ストライク・ザ・ブラッド 蒼を継ぐ者   作:テルメン(白)

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五章

叶瀬とジンは船首で敵を待ち構えていた。

 

「本当に、勘弁してほしいよ。〝賢者の霊血〟を凍らせただけでなく溶けないなんて。お陰で使える〝賢者の霊血〟はかなり減った」

 

やれやれ、と天塚の本体らしき奴は首を振る。

 

「叶瀬夏音の護衛は強すぎる。もう三回も失敗したし、諦めようかな」

天塚は遠い目をした。

 

「でも、諦めるわけにはいかないんだよな。〝賢者〟を完全に復活させないといけないからさ。僕を恨まないでよね」

 

天塚の右腕が銀色の刃に変わっていく。ジンは叶瀬の前に出る。

 

「まだ思い出せないのですか」

 

叶瀬が天塚を哀れむように見つめていた。

 

「・・・・・なに?」

「私はあなたのことを覚えていました。修道院のみんなが殺されたときのことも」

 

叶瀬は天塚を見つめている。その表情には深い悲しみを漂わせていた。

 

「あなたは、可哀想な人でした。自分が騙されていることにも気づいていない」

「なんのことだよ?」

 

天塚が訊き返す。その声には動揺が含まれていた。

 

「〝賢者〟を復活させて、あなたはなにをしたかったのですか?」

「決まっているだろ。人間に戻るんだ。あいつに喰われた半身を復活させてもらうんだよ!でなきゃ、誰がやつのいいなりになんかなるものか!」

 

天塚はコートの襟元を引き裂いて金属に浸食された体を見せた。

 

「だったら教えてください。あなたはいったい誰でしたか・・・・・?」

「え?」

「あなたが本当に人間だったというなら、そのころの思い出を聞かせてください。あなたがいつ、どこで生まれて、どんなふうに生きていたかをーーーーー」

 

天塚は黙り、ジンはそうか、という顔をした。

 

「黙れよ・・・・・叶瀬夏音・・・・・」

「貴様は〝賢者〟が自分を復活させるために創り出した、人形だ」

「黙れぇぇぇぇっ!」

 

天塚が刃と化した右腕をジンに向けて走り出す。

 

「愚かな・・・・・」

 

ジンはあっさりナイフを避けて天塚の首を掴み投げた。

 

「っ、ガッ!?」

 

天塚は甲板にバウンドする。

 

「なんて力だ・・・・・」

 

天塚は首を触る。

 

「まあ、この数には勝ち目はないよ。逃げ場もね」

 

天塚はいつの間にか〝賢者の霊血〟を操り船首に集合させていた。

 

「うおぉぉぉぉ!?」

 

ジンと〝賢者の霊血〟が戦闘を始めようとした瞬間、少年が降ってきた。

 

「古城!?」

「お兄さん?」

 

吸血鬼の少年、暁古城がそこにいた。

 

 

少し前

 

「っ、ちょ、速すぎるだろぉぉぉぉ!!」

「お前が勝手に乗ってくるのが悪い、少しぐらい我慢しろ!」

「あの船だ!」

 

アデラードが指差す方向には中等部の宿泊研修の大型フェリーがあった。

 

「如月少佐が乗っているから大丈夫ですよ」

 

みんなを落ち着けるようにハザマがそう言った。

しかし、古城は心配そうだ。

 

「ハザマ」

 

ハザマにアイコンタクトで命令する。

 

「・・・・・了解しました」

 

ハザマがジェットクルーザーの船首に立ち古城をウロボロスてぐるぐる巻きにする。

 

「は?ちょ!?」

「ぶっ飛べ!!」

 

古城が大型フェリーへ飛ぶ。

 

そして、時は戻る。

 

「ーーーーー痛ってェ、急だから受け身が取れなかったじゃねーか!」

 

古城はジン、叶瀬、天塚を見て、天塚の方向を向く。

 

「そんなこと言ってる場合じゃないか。第666拘束機関開放、次元干渉虚数方陣展開。コードSOL、碧の魔道書起動!!」

 

古城は眷獣の力を一部引き出し、それを碧の魔道書で強化する。

 

『カ・・・・・カカ・・・・・カカカカカ・・・・・』

 

天塚の左手の黄金の髑髏から笑い声が響く。

 

『カカカカカカ・・・・・不完全なる存在たちよ。もう遅い』

 

あの髑髏からエネルギーを感じ取り、とっさに古城は眷獣に命令する。

 

「ーーーーー〝獅子の黄金〟!」

 

古城の眷獣を呼び出すのと、黄金の髑髏が閃光を放つのはほぼ同時だった。

眷獣は消えたが、眷獣の放った黒い稲妻が黄金の髑髏に直撃した。

 

「終わりかよ、髑髏野郎」

 

黄金の髑髏は海に転がり落ちた。

それと同時にアデラードが叫ぶ。

 

「やつの狙いは、海水だ!」

 

アデラードの反応で、古城も思い出す。海水中にはレアメタルなどが含まれている。その量は数十万トンから数千万トンともいわれている。そして、〝賢者の霊血〟は金属。

 

『カカカカカカーーーーー世界よ、完全なる我の一部となれ』

「「凍牙氷刃!」」

 

大型フェリーの船首からジンが、ジェットクルーザーの船首から龍牙が凍てつく斬撃を放った。それが閃光のようなものを屈折させる。

その閃光を放ったのは黄金の巨人だった。

 

「っ!?」

 

閃光が凄まじく、古城は思わず目を瞑った。

その一瞬の隙に天塚が古城を金属化させた。

 

「はぁー、またか」

 

古城がまた、危機的な状況に陥った。

 

「彼は金属になった。だから生き返らない。死んでないからね」

 

天塚が説明するように言った。

 

「お兄さん!」

 

叶瀬は古城の方へ行こうとしていた。

 

「止まれ!」

 

それを龍牙が大声で止める。

 

「碧の魔道書が起動しているから近づくな」

 

碧の魔道書が古城の眷獣へ生命力を供給し始める。

 

「な!?馬鹿な!!」

 

天塚は驚いていた。なぜなら古城の金属化が解け生身の肉体を取り戻していたからだ。

 

「死ぬかと思った・・・・・」

 

古城はけろっとしていた。

 

「先輩!?どうしてここに!?」

 

姫柊が遅れて登場してきた。

 

「なんと言うかな、飛ばされた?」

 

古城、ちゃんと説明できないのか?

 

「それはそうと姫柊、凪沙は無事か?」

「はい、避難させました」

「そうか、なら、被害を出さないために俺たちはこいつを倒さねえとな。行くぜ、ここから先は、第四真祖の戦争だーーーーー!」

 

古城の隣に姫柊が槍の代わりにナイフを構え立つ。

 

「ーーーーーいいえ、先輩。わたしたちの、です」

 

その二人をジンが追い越す。

 

「絶対零度」

 

ジンがオーバードライブ、絶刀を発動させる。

 

「ちょっ!?」

 

古城はジンの行動に驚く。

 

「氷斬撃!」

 

宙に跳び天塚に向かって抜刀する。

 

「っ!狙いは僕か・・・・・」

 

ジンは〝賢者〟を古城たちに任せた。

古城は理解し数歩前に出る。

 

「っ、はっ!」

 

天塚は地面を変化させ、棘を造り出す。

 

「砕けろ」

 

ジンがそれを凍らせ砕く。

 

「その程度か、人形」

 

ジンが挑発する。

 

「そうさ、僕は人形だ!でも、恐いんだ・・・・・僕が僕でなくなるのが・・・・・僕はいったい誰なんだ?なんのために生まれて、なにをすればいい!?人間とはなんだ!!」

 

ジンが止めを刺そうと思ったとこに銃弾が天塚を貫通する。

 

「その答えを探し続けるのが、人間です!」

 

ラ・フォリアが術式兵器の銃を撃った。

 

「終わりです」

 

ラ・フォリアが呟く。

 

「そうか・・・・・僕は・・・・・」

 

彼は、自分が人間でありたいと願った瞬間から人間だった。

誰がなんと言おうと、人間であったのだ。彼自身がその事に気づいていればーーーーー

 

「その言葉で・・・・・僕は・・・・・報われたよ」

 

天塚は満足した顔で、その言葉を残し、爆発し砂のように崩れ落ちた。

 

「人形にしては、上出来だ」

 

ジンは口では天塚を人形と言っているが人間として認めたようだ。

 

 

古城が〝賢者〟を睨む。

 

「お前の相手は俺たちだ」

『カ・・・・・カカ・・・・・カカカカ・・・・・愚か・・・・・抵抗するか、不完全なる存在たちよ』

 

黄金の巨人の口からビームが放たれた。

それを古城は黒い雷を纏い、腕を振るっただけでビームを打ち消す。

 

「ーーーーー黙れよ、金ピカ」

 

〝賢者〟は自らの腕を巨大な刃へと変形させて、半壊したフェリーの船体へと叩きつけた。それを受け止めたのは、黒く染まった双角獣だ。爆発的な衝撃波を撒き散らし、無数に増殖する〝賢者〟の触手を消し飛ばす。

 

「おまえには同情してやるよ。長い間封印されたんだってな。でもな、おまえは越えてはダメな一線を越えた。だから俺がおまえを倒す!」

『カ・・・・・カカ・・・・・カカカカ・・・・・無理だ、不完全なる存在が、完全なる存在を倒すなど』

 

古城は腕輪を着けた方の腕を前につき出す。

 

「教えてやるよ。おまえが完全な存在なんかじゃないってことを!!」

 

古城が新たに黒く染まった二体の眷獣を呼び出す。

獅子と双角獣、双頭龍に甲殻獣が〝賢者〟に襲い掛かる。

〝賢者〟を押さえつけていた。ビームは獅子が打ち消し、黒く稲妻が〝賢者の霊血〟を蒸発させ、黄金の肉体による物理攻撃は双角獣が消し飛ばし、甲殻獣が霧化させて霧散させ、双頭龍が〝賢者〟の体を空間ごと喰らっていた。

 

『カ・・・・・カカ・・・・・なぜ逆らう、不完全な存在よ・・・・・なぜ我が完全なる世界の一部になることを拒む?』

「言っただろ、おまえは完全なんかじゃない。その不完全な存在に負けているおまえは不完全より不完全な存在なんだよ」

 

〝賢者〟の眼球が回転し、古城を睨みつけた。

 

『あり得ぬ・・・・・そのような矛盾は完全なる我にあってはならぬ・・・・・!』

 

どうやら怒ったらしい。

 

「図星だったようだな。食い散らかせ、〝龍蛇の水銀〟!」

 

古城が命令すると双頭龍は空間を喰うスピードを上げた。

 

『あり得ぬ!・・・・・我が負けるなど・・・・・!』

 

〝賢者〟は海に逃げようと船から降りる。

 

「煉獄氷夜!」

 

龍牙がジェットクルーザーからユキアネサを海に突き立てる。すると、船から半径数十メートルは氷で覆われた。

 

「もう逃げ場は無いぜ。焔光の夜伯の血脈を継ぎし者、暁 古城が、汝の枷を解き放つーーーーー」

 

古城の腕から闇が吹き出す。

 

「疾く在れ、十一番目の眷獣、〝水精の白鋼〟ーーーーー!」

 

水妖の巨大な蛇身が、爆発的な激流となって加速した。鋭い鈎爪を備えた繊手が〝賢者〟の頭部を鷲づかみに握りつぶし、そのまま海中へと引き摺りこむ。

 

『カカカ・・・・・・カ・・・・・カ・・・・・馬鹿な・・・・・馬鹿な・・・・・我が消える・・・・・完全なる我の肉体が!』

 

眷獣は時間を巻き戻し〝眷獣〟の体を生まれる前に巻き戻す。

 

『貴様だけでも・・・・・!』

 

〝賢者〟が触手を伸ばし龍牙を拘束しようとする。

それをジャンプで避ける。

 

「凍てつけ、アラクネ(金)」

 

ユキアネサの鞘を弓のようにし、氷の矢を連続で〝賢者〟に放つ。

〝賢者〟は水妖ごと凍りつく。

 

「無影無響、虚空刃」

 

龍牙が居合の構えをする。

同時に古城が腕をつき出す。

 

「雪風!」

「〝龍蛇の水銀〟!」

 

凍りついた〝賢者〟が一刀両断され、双頭龍に喰われる。

〝賢者〟は一片も残らず消滅した。

 

龍牙、ジン、ハザマは報告書が大変だ。と同じことを考えていた。

 

「そういえば、なんで古城はクルーザーに飛び乗ったんだ?」

「いや、前の吸血鬼にいきなり転移させられた」

「またレイチェルか」

 

頭を押さえる三人だった。

 

「それで、妾の扱いはどうなる?」

「そうだな、それじゃあ、叶瀬夏音の護衛でもしてもらうか、お前もその方がいいだろ?」

 

罪滅ぼしがしたいアデラードには、その方がいいだろう。

 

「では、統制機構とやらに、妾は所属するのか?」

「ま、そういうことでいいならな」

「わかった」

 

アデラードがくるりと回転すると、服が統制機構の制服に変わった。

 

「これでいいか?」

「ま、いいだろう」

 

叶瀬と話していたラ・フォリアがこちらに来た。

 

「夏音、ジンのことが気に入ったみたいですわよ」

 

おいおい、凄い歳の差だな。

 

「頑張れよ、ジン」

 

さっさとラ・フォリアたちをジェットクルーザーにつれて、ジンと叶瀬を二人っきりにする。

 

「グッドラック!」

 

親指を立て、クルーザーを操縦しその場を離れる。

 

「あの、助けていいただき、ありがとうございました」

「仕事だからね。当たり前だよ」

 

ジンは冷静に対処しているが、ヤバイとは感じているようだ。

 

「ほら、叶瀬よ、ガツンと言わんとこの男には通じんぞ」

「はい、わかり、ました」

 

ジンはフェリーに戻ろうとして、立ち止まった。

 

「あの、ジンさん、好き・・・・・です」

「!?」

 

ジンは振り向き叶瀬を見る。

可愛いがこの歳でこの娘の歳と付き合うことになったら、それは犯罪だろう。

だが、この娘を悲しませる訳にはいかない。それに自分は独身だ。結婚願望もある。そんなことをジンは考えていた。

 

「そうだな、社会人になって、僕のことをまだ好きなら、付き合おう」

「!?・・・・・はい、です」

 

ジンは、大人になってから好きでいられないと思いそう言ったが、この言葉が原因で、十年後、犯罪者扱いを受けることをまだ知らないジンであった。

 

「そうとなれば、花嫁修行じゃな。手加減はせんぞ」

「お願い、します」

 

それを双眼鏡で観察し、トランシーバーのような物を耳に当て盗聴するハザマがいた。

 

「あらあら、きちんと断らないと。まったく、中途半端に優しいから・・・・・」

「そういうハザマだって、那月ちゃんとどうなんだよ」

 

横から茶々を入れてやる。

 

「な、なな何のことでしょう?」

「とぼけるなよ、パパ?」

 

クルーザーではハザマが弄られているのであった。

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