異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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寒くなってきました…。
まだ厚着では暑い日もありますが、朝晩は冷え込みます。

風邪には注意です。


強奪

「………そろそろかしら?」

 

1人、ミィヤが呟く。

機体をある程度どかして綺麗な床を確保して座っていた。

ゆっくり立ち上がると、周りに積み上げていた機体を綺麗にした床の上に散らかす。

 

機体の上に無造作に倒れていたリョウを担ぎ上げる。

そのままサクの倒れている方に歩いていき、顔を持ち上げる。

明らかに反抗的な目をしている。

 

「まだ気力があるのね、でもそれだけじゃダメ。分かってると思うけど体が動かないでしょ?あまり長い時間そうしてると時期に肺や心臓も止まるわよ。命が惜しければ黙ってなさい」

「お…まへ、……は?(おまえは?)」

「あなたのところにいる7段階目のドールを持つ幼女に用があるの。まぁ、用っていってもただ見てみたいだけなんだけど…ね」

 

「フィリア、大丈夫!?」

 

その声が聞こえたと同時にミィヤはサクを手から放す。

持ち上げられていた顔から力が抜けると何もできずにただ頭が地面に着く。

痛みが走るが声を上げることも、顔を歪めることさえもできない。

痛覚が残っているとは悪趣味な毒である。

 

「…ってミィヤ?それにリョウ、サクも!」

 

てっきりフィリアがいると思って来たらしい。

すれ違わなかったようだ。

 

「アレ?まな板は?」

 

後ろからイプシンも顔を出す。

急いでいないところからすでに戦闘が終わっているのは分かっているようだ。

リョウの状態を見て少し驚いたイプシンだったが特に行動は変わらない。

リリアがあせあせと狼狽しているのに対し、平然としている。

 

「ミィヤ、これは?!」

「見てのとおりよ、戦闘で負傷したの。リョウは大丈夫だと思うけどサクがなんかやばいわ」

 

リリアがサクを抱きかかえる。

手足に力は入っておらず、首もだらしなく垂れ下がりそうになっている。

 

「何かの毒だと思うわ、急いだほうがいい」

「私が連れてくわ、速さは軽量化すれば…」

 

不必要なパーツをすぐに取り外す。

体についていたパーツは砂が零れ落ちていくかのように綺麗に崩れ落ち、スタイルのいい体が浮かぶ。

決して速いわけではない。

だからこそ、何も言わずにその場を離れた。

入れ替わるかのようにフラットが入ってくる。

焦ったリリアを見て何事かと思ったが、すぐに目の前にいる嫌いな相手を視界に入れてしまい顔をしかめる。

 

「……姉さん、これは?」

「この機体の山を見る限り、報告書3枚は軽すぎるかな?」

「おい巫女、戦闘が終わったのならさっさととリョウを連れて衛生班のところまで行け」

「…私何かしましたか?」

「前にも言ったはずよ、巫女は嫌いなの。っていうか大半の人間がそのはずなんだけど」

「申し訳ないですが私はここでやることがありますので」

 

嫌な人間がついてきたと心の中で毒づく。

 

「なら私が運ぶ」

「大丈夫です、リョウは気絶してるだけですから」

「どうしてわかるのかしら?衛生班でもないお前に」

「………外傷がなかったので」

「内側に問題があったらどうするのかしら、死んだ人間を白髪(ケイト)は生き返らせてくれないわよ」

「ま、まぁまぁ2人とも」

 

本来ならここでイプシンと2人っきりになったところを殺すつもりでいた。

サクには見るだけといったが思ったよりつまらなかった。

確かに胸はデカい。

それに顔も童顔、背も小さくまぎれもなく幼女だろう。

だが、言ってしまえばそれだけ。

生憎、女性に興味があるわけではないのでたわわに実った胸にも興味がない。

というか、揺れるところを見ると逆にイラつく。

 

しかし、殺そうにもフラットがいては自分もただでは済まない。

普通に戦えば負けるのが目に見えている。

死にはしないだろうが。

 

「フラちゃんもそんな偏見の目を向けないで、ミィヤさんがなにしたっていうの?」

「…………」

「とりあえず、今はそんなことしてる暇ないから。ミィヤさん、もしものために後輩は一回診てもらわないと。何かすることがあるんだったらしててもいいけどフラちゃんに後輩を渡して」

「…分かったわ」

 

この渡すとき、接近した時ならやれるかと思ったがやはり無理。

フラットを殺したとしても今度はイプシンに殺られる。

7段階目は化け物同然で、戦闘向きではない自分は足元にも及ばないのだ。

 

しぶしぶ、リョウを渡す。

フラットに近づいたその時、

 

「!?」

 

明らかな殺気。

一瞬嫌悪している巫女に対して向けられているものかと思い、平静を装うかと思ったがすぐに取り消す。

リョウが手から離れた瞬間にフラットの刀が勢いよく振り下ろされた。

抜く瞬間は見えていない。

鮮血が腕から噴き出す。

 

「アアアアああァァアアあぁ!?」

 

左腕を持っていかれたことに気づくのに時間はいらなかった。

溢れ出る血液が機体に落ちてゆく。

 

「な…にを」

「偽物なんてそんなものだよ。辛いなら本当の姿を現したら?」

「言っている…意味が」

「黙りなさい。あなたが私にリョウを預けた時点でもう偽物って割れてるのよ。それともその姿で死ぬのがご所望かしら?」

「……………そんな、あいまいな理由で」

「私たちの中では天変地異よりありえないんだよ」

 

そんなところから自分の正体がばれるなんて少しも考えていなかった。

意味がない魔法はただ魔力を消費するだけ。

少しの迷いも見えない2人を前に、ミィヤの外装を解く。

ミィヤの体が空気に溶けていくかのように消えてゆき、代わりに見知らぬ女性が立っている。

 

女性は無言のまま、右腕を傷口に当て力いっぱい握りつぶす。

嫌な音がしながらも血の流れが止まった。

 

「あまりいい止血方法には見えないね」

「腕なんていくらでも代用できる。治療で生やすより圧倒的に早くね」

 

リョウも回収した2人は優勢に立っている。

相手は手負いの雑魚1人だ。

強者ならいくらでも自分たちを殺せる時があった。

だが動かなかったということは戦闘には向いてないことを自覚していることをイプシンもフラットもよんでいた。

相手自身が自覚しているのなら戦闘に向いてないのは間違いない。

 

だが、

 

「まぁいいわ。任務完遂はできたし」

「何?」

「あなたはいつまでそれ(死体)を持ってるの?」

 

フラットの頬に一滴の液体が飛ぶ。

遅れて膝の下あたりが湿っぽく、変な熱気を感じる。

 

下を見ると、足の肌の露出を許さない長ズボンが真っ赤に染まっていた。

持ち上げているそれ(死体)の首から血が垂れている。

 

死んでしまっている死体は切り刻んでも血液はさほど出てこない。

なぜなら心臓が動いていないからだ。

血液を流すためのポンプが壊れると血液は流れない。

 

それ故か、血だまりのようなものはできていない。

だが2人にとってそれはどうでもいい。

服が汚れようが血の海ができようが。

問題なのは自分たちの手元にいるのがリョウではないということ。

 

「S…」

 

2人はこれの予想はできなかった。

すべてに疑いを持っていた2人は偽物が来るかもしれないという可能性は頭にあった。

ネーム持ちの中にそういう能力があるからだ。

だが、今敵が使っていた自分以外に対する効力の発揮はそのネームを極めた状態で発揮できるもの。

そんな秀才だとは考えていなかった。

 

「へぇ、知ってるのね。その知識はいったいどこから?」

「敵に情報を渡すとでも?」

「それもそうね、まぁ…」

 

敵が魔法陣の描かれた紙を取り出す。

 

「ここで失礼するから別にいいわ」

「逃げる気?」

「レザー・S・アズール。一応名乗って―――」

「リョウさん!」

 

入口から焦った様子のフィリアたちが姿を現す。

フィリアの腕の中にはマーシャとミィヤが少し酔った感じで抱えられていた。

リョウの時よりは加減してくれたので遅かったがそれでも十分なスピードが出ていた。

 

「あら、戻ってくるのが早いわね。ついでに本物まで連れてくるなんて」

「あ、あんたが、私の?」

「感謝するわよ、ミィヤ・ケリニアス。あなたほど相手に好意を露わにしてベタベタくっつく人はそうそういないから。おかげでこんなにも簡単に確保ができた」

「リョウ!?」

 

リョウの服の襟を掴み、離れているマーシャたちに見えるように掲げる。

それと同時に魔法陣が足元に広がる。

 

それに逸早くフラットが反応する。

逃げられるよりなら一か八かでも賭けに出る方を選んだ。

刀が再びレザーをとらえる。

だが、それは同じ刃で止められることになる。

 

「「!」」

 

どこから現れたのかレザーとフラットの間にブレーベが立っている。

それに目を大きくしてイプシンが反応していた。

 

「遅いじゃない」

「俺の役目はお前の任務完遂を手伝うことだ」

「護衛ならちゃんと守ってよ」

「腕一本くらいなら持ってかれても魔法陣は出せるだろ?」

「よく言うわよ、予想外の人が出てきて驚いてたんじゃないの?あなたの彼女だもんね。それとも元を入れたほうがいいかしら?」

「………………」

 

押し返されたフラットがイプシンの隣に戻る。

 

「フラちゃん…」

「姉さんは手を出さないで」

 

何も言えずにただ下がるイプシン。

それに対してフラットは再びレザーに斬りかかる。

それを止めるブレーベ。

 

「ブレーベ、私は先に失礼するから」

「ああ」

「待ちな…!」

 

明らかに間に合わない。

イプシンでも、ましてやマーシャやミィヤでも。

だが、1人いた。

まだ攻撃可能な人が。

 

フィリアが自分ができる最大のスピードを出す。

もともと彼女1人ならば普通の人なら穴あきにできるほどのスピードが出せるのだ。

だから視界に入る、ましてや普通の声量で話せるほどの距離にいるのだ。

間に合わないわけがなかった。

だが、

 

「あまいな」

 

フィリアの体が地面にたたきつけられる。

いや、たたくというより押しつぶされるの方が正しいだろうか。

体が重くて動かない。

 

「これは…!」

「フラット、お前なら分かるだろ」

「一体どうやって…」

 

まともに立っているのはフラットとブレーベのみ。

後ろでレザーでさえ、顔をしかめながらブレーベを睨みつける。

何かを言おうとしていたが魔法陣が強く輝く。

 

「チッ…まぁ、じゃ」

「リョ……ウ!」

 

一瞬、視界が真っ白になる。

次に視界が戻った時にはリョウもレザーもいなくなっていた。

そしてブレーベも。

その空間だけが切り抜かれたかのように、一瞬のうちに消えていた。

 

「…………」

 

体の自由がきくようになった全員だったがすでにいなくなった敵を相手にどうすることもできない。

分かり切っていることだが、確認せずにはいられなかった。

 

「リョウ、は…?」

「やられたよ、完璧に油断してた」




ネーム紹介



N(肉体再生)
厳密には肉体再生ではないらしい。
魔力が残っている限り、自動的にその魔力は傷ついた体の修復に使われる。
他人の治療も可能だが、自分の体よりも魔力が必要なのであまり回数多くはできない。
攻撃魔法が苦手なのはケイトだけで別にNの特徴というわけではない。
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