異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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かなり日が経ってしまった…。
申し訳ないです。


巫女とのデートpart2

「…でないわね、フィリア」

 

ワイヤレスのイヤホンを耳にあてながら返事を待っていたマーシャ。

だが、フィリアが電話に出なかった。

隣ではミィヤが腕を組みながら貧乏ゆすりをしている。

ストローで紙コップに入った炭酸飲料を飲みながら。

顔は不満をあらわにしていた。

 

「もしかして先に帰ったのかしら?ほとんど強制だったし」

「でも1人で帰るのは無理よ。正規の外出届を出したわけじゃないんでしょ?」

「だとしたら…ケイトにでも会ったのかしら?」

「ないない。神はそんなに甘くないわよ、私が言うんだから間違いないわ」

 

その考えが合っているなんて2人はこの時夢にも思ってはいなかった。

 

「そのうち顔出すわよ。それよりどうするのよ、リョウは?」

「ここら辺にいるのは間違いないんだけど…建物が多いわね」

 

周りを見渡すと高い建物から小さな建物までひしめき合っている。

人の通りもとても多く、隣を通っても見過ごしてしまう可能性も無きにしも非ず。

 

「同じ巫女なんでしょ?どこ行きたがるとかわからないの?」

「無理よ、巫女だからって人間であることに変わりはないわ。個性はそれぞれよ、でも…」

 

手がかりがないと頭を抱える二人。

マーシャもここまで手間取るとは思ってもみなかった。

ミィヤの探査能力は(リョウ限定)そりゃすごいものである。

以前、5000人以上集まる集会的なものでもすぐにリョウを見つけたようだ。

 

「でも?」

「絶対に下着は見に行くわ」

「…………」

「そこを見て回るしかないわ」

「なんで下着を?」

「なぜって…一緒に寝るときそれで気を削がれたら嫌じゃない!」

「外堀も埋めていない奴らがよく言うわね」

「リョウは私をきれいって言ってくれたもの。きっと消極的なのよ」

 

ミィヤがこういう性格だったことを心からありがたく思うマーシャ。

今度神棚でも見つけたらお供え物でもするかと思う。

 

「さっ、そろそろ行くわよ。座ってても見つからないわ」

「そうね、もうひと頑張りよ」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「はぁ…」

 

ため息をつくリョウ。

ため息をつく理由は皆さん理解しているだろう。

すでに4軒目。

同じような店、しかもそれが女性の下着専門店だと精神的にくるダメージ量が半端ない。

サクもさすがに同じような店が続いているのでつまらなくなったのか眠たさそうにしていた。

 

「眠いなら竜の姿になってくれれば構わないぞ?」

「そ、そんなことはできません!使い魔たる者、リョウ殿が外にいるのならば安全確保に努めるのが当然…」

「言ってるそばからそれじゃないか」

 

瞼を重たそうに、必死に開けようとするがすぐに閉じる。

初めて会った時で2歳。

外見は相変わらず10歳前後だが、それでも6歳なのだ。

竜でいうところの子供か大人かは知らないが人でいえば間違いなく子供だ。

 

「ほら、膝を貸してやるから」

「そのようなお気遣いは不―――」

「お前も竜の姿だと大きくなったからな、いつまでこういうこともできるか…」

「失礼します」

 

姿を変えてリョウの膝に乗っかる。

そこから眠りにつくまでさほど時間はいらなかった。

ランジェリーショップで竜を膝にのせて座っている人なんておそらく定員は初めて見たのだろう。

はじめはギョッとした顔をしたが、すぐに慣れてチラチラと見てくる。

手には先ほど買ってあげた新しい下着の入った袋を大事そうに持っている。

これがぬいぐるみとかだったら可愛らしく見えるんだけどなと少し残念に思う。

 

「リョウさん、これはどう思います?」

 

眠ったサクを撫でていると当たり前ながらリリンが下着を持ってきた。

今度は胸当ての方なのだが

 

「お前は際どいのが好きなのか?」

 

肌触りがいいからとか言っていたのに持ってくるものが9割がた面積が少ない。

1軒前でまともだといえるであろう普通のものを持ってきてくれた時は正直涙が出るかと思った。

周りの人は「恋人だろ」と思っているから何とも思っているからなのか何も言わないし、変な目線(サクに対するのを除く)は向いてこない。

恋人ってそこにも介入するものなのか?

 

「いまいちですの?」

「たぶんいい評価を出すことは一生ない」

「それはつまり…市販のものではなく特注を頼めと?」

「ああ言ったらこう言う…」

 

これがボケではないのだから救いようがない。

 

「肌触りがどうとか言ってたろ、なんでそんな面積の少ないものを…」

「私が日常で使うものはすでに購入しましたわ。ただリョウさんと寝るときのはまだですの」

「…何着買うつもりだ?」

「1週間分あればいいと思いますわ」

「今何着買った?」

「あと6着ですわ」

「まだ1着しか買ってないのかよ!」

「あまり反応が良いものがなかったものですから」

「つまり一着は俺の反応が良かったと?」

「表には出さなくてもにじみ出るものがありますわ」

 

そんなことあったか?と思うが思い当たる物はない。

 

「これは本当にいまいちみたいですわね。ならこちら―――」

「なぁ、楽しいか?」

「…と言いますと?」

 

疑問に思っていたことをぶつける。

ミィヤの時も思っていたが聞かなかった。

ミィヤやリリンはデートとしてリョウと買い物に来ていたはずだ。

だがリョウはあまり乗り気ではない。

半ば強制なのだから仕方ないだろう。

だが、それは外に出た後も行動に表れている。

 

「俺が原因だが…俺はお前と付き合っている人のように一緒に下着を選ぶわけじゃないし座ってるだけだ。それでも楽しそうに見えるんだけど」

「ええ、楽しいですわ」

「どうして?」

「そうですわね…買い物を一緒にしている人がいるという事実そのものが楽しいにつながるのかもしれませんわね。それにリョウさん、あなたが初めてですの」

「何が?」

「こうして何も気にかけずただ買い物を楽しんでいたのは」

 

予想していなかった答えにリョウは驚きながらもどこかいらない同情をしていた。

いわれてみればそうだ。

リリンはこの世界に4人しか存在しない巫女。

そんな重要人物が一般人と同じように生活なんてできるはずがない。

仮に買い物に出たとしても世間の偏見の目がある。

巫女と分かった瞬間、手のひらを返した人もいたに違いない。

そんな中、まだ知り合って間もなくはあるが好意の持てる異性ができた。

彼女たちにとっては一緒に居れるだけでもよほど嬉しいことなのだろう。

 

「ただ…リョウさんにも楽しんでいただければ私としてはもっと嬉しいですわ」

「ごめん、と言いたいところだけどこういう所じゃさすがに…」

「それでは次回からはもう少し考えますわ」

「次があればそうしてくれ」

「ありますわ…あっ!」

「どうした?」

 

リリンが見ている方向に目を向ける。

何かすごい下着が並んでいたら嫌だったが見ていたのは天井近く。

そこにあったのは時計。

針は1時45分を指している。

 

「確か…2時だったか?」

「そうですわね、残念ですけど約束ですから」

「集合場所は?」

「案内しますわ。それより…まだ1着しか決まってませんわ」

「寝ないから。そこだけは理解してくれ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「も…、もう私無理」

 

マーシャが悲鳴を上げて近くに会ったベンチに座り込む。

 

「マーシャ、そんな弱音聞きたくないわ」

「だって…さっきから店を一軒一軒見て回って、まるで不審者よ」

「近くにいるのよ!感じるのよ!それなのに見つけられないというムズ痒い感じ…!」

「私から見るとここまで探しても見つからない以上アンタの探査能力を疑うんだけど?」

「ま、間違うはずないじゃない!私がリョウの魔力を…」

 

さすがにここまで探しても見つからないと心配になるのか声がだんだん小さくなる。

別にマーシャもミィヤの探査能力を実は疑ってはいない。

少し癪には触るが妻と自負しているだけはある。

それにもう無理と弱音を吐いたがリョウには会いたいと思う。

 

あぁ…、今顔をあげたら目線の先にでも…………………

 

「…ミィヤ」

「なに?」

「あれ」

 

マーシャの指さした方向に目を凝らす。

先にいたのはそれなりの画になっている女性と男性。

男性の腕には少し大きな竜が気持ちよさそうに寝ている。

男性の顔は決して嫌そうではない(嬉しそうでもない)が、女性の顔は喜びに満ち溢れている。

 

「………」

「やっと見つけたと思ったらリョウの奴、思ったより―――」

「リィ…リィ…ンンン……!」

 

皮肉を言おうとしたマーシャがミィヤのドス黒いオーラによって止められる。

マーシャもリリンに対していい評価は持っていなかったがここまでではない。

 

「ミ、ミィヤ?」

「マーシャ、行くわよ」

「い、行くってこのまま直進!?前と話が違う…ってミィヤ!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

結構な人ごみの中、リリンとリョウたちはススが待っているという集合場所へ向かっている。

リョウの腕の中にはサクが未だに眠っている。

こんな人ごみの中でも眠れるサクの適応能力?に少しばかり尊敬した。

 

「お前、楽しそうだな?」

「こういう時間も楽しまないと損ですわ」

 

リリンの手には買い物袋はぶら下がっていない。

どこぞの部下なのか召使かが来て持って行ってしまった。

2人っきりのデートを所望していたようだがこれでは違うのだはないかと思う。

 

その時、ミィヤならサリス達にでも持たせるのでは?と思ったので使い魔について聞いたところ彼女は持っていないそうだ。

勿論、手に入れることは可能だが興味がないらしい。

サリス、ノリスのような専用の使い魔を持っているのはミィヤの家系だけのようだ。

昔からのことなので理由は知らないようだが。

 

「なぁ、次はススとかいうやつと合流するんだよな?」

「そうですわ」

「そいつ、どういうやつなんだ?」

 

聞いておくことに越したことはない。

対策が打てるのならば打っておきたい。

また下着を見て回るなんてことになるのならば、ススとやらには悪いが帰るし。

 

「そうですわね…好きなことがゲ―――」

 

突然肩をつかまれるリリン。

その握力の強さに顔をしかめる。

 

「いったいなんです―――」

 

再び言葉が途切れた。

後ろにいたのは感情とは裏腹に笑顔を必死で作っているミィヤだった。

さすがに人通りが多いこの場所で鬼も逃げるような表情を作るわけにはいかない。

 

「ミィヤ、よくここがわかりましたわね?」

「歩いて探し回ったのよ」

「昔の貴方でしたら体力不足になるはずでしたのに…、学校とやらはすごいですわね」

「そんなことより…何やってるのかしら?」

 

ミィヤから出るドス黒いオーラにリョウは思わずたじろぐ。

リリンは慣れているのか全くたじろがないどころか笑顔で受け答えしている。

 

「マーシャ…これは一体どうなってる?」

 

護衛という名目で来ている誰かがいる。

そんなの1人しかいないだろう。

 

「アンタと今日買い物に行きたかったらしくて…それで探しに来たんだけど2,3時間歩きながら探したから」

「…理解した」

 

理解はしたがここからどうしようもない。

リョウに気の利いた答えなんてわからないし、帰ろうにも護衛としてきているため巫女と一緒でなければ帰れない。

 

しかし、マーシャとしてはこれはチャンスかもしれない。

ミィヤ達は何かしら言い争いをしている。

リョウと自分は入っていけず困っている。

なら少し離れたところで買い物…いや、カフェにでも入って涼しいところで待つというのはどうだろう。

あわよくば買い物に付き合ってもらうのもアリではないだろうか?

 

「ね、ねぇリョウ」

 

こんなお願い初めてだ。

自然な流れだと自分に言い聞かせるが恥ずかしい。

 

「も…もしよかったら、その………これが終わるまで……か…カフェとかで!」

 

自分らしくないお願いかもしれない。

でもマーシャだって女なのだからこれくらい………

 

「えーっと…あの…なんかゴメン」

 

変わった返事の前に違和感。

聞いたことのある声だがリョウのではない。

 

「……………クロ?」

 

少し気まずそうに苦笑いをするクロ。

かっこいいとは言えないが相変わらずかわいいなら文句なく頷く。

 

「い、いつから?」

「ね、ねぇリョウ。から」

「最初っからいるならそこで返事しなさいよ、私ものすごく恥ずかしいことしてない!?」

「だめだよ、お決まりだもん。それに恥ずかしいのはそんなに顔を赤くしてるからで…」

「そ、そんなことないわよ!っていうかリョウは!?」

「し…知りたかったら…その手を放して…」

 

いつの間にかクロの首にかかっていた手を放すマーシャ。

少しせき込んだクロを見る所それなりの力が出ていたらしい。

 

「し…死ぬかと思った」

「で、リョウは?」

「ススさんに連れていかれた」

「ススって…もしかして巫女?」

「そうだね」

 

リョウのデート(午後の部)が、そしてマーシャとミィヤの追跡が再び始まった。




ネーム紹介



D(視覚に対する幻覚魔法)
視覚限定ではあるが相手に幻覚を見せる。
変に鼻が良かったりもともと目が見えなくて音に敏感になった人などには一切通用しない。
シューレスが使うが、彼自身がいろいろ才能に満ち溢れているので幻覚+何か、が可能。
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