異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

94 / 105
日が空く…。
何故だ?

作者自身も理由が分かりません。


内に潜む

「終了!」

 

ミィヤの一言が発せられると同時に機械兵が真っ二つに割れる。

しばしの間痙攣しているかのように動いていた機械兵だったが、やがて光をなくし完全に停止した。

それを確認したミィヤは「ふぅ」と息をつきしばしの間止まる。

 

フィリアが戦闘員を連れて撤退してから時間はそう経ってはいなかった。

生憎、速さ自慢のフィリアなのでリョウたちが急いで向かっても追いつくことはできないだろうが不思議なくらい早く終わったのだ。

ただ、それに反して床に横たわっている機体の数は尋常ではない。

 

「リョウ殿!」

 

そこへサクが到着する。

急いでいたのか少しばかり息が荒い。

 

「サク、もう終わったぞ」

「終わったぞ、じゃありません!治療を終えてすぐでは命がいくつあっても足りませんよ!?もし出るにしても私に一言声をお掛け下さい」

「お前もケイトと同じようなこと言うなぁ…」

「当然です、皆口に出さないだけで同じことを言いたがってますよ!」

「ん~…、まぁ悪かったよ。そうだよな、お前は俺の使い魔なんだからここに来るにしても呼ぶべきだったか。心配してくれてありがとうな」

 

サクの頭をなでる。

何か言いた気だったサクも、これに気を良くしたのか少し頬を膨らませているがそれだけに抑えた。

 

リョウはあたりを見渡す。

別にとてつもなく広いというわけでもないがサッカーの試合場の半分ほどはあるであろう部屋の足の踏み場がなくなっている。

これをもしも余興程度の考えでしでかしているのならば彼らにはそれだけ財力があるということになる。

まともに土地も持っていないはずの彼らがどうやってこれだけの資源を手に入れているのか。

いや、魔法があるこの世界。

水や土、火や電気さえも魔力さえあれば作り出すことができる以上考えても無駄だなと考えるのをやめる。

 

「リョウ!」

 

ミィヤが抱き着いてきた。

まぁ、これくらいは妥協するかとそのままにする。

 

その行動にサクがご立腹である。

 

「リョウ殿、何故されるがままなのですか?」

「いつもの過激なのと比べるとな、これくらいなら別にいいよ」

「リョウ殿、それは少し感覚がおかしくなってますよ。その状況ではどう見ても恋人同士です」

「そうか?」

「そうです」

 

以前のリョウならサクと全く同じ意見だったに違いない。

だが、サクの言う通り感覚が少しばかり鈍くなってしまったようだ。

人間の環境に対する適応能力はすごいものである。

 

「ねぇリョウ。1週間の疲れをとるために……」

「何度も言うようだけどそれはだめだ。そんな関係じゃないだろ」

「1回体を重ねれば分かるわよ。だから…ね?」

 

抱き着く力が少し強くなる。

それと同時にミィヤの胸の感触が伝わってくる。

それに顔を赤くしたリョウだが、引きはがす。

 

「ダメだって。せっかくの美人がそんなことしたら価値下がるぞ」

「私、誰でもいいってわけじゃないのよ。リョウがいいの、たとえ女として価値が下がったとしてもリョウが見てくれるならそれでいいわ」

「俺は幸せ者だな。でもな―――」

 

静かだった元戦場のここに1つの音がした。

それは音というよりは爆発音のほうが近い。

3人が音の方を振り向いたとき、そこには1体の機械兵の姿。

見た目は無傷なところから見ると死んだふりをしていたらしい。

しかし、その行動の速さは今迄からは見て取れないほどのものだった。

無傷と理解する前に相手は動いて3人の目の前まで来ていたのだ。

 

「!?」

 

驚くことだけはできた。

だがリョウがそれに反応するには少しばかり時間が足りなかった。

俊敏に動くためか、敵の武器はナイフ。

 

「くっ!」

 

しかし、反応できないのはあくまでもリョウの話。

主のことを常に気にかけていた、そして速さが自慢のサクにとってはギリギリながらも反応できる速度だった。

サクも自分の武器を取り出しリョウへの直撃をそらす。

 

一瞬、強く刃のぶつかり合った音がした。

サクが敵の攻撃を見事に受け流した。

これが予想外だったのか、相手が後退する。

 

その時点でようやくリョウとミィヤの思考が働き始めた。

 

「サク、大丈夫か!?」

「………」

 

しばらく黙っていたサクだったが、彼女の頬から血が流れ始めた。

大した出血量ではない。

 

「無傷とはいきませんでしたが…」

「油断してた、助かったよ」

 

それだけ言うと、改めて敵を見据える。

相手も黙ったまんま構えていた。

おそらくこのまま背を向ければそれが命取りになることが分かっているのだろう。

それを考えれば中に人がいるのは明白である。

 

「どうするべきだと思う?」

「…生け捕りが望ましいと思う。でも、無理だろ?」

「リョウを殺そうとしたから、ってのもあるけど機体の中にいるとなると勝手が違うもの。確かに…」

 

言い終わる前にミィヤが動き出した。

 

「無理ね!」

 

鉈を使い、相手に攻撃をする。

リョウはこの鉈がどんな能力を持っているか知らない。

神器とか名前がついているのだからそれなりの効力があるのだろうと思うが想像なんてできるわけがないだろう。

ススとかいう巫女のものは時間を一時的に止められるもの。

そんなバカげた力を想像できるわけがない。

 

リョウも動き出そう、としたのだが何かがおかしい。

どこか腑に落ちない点があるのだ。

 

「加勢いたします」

 

サクが加勢にはいる。

彼女のバトルスタイルは自慢の速さを利用して相手の動きを封じ込めるもの。

ワイヤーを使ってバランスを崩したところを一撃で仕留める。

 

そして事態がすぐに動いた。

サクが加勢して10秒と経たないうちに相手はサクの掌の上で踊らされ始める。

ありとあらゆるところにワイヤーの網を伸ばし動ける範囲を狭めていく。

リョウから見てもわかるぐらい相手が動揺していた。

いくら一撃で決めるつもりだったにしてもおかしすぎる。

 

やがて相手の逃げ場がなくなりついに足を取られた。

一瞬、相手に隙ができる。

その一瞬をサクは逃さない。

敵がワイヤーを解こうともがく暇すら与えなかった。

相手の真上に立ち、刃を首元に突きつける。

 

「終わりです」

 

敵に囁くように言ったサクはその刃を首に押し込んだ。

機械の破壊音が鳴り、刃を抜いた後には血が噴き出す。

そしてその機体は力なく機体の山の上に横たわった。

 

あふれだした鮮血が人の存在を物語っていた。

 

「………」

 

しかし、リョウと同じようにサクも腑に落ちない点があるのか顔は喜んでいなかった。

ミィヤは機体の体を鉈で切り裂く。

中から出てきたすでに動くことのない死体があった。

脈を確認して死んでいると理解する。

 

「これじゃ油断も隙もないわね…」

「同感だな、それよりミィヤ。こいつおかしくなかったか?」

「?」

「正直言って…最初とそのあとでは別人だった」

 

最初の不意打ちの時、リョウは反応できなかった。

サクでさえギリギリのところで止めることができたものの、サクでさえそんな結果だった。

なのにいざ戦闘になってみれば2対1だからってあまりにあっけなさ過ぎた。

生け捕りにできないと考えたのもそれだけの実力、或は速さを持っていると思ったからでこれならどうとでもなったかもしれない。

 

「動揺したんじゃないの、初撃を外して」

「こっちの情報はあらかたあちらに漏れてると考えたほうがいい。俺を狙うならサクがいることも想定できるはずだ。それにミィヤ、お前もいた。終いには俺たちを真正面から斬りつけようとして…なんか納得がいかない」

「気が動転していたとも考えられるわよ、死屍累々、まぁ機械だけど」

「………まぁ、考えても答えが出るわけもないか」

 

ため息をつく。

さすがに1週間のうちにここまで命の取り合いが多いと精神的にはそれなりに疲労している。

肉体はケイトの治療で回復しても精神は無理だ。

 

「とりあえず先輩たちと合流するか、行くぞサク」

 

足の踏み場のない空間をドールを使って浮かぶことで難なく後にしようとする。

だが

 

「サク?」

 

返事がなく、おまけに隣に戻ってくる気配もしない。

嫌な予感がしてすぐに後ろを振り向く。

 

後ろではさっきまで元気だったサクが地面に横たわっていた。

 

「サク、どうした!?」

 

急いで駆け寄ろうとする。

刹那、リョウの首に強い衝撃が走る。

痛いと思う暇もなくその場に倒れこんだ。

 

「……………………………」

 

黙ったまま、袖から小さな通信機を取り出す。

 

「…今終了しました。ハイ、はい。…それでは」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「マーシャさん、元気そうで何よりです」

「あなたは元気というよりうれしそうね」

 

いまだに衛生班の人員は忙しそうに稼働していた。

近くではうめき声も聞こえるのであまり騒ぐのはよくない。

 

「嬉しそうって…こんなところ来てるのにですか?」

「あんたの場合はこんなところに来てるから、でしょ」

「?」

「とりあえず目線はこっちで固定しなさい。チラチラ見てるのは分かってるわよ」

 

こんな時でも好きな人の近くにいるのはうれしいものである。

フィリアはマーシャの指摘に顔を赤くして俯いてしまった。

 

「まぁ、別にいいんだけど。早いとこ約束も果たしてもらいたいし」

「約束?」

「キスしてないでしょ?早くしてほしいわね」

「まだあれは有効だったんですか!?」

「誰が無効って言ったのよ?だいた―――」

「リョウ、どこ~?」

 

近くで見知った声がした。

周りも少しざわついている。

せめて服装だけでも変えるべきだろうと思う。

 

「あら、ミィヤ。1週間ぶり」

「マーシャ、フィリア。久しぶりね。ところでリョウ見なかった?」

「リョウに何の用?」

「今の私の状態分かる?リョウの魔力が辿れないほど疲れ切ってるのよ…、気力を補給しないと」

「なら教える必要ないわね。リョウのためにも黙っておくわ」

「…フィリアは教えてくれるわよね?」

 

不思議そうな顔をしているフィリア。

 

「どうしたの?」

「教えてくれって…先ほど会ったばかりですよね?」

「会ってたら少なくとも1日は一緒に行動してるわよ」

「でも…さっき…」

「どういうこと?」

「A区画にリョウさんとミィヤさんが来たので任せて私たちは退いたんです」

「でもここにいる…?」

 

見間違いなわけはないと頭を悩ませるフィリア。

 

「偽物…?」

「そんなことって」

「私たちはネーム持ちの力を把握しきってないわ。もしそうだったら…?」

「リョウが危ない…!」

 

勢いよく立ち上がり走って出ていくマーシャ。

勿論ながらミィヤも後に続く。

衛生班の人が止めようとしていたがその制止を無視して飛び出していった。

 

「スノー、もし何か言われたらお願いしますね」

 

隣で竜の姿でゆっくりしているスノーはそれを聞いて頷く。

3人がリョウのところへ向かった。




ネーム紹介



L(弱体化魔法)
魔法が触れた部分を極端に脆くする。
守りが堅いFのネームに対してかなり有効打である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。