絃神島中央空港は、旅客たちでごった返していた。
「ギリギリ間に合った・・・・・か」
電光掲示板の時計を見上げて、古城が荒い息を吐く。
時刻はすでに十五分ほど過ぎていた。しかし待ち合わせ相手の姿は見えない。
「本当にもう!古城君の準備が遅いから、あたしたちまで汗だくだよ。せっかくオシャレな服を選んできたのに。どうしてこんな日に寝坊するかな。信じられない、ホントあり得ない」
凪沙がぷりぷりと怒っていた。
「悪かったよ!昨日の夜の騒ぎで目が冴えて眠れなかったんだよ!」
「ん?昨日の出来事ってなんだ?」
古城は突如聞こえた声に反応し振り向く。
「龍牙、どうしてこんなとこにいんだよ?」
「そりゃ、お前について来たんだよ」
「声ぐらいかけろよ・・・・・」
あきれたような声を出した。
「ねえねえ、自然すぎて昨日聞き忘れてたけどこの王女様みたいな人誰?」
ラ・フォリアを見て凪沙は龍牙に訊く。
「彼女」
「へ?ホント!?」
「はい、龍牙の彼女のラ・フォリア・リハヴァインです」
龍牙の腕に抱きつきながらラ・フォリアが答える。
「おいおい、こんな美人とどこで知り合ったんだ」
矢瀬が訊いてきた。
「あれだよ、旅行に行ったときたまたま出会ったんだよ」
「その時に助けてもらいました」
まあ、間違ってはないな。
「そういえばあんたって高スペックよね」
藍羽が感心したような声を出した。
王女と知っているので大方テロリストから助けたとでも思っているのであろう。
テロリストならどれだけマシか。
「ーーーー古城!」
頭上から、誰かの声が聞こえた。
顔を上げると、飛び降りてくる人影が見えた。
活発そうな雰囲気の娘だ。
「ウロボロス!!」
つい反射的にウロボロスで拘束してしまった。
「ふぅー、いったい何を考えているのですか?こんな場所で飛び降りるなんて、もしも誰かが下敷きになったらどうするつもりだったのですか?」
うっかり拘束したのを説教するためにしたと思わせる。
「しかも、今の時期はーーーー」
丁寧口調で威圧する。
「お、おい、その辺にしてやんないか?」
矢瀬が肩を掴み止めてきた。
「はぁー、わかったよ」
ウロボロスの拘束を解く。
「う、ご、ごめん」
若干涙目になっていた。
「あー、なんだ、これに懲りたら無茶するなよ。ユウマ」
古城が降りてきた少女を慰める。
「んで、名前は?」
「あ、そうだね、仙都木優麻です。どうぞよろしく」
「仙都木?」
その名前が記憶に引っ掛かった。
「おい、龍牙、行くぞ」
「あ、悪い」
古城の後ろについて行く。
いつの間にかラ・フォリアに腕を組まれていた。
「ここは俺の奢りだ」
「ヒュー、相変わらず太っ腹」
「古城とは違うな」
藍羽と矢瀬が龍牙を誉める。
「悪かったな、貧乏で」
「ちょっと、やめてよね。私まで貧乏みたいじゃない」
「う、すまん」
「あはは、古城は相変わらずだね」
優麻は笑って古城を見る。
「失礼なやつだな」
「ごめん、でも変わらないままでよかった」
「・・・・・なんだよ、急に」
「なんでもない」
優麻は誤魔化すように答える。
「お待たせしました。こんなので大丈夫ですか?」
「ほら、適当に頼んでおいたぞ」
龍牙とラ・フォリアは食べ物を配る。ちなみに藍羽のは五人前渡している。
「おお、なかなかいけるな」
「この店の味がわかるとは、流石だな、龍牙」
ウンウンと矢瀬か頷く。
「あ、すまん、ちょっと席を外す」
龍牙は立ち上がりトイレへ向かう。
「お、俺もか」
矢瀬も電話が来たのでトイレへ向かった。
「ったく、あいつらはなにしてんだか」
男子トイレ
「もしもし」
『繋がりましたか、今から状況を簡潔に報告しますよ。この島の空間が歪められています。いやー、参りましたよ。この歳で迷子だなんて』
「マジかよ。メイヤー姉妹が原因か?」
『おそらくは』
「さっさと捕まえないと、迷子が大量に出るぞ」
『ええ、私たちの仕事も増えますね。迷子預り』
統制機構ではフェスタの間だけ迷子の預かる、所詮迷子センターのようなことをしている。
「ったく、女性の隊員も増やした方がいいんじゃないか?」
『そうですね、私、子供が苦手なんですよ』
九割が男性だからな。
「狙われそうな奴を見張っておく」
『わかりました。では』
電話を切りトイレを出ようとする。
「矢瀬、お前か」
「龍牙か」
矢瀬とばったり出くわした。
「誰からだ?」
「仕事だ。そういうお前は?」
「俺か?彼女だよ」
「俺から話しておくよ、行ってこい」
「そうか、んじゃな」
矢瀬はトイレから出て行った。
「あ、龍牙、誰と話していたのですか?」
「ハザマだよ、空間が歪んでるから気を付けろってさ」
「空間が、そうですか」
面倒な相手だ。レイチェルかコノエでもいたら楽だったろうがな。
「古城、矢瀬が彼女に呼び出されて行ったぞ」
「矢瀬もかよ、浅葱もいっちまうし」
「藍羽もか、お前、絶対巻き込まれるな」
「やめてくれ・・・・・」
古城は半分諦めている。
観光は進み展望塔へ向かった。
「うわ、絶景だね!」
「そうですわね」
凪沙とラ・フォリアがはしゃいでいた。
「展望ホール、初めて来たよ。前から上ってみたかったんだよね。思ってたより全然高いね。わっ
記念メダル自動販売機!キーホルダーも!」
「小遣いならやるからおとなしくしてろ」
中学生に五千円ずつ渡す龍牙。
「やっぱり男はこのぐらいできないとね」
「う、受け取れませんよ」
「私も、です」
凪沙はあっさりと懐に入れ姫柊と叶瀬は返してくる。
「年下が気にすんな」
受けとるつもりは無いと手をヒラヒラさせて後ろを向く。
「受け取っておきなよ雪菜ちゃん夏音ちゃん」
「え、で、でも」
「龍牙さんに悪い、です」
「その方が龍牙くんに失礼だよ」
なぜか凪沙が姫柊と叶瀬に説教していた。
「悪いな、龍牙」
「気にすんな」
古城が龍牙に頭を下げる、
「ん?あれってアスタルテか?」
エレベーターからアスタルテが出てくる。
「捜索対象を目視にて確認」
人工生命体の幼女が機械的な口調で報告するかのように叶瀬を見つめる。
「那月ちゃんになにか頼まれたか?」
メイド服を着た人工生命体に龍牙は問う。
「現状報告。本日午前九時提示連絡をもって教官との連絡が途絶しました」
「・・・・・連絡が途絶?」
「那月ちゃんが失踪でもしたのか?」
古城と龍牙が、訊き返す。それを淡々と首肯するアスタルテ。
「肯定。発信器、及び呪符の反応も消失」
「こりゃ、本格的にコノエに応援を頼むか?」
本部への連絡を考える。
「このような場合の対処手順を、教官から伝えられています」
「対処手順?」
「叶瀬夏音を優先保護対象に設定せよ、とのことです」
「そうか」
那月も叶様の心配をしていたようだ。
「なるほどな、ラ・フォリア、いいか?」
「ええ、夏音と一度ゆっくりと話をしてみたいと思っていましたし」
「決定だな」
叶瀬を家に泊めることにした。
「んで、ここが親父とお袋の部屋だ。入るなよ」
「わかりました」
叶瀬に部屋の案内をしていた。
「ちなみに、危ないものもあるから不用意に物を触るなよ」
「はい」
「んじゃ、俺は夕飯の用意を買いに行くからラ・フォリアと話でもしておいてくれ」
扉を閉めハザマに連絡する。
「すまん、ハザマ調べて欲しいことがある」
『なんでしょうか?今、忙しいのですが』
「仙都木という名前に聞き覚えはあるか?」
『仙都木ですか?心当たりが一つ』
「誰だ?」
『仙都木阿夜、図書館の魔女で今は監獄結界にいるはずですが、この件となにか関係が?』
「いや、なんとなくだ」
『そうですか、それでは』
電話がきれる。
「仙都木か」
「ユウマがどうした?」
古城がドアから顔を覗かせる。
「古城か、一応言っておく気を付けろ」
「な、なんだよ」
それだけ言って夕飯の準備を買いに行った。