ストライク・ザ・ブラッド 蒼を継ぐ者   作:テルメン(白)

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四章

取り合えずラ・フォリアの乗っていた救命ポットに向かった。

 

「本当に王女だったんだな・・・・・」

 

古城が救命ポットを見てそういう。

 

「ま、そうだよな」

 

始めて見たときはもう少しやんちゃだった。

 

「龍牙、失礼ですよ」

 

ラ・フォリアに頬をつねられる。

 

「何も言ってないだろ」

「いえ、心の声が聞こえたので」

「最近の王女は心を読めるのか?」

「む、やっぱり」

 

両頬を引っ張り変な顔になってるのがわかる。

 

「ひたいひたい!!ひゃひふんだ!!」

「ぷっ、あははは、龍牙は変わりませんね」

 

頬を叩かれた。痛い。

 

「人はそう変わるものじゃねーからな」

「そうですか」

 

後ろの二人が空気だった。

 

「あー、いいか?」

 

古城が龍牙とラ・フォリアに声をかける。

 

「あなたが龍牙の言っていた友達ですね。名前は暁古城か矢瀬基樹」

「暁古城だ」

「では、そちらは?」

「はじめまして、獅子王機関の姫柊雪菜です」

 

古城と姫柊が自己紹介をする。

 

「では、古城、雪菜、わたくしのことはラ・フォリアと気軽に呼んでください」

「え?いえ、ですが、しかし・・・・・」

 

いちおう政府の機関だから馴れ馴れしい呼び方はできないようだ。

 

「そう・・・・・愛称という手もありますね」

「やめとけ」

 

ラ・フォリアの頭を掴み止めさせる。

 

「ほら、姫柊も面倒なことにならないうちに呼んでおけ」

「わかりました。ラ・フォリアこれでよろしいですか?」

 

ラ・フォリアは満足したように微笑んだ。

 

「で、あんたはなんでこんなところにいるんだ?」

 

確かに王族がこんなとこにいるのがおかしいな。

 

「龍牙に会いに行く途中、船が撃墜されたのです」

「って、俺に!?」

 

龍牙たちは驚く。

 

「撃墜・・・・・!?」

「ひょっとしてメイガスクラフトにですか?」

 

二人は他のとこだったようだ。

 

「そうです。他にも用事はあったのですが、一番の目的は龍牙とデートすることです。あ、雪菜の質問の答えは正解です。おそらく、わたくしを拉致するためでしょう。急かしたバチがあたったのでしょうか?」

 

そういいながら苦笑するラ・フォリア。

しかし、王族の護衛がそんな簡単に、と発言しようとしたが先に古城が訊く。

 

「・・・・・メイガスクラフトの連中、身代金でも要求する気だったのか?」

 

そんなわけない。それなら適当な人間を拐った方が効率がいい。

 

「彼らの狙いはわたくしの身体ーーーーアルディギア王家の血筋です」

「・・・・・血筋ね」

「はい。アルディギア王家に生まれた女子は、ほぼ例外なく全員が強力な霊媒ですから」

「霊媒、あいつら生け贄にでもするつもりか?」

「たぶん違うと思います」

 

まあ、事象兵器を作るのにラ・フォリアほどの魂があれば強いものが作れるがそれを一企業ができるとは思わない。

 

「ーーーーメイガスクラフトに雇われている叶瀬賢生は、かつてアルディギア王宮に仕えていた宮廷魔導技術者でした。彼が知っている魔術奥義の多くは、霊媒としての王族の力を必要とします。だから危険を冒して、わたくしを拐おうとしたのでしょう」

「叶瀬賢生って・・・・・叶瀬夏音の父親ののとか?」

 

古城はその名前を聞かせれたとき息を呑んだ。

 

「あの男は叶瀬夏音の本当の父親ではありません」

「それは知っている。叶瀬は子供のころは修道院で暮らしてたって言っていたからな」

「アルディギア王家の血筋なんだろ?叶瀬夏音は」

 

ラ・フォリアはため息をついた。

 

「やはり、龍牙には隠し事はできませんね」

 

白状するようだ。

 

「叶瀬夏音の本当の父親は、わたくしの祖父です」

「はぁー、つまりあれか」

「ええ、あれです」

「浮気だな」

「ええ、浮気です」

 

龍牙の言葉を繰り返すラ・フォリア

 

「わたくしは祖父の名代として、デートのついでに叶瀬夏音を迎えに行く予定でした」

「いや、デートがついでたろ!?」

 

この王女はどれだけデートがしたいんだ?

 

「それで、霊媒として叶瀬夏音を引き取ったのか」

 

落ち着いて質問する。

 

「・・・・・龍牙は知っているのですか、賢生の魔術儀式がどのようなものか」

 

ラ・フォリアの声がこれまでにない深刻な声だった。

 

「叶瀬夏音は、自分の同類と殺し合ってた」

「そうですか。やはり賢生は模造天使を」

「模造天使?」

 

模造天使と書いてエンジェル・フオウか。

 

「賢生が研究していた魔術儀式です。人為的な霊的進化を引き起こすことで。人間をより高次の存在へと生まれ変わらせるのが目的ですが」

「ふざけてるな」

 

叶瀬夏音とアラクネが重なる。

 

「あれが高次の存在?皮肉だな、上を目指せば怪物になるか」

「龍牙・・・・・あなた」

 

アラクネを知っているラ・フォリアは肩に手を置いた。

 

「また、追手か?」

 

船が水飛沫を撒きながらこちらへ向かってきた。

 

「って、やる気無しか」

 

船は白旗をあげている。

 

「罠か?」

「それでも乗るしかねーだろ」

 

古城も逞しくなったな。

 

敵が上陸した。

 

「よう、バカップルに眠り王子。元気そうだな。仲良くしてたかーーーー?」

「ロウ・キリシマ、予想してたとはいえこんな島に置き去りにしてくれたな」

「まあ、それでは、感謝いたしませんと。龍牙を連れてきてくれてありがとうございます」

「って、なんで俺は礼を言われてんだ?」

「俺もわからん」

 

古城に肩を叩かれ慰められた。

 

「それはそうと久しぶりですね、叶瀬賢生」

 

無防備に歩み出たラ・フォリアの後を歩く龍牙。

 

「殿下におかれましてはご機嫌麗しく・・・・・七年ぶりでしょうか。お美しくなられましたね」

「わたくしの血族をおのが儀式の供物にしておいて、よくもぬけぬけと言えたものですね」

 

冷ややかな口調で、ラ・フォリアが答えた。

 

「お言葉ですが殿下。神に誓って、私は夏音を蔑ろに扱ったことはありません。私があれを、実の娘同然に扱わなければならない理由ーーーー今のあなたにはおわかりのはず」

「実の娘同然の者を、人外の者に仕立て上げようしたというのですか」

 

ラ・フォリアの口調に、非難の響きが混じる。

 

「いえ、むしろ実の娘同然なればこそ、と申し上げましょう」

 

悪びれのない賢生。

 

「叶瀬夏音はどこです、賢生」

「我々の用意した模造天使の素体は七人。叶瀬はこれらのうち三人を自ら倒し、途中で敗北した者たちのぶんも含めて六つの霊的中枢を手に入れました。人が生まれ持つ七つの霊的中枢とあわせて、これで十三。それらを結びつける小径は三十。これは人間が己の霊格を一段階引き上げるのに必要十分な最低数値です」

 

賢生の説明を聞いて、姫柊が突然青ざめる。

 

「まさか・・・・・!?」

「姫柊?」

「叶瀬さんは、そのために自分の同類を・・・・・!?なんて・・・・・ことを・・・・・!」

「つまり、蠱毒の応用か、外道が」

 

つまり叶瀬夏音が一番生命力の強い素体だったというわけだ。

一歩間違えれば死んでいたぞ。

 

「わかってもらおうとは思わん。霊的中枢とは、チャクラなどとも呼ばれる、いわば霊力によって奇跡を生み出す回路だ」

 

賢生が続ける。

 

「すべての人間に等しく備わっているが、それを駆動できる者は多くない。一流の霊能者でも、能力の三割も引き出せれば上等だろう。すべて使いこなせば、覚者として、神仏に等しい力を得られるであろうにな」

 

賢生は嘲笑う。

 

「回路の出力が足りなければ、数を増やせばいい、というのが賢生の仮説です。七人の模造天使候補者は、魔術的に人体の限界まで強化された霊的中枢を、それぞれひとつずつ持っている。そして他の候補者の霊的中枢を奪って自らの体内に取り入れることでーーーー」

「人間の肉体の霊的容量を越えることなく、霊的進化が可能になる、というわけだ。ヒトよりも神に近きモノ、すなわち天使に」

 

理解したくもない考えを理解した。

 

「だけど、なんでそんな儀式に、おまえらの会社が手を貸してるんだ?メイガスクラフトは掃除用ロボットメーカーじゃなかったのかよ」

 

古城はキリシマを睨みながら訊く。

 

「いやー・・・・・それがな、うちの会社やっべーんだわ・・・・・経営状態が」

「は?」

 

経営状態が悪い?そんなことで一人の人間をモルモットにした?

 

「とにかくそういうことだから、こっちの要求を伝えるわ。まずはアルディギアのお姫様、あんたは無駄な抵抗をやめて投降しな。大丈夫よ、大人しくしていれば命まではとらないわ」

「企業の走狗ごときが、このわたくしに指図しますか。ずいぶんとのぼせ上がったものですわね」

 

ラ・フォリアが強気な発言をする。

 

「舐めた口利いてくれるじゃないの、雌豚。まあいいわ。今すぐあんたを殺す気はないから。代わりに死んだほうがマシってくらい気持ちいい思いさせてあげる」

「お前ら、もう黙れよ」

 

ラ・フォリアを雌豚扱いしておいて渡せだ?お断りだ。

 

「第666拘束機関解放、次元干渉虚数方陣展開!」

 

神仏に等しい?関係ないな。

 

「見せてやるよ、『蒼』の力を、蒼の魔道書、起動!!

行くぞ!!この外道どもが!!」

「呪われた右腕・・・・・そうか!!貴様が呪われし英雄か!!」

 

賢生がほざいている。

 

「神に近づく?成り下がるの間違いだろうが!!」

 

賢生へ向かって走る。

 

「成り下がる・・・・・だと!?いいだろう、第四真祖の前に貴様から倒してやる。起動しろ、XDA-7!!」

 

銀色の髪をした少女が浮かびあがる。

 

「叶瀬、そんなもんに成り下がってんじゃねーよ!!」

 

龍牙は少女へ叫ぶ。

 

「っ!」

 

叶瀬の顔が一瞬強張った。

 

「今すぐ目を覚まさせてやる。待ってろ!!」

 

しかし、その言葉を拒絶するかのように叶瀬夏音は光剣を投げつけてきた。

 

「魔銃・ベルヴェルク、召喚、接続!!」

 

蒼の魔道書に事象兵器を接続させる。

龍牙だからこそできる荒業だ。

ベルヴェルクの能力で光剣を空間ごと撃ち抜く。

 

「Kyriiiiiiiiiiiiiーーーーーーーー!」

 

叶瀬の咆哮と同時に翼面の眼球が、太陽のような眩い光を放った。

放たれる閃光は、巨大な光の剣となって、上空から降りそそぐ。

 

「うぉぉぉお!!」

 

それをすべて空間ごと撃ち抜き無力化する。

 

「バカな!?今の夏音は、異なる次元の高みに至りつつあるはずだ!!」

「んなら、その上をいく攻撃をすればいいだけだ!!」

 

叶瀬との撃ち合いに競り勝ち片翼を撃ち抜く。

 

「OAaaaaaaaaaaーーーー!」

「暴走!?っち!!」

 

光の剣が解き放たれた。

撃ち抜こうとしたが、叶瀬を中心に暴風が吹きバランスを崩した。

光の剣は古城に突き刺さる。

 

「古城!!」

「暁先輩!?」

「古城!」

 

吹き荒れる暴風は周囲の海水を凍りつかせながら暴風圏を広げていった。

 

「叶瀬賢生。どうなってんのよ、これは」

 

ライダースーツを着た女が、非難の視線を賢生に向ける。

 

「わからん。まだ、被昇天の段階には達していないはずだが」

「あっそう・・・・・はー、かったる・・・・・やる気失せたわ」

 

ライダースーツの女は背を向けて歩き出す。

 

「おい、BB」

「とりあえずいったん退くわ。あんなのに巻き込まれるのはごめんだからね」

 

叶瀬を取り巻く暴風は、今や完全に凍りつき、巨大な氷の柱と化していた。

 

「先輩!暁先輩ーーーー!」

 

少女は、倒れている第四真祖の親友に取りすがって彼を呼び続ける。

 

「いい加減にしろよ。お前らーーーー!!」

 

少年は撤退した敵を呪うようにそれを言葉にする。

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