シュー「台詞ないし、描写も超短いぞ?」
ケイト「…部隊が違うとここまで出番が減ってしまうのか」
しっかり整備された廊下を3人の人が歩く。
2人は警備員、そして1人は囚人なのか手に手錠がかけられている。
囚人には手錠の他に腕輪が唯一の装飾品としてつけられており、それが魔法の使用を抑えている。
廊下の壁側にはいくつもの鉄格子が続いている。
部屋分けされたその中には人がいる分にはいるが、数えられるほどしかいない。
発狂や暴れているような人はおらず静かに廊下を通る3人を見ている。
3人はやがて扉の前に立つ。
1人の警備員が前に立ち、指紋認証、パスコード入力を行い扉を開ける。
あったのは真っ白な部屋。
真ん中はガラスのような透明な素材で区切られており、その前には椅子が置かれていた。
そして区切られたガラスの奥には1人、人が座っていた。
黙ったまま自分の席に囚人が座る。
「久しぶりね?」
リリアが静かに言った。
―――――――――――――――――――――――――――――
「なんですって!?」
「本当よ、イプシンさんが嘘つくと思う?」
ミィヤが驚嘆の声を上げる。
部屋には服が散乱している。
ミィヤも今日はリョウとデートでもと思っていたのだ。
妻と自負しているだけあって夫の生活リズムはある程度分かっているらしく、「11時ごろにでも」なんて思いながら服を選んでいた。
そんなところにマーシャとフィリアがやってきた。
「リリン…、まさか行動に出るとは思ってもみなかったわ」
「それは尊敬?それとも憎しみ?」
「憎悪よ。私たちの間に割って入ってリョウを奪うなんていい度胸じゃない」
一応ミィヤはマーシャをライバルとして認めているのか、リョウとマーシャがいるときは憎悪というより「負けてられない!」というライバル心が湧く。
しかし、途中参加で割って入ったリリンやススには違う感情が湧くようだ。
マーシャとミィヤ2人して出す似たような負のオーラがフィリアを怯えさせる。
フィリアは自分にはこれといったライバルや、敵が眼中に入ってなくて本当によかったなと思う。
「行くわよマーシャ。準備は出来てるわ」
「ええ、といってもさほど心配する必要はないと思うけどね」
「それは勿論よ。でも気に食わない」
「同感よ」
「あの…、私はこれで」
このオーラに耐えるのが辛くなったフィリアが部屋を出て行こうとする。
別にフィリアはリョウのことを好きなわけじゃない。
ケイトの話ならまだしもフィリアには関係のない話だ。
しかしマーシャが帰ろうとするフィリアの首元をつかむ。
「な、何ですか?」
「ミィヤ、護衛は多いほうがいいわよね?」
「そうね。そっちのほうが安心だわ」
「え、えええ!?」
「行くわよフィリア」
「無理です!私、修羅場とか絶対無理ですー!」
フィリアの叫びは虚しく、彼女も外に出ることになった。
――――――――――――――――――――――――
「そうですの?ずいぶん遅れているのですね、地球というところは」
テーブルに置かれたティーカップを持ちお茶を口に含むリリン。
テーブルをリョウ、サク、リリンの3人が囲むようにして座っていた。
リョウはサクを連れて軍の施設の外に来ていた。
今いるのはどこだかよくわからない場所のカフェ。
涼しい室内があったにもかかわらず、外で過ごしている。
ここのカフェは正直リョウとしては居心地があまり良くなかった。
理由は雰囲気。
どこからともなく漏れてくる「静かに上品に」の空気がどうも肌に合わない。
サクもそれを感じ取っているのか、慣れないフォークを頑張って使いケーキを口に運んでいる。
最近になってようやく理解してきたのだが、使い魔たちは箸やスプーン類の扱いがうまくなりにくいらしい。
もともと野生ならば箸なんて使う場面はないから仕方ないのかもしれないとも思ったのだが、刃物は器用に使うもんだからよくわからない。
「あくまで俺のいた時代の話だけどな」
「と、いいますと?」
「ここに俺を連れてきた奴が言ってたんだよ。帰そうと思えば元の時代に帰せるって」
話すのが楽しいのか、笑顔で頷きながらケーキを口に運ぶ。
因みに服は巫女用ではない。
市販のものを前から持っていたのか、それを着ている。
あんな口調だから「ドレスでも着て来るんじゃないだろうな」と不安だったがそれは杞憂だった。
「帰る予定なのですか?」
「まだ決まってないが…可能性はあるな」
「でしたら、早いうちに共に寝れる関係にならないとだめですわね」
「………ハァ」
「なんでため息なんですの?」
そんな理由、説明しなくてもわかるだろと心の中で悪態をつく。
外の人とかかわりを避けていたのか、常識がなっていない。
いや、何も1人で生活してきたのではない。
お手伝いさんや住職だっていただろうからその人たちの教え方が間違っていたのだろう。
それか巫女はこうなるという呪いにかかっているか。
「リョウさん、私次ここへ行きたいのですがよろしいかしら?」
平べったい円形状の物体から画像が映し出される。
これを目の前で幾度となく見てしまったため、もし地球に帰ったら映画なんかじゃ微塵も驚けないんだろうなと思う。
映し出されていたのは店の画像。
外装は別に汚らしいわけじゃなく悪い気はしない。
だが、売っているものが問題だった。
女性下着、いわばランジェリーショップ。
ミィヤの女性用水着を選んだ時といい勝負かそれ以上だ。
「…俺はもうツッコまない、ツッコまないぞ」
「時間もあまりありませんからこれを選んだ後2店先の店、さらにそこで代行乗用車(タクシー)を使って―――」
「そんなに行くところがあるのか?」
「ええ、ここら辺の物は肌触りがいいので」
「…もしかしてこれから行く先って全部?」
「下着の専門店ですわ」
「ミィヤの時よりタチが悪い!俺はお前の召使か!?」
「何言ってるんですの?殿方にも好きな下着というものがございましょう。共に選ぶのは当然ですわ」
「なんでお前らって必ず俺と寝るってことになってるんだろうな」
そこでハッと何か思いついたような顔をするリリン。
おもむろに立ち上がり、サクの目の前までくる。
ケーキを食べていたサクも「?」を浮かべながらリリンを見た。
リリンがしゃがむ。
そして
「失礼しますわ」
そう言うとサクのスカートをめくった。
中の下着が露わになる。
何するんだと見ていたリョウはすすっていた紅茶を吹き出す。
当の本人であるサクはめくられたことに羞恥心がないのか「なにやってるんだこいつ」という顔を崩さない。
裸は恥ずかしいようだが、下着には大した関心は寄せてないようだ。
「思ったよりお子様向けですわね…」
そう言うとスカートを戻す。
リリンは昨日リョウと行為に及んだであろうサクの下着を見れば趣味がわかるかと思ったようだ。
「サク、もう少し羞恥心を持て…」
「ですがリョウ殿、下着がある以上秘部が見られているわけではありませんし大丈夫だと思うのですが。それに私は竜の姿では裸です」
「それを言うと元も子もないな」
裸で俺に行為を迫ってきたときは恥ずかしがってただろ、と訊きたかったが蒸し返して何か起きるのも嫌なので訊くのはやめる。
「まぁ、これから行くところにも似たような物はあるはずですし大丈夫ですわ」
「俺は行くとは言っていない」
「その子に何か買ってあげる次いでと思ってもらっても構いませんわ」
「そうれでもわざわざ女性の―――」
「リョウ殿、何か買ってくださるのですか?」
リリンの提案に反応するサク。
よほど嬉しいのか耳が小さく動き、目を輝かせている。
「やられた」と片手で顔を覆う。
ここで「違う」と否定すればサクのテンションの落ちようが半端ない。
耳も垂れ下がるし「不躾な物言いでした…」とこっちがひどい人であるかのような錯覚に襲われるほどだ。
まるでそれも見越していたかのようにリリンが勝ち誇った顔をしている。
「…そうだな、なにか(下着)買ってやるか」
「本当ですか、ありがとうございます!」
「2人とも合意の上、のようですわね。じゃあ行きますわよ、時間がもったいないですから」
時間はさほどかからなかった。
本当に時間を出来る限り有効に使いたいのか、すでに店を出た時から車が準備していて10分足らずで到着する。
店の前についた時のリョウのテンションは限りなく低かった。
まさか彼女でもない上にデートすらしたことない人とこんなところに来るなんて夢にも思っていなかったのだ。
おそらく大丈夫だ。
リリンとサクがいるから不審者として見られることはない。
でも…嫌だ。
この気持ち、わかってくれるだろうか。
リリンはそんなことを考えることなくリョウの手を引っ張り、店内へ入る。
人がさほど多くないのが唯一の救いだろう。
下着の専門店というだけあってどこを見てもあれだった。
別に売り物に興奮なんてするはずないのだが目のやり場に困る。
「リョウ殿、これも下着というもの…なのですか?」
サクが震える手で持ってきたのはスケスケの下着。
サクの下着のイメージはもしも服やスカートがはだけてしまった時の防衛線。
それが透けていては意味がない。
「それは見せたい人が履くやつだ」
「見せないために履くのに見せたいのですか?」
「そういう人もいるんだよ。お前はこんなの履くなよ?」
「私にはとてもそのような勇気は…」
暗にそれ履いたら変態と少し過剰な意識を植え付ける。
主としてサクには健全な道を歩んでほしい。
あいつとは違って。
「リョウさん、これなんてどうですか?」
面積が少ない。
少なすぎる。
っていうかヒモパンってやつだ。
肌触りが云々言ってたやつがヒモパンじゃ意味ないだろう。
笑顔で見せてきた。
笑顔は素直に美人だと思うのになぜ…。
――――――――――――――――――――――――――――
「ハァ…マーシャさんたちは怖いです」
肩を落としながら町を歩くフィリア。
隣にはマーシャもミィヤもいない。
外に出てすぐ別れたのだ。
理由はミィヤがリョウの正確な位置を補足できないから。
ある程度の範囲は分かってもピンポイントでは無理なようだ。
リリンが追って来るのを予想して妨害をしているとかなんとか言ってた。
で、この辺りを探せといわれたので見て回っている状況。
さほど心配する必要がないのなら血眼になってまで探すことはないだろうと思う。
「ケイトさんと歩きたいなぁ…」
ただ歩くだけでも隣に好きな人がいれば全然違うだろう。
そういえばお茶はよくしたが街中での買い物はしたことないなぁと思う。
もともと付き合っているわけではない以上、そんなこと出来れば最初から付き合っているだろう。
リリアの言っていた言葉を思い出す。
恥ずかしがっていては何も起きない。
でも、もし断られたら自分はどうなってしまうのかと怖い。
マーシャたちに会うまで人と接するのを出来る限り避けていた結果、それに対する耐性がないのだ。
小さい頃の自分に戻ってもっと発言しろとでも言ってやりたいと思う。
何もせずに後悔するよりなら行動に出て一か八かに賭けたほうがいい。
分かっているがどうしようもない。
でもただ隣に入れれば満足というわけではない。
嬉しいのは確かだが足りない。
そこまで大人ではない。
本当にダメな人間というか、優柔不断というかこのことを考えると最近は自分のことを責めてばかりである。
俯き加減で歩いていると歩行者と肩をぶつけてしまった。
それで我に返る。
「す、すみません!」
相手も「気にしないでください」と言い、その場を後にする。
こんなこと考えて周りに迷惑をかけてはだめだと頬を叩き視界を周りに向ける。
今はリョウを探すよう言われているのだ。
ケイトのことを考える時ではない。
気持ちを入れ替え歩き始める。
と、ある1人の人が目に入った。
「……あれ?」
ここにいるはずのない人。
いてもおかしくはないが偶然にしては本当に出来すぎだ。
だが事実、目の前にいる。
その人の手にはいくつかのビニール袋を提げていた。
思わず近寄ってしまう。
白にパーマのかかった髪、そうそういるものではない。
「経費削減だからって車ぐらい…」とぼやいている声が耳に入る。
間違いなかった。
思わず口元がニヤつく。
さっきまでいろいろ考えていたことなんてすでに忘れていた。
「ケイトさん」
今日ばかりは神とやらがいようがいまいが感謝する。
振り返った彼の顔は驚いていた。
ネーム紹介
C(重力変化魔法)
文字通り重力の変換が可能。
細かく設定が可能で相手が地面に伏してる中、自分だけ動いたりする。
有効範囲がかなり広く、敵の数が多い時でも有効。
ただ、同じネーム相手ではほとんど効果がない。
これで人を直接殺すことは出来ず、使う者の実力も問われる。