全力で走ってなんとか遅刻を免れた龍牙はなぜか家庭科の授業でみんなとは他の物を作らされていた。
「なんで俺、一人で作らされているんだろう?」
自分の分と教師十人分を作っている。
「おい、黒刀、まだか?」
「はじめたばっかりだろうが!」
十分もたってないのにそんなことを言われ反論する。
「赤ワインは?」
「ここにある」
空間転移でわざわざワインを持ってきた。
「・・・・・どうも」
那月に少し引きながらフランベで香り付けをする。
「おお、あっちはレベルが違うな」
「レストランでやるやつよね。えーと」
「フランベだったと思うぞ。確か、アルコールを飛ばしつつ風味を残すためだっけか?」
「よく知ってるわね、暁くん」
ショーでも見るかのように視線が集まっている。
「お、見ろよ、ふわふわのオムレツだぞ!」
「家ではなかなかできないわよね。前に一回失敗しちゃったし」
最後にふわふわオムレツにハヤシライスをかけて完成。
「タンポポオムハヤシ完成」
そう言うと拍手が起こる。
「できたか」
那月がタンポポオムハヤシを転移させ自分のテーブルに置く。
「いただきます」
自分が一番早く食ってどうするんだよ。
「他の先生方も、どうぞ」
校長に教頭、それに理事長、担当科目の教師、それに中等部の教師まで
「待て、なんで貴方がここにいるんですか?」
十一人目の教師、笹崎教諭が皿を持っていた。
「だって、いい香りがしたんだもん」
「だもんって、年齢考えろよ。あと、それは俺のだ」
「う、別にいいでしょ!」
皿を離さない笹崎。教師としての自覚はあるのだろうか?
「はぁー、その代わり、お金は払ってもらいますよ」
「払う払う。えーと、五百円でいいかな?」
「千円」
「間をとって七百五十円」
「じゃあ、返してください。冷めるので」
「わかったわよ!!」
千円札を渡された。
「毎度あり」
「っぐ、学校で千円も使うとは・・・・・」
「あ、那月ちゃん、昼飯買いに行っていい?」
「構わん」
授業中なので一応許可をもらって食堂へ向かう。
「あー、美味しい!!」
笹崎は満足そうな顔をしていた。
「ったく、なんだよ、あの教師は」
「はい、お待ち。どうかしたのかい?調理実習だろ」
「笹崎教諭にとられたからここに来た」
「大人げないねー、今度注意しておくよ」
「頼むよ、おばちゃん」
ニヤリと龍牙は笑う。
このおばちゃんは噂話が好きだ。あっという間に全校生徒に伝わるだろう。
放課後
「どちらがいいと思いますか?龍牙」
「そうだな、両方いいが、選ぶなら右だな」
「わたくしもそう思ってました」
ラ・フォリアは白いワンピースをかごに入れた。
「金は心配ないが、持ちきれなくなるぞ、その量」
「大丈夫です。自分の分は自分で持ちます。そうですわよね。阿夜」
ラ・フォリアが虚空に話しかけると、突然阿夜が慌てた様子で出てきた。
「ま、待て、なんといった?我の分だと?」
「ええ、似合いそうなもの選びましたから安心してください」
「そういう問題では・・・・・」
阿夜の肩に手を起き、首を横に振る。
「諦めろ」
「っぐ」
屈辱だ。といった顔をしている。
「あ、折角ですし試着してみましょう」
「ま、待て!我は了承して・・・・・」
試着室に入るラ・フォリアと阿夜。
「ひゃ、そんなところ触るな!」
「よいではありませんか」
阿夜のキャラが崩壊しているな、
「はい、じゃーん!」
「く、屈辱だ」
白いシャツに黒いスカートを履いた阿夜が歯ぎしりしていた。
「なかなか似合ってるな」
「ええ、肌も綺麗でしたし、ふふ、龍牙もどうです?」
「おいおい、俺がしたらセクハラだろ」
阿夜は顔を下にむけ頬を赤くしていた。
「どうした?」
ラ・フォリアが阿夜に耳打ちした。
「な、何を言って!?」
阿夜がいきなり顔を上げる。
「困りましたわね、ライバルが増えてしまいましたわ」
「どういうことだ?」
「龍牙は知らなくていいです」
困ったと言った割に全然困った感じがしない。
「ま、いいか、会計済ませておくぞ」
「はい、お願いします」
ラ・フォリアは再び、阿夜に囁く。
ガールズトークというやつか?
「ラ・フォリア、仙都木、行くぞ」
「わかりましたわ」
「あ、ああ」
ラ・フォリアの手を繋ぎショッピングを歩く。
「あ、龍牙と・・・・・!?」
「先輩どうか・・・・・!?」
古城に会うなり戦闘体勢に入られた。
「おい、なんであんたがここにいるんだ!」
古城が怒鳴るように阿夜に聞く。
「知らん、そこの王女に聞け」
「わたくしが連れ出しました」
ニコニコとラ・フォリアが答える。
「観察処分で俺の部下をやってるんだよ。首輪はしてあるから安心しろ」
「・・・・・お前がそういうなら」
「先輩、納得しないでください」
獅子王機関と統制機構は仲が悪いため姫柊は文句を言う。
「だいたい、最近出来たばかりなのになぜ獅子王機関と同等の権力があるのですか」
「そりゃ、活躍してるからだろ。獅子王機関よりも」
ここ数年で統制機構は未解決の難事件を次々に解決し、力のある魔導書を多数回収するなど、社会に貢献している。
「あの、どちら様、ですか?」
「あ、ユウちゃんにそっくり」
先に歩いていた二人にも絡まれる。
「えー、こちらは・・・・・」
「仙都木阿夜、優麻の姉だ。妹が世話になっている」
姉?母親じゃなかったか?
「あれ?ユウちゃんはそんなこと言ってなかったけどな?」
「正確には、親戚で優麻は妹みたいなものだ」
「へぇー、そうなんだ」
凪沙は阿夜と仲良くなろうと話しかけている。
というか、猫被ってるな。
「あ、そうだ、アヤちゃんとラ・フォリアも一緒にあそこに行こ」
下着屋を指差す凪沙
「いいですわね、龍牙も」
「勘弁してください」
「仕方ないですわね」
どうやら諦めてくれたようだ。
「では、今度二人っきりの時に」
訂正、先伸ばしになっただけだ。
「では、レッツゴー!」
凪沙についていく女性陣。
「首輪ってなんだよ」
「ちょっとした術式だ。俺の命令を訊くようにしてある」
「そうか」
男子二人じゃなかなか盛り上がらない。
何か変なものを感じとり、その方向を見る。
そこに奇術師のような格好をした男が歩いていた。
「どーも」
「ちっす」
「なんのようだ?」
奇術師に挨拶され古城は立ち上がり挨拶を返し、龍牙は座ったまま、そう問う。
「今の銀髪の彼女、あ、小さい方ね。綺麗な子だね」
「ええ、まあ」
無機質な何か、それを感じとった龍牙はいつでも動けるように両手をフリーにする。
「ずいぶん仲がよさそうだったけどーーーーーもしかして彼女、きみの恋人?」
「いや、ただの後輩だよ。妹の友人なんだ」
古城は眷獣の力を一部解放する。
「それよりも、あんたは誰なんだ?芸能事務所のスカウトマンには見えないけどな?」
「僕か。僕は、真理の探求者だよ」
その言葉を聞いた直後、男の右腕が蛇のようにのたうつ。
液体金属のようなものだ。
それが古城の腕に巻きついて、古城の肉体を浸食しようとしている。
「はっ!」
その液体に繋がっている男を投げ飛ばす。
「大蛇武錬葬!!」
古城の投げ飛ばした男の頭を踏みつける。
「オラオラ、この程度でノックアウトか?」
男は液体金属のようなもので龍牙を攻撃しようとしている。
「させると思ってんのか!!」
古城の方に蹴り飛ばす。
「オラッ!!」
古城は眷獣の力を一部使い男を殴り飛ばす。
「っぐ、ボディーガードが強すぎる。ここは叶瀬夏音を諦めるのが正しい判断か」
男は木を金属に変え、追ってこれないように通路を塞ぐ。
「龍牙・・・・・・」
「出来る限りのことはする」
携帯で統制機構に連絡し、彩海学園中等部の宿泊研修のフェリー乗組員を航空部隊の人間に変えるよう手配する。
「大丈夫ですか、先輩?」
古城の魔力を感知して姫柊が古城のもとへ駆けつけた。
「ああ、あの程度なら問題ない」
両手をひろげ怪我が無いことをアピールする古城。
「だから言ったじゃありませんか。それと雪菜、ボタン、外れてますわよ」
姫柊ははっ、としその場にうずくまった。
「せ、先輩・・・・・いつから気がついてたんですか・・・・・!?」
「ああ、赤白チェックの錬金術師だ。わかるか?」
古城は黙り、龍牙は電話で襲撃した犯人の情報を聞いている。
「天塚汞?・・・・・そうそう、奇術師のような格好をしていた。なに?そうか、わかった」
電話を切りラ・フォリアの方を見る。
「仕事だ。叶瀬夏音の護衛」
「まあ、ではもう一度夏音とガールズトークできるのですね」
楽しそうだな。
「いや、那月ちゃんがいるから大丈夫だろう。放課後の護衛だけていい」
「そうですか」
ラ・フォリアが落ち込む。
「阿夜とガールズトークで我慢します」
古城ははっとなる。
「今、凪沙と叶瀬は仙都木と一緒!?」
まあ、心配だな。阿夜が。
「主よ、助けてくれ・・・・・」
そこには可愛らしい洋服を着た、阿夜が地面に倒れていた。
「アヤちゃん、逃げちゃ駄目だよ!」
凪沙が阿夜を追いかけて来た。
「悪い、頑張ってくれ」
阿夜は諦めた顔になっていた。
「あ、雪菜ちゃん、もう、どこに行ってたの?いきなり店から出ていくからびっくりしたよ。もう、理由ぐらい言ってよね」
姫柊も凪沙のマシンガントークには敵わないらしくはい、と素直に返事をした。
「あ、ごめんね、ラ・フォリア、雪菜ちゃんを追わせちゃって」
「いえいえ、わたくしが勝手にしたことですわ。気にしないで下さい」
ラ・フォリアは姫柊を追うという大義名分を得てからここに来たようだ。
「では、戻りましょうか?阿夜、雪菜」
ラ・フォリアは二人の腕を掴み先程の店に入る。
「大変だな。お前も」
「ああ、まあな」
ベンチに座り直し女性陣が戻ってくるのを待つことにした。