ラ・フォリアがジンと獣兵衛に応援を頼んで一時間がたとうとしていた。
「おや、これはこれはラ・フォリアさん、どうかいたしました?」
彼の帰りを待っていると、飄々とした男、テルミ、今はハザマが話しかけてきた。
「龍牙がアズラエルを足止めに残って、それでジンと獣兵衛に頼んで」
「そうですか・・・・」
ハザマが暗い声を出す。
「お姉ちゃん泣いてるの?」
「へ?」
ハザマの背中から女の子の声が聞こえた。
「ぷっ」
ハザマが女の子を肩車しているのを見て思わず笑ってしまった。
「ありがとう、もう大丈夫ですわ」
「ならよかった」
女の子は笑顔を見せる。
「ハァハァ!」
彼の友人の吸血鬼、暁 古城が息を荒くしながら統制機構に入ってきた。
「どうしました、古城」
「ラ・フォリアか、龍牙に頼まれて、それを取りに来た」
古城に頼んだ?
「えーと?」
「すまないが、第三師団長室に案内してくれないか?」
彼が友人に取りにいかせたものとはなんだろう?
「あ、それでしたら、私が案内しますよ。こちらです」
古城はハザマについていった。
「龍牙」
彼のことを思う。
無事であることを願う。
生きていることを祈る。
「おい、ラ・フォリア!!」
すると自分を呼ぶ声が聞こえた。
「龍牙が大怪我をした。だが安心しろ。命には別状はない」
その言葉を訊いて思わずその人の肩を掴んだ。
「龍牙はどこですか!」
「俺が見たときはMAR研究所で手術をしてた。骨を折っていたからな」
獣兵衛がそう言うとラ・フォリアはすぐに外に出て行った。
「若いな」
「あら、獣兵衛さん、ここになにかようですか?」
「ハザマか、いや、若者を応援してやろうとな」
古城は
「ここが第三師団長室です」
「あ、どうも」
そこには色々な物が置いてあった。
「えーと、机の引き出しの上から三段目、ここか」
その引き出しを開ける。
「なんだ?ブレスレット?」
そこには銀色のブレスレットと一枚の紙が置いてあった。
「えーなんだ?」
このブレスレットにはイデア機関が搭載されている。
イデア機関とは事象干渉を受けつけない。
魔道書を起動するときにイデア機関を接続することで事象兵器に劣らない威力を発揮する。
「イデア機関、確かに受け取ったぜ」
その紙を読んだ古城はそのブレスレットを腕につけた。
階段を下りるとハザマと獣兵衛がいた。
「確か、ハザマさんと獣兵衛さんでしたっけ?」
「龍牙の友人か、龍牙はMAR研究所にいるぞ」
そこはここに来る前にいた場所だ。
「行き違いかよ!」
「あらあら、それは残念ですね」
「パパ、猫さん!!」
「ハザマ、お前、いつの間に」
小さな女の子は獣兵衛の尻尾を触っている。
「違いますからね、多分、この子は那月さんです。仙都木阿夜の固有堆積時間操作の魔導書のせいで縮んでしまったのでしょう」
獣兵衛は納得したように頷いた。
「なら、彼女が狙われる可能性があるのだな」
那月は獣兵衛の頭の上で耳を撫でている。
「ええ」
その時、空間が歪んだ。
「誰だ!!」
獣兵衛が那月を後ろに隠し威嚇する。
「始めましてだ。六英雄の獣兵衛にユウキ=テルミ」
古城のことなど眼中にないと言った顔だ。
「やれやれ、主犯のおでましか」
ハザマが顔をしかめる。
「・・・・・あ?どういうことだ?魔力が消えやがった」
古城は何も感じてない。
「ま、関係ねーけどな!!ヒャッハー!」
ハザマはウロボロスでヒャッハーしている。
「確か、術式と言ったか?厄介だが」
魔女が空間転移でハザマの攻撃を避け那月に手を出す。
「させると思ったか?」
獣兵衛が六三四を抜き迎撃する。
「っち!やられた」
「汝らは少々邪魔だ。少し寝てもらうぞ」
すると獣兵衛とハザマは倒れる。
「ではな、第四真祖」
古城の目の前で那月を拐われた。
また何も出来なかった。
「おおおおおおおおーー!!」
古城は自分の無力さを嘆いた。
MAR研究所
龍牙の病室。
「寝ているとは都合がいい」
仙都木阿夜は寝ている龍牙の頭を掴む。
「っつ、仙都木!?」
「目覚めたか、まあいい」
阿夜に頭を掴まれたため、目が覚める。
記憶が奪われている。阻止しようとするが骨折しているため体が動かせない。
「っ!!タカマガハラにマスターユニット、これで私の考えが正しいと証明された!」
阿夜は笑っている。
「感謝するぞ、呪われし英雄」
阿夜は右腕を押さえながら空間転移した。
小さくなった龍牙を残して。
「龍牙!!」
ラ・フォリアが龍牙の病室に入る。
「あら?」
龍牙が見当たらない。
「重症のはずですから、動けませんよね」
「ん、ん?」
小学生くらいの男の子が目覚めた。
龍牙にそっくりの
「お姉さん誰?」
ラ・フォリアは直感でこの男の子が龍牙だと確信した。
「龍牙まで記憶を抜かれたのですわね」
先程の子供が〝空隙の魔女〟なら、同じ方法で縮んでしまったのだろう。
「わたくしはラ・フォリア・リハヴァインですわ」
龍牙は何となく理解した。
「あ、境界で事故ったか?」
事実とは違うが、
「あー、なるほど、高校生ぐらいか」
右腕の長さを見て予想する。
「正解です」
龍牙はそれを訊いてベットから降りる。
「よっと、バランスが取りにくいな」
「仕方ありませんわ」
横にあったジャケットを着て、腰にブラッドサイズをさす。
「ん、とっと、他には異常が無いし帰るか」
「ええ、そうしましょうか」
ガラガラと手をかける前にドアが開いた。
「龍牙、あんた怪我した、ってそれどころじゃないわね」
六英雄のコノエが龍牙を見るなり、そう言った。
「あー、未来の俺の知り合いか」
「そうよ、この頃から可愛いげのないガキだったのね」
コノエは龍牙の顔をさわる。
「固有堆積時間が抜かれてるわね」
「境界の実験の失敗じゃなかったか」
予測が外れて内心ほっとする。
「それで、なんとかできるか?」
「さっきまでなら出来ないことは無かったんだけど、今は無理ね。この島の異能が封じられてるから」
面倒だな。
「黒幕を倒せってか?」
「そういうことね」
まあ、スサノヲユニットを使えば出来ないことはないな。
「ダメですわよ、そんな体では・・・・・」
「安心しろよ、必ず戻るから」
ラ・フォリアの頭を撫でる。
「場所は彩海学園よ」
コノエから場所を訊くと龍牙は飛び出して行った。
「約束を破ったら、怒ります」
ラ・フォリアの一言にコノエは苦笑する。