏の顔が見え隠れはしていないが何かあると、リョウは思った。
だが、リョウの予想ではこれは餌だろう。
自分を外へ引っ張り出すための。
「15分で準備する」
「待ってますわ」
扉を閉める。
と、同時にサクが頭痛薬と水を運んできた。
「サク、これはどれくらいのやつだ?」
「朝起きたばかりですのであまり強いのは体に良くないと思いまして少し弱めの物を」
「15分後に出かける。着替えが終わったら一番強いものを一箱持ってきてくれるか?」
「一箱…ですか。なぜそんなに?」
サクの問いかけにリョウは遠い目をして言った。
「いつでも死ねるように」
「……頭痛薬ではただ苦しむだけで終わると思うのですが。それにリョウ殿が苦しむというのなら私も同じことを致します」
「そう言われるとできないな」
「私はリョウ殿の使い魔です。リョウ殿が苦しみを取り除けない以上、私もそれを味わうのが道理」
「使い魔は主を守ることが使命だろ。お前が苦しみを味わうなんて俺は望まないぞ」
「ですが―――」
何か言おうとしたサクの頭をに手を置く。
「ですが、じゃないよ。お前なら俺の性格分かってるだろ、俺が苦しんでる時お前の苦しんでる姿見て少しでも喜ぶと思うか?」
「……いえ」
「分かってるならそんなこと絶対するなよ?これは主としての命令だからな。どんなに俺が苦しんでる時でも、俺を確実に助けるため、俺を喜ばせるために動け。先走ったり、絶望したりして身を犠牲になんて絶対にするなよ?分かったな?」
「……分かりました」
「ならそれでいい」
「ですが」
ずるっとこけそうになるリョウ。
さっき言ったはずなのだが。
「先ほども申し上げた通り私は使い魔です。リョウ殿の命令には従いますが、もし自らを犠牲にしてリョウ殿が助かるのなら私はその選択肢を選びます」
「お前も頑固だな」
「これだけは絶対に譲れません」
「…分かったよ。用は俺がその状況に追い込まれなきゃいい話だもんな」
「確かに私もこの点はありえないと思います。リョウ殿は世界一ですから」
「イプシン先輩にボコボコにされてるけどな」
「そ、それでもリョウ殿は最強なんです!」
なんだそりゃと苦笑する。
本当にいい使い魔を持ったとこのタイミングで確認させられる。
稀に、危なくなることがあるがそれを踏まえてもいいやつだと思う。
しかし、こんな風にいい時間を過ごしているときに限って時間は残酷である。
「そういえばリョウ殿」
「なんだ?」
「リョウ殿が出かけると言った予定時刻まであと5分です」
「……………」
―――――――――――――――――――――――――
「リョウ、ちょっといいかしら?」
ドアをたたくマーシャ。
しかし、返事はない。
「留守…、かしら?」
「リョウさんが休日の朝早くから留守なんて珍しいですね」
朝10時。
別に早い時間ではないのだがリョウは大抵休日は9時ごろ朝食を食べ始める。
そのことを知っていたマーシャは時間を合わせて10時ごろにここに来た。
だが、リョウの部屋からは物音1つしない。
マーシャとフィリアが来ていた。
いつもなら一緒にいるはずのリリアはなんでも今日は旧友と面会する予定があるらしい。
「面会って…それじゃ相手が犯罪者みたいじゃない」なんて言ったら「アハハ」と笑ってリリアは去っていった。
「え、マジ?」なんて思ったがそういう人だっているのだろう。
「弱ったわね…、せっかく訓練の相手をお願いしようと思ったのに」
「レックスさんはダメなんですか?」
「あいつ今日は絶対に部屋から出ないで過ごすって言ってたわ」
「まぁ、久しぶりの丸一日休みですもんね…」
こんな日も訓練したいなんてフィリアは「上昇志向がありますね」なんて言っていたが理由はそれだけじゃない。
マーシャは何か理由をつけてリョウと一緒に行動したかったのだ。
巫女たちが来てから余計意識するようになってしまった。
本当は買い物とか食事とか行きたいのだがリョウはおそらく目を丸くして驚く。
自分の気持ちに気づいてほしい反面、気づいてほしくないとも思っている以上そんな行動はできない。
だから訓練なんてなんとも面倒なことを頼もうとしたのだがいない。
「でも…どこ行ったのかしら?」
「外に出るには申請が必要ですからこの施設内にはいると思いますけど」
「訓練場にいるかしら」
「イプシンさんに呼び出しくらった可能性もありますよね、お気に入りですし」
で、訓練場に来たのだが……
「いないんですか?」
「ここにいるのは俺とイプシンさんだけだ」
訓練場にいたのはクレアとイプシンだった。
しかし、訓練場に来ているのにドールの展開はしておらずただ座って話をしているようだった。
「となると…、後はどこでしょう?」
「あいつ行動範囲はあまり広くないはずなんだけど」
「後輩を探してるの?なら私8時前ぐらいに見たよ」
「ほんとですか」
「ミィヤじゃない1人の巫女と外に出て行ってたよ」
「……………でもリョウって外出申請出してました?」
「巫女が客人だからいいんじゃないかな。護衛みたいな?」
予想以上の行動の早さに舌を巻く。
しかし相手が巫女となるとマーシャも黙ってはいない。
「フィリア、行くわよ」
「ど、どこへ?」
「リョウの足跡を追うわ」
「外出申請は?」
「そんなもん知ったことじゃないわ」
「嫌ですよ私、捕まるの!」
「そこまで外に出たいのならミィヤを連れて行けばいいだろ」
「クレア先輩、それはいろいろ…」
「外に出たって行先を知らなきゃ意味ないだろ。あいつならそれぐらい造作もないと思うぞ」
一理ある。
というかそれなら確かに間違いない。
少し嫌ではあるが背に腹は代えられない。
ここは協力を仰ぐしかないだろう。
「…そうします。助言、ありがとうございました」
「ところでお前ら、今日リリアは一緒じゃないのか?」
「今日は旧友に会うということでしたので」
「旧友?」
「私たちが知らない人だそうです。ただ…」
「なんだ?」
「もしかすると彼氏かもしれないです」
クレアの持っていたペットボトルの容器が手から落ちた。
表情こそ変えてないがショックなことに間違いはない。
マーシャたちはリリアが嘘をついていることを知らない。
「彼氏が、いるのか?」
「違う施設の人ですが…いるそうです」
「………………先輩、急用が入ったので失礼します」
「急用?」
「リリアに新たな悦びを教えるために―――」
「具体的な発言は控えてよ。タグの追加はごめんだよ?」
「ともかく失礼します」
クレアが足早に去っていく。
それを追うわけではないのだが、マーシャたちもミィヤを探しに訓練場を去る。
イプシンが1人残った。
訓練場に1人残ると画的には悲しい。
「私にもいい人、現れないかなぁ…」
切実に願うイプシンだった。
最近ハーメルンで読んでいる小説の中でR-18ではないのですがかなり際どいものがあります。
「へぇ、ここまでの描写はありなのか」とタグについての勉強になるのですが正直使う勇気がありません。
マーシャ「要はチキンということよ」
まぁ、私なんかとは比較にならないくらい文章力があるのが一目瞭然ですし物語自体も面白いので読み続けるんですけどね。
因みにその作品はR-17.999…だそうです(私もそれに納得)。
ミィヤ「私とリョウの絡み、ギリギリまで挑戦してくれない?」
作者「…………善処します」
リョウ「やめて!」