ストライク・ザ・ブラッド 蒼を継ぐ者   作:テルメン(白)

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四章

「対応が早いのはいいことだな。歪みがなければあそこに行けたんだが」

 

龍牙は悔しそうな顔をする。

 

「こんなときになんだ?」

 

古城が携帯電話を開く。

 

「なんだこれ・・・・・!?・・・・・浅葱か?」

 

待ち受けを見て古城が驚く。

 

「先輩、どこでこんな写真を・・・・・」

 

写真に見とれている古城を、姫柊が冷ややかに睨んでいる。

 

「ち、違う!俺じゃねえ!知らないうちに誰かが勝手に・・・・・って、え?」

 

古城の携帯の待ち受け画面の隅に、アイコンが追加されていた。

 

「姫柊、龍牙、ラ・フォリア、こっちだ!」

「せ、先輩ーーーーー?」

 

古城が姫柊の手を握り、まったく、関係ない方角へと走り出す。

 

「ついていくしかないよな」

 

龍牙はラ・フォリアの手を握り古城たちを追いかける。

 

「っ、空間の歪みを逆に利用したのか」

 

先程の感覚はカフェを出たときと同じ感覚だ。

 

「ナイスだ古城!いろいろ聞きたいが今は急ぐぞ!!」

「ああ!!」

 

古城を先頭に走り出す。

 

「二百メートル先の交差点を右折だ」

「了解っ」

 

四度目の転移が終わったあと、キーストーンゲートの屋上についた。

 

「ーーーーーって、ここまで怪物に占領されてるのかよ!?」

 

屋上に着地した瞬間、周囲を囲む触手の群れに気づいた古城はたまらず悲鳴を上げた。

数えきれないほどの触手は、幾重にも複雑に絡み合い、古城たちを押し潰そうと殺到する。

それを迎撃したのは、黒い怪物と銀光の一閃だ。

 

「デットスパイク!」

「〝雪霞狼〟ーーーーー!」

 

CT版のデットスパイクのカウンターヒットでほとんどの触手を砕く。

姫柊は残った直径数十センチに達する触手を銀の槍で引き裂く。

 

「ーーーーーユウマ!」

 

魔女たちの〝守護者〟による壁が破れて、その中で行われていた儀式の風景が露になる。

鮮血で書かれた魔方陣の中心に古城の身体があった。

 

「早かったね、古城」

 

振り返った古城の身体、仙都木が古城の名前を呼ぶ。

 

「キミは昔からそうだったよ。なにもわかってないのに、本当に大切な場所に現れる」

「ユウマ・・・・・おまえは・・・・・」

 

仙都木の手には魔導書が握られていた。

 

「心配しないで。この身体はすぐに返す。だから、少しだけ待っていてくれないか。もうすぐ見つけられそうなんだ」

「監獄結界をか?」

「そっちの人は知ってるのか」

 

やっぱりか。

 

「監獄結界にいるお前の血縁者、仙都木阿夜が目的か」

「そう、ボクの母親だよ。生まれてからまだ一度も会ったことはないけどね」

「仙都木阿夜に子供は・・・・・クローンか」

「似たようなものだよ」

 

古城が魔方陣に足を踏み入れる。

 

「ーーーーーそこまでだよ、古城。それ以上彼女に近づかないでくれないかな」

「っ!?なんでおまえがこんなところに・・・・・!?」

 

蛇使いの吸血鬼がそこにいた。

 

「やァ。古城、しばらく見ないうちに、ずいぶん可愛らしい姿になったじゃないか」

 

ヴァトラーの声に反応してブラッドサイズを抜く。

 

「今回の騒ぎ、まさかおまえも一枚噛んでるのか!?」

「いやいや、ボクはタダ待っているだけサ・・・・・彼女たちが監獄結界をこじ開けるのをね」

 

こういうやつは返り討ちに会うのがオチだ。

 

「楽しみだねェ・・・・・異世界の迷宮に封じこめなければならないほどの魔導犯罪者たち。そいつらが一斉に街に解き放たれたらどうなるか。まァ、安心してくれ。脱獄囚ちは、このボクが責任をもって再び捕まえてみせるとも」

 

アズラエル捕まえるとか、無理だろ。

 

「お前じゃ無理だ、ヴァトラー。あそこにはアズラエルがいる」

「最凶の犯罪者か、それは楽しみだ!!」

 

うわ、馬鹿だ。

 

「ーーーーー先輩!下がって!」

 

魔女たちの〝守護者〟の触手が襲いかかってきた。

 

「オラっ!」

「ーーーーーっ!?」

 

龍牙が大剣で、姫柊が槍で触手を切り裂く。

 

「メイヤー姉妹か」

 

仙都木の左右に立つ魔女を龍牙は睨む。

 

「なるほど・・・・・私たちの〝守護者〟に牙を剥くだけあって、小僧にしてはよくお勉強しているようですわね」

「ーーーーーただの攻魔官という訳では無さそうですわね。どうなさいます、お姉様?」

 

手にした魔導書を撫でながら、緋色の魔女が姉の意向をうかがう。漆黒の魔女は、芝居がかった仕草で大きく肩をすくめる。

 

「そうですわね、それにしても、綺麗な肌をしているわね。肌を奪って交換したいところですけど・・・・・」

「龍牙の肌はわたくしの物です!!」

 

ラ・フォリアが突然割り込んできた。

これには敵も味方も硬直した。ヴァトラーでさえ口をだらしなく開けている。

 

「はっ!!」

 

いち早く龍牙が気を持ち直して触手を叩き切る。

 

「い、行きなさい!」

 

魔女も正気に戻り触手で攻撃してきた。

 

「不意打ちとは、随分卑怯なことを・・・・・」

 

他のやつらも正気にに戻った。

 

「気を抜いた方が悪い」

「君も気を抜いていたじゃないか」

 

ヴァトラーが揚げ足を取るようにそう言う。

 

「お前もだろ」

「否定はしないよ」

 

仙都木の手の中で、魔導書が燃えていた。

 

「時間切れかよ」

 

龍牙は舌打ちをして仙都木を睨む。

 

「〝No.539〟が・・・・・!」

 

ああっ、と儚げな悲鳴を上げたのは、漆黒と緋色の魔女たった。

というか、古城の身体の中の碧の魔導書が起動して古城の身体に生命力供給している。

そんな機能つけてないはずなのに、

 

「この魔導書はもう用済みだ。悪いがボクは行かせてもらうよ」

 

仙都木が空間転移のための門を開いた。

 

「お待ちをーーーーー〝蒼の魔女〟」

 

蒼、蒼か、碧に蒼すごい偶然だな。

 

「キミたちはここで彼らの足止めを」

 

考え事をしている間に仙都木が転移した。

 

「ユウマ・・・・・!」

 

古城は無力に立ち尽くしたまま、海上の一点を見つめていた。

 

「あら、お困りのようね、龍牙」

 

突然その場に居ない者の声が聞こえた。

 

「レイチェル!!」

「ええ、話は後、貴方たちは彼女を追いなさい」

 

レイチェルは龍牙たちを転移させる。

 

「ここからは大人である」

「ボクたちが相手をしよう」

 

龍牙たちと交代に獣兵衛とジンが現れた。

 

「っく、統制機構か」

 

図書館と呼ばれる犯罪組織と統制機構とは因縁がある。

両方とも魔導書を集めて何度も衝突した。

ほとんど統制機構の勝利で終えている。

 

「事象兵器、ユキアネサ、召喚」

 

ジンがユキアネサを召喚しユキアネサを左手に持つ。

 

「行くぞ、ジン」

「わかっている」

 

ジンと獣兵衛が刀を抜き〝守護者〟の触手を切る。

 

「統制機構、どれだけ私たちの邪魔をすれば気がすむのよ!!」

「コノエと比べると随分と弱いな」

「全くだよ」

 

ジンと獣兵衛は挑発をしておちょくっている。

 

「ぐ・・・・・が・・・・・小僧と獣人風情がァァァァ・・・・・!」

「わ、私たちの苦労もしらないで!!今日こそは貴方たちを殺して勝利を納めますわ!!」

 

どうやら負け続きなのがそうとう悔しかったようだ。

 

「獣兵衛、下がっていろ」

「わかった」

 

ジンはユキアネサを地面に突き立てる。

 

「永遠に凍てつけ」

 

魔女と魔女の〝守護者〟も凍てつく。

 

「所詮この程度か、下らん」

 

ジンがユキアネサを鞘に戻すと凍った魔女と〝守護者〟が崩れ落ちる。

 

「あとは、龍牙たちに任せるしかないな」

 

獣兵衛とジンは空を見上げる。

 

 

仙都木を追って転移した龍牙たちの目の前には蒼い騎士が出ていた。

その騎士に碧の魔道書はエネルギーを大量に送っている。

 

「ユウマ!」

 

古城が仙都木に向かって叫ぶ。

 

「もうボクに追い付いたのか」

「レイチェルのお陰でな」

 

レイチェルという言葉を聞くと、仙都木はピクンと反応した。

 

「六英雄のレイチェル=アルカードか、厄介な友達を持ったね、それとも彼の友達かい?」

 

仙都木は龍牙の方を向く。

 

「そうだ」

 

龍牙は肯定する。

 

「古城、キミが第四真祖の力を手に入れたことでボクは人を殺さずにすんだ。ありがとう」

「〝雪霞狼〟ーーーーー!」

 

姫柊が槍を輝かせ飛び込む。が、それは空間を歪めて回避されて空を切る。

蒼い〝守護者〟が両手を上げると両手の隙間から雷光。

実体を持つ巨大な獅子。

 

「獅子の黄金・・・・・・!?」

「第四真祖の眷獣!?そんな・・・・・!?」

 

〝獅子の黄金〟は蒼い〝守護者〟から『蒼』を一気に奪い取る。

 

「眷獣の支配権を奪い取ったわけじゃない。時空を歪めて、古城が過去に使った眷獣の一部を呼び出したんだ。ほんの一瞬、このときのためにーーーーー」

 

『蒼』を奪い取った〝獅子の黄金〟は黒色に染まっていく。

 

「黒い〝獅子の黄金〟・・・・・!!」

 

『蒼』でオリジナルと同等の力を得た〝獅子の黄金〟は辺りに黒い雷を降らせる。

 

「ラ・フォリア!!」

「へ?きゃっ!!」

 

ブラッドサイズを抜き、ラ・フォリアを庇うように抱きしめる。

黒い雷はブラッドサイズを弾き飛ばした。

その雷は龍牙の黒い腕に当たった。

 

「っぐ!」

 

古城は姫柊の〝雪霞狼〟で守られていた。

 

「っぐ、黒くなるなんて知らねえぞ!」

 

古城が今まで出てこなかった力に怒りを表す。

 

「さすがに第四真祖の眷獣・・・・・ボクの〝蒼〟でも制御しきれないか・・・・・だが、どうやら犠牲を払った甲斐はあったみたいだ」

 

蜃気楼のように不安定だった島が完全に顕現している。

 

「監獄結界が、実体化した・・・・・のか?」

 

黒い眷獣はエネルギーがきれたのか元の色に戻り、消え去った。

 

「だけど・・・・・これって・・・・・」

 

破壊された聖堂のような建物の隙間から、内部が見えていた。

しかし、空洞しかなかった。なにもない空間。

 

 

「たとえ結界を失っても、監獄が解放されたわけじゃない、というわことか・・・・・だけど、やはりそこにいたね」

 

『蒼』を奪い取られた〝守護者〟が破片を撒き散らしながら、仙都木が聖堂へ近づいていく。

 

「龍牙!!」

 

ラ・フォリアが龍牙を抱きしめる。

 

「また、わたくしを庇って」

 

右腕からバチバチと黒い雷が漏れ出てきている。

 

「ごめん、けどボクは行かなかちゃいけないんだ」

 

仙都木の歩みが止まる。

 

「馬鹿な・・・・・なんであんたがこんなところに・・・・・」

 

そこに置かれていた椅子の上に人形のように少女が座っていた。

 

「お目にかかれて光栄です、監獄結界の鍵ーーーーー〝空隙の魔女〟よ」

 

古城たちは驚き、後ろの存在に気がつかなかった。

 

「それを、『蒼』を使うな!!」

 

龍牙が立ち上がり〝守護者〟を殴り飛ばす。

 

「ハァハァ、それ以上、そいつに、〝守護者〟に『蒼』を供給するな!!」

 

龍牙は怒鳴る。

 

「『蒼』?〝蒼〟のことじゃないのか?」

 

仙都木はわからないという顔をした。

 

「お前、それ以上やると、戻れなくなる」

 

ラ・フォリアだけはわかっているようで黙っている。

 

「もう戻れないんだよ」

「そういうことをいってるんじゃない!」

 

〝守護者〟を押さえつけ〝蒼〟を蒼の魔道書で吸収する。

 

「っ」

 

〝守護者〟が揺らいだ。

 

「姫柊、今だ!!」

「え、は、はい!ーーーーー獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る」

 

姫柊が槍を持って仙都木へ走る。

 

「破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」

 

銀色の槍が閃光を放ち、仙都木の

ーーーーー古城の肉体の心臓を刺し貫く。

そう思われた瞬間、姫柊の攻撃が止まった。

 

「ラ・フォリア!!」

 

姫柊では刺せないだろうので後ろから後押しが必要だ。

しかし、龍牙は手が離せない。なら、一番信用できる人、ラ・フォリアが、槍を後ろから押す。

それにより魔術が解けて元の身体に戻る。

 

「痛ェ・・・・・」

 

姫柊が古城を支える。

 

「おかえりなさい、先輩ーーーーー」




ゴールデンウィークなので投稿します。
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