異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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久しぶりの投稿。
世の中はもっと自由時間を増やすべきである!


開戦

「キタ、キタ、キタ、きた、きた…………………」

 

独り言をしゃべり続けるカザキ。

準備は整っていた。

リョウとかいう最終兵器とやらもこちらで確保。

自分たちから進んでいってもよかったのだが、部下の土俵はここだ。

それに自分が出向くのはどうも操られている感じがして嫌だ。

 

ただでさえ、頼まれごとをこなしていた。

準備は自分がしたのだからあとは相手が来るのが道理というもの。

 

それが叶えばようやく自由になれる。

まぁ、自由になったとしてもやることは変わらないのだが。

 

「主君、機械兵の部隊が交戦状態に入りました」

「グネズトたちは?」

「確認済みです。ですが…」

「分かっている。あいつはこんな戦場に出てこない、こちらの陣地まで瞬間移動で入り込めるのだから」

 

楽しみなことがあるからなのだろう。

いつもなら重い腰だが、今回は軽く腰を上げる。

 

ジークはその時滅多に見せないカザキの笑顔を見た。

ただ、歪んでいるというのは一目瞭然。

大人なのだから無邪気な笑顔はできないというのは分かっている。

だが大人になったからといって、見ている相手に不安を感じさせるような笑顔をするのはたやすいことではない。

 

「指示を出せ。全員敵を排除せよ、と」

「他は?」

「自由だ、死んでも骨を拾うつもりはない。自己責任ではあるが好きに戦えと伝えろ」

「承知いたしました」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、おかしいですよ!」

「なにがだ?」

「平然とした顔で思い当たる節一切なし!?いくら大佐でも困ります!」

 

周りはすでに騒がしい。

だから大声を張り上げるケイトだが対して気に留めることはなかった。

何より自分が大変で他のことに構っている暇がない。

周りにいる大半は衛生兵だったのだから。

戦闘が始まっている現在、彼らに休まる時間などありはしない。

むしろ猫の手も借りたいぐらいだろう。

 

「素直に喜んだらどうだ?戦闘能力をかってるんだぞ」

「俺は衛生兵です!大佐に認められるのは喜ばしいことですが人の傷をいやすことが仕事です!」

「お前の自爆魔法があれば傷つく人が減ると思うが?」

「むしろ連携が崩れます!」

 

ケイト自身が一番知っている。

自分は連携して戦うより1人のほうが力を発揮できると。

自爆魔法が得意といってもそれは破壊力が高いだけ。

器用に細かく範囲を設定することはできない。

敵味方が入り乱れる乱戦では自分の力は使えないのだ。

そもそも戦いそのものがあまり好きではないのだが。

 

グネズトも最初はケイトを連れて行く予定はなかった。

ただ、リョウに使う予定だった錠剤に1つ余りができてしまった。

ならば他に当てるべき。

 

黒いタブレットケースに入った錠剤を「飲め」と押し付けてきたグネズトにケイトはかなり戸惑っていた。

そんな得体のしれないものを突然「飲め」と言われて飲むやつはいない。

 

「話が分からんやつだな、時間がない。さっさとしろ」

「だから俺は―――」

「私に、行かせてください」

 

サクが歩いてくる。

体は洗い、服も着替えたようだがまだ万全ではないはず。

ケイトが体調を心配している。

 

「…お前より―――」

「分かっています。ですが私はリョウ殿の使い魔、簡単に退くつもりはありません」

 

戦力で見れば強さの差は明らか。

退くつもりはないといっているが無力化する方法なんていくらでもある。

そもそも鏡侵空域に普通でははいれない以上、放っておいてもいい。

最悪、足手まといになりかねない。

だが………

 

「お前は必要ない」

その一言が言えなかった。

切り捨てるべき、勝率を上げるのなら。

だが、気持ちが分からないわけじゃない。

人は勝率だの利益だのだけでは判断することができない。

何かしらの人情が混ざってくる。

それが今回は大きく作用していた。

 

『信乃さん、ご意見よろしいでしょうか?』

「分かっている」

『いえ、信乃さんは使い魔ではありません。少なくとも貴方が想像できないほどにサクのリョウさんに対する想いは強いです』

 

ライルの意見に目を丸くするグネズト。

ライルがここまで強く意見を通そうとすることはない。

通すというより今は意見することだろうか。

そんなライルが言い切ったのだ。

 

『不躾な物言い、失礼しました』

 

申し訳なさそうに、だが自分の意見を曲げるつもりはないと意思表示をしながら謝る。

 

グネズトはここに来てからかなり長い年月が経っている。

今ではライルと過ごした時間もかなり永いものだ。

だが、未だに分からないことが多い。

例えばライルの性別。

訊いてもこれには無言。

答えたくないというより答えを知らないのほうが正しいのだろう。

妖精には性別があるのとないのが存在する。

性別といっても人間を形どった外見の話だが。

例えば性別というより外見がすでに固まっていたシューレスの使い魔メリー。

無いので言えばケイトのクゥやライル。

無い妖精はたいてい自分で決める。

性格は存在するのだから女っぽいだの男っぽいだのはある。

それに何より困る主がいるのだ、性別が分からないと。

だからある意味暗黙の了解で、自分で決められる者がいるとはいえ性別がある。

 

なのに無言の回答。

これをコンプレックスとでも思っているのだろうか。

 

しかし、そんな疑問などどうでもよく思えてしまえるほどの疑問が1つ。

なぜ自分についてきたのか?

魔法の才は無かった。

現に体は機械で構成させたむしろ科学派。

妖精にだって個性はあるのだから可能性は無きにしも非ずなのだが…。

 

疑問が多いライルだったがグネズトは信頼している。

行動を共にしてきて十分だと思ったから。

 

これだけ尽くしてくれる理由なんて不明だがサクはライルと同じくらい主のことを…いや、それ以上か?

使い魔ではないグネズトに分かる訳がなかった。

使い魔が主をどれだけ想っているのか。

だが

 

「…やるからには戦力になってもらうぞ」

「承知の上です」

「ならついてこい、これを飲んでな」

 

投げてタブレットケースをサクに渡す。

真っ黒なタブレットケース。

なんなのか皆目見当が付かないサクは、中から出てきた錠剤を見て心配そうにケイトを見る。

 

「俺にもそれを渡そうとしてた、睡眠薬とかじゃないから安心してよ」

 

安心したのか迷わずに錠剤を呑む。

それを見たグネズトがその場を去ってゆく。

サクも後に続いて去って行った。

 

「良かったのですか?」

 

手に何枚もの血塗られたタオルを持ったクゥが尋ねる。

 

「心配?」

「…正直、行ってほしくありませんでした。消耗がひどいと思います」

「そうだね…」

 

ケイトも治療をした。

だが、ケイトが治せるのはあくまでも壊れた部分や傷ついた部分。

ウイルスだの細菌だのを殺したのはあくまでも薬。

ケイトの能力の欠点の一つだ。

苦しみが続くが、体を常に直すことで命を保ち続けその間に薬の投をする。

一見治ってしまえばいいじゃないかと思いがちだが、精神的に辛いものがあり体力もかなり削られる。

これをした後は休むべきなのだ。

 

「でも主を想っている使い魔をここに留めるのもひどい話だろ?」

「……そうかもしれませんね」

「ところでクゥは僕が危なくなったらサクと同じようにする?」

「しませんね」

「…なんで?」

「不死身の人間が一体何を言っているんですか」

「何度も言うけど不死身じゃ無いんだけどなぁ」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

肌寒い空間。

上空とはそういう場所だ。

酸素だって薄くなっている。

常識だろう。

そんな空間で大乱戦が起きている。

 

人対機械兵。

地球ではお目にかかることはできないだろう。

更にもう一つ、お目にかかることができないのは鏡侵空域。

一定より高く飛ぶと方向間隔がおかしくなりいつの間にか元の場所に戻っている。

これが人にとっては一番厄介だろう。

機会はどう処理するかは知らないがそんなわけのわからないことが起きたら頭の中で一度物事の整理が必要となる。

 

少し離れたところでグネズトたちが気を見計らっていた。

フラットの顔に一滴の血が落ちてきた。

 

「血の雨…ってやつなのね、これが」

 

正真正銘そのものだろう。

比喩なんかではない。

恐ろしいのが肉体そのものが降ってくることもあるということ。

バランスを崩しても地上までは距離があるのだから体制の立て直しは可能だが、気絶なんてすれば地面に叩きつけられてあの世行きだ。

 

「それよりも…どうする?」

「ケイトを連れてくるべきだったな」

 

イプシンの問いにグネズトが頭を掻く。

問題視しているのは敵の数だ。

空が真っ黒く覆われ、どこに抜け穴があるのか機械兵が次から次へと増えてゆく。

ケイトさえいれば爆発でも何でもして簡単に穴ができただろうがそうはいかない。

敵の本陣につく前まで願わくば万全の状態で行きたい。

 

回り道をして敵がいないところから回るのもアリだがことは一刻を争う。

 

「シューレス」

「人相手限定だ」

「ウリス」

「巻き添え覚悟なら問題なし」

「姉貴、あれに穴を開けるのは大変だヨ?」

「イプシン」

「私一人の突破なら簡単だよ?」

 

相手の本陣に近づけないことには何もできない。

 

「お待たせしたのー」

 

そこにミリーナが現れる。

何もつけずに空を飛ぶ少女のその姿はどこか違和感を感じさせる。

 

「別に待ってないわ」

「?」

「あれよ、あれ」

 

真っ黒に覆われた空を指さす。

人の影も見え隠れするので何か黒い虫が蠢いているようで気味が悪い。

 

「貴方の瞬間移動は使えないの?」

「そんな全員を運ぶなんて無理なの。それに困ってるなら好都合なの」

「?」

「まず一つ、イプシンさん以外のドールを少しいじくったからその説明ができるの」

「いじくった?」

「うん、もう一つが―――」

 

ミリーナの台詞を遮るかのように爆音が響く。

さっきまで無かった攻撃に少し戸惑う。

爆音の方では敵味方問わず一つの火の玉が呑み込んでいる。

爆発であるのは間違いないはずなのだがなぜかその玉は一向に消える気配がない。

小規模の太陽ができたかのようにそこにとどまる。

 

「あれは…?」

「貴方たちへの贈り物よ♪」

 

リリアの耳元でささやくような声。

背筋がゾワッとした。

もう悪寒が走るとかそういうものではない。

危険と嫌悪にも近い何かを本能的に悟ったのだ。

 

裏拳のごとく腕を振り回りしたがそれは見えない障害物によって止められる。

 

「相変わらずのスタイルにせっかちな性格…、早く弄りまわしたい」

「その声…!」

「あら、貴方が先に気づくのかしら?でもまぁ―――」

 

何か見えない障害物がある空間、そこに1人の女性が姿を現す。

 

「ナタリー!」

「久しぶりね銀髪、約束通り殺しに来てあげたわ」

 

突然の敵襲。

だが、グネズトたちの行動は素早い。

話を聞いているのでむやみな攻撃はせず、距離をとる。

 

「グネズト」

「分かっている。リリア、フィリア、ここは任せる」

「「はい!」」

 

グネズトたちがその場を離れる。

何の打ち合わせがあったわけじゃない。

だが、それが最良の選択。

 

相手はフィリアを殺しに来た、だがリリアにも異常な興味を示している。

本来ならリリアとウリス、或はマートを置いてその場を離れるがフィリアを連れてきて敵が増えては面倒。

だが3人を割くのはつらい。

だからこの2人。

 

案の定ナタリーはそちらに目を向けることすらしなかった。

 

「追いかけないのね?」

「標的はいるもの。ああすればUのネーム持ちが道を切り開けるでしょ」

「それをわかった上で…?」

「貴女たちは私たちをまともな軍隊とでも思ってるの?」

 

そんなことは思っていなかった。

それは間違いない。

だが、機能している以上遊び半分の子供のグループとも思えない。

 

「私たちは自分の利益のために動いてるの。同じ帝国出身という繋がりはあるけど強い仲間意識はないわ。だからこそここまでできたのよ、あの人は」

「………そんな組織がいつまでも機能できるなんて―――」

「そうよ、不安定。だからこそ、私は自分のしたいことをする。リリアといいことを…ね」

 

リリアの背中に再び寒気ではないそれ以上のものが走る。

そしてその理由をなんとなくリリアは理解した。

 

クレアに何かされそうな時も悪寒が走る。

だがそれは嫌悪とかではない。

まさか、されるのが好きになったというわけではない。

今でも危機感を煽るように悪寒は走るのだから。

認めたくはないが、どこか安心できる自分がいるのかもしれない(されるのは本当に嫌である)。

 

だが、ナタリーの場合は違う。

自分を人と思っていない。

使い捨てのおもちゃのように思っているのが分かった。

代わりはいくらでもいる、だが一度欲しくなったものは手に入れたい。

ある人からの話がそれに信憑性を持たせていた。

 

『私がエジリスの部隊にいたのは…それも理由の1つよ』

 

その言葉がリリアの頭の中で再生された。

 

「悪いけど私は玩具にされて気分がよくなるほど変態じゃないの」

「…何言ってるの?3食飯はつくし、部屋だって提供する。私、自分の伴侶には優しいのよ?」

「貴女よりカーリャからの話のほうが信用できるの」

 

その言葉にナタリーは確かに反応した。

思いがけない名前が出てきたから当然かもしれない。

 

「元カノって言っておきながら随分ひどい扱いをしてたらしいじゃない」

「…聞いたの?」

「いい酒を飲めるかどうかは分からないけど、愚痴ぐらいは聞いてあげるつもりよ」

「………そう」

 

明らかにナタリーの雰囲気が変わる。

その変化に気づいたと同時に見覚えのある半透明の正方形が宙にいくつも出現する。

 

空気中は暑い。

だが、ナタリーの周りだけ何か寒気を感じる。

実際に素肌で感じるわけではない。

視覚がそう訴えていた。

 

「悲鳴は嫌いなの、貴女のことが好きだから。でも―――」

 

突然浮かべる満面の笑み。

彼女の表情とその場の感じは全く合わない。

まだ「歪んでいる笑顔」というもののほうがふさわしいだろう。

 

「それ以上に貴女が欲しい!必ず生かして連れて帰る、四肢を捥いでも!眼球が抉れても!顔面が潰れてもねぇ!」

 

正方形の物体が一斉に襲い掛かる。

透明なその物体がどんな物かは重々承知している。

とてつもない強度を持ち、リリアの銃弾さえ反射する。

全力で撃つにしても少しばかり時間が必要。

今は逃げるのみ。

 

「銀髪、まずはあなたよ」

 

死の宣告を聞いたフィリアだがいたって余裕。

なぜなら相手は自分の速さについてこれないから。

目で追うことができない速さを出す自分を捕まえるなど、慢心が見え隠れするかもしれないが愚の骨頂。

時間稼ぎはできる自信があった。

 

「(まずは…)」

 

ナタリーの顔に一撃。

足がナタリーの顔に当たった。

当たっただけ。

吹っ飛びもせず、苦痛に顔をゆがめることもせず、傷なんてありはしない。

 

「相変わらず癪に来る大平原ね…!」

「もうすぐA突入します!」

「一緒よ、どっちも」

 

足をつかもうとしたナタリーの真下に移動する。

そのまま顎に向かってアッパー。

だが、威力を出すことはできない。

無駄に力を入れてしまえば自分のこぶしが崩壊しかねないからだ。

今フィリアがやることは敵を倒すことではない。

それは…

 

「リリアに時間を与えること」

 

下にいるフィリアを見下しながらしゃべるナタリー。

 

「以前はつい頭に血を登らせてしまったけど今回はそうはいかないわ。言ったでしょ、貴女を殺すって」

 

突如フィリアの視界が薄い青色になる。

何が起こったのか分からず、いったん離れるフィリア。

しかし、背中に何か障害物がぶつかる。

 

「これは…」

 

ナタリーの使っている謎の半透明の正方形が2人を囲んでいた。

もともと薄い青がかっている正方形だったのでそれでフィリアの視界がおかしくなったように感じたのだ。

ただ見るだけなら正直きれいとでも言うべきかもしれないその色。

心を落ち着かせる青。

だが、今のフィリアは焦っている。

閉じ込められた。

 

「鳥籠に入れられた鳥って今の貴女みたいな気分のかしらね、銀髪?」




ネーム紹介



P(水魔法特化)
魔力から水を作り出し操ることができる。
もちろんもともと存在した水を使うことも可。
ただ、氷になった場合操ることができなくなるなど固形状のものは扱えない。
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