異世界にて〜魔法と科学の小競り合い〜   作:tubukko

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久しぶりの投稿…、近頃は忙しくて大変です。
年末になるとかなり楽なのですが、いわゆる駆け込みってやつでしょうか?

何言ってるんだ、俺?

今年はあと2話ほど投稿して100話目指す予定なのでこれからもよろしくです。


…あくまでも予定ですからね?


侵入

「これ、持ってって」

「?」

 

出撃前、わずかな時間でミィヤにあるものを渡されていたマーシャ。

いざ本当の殺し合いとなると緊張が走るのも無理はないが周りの空気は張りつめていた。

 

そして使い魔の姿。

別に駄々をこねているような奴いない。

みんな、信頼しているのか緊張をほぐそうといつも通りに接している。

 

グネズトの部隊は自分たちのみで乗り込むつもりである。

これでは戦争というより殺し合いのほうが正しいだろう。

場合によっては殺し合いというバランスのとれた状態にすらならないかもしれない。

 

「これは?」

「お守りってやつよ、リョウに会ったら渡しておいて」

 

マーシャが持っているお守りというのはキーホルダーといってもあながち間違いではない。

そこらで買った大した値打ちもないものだ。

別に母が残していった形見というわけでもない以上、なくなってもあまり何とも思わない。

 

だが、ミィヤが渡したのはこの世界では珍しい地球の日本でよく見るお守り。

不思議そうに眺めたマーシャは中身に何が入っているのかと見ようとする。

 

「駄目よマーシャ」

「?」

「そこは開けちゃダメなの。開けたら呪いが降りかかるわよ」

「呪いって…」

 

大げさに言ったのか、ミィヤ自身が失笑する。

 

「マーシャ、10分前だ」

「はい。ミィヤ、確かに預かったわ」

「頼んだわよ」

「約束よ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ネー、これいふまへふへへるノ(これいつまでつけてるの)?」

ひゃべりにくいひ、あほふかへたんへふけほ(しゃべりにくいし、顎疲れたんですケド)

「上空に行くにつれ酸素は薄くなる、知ってるだろ。黙ってつけてろ」

 

はぁ、と肩を落とすクリティウス姉妹。

口に小型の酸素マスクを銜えている。

被っているのではない。

あまり長い時間持つわけではないが何も大気圏を突破したいわけではない。

十分だ。

 

唯一酸素マスクを着けていないグネズトは通信をしながら進んでいる。

なぜかミリーナはつけていた。

上空というのは雲以外何もないもので正直迷う。

ただ、今回は別に指示は必要ないのではと全員が思う。

理由は見えているから。

とてつもなく大きな黒い球体。

何もない空間にそんなものがあれば普通に見える。

 

なんへこうへきしなひんへすか(なんで攻撃しないんですか)?」

「安心しろ、たった今入り口を見つけた」

 

呂律が回っていないにもかかわらずしっかり理解して答えを返してくれる。

グネズトが球体に近づく。

正直どこに入り口があるのかなんてさっぱり。

ただ、後ろで黙って見守る。

 

グネズトは少しの間、ただ球体を見ていた。

彼はこれを見たことがあるのか、あってもおかしくはないが。

手で球体に触れ、撫でる。

それだけをしていたように見えた。

だが突如、音もなく球体に入り口ができる。

 

「入れ」

 

警戒を微塵もする様子がない。

黙って後ろからついて行く。

 

球体の中は地上と同じ状態を保っているのか、息がしっかりできた。

耳につけていた通信機を調整し、酸素マスクをとる。

扉が開いても突風だのなんだのが起きないのは魔法のせいか。

 

『みんな、無事ついたかしら?』

 

近くから視ているのかとでも言いたくなるほどちょうどいいタイミングでシェリーからの言葉が頭に響く。

 

『まず初めに通信機の繋がりが途絶えました、おそらく使えないと見ていいわ。私の言葉もいつ届かなくなるかわからないから注意してね』

 

調整していた通信機をとり、そこに捨てるクリティウス姉妹。

せめて使えるのなら持って帰ってほしい。

 

『他にも影響があるかもしれないから細心の注意は忘れないこと。内部の構造は…大丈夫ね。絶対生きて帰ってきて』

 

いや、大丈夫じゃねぇだろ!とツッコみたかったがグネズトは黙っていた。

来たことがあると見て間違いない。

そしてその時からおそらく構造が変わっていないのだろう。

それにミリーナもいる。

少なくとも迷うことはない。

 

外見がとても大きかった球体ではあったが、中身もそれなりの大きさがありイプシンが感嘆の息を漏らす。

変哲もない壁。

タイルをただ並べているかのようなとてももろそうな壁。

機械だの、敵兵だの手荒な歓迎を想像していた人にとっては拍子抜けであることに間違いはない。

 

「みんな、こっちなの」

 

何かを見つけたかのようにミリーナが先を歩く。

さながら待つことができない子供の様。

こっちとは言っていたものの、通路は一つしかない。

 

「分かるのか?」

「近くなったから感じ取れるの、リョウが近くにいるの」

「どこなの!」

「直線で言えば…」

 

少し首をかしげながらも地面を指さす。

 

「ならこの壁を―――」

「これを壊すことはできないの」

「何でよ、ただの壁でしょ?」

「さっき見たFのネーム持ち、そのネームの魔法がかかってるの」

「………」

「もし、2人がすでに倒していれば話は別だけどまだなら無理なの。すでに私が経験済みなの、間違いない」

 

彼女自身は何度もここを訪れている。

何もしなかった、ただ説得をしようとしていたわけではない。

わかっていたことであるが故、ある程度は調べていた。

 

「道なりに進むしかないの」

「道なりは分かっている、改装していなければいいのだが」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「ん…?」

 

体がだるい。

顔に光が直接当たっているのが分かる。

反射的に手で光を遮ろうとしたのだが動かない。

何かに引っかかって動かないのだ。

 

目を細めながらもリョウは状況を確認する。

さっきまで何をやっていたのか少し不明瞭だ。

 

「ご機嫌いかがかしら?」

 

声が聞こえたほうに顔を向けると一人、知らない女性。

別段、変わった格好というわけではない。

見覚えのない人物に警戒心を抱く。

 

「分からない?じゃあ…」

 

するとあろうことか、女性の姿がミィヤに変わる。

服装こそ変わらずだが顔や背格好はまさにミィヤそのもの。

そこまで来てようやく何が起きたのかを理解する。

 

「…なんで殺さない?」

「一言目がそれ?言葉は選ばないと本当に死ぬわよ。貴方も生き延びたいでしょう」

「その姿で話すな、ミィヤはそんな話し方をしない。不快だ」

「忠告はしっかり聞くものよ?」

 

元の姿に戻る女性。

 

「さて…、じゃどういう遊びが好きなのかしら?薬物投与?解剖?それとも電気マッサージ?」

「…………」

「そんな目をしたって駄目よ。悪いけど貴方の体についてはすでに調べ終わってるの。いや、体というよりはドールについてかしら」

「どういう意味だ?」

「さぁ?カザキさんは自分だけ理解してどっかに行っちゃったから」

 

リョウに見せつけるかのように注射器を持つ。

少しだけ液体を押し出し、それらしい雰囲気を出す。

 

「私は貴方の処分を任されたの。まぁ要するに生かすも殺すも私の気分次第ってことね。でね、ここからが本題なんだけど………私の下につく気はない?」

 

予想外の問いにリョウは顔を訝しめる。

 

「私はね、人体が大好きなの。科学がこんなに発展した時代でも未だに解き明かされていない謎がある」

「………」

「でも人体ってのはそうそう簡単に手に入るもんじゃないの、とくに生きているものは。でも戦時中なら、体がたくさん手に入るの。それも合法的に」

「非合法だろ!」

「でも体がたくさん手に入ると今度は私一人では大変。だからさ、助手としてどう?」

「断れば?」

「相応の結果が待ってるわ」

 

誰にでもわかるその言葉の意味。

賢明な人ならばここでは嘘でも下につくのが当然。

敵もそれを考慮した上で動くはずだ。

だが…

 

「……悪いが断る」

 

リョウは断った。

 

「自殺志願者には見えなかったのだけれど?」

「そうだ、死ぬつもりもない」

「へぇ…、面白いわね。予想できなかった展開よ。でも…」

 

瓶に入った液体をリョウの目の前で揺らす。

何が入っているのか、液体ということ以外は分からない。

 

そして女性、Sの表情も心底明るかった。

嬉しそうだった。

 

「なら何されても文句はないわ―――」

 

しかし、突如その表情に変化が現れる。

怪訝な顔をしたかと思うと誰もいないはずの部屋の入口であろう場所を見る。

 

「………………………………」

 

黙り続けること約10秒。

舌を打つと薬品を机に置く。

 

「少し待ってなさい、すぐに戻ってくるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋を出たSは足早に上を目指す。

 

「検体希望ならもっとおとなしくしてほしいわ…」

 

ミリーナたちが侵入してきたことを理解したのだ。

彼女が好きなのは謎の探求。

人を切り刻むことではない。

解剖はあくまでも過程であって結果ではない。

寸分のミスがすべてを失敗に終わらせるその世界にとってわずかとはいえ、揺れとは邪魔で仕方のない物。

排除するしかない。

だが、要因はもう一つある。

 

「C、いるんでしょ?」

 

おもむろに叫ぶとどこからともなくCが姿を現す。

彼は別にSの部下でなければ彼氏でもない。

 

「なんでいるのよ」

「主君にあいつ(リョウ)が死ぬまで見張っていろと言われた」

「つまり私のことも?」

「結果的にはな」

「邪魔よ、貴方はさっさとどこぞの彼女と盛ってくればいいじゃない。大した忠誠心もないくせに」

「……」

「まぁ、居たかったらずっとここに居れば?私は少しやってくることがあるから」

 

それだけ言うとその部屋を後にする。

リョウが出口だと思っていた扉、実はその奥にはもう一つ大きな部屋がある。

部屋というよりは競技場と行っても過言ではないほどの大きさを誇る部屋。

相変わらず、タイルが敷き詰めてあるだけに見える部屋の構造ではあるが。

 

リョウのほうを見る。

マジックミラーの様になっており、あちらからは見えないがこっちからは見える。

実際は逆の仕様だったようだが組み替えたのだろう。

ベッドに寝っ転がったままで動こうとはしているがとても抜け出せるようには見えない。

 

「……………」

 

ブレーベは決めた。

「大した忠誠心もない」、そう言ってくれたのが少し考えを柔らかくしたのかもしれない。

初めてSに感謝したなと思う。

 

「フラット、超えてみせるぞ」

 

ブレーベもその部屋を後にした。

 




ネーム紹介



R(幻聴)
これをもって出てきた敵は音を消すということしかしなかったが本来の使い方は幻聴。
あらゆる方向から音を発生させ、敵を惑わす。
当たり前ながら水の中では効きにくかったり、真空では無効。
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