異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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とうとう9月も終わろうとしてます…。
突然肌寒くなる時期ですから皆さん、風邪には注意しましょう。


…都会は違うのかな?


兆候

「まだできないのか?」

「パパの作った物の数々、その中でも跳びぬけて出来のいい作品の1つなの。あと少し時間がほしいの」

 

ミリーナの部屋で2人が立って話している。

グネズトはミリーナの方を見ているがミリーナは忙しそうにコンピュータをいじくっている。

画面にはもう暗号にしか見えない文字が並んでいる。

子供にはどう見ても操作できそうにない。

だが操作をしている。

 

「お前の父親は鏡侵空域を作って何をしたかったんだか…。負の遺産以外の何物でもない」

「パパは…危険を察知したから作ったんだと思うの。この世界は進みすぎたから」

「というと?」

「この星は宇宙という空間に存在しているの。つまり地球と接触する可能性があるの、外に出た場合」

 

地球という言葉に反応を示すグネズト。

自分の故郷の名前を久しぶりに聞いたからだろう。

 

「でも、それは杞憂だったの」

「?」

「パパは勘違いをしていたの。パパはここに転移したとは理解していたけど時間軸もおかしくなってるとは思ってもみなかったの」

「…つまり?」

「この世界の科学の発展は目覚ましかったの、それに魔法もあった。もしこの星の人が外へ侵略の力を向ければ地球は勝てないと思ったの。たとえ魔法がこの星の外では使えなくても地球とこの星とでは科学力に圧倒的差があったの」

「でも()の地球の科学力は実は決してこの星と比べても劣るものではなかった」

 

ミリーナが頷いて応える。

アヤトはこの世界に跳ばされたとき、ただ空間を移動しただけだと思っていたのだ。

その頃のカザキもそれは然りだった。

ただ実際は時間もすさまじく進んでいたのだ。

 

「安全装置ってことか?」

「うん。ただ、優しく言えばの話だけどなの」

「まだ何かあるのか?」

「もう1つ、知られていない顔があるの」

「それは?」

 

動かしていた手を止めるミリーナ。

寂しそうに大人の雰囲気を醸し出しながら言った。

 

「――――――――――――」

「!!」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

3人で囲むテーブル。

そこに座っているのはマーシャ、フィリア、リリア。

フィリアは何かいいことがあったのかあからさまに機嫌がよさそうだが、2人は暗い。

リョウが巫女たちに連れまわされてから2日経っている。

それでも抜けきっていないようだ(3人とも)。

 

「フィリア、何かいいことあったの?」

「?突然ですね、どうかしました?」

「私とリリアが疲れ切っているのにあなたからはなんか『幸せ者です』っていう雰囲気が醸し出されてて、誰が見ても一目瞭然なのよ」

「そ、そんなことないですよ!それよりもマーシャさんたちが気分下げすぎなんじゃないですか?」

「なんかね…疲れたのよ。見たくもない百合を見せられて」

「私は止めてって言ったわよ!」

 

バンバンとテーブルを叩くリリア。

いつも通りギリギリは守ってくれたようだが激しかったのか未だにぐったりしている。

おそらく精神的にきているんだろう。

これでもクレアを嫌いにならないのはクレアを理解しているからこそなのかもしれない。

 

「驚いたわよ。刑務所行って帰ってきたら部長がものすごいこと口走ってるんだもの、お金はためておく必要があるわね」

「どうやったらそういう結論になるのよ?」

「こっちの話よ。でもフィリア、私も訊くわ。何かあったの?」

「え、ええとですね…。先日、ケイトさんと買い物に行きましてね」

「へぇ、進展してるのね」

 

少しもじもじしながら話すフィリア。

リリアも自分が少しきつく言ったのがフィリアには届いてくれたのかと素直に喜ぶ。

ただ、なぜか予想もしていなかったデカすぎる代償を支払うことになってしまったが。

 

「どっちから誘ったの?」

「そういうわけじゃなく、街中歩いてたら偶然会ったんですよ」

「それから?」

「それから…といいますと?」

「何か進展があったからそんなに嬉しそうなんでしょ?告白とまではいかないだろうから…部屋にでも上げてもらえたかあわよくばどさくさにまぎれてキスでもできたの?」

「キ、キキキキキキキスだなんて!私にはまだ20年早いですよ!」

「20年後は40歳過ぎてるわよ」

 

言葉だけで顔を思いっきり赤面させるフィリア。

こいつ今までよく生きてこれたなぁとリリアが感心する。

20過ぎても男女の付き合いはおろか、キスすらしたことがない女性。

ある意味貴重である。

この歳であれば。

 

「フィリア、あなたそれは恥かしがりやの領域を超えてるわよ。それじゃあいくらケイトと付き合っても1年ともたないわよ」

「え、そうなんですか!?」

「だって…子供じゃないんだから。お手手つないで仲良しです!じゃ、無理でしょ。付き合って1年もキスすらなければ『気が変わった?』と思われて破局よ」

「そうね、年頃の男性ならやらせてくれない女性は用無しになるわよ」

「だ、男性ってそういうもんなんですか?」

 

男性に女性の気持ちが理解しがたいように、女性には男性の気持ちが理解しがたい。

特にフィリアはおとなしめの人なのだから関わる男性は少ない。

ある意味気持ちがわからないというのは仕方ないのかもしれない。

 

「まぁ、やるやらないは置いておいて…キスぐらいはしてあげなさいよ。付き合ったら」

「でも…恥かしいじゃないですか。顔が目の前にあるんですよ。リリアさんも最初は恥かしかったでしょう?」

「別に付き合ってる人相手ならキスぐらいいくらでもしてあげるわよ。減るもんじゃないし」

「減る減らないの問題じゃありません!恥かしいって言ってるんです!」

「なら想像でもして耐性つけたら?」

「想像…」

 

おい、したことないのかよ。と思わず言いそうになったリリア。

好きな人がいるのならそれくらいしてもおかしくないだろと思う。

しばらく止まるフィリア。

やがて顔を真っ赤にしたかと思うとテーブルに顔面をぶつける。

 

「フィリア~、大丈夫?」

「どれだけ純粋なのかしら?」

「ここまでくると純粋というより面倒って言ったほうが正しいわよ」

「いっそのこと、フィリアを裸にしてケイトの部屋に寝かせない?既成事実ができると思うんだけど」

「あー…それもあり―――」

 

いつも危険は突然やってくるものである。

突如、フロア全体にけたたましい警報が鳴り響く。

ここで一般人なら「なんだ?!」と慌てるところだが流石軍人。

テーブルに顔を伏せていたフィリアでさえも起き上がりすぐに行動に移る。

 

決まって警報が鳴った時に移動できるのなら、グネズトが用意した部屋に集まる。

そういうことになっている。

警報が鳴って30秒。

廊下を走っていた3人に警報の理由が伝わる。

 

『通達、第7施設にて敵襲あり。現在、敵と正門にて交戦中。戦闘員は指示があるまで待機せよ。繰り返す―――』

「敵の情報はなし…みたいね」

「でも正門で止めてるようですからあまり強い敵ではないのではないでしょうか。油断は禁物ですけど」

「7番にも私たちくらい強い人配備すればいいのに」

 

裏の人間を含めなければグネズト部隊は実質最強である。

それは7段階目のドールをもつ者がいる時点で決定的であるのだが、何も表で活躍する者の中でもネーム持ちはグネズトの部隊に全員とられているわけではない。

抗争があるわけではないが「ネーム持ちいるしこっちの部隊の方が強いんじゃね?」と勘違いするバカも中に入る。

グネズトはとった後の伸びも考慮して選んでいるのだ。

 

「大佐みたいな教官があと100人くらい増えればそれも実現できるわよ」

「笑えないし無理な話ね」

「それ、大佐を教官としではなく戦闘員として配備するべきだと思うんですけど」

 

しゃべりながらも足は休めない。

やがてグネズトが言っていた場所にたどり着く。

部屋の中は正面に電子掲示板のようなものが張り付いており、あとは地面にはくっついている椅子と机が並んでいるだけのシンプルなつくり。

部屋にはすでにほとんどの人が集まっていた。

 

「おう、マーシャ」

「状況は?」

「イプシン先輩だけ出て行った、たぶんそれで十分だろ」

「どういうこと?」

「敵が機械兵だけなんだよ」

「機械兵ってこの前もいた?」

「ああ、数とか攻められてる具合にもよるけど今回は正門で食い止められてるみたいだしたぶん問題ないと思うぞ」

 

マーシャたちは直には戦ったことはない。

だが、これにはマーシャも安心した。

イプシンが向かったのだ。

何も無理に戦いに行く必要はない。

むしろ邪魔になってしまう可能性もある。

 

「残念ながらそうもいかないぞ」

 

話を聞いていたのか、グネズトが話しかけてきた。

 

「何かあったんですか?」

「思ったより侵攻されている。放送した時とは状況が変わった。現在はC区画まで侵入されてる」

「私たちはどうすれば?」

「マーシャとリョウはB区画をレックスとクロはC区画に行ってくれ。マグタランはA区画に応援としてすでに向かわせた。あとの者はここで指示があるまで待機しててくれ」

「「「了解」」」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「始めたのか?」

「はい、すでにEが準備を進めています」

 

カザキの前でTがしゃべっている。

最近はこういうことも多くなった。

以前はエジリスの下についていたのと、何よりカザキに用がなかったため顔を合わせることはほとんどなかった。

戦いは近づきつつあると実感する。

 

「1週間以内には成果が上がると聞いていたが?」

「E自身もそう言っております。ただポルテスに問題が起こるとどうなるか…」

「調整は終了した。外からの力も受け付けないだろうし問題ない。それよりお前らも準備は整っているんだろうな?」

「準備は万全です」

「そうか」

 

それを聞いて満足気な顔をする。

 

「あの、主君」

「なんだ?」

「…なぜあのアマミヤという者にこだわるのでしょうか?同じ地球人とはいえ、最終兵器とはいえ私たちに任せて頂ければすぐにでも…」

「お前たちを信用していないわけじゃない。ただな…」

「ただ?」

「ミリーナが連れてきた最終兵器だ。俺が殺ってこそあいつも諦めるというものだ。そうしてもらわないとアレも起動できんからな」

「それは?」

「いずれ教えよう、実物を交えてな」




ネーム紹介



H(魔法による攻撃の吸収、反射)
魔法でできたものなら何でも吸収して魔法によっては反射させて使える。
ただ、使用できるのは本当に魔法に対してのみ。
拳で攻撃してきた相手に対しても壁は意味を成さない。
クロのゴーレムも元が岩なので使用しても意味がなかった。
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