ゴゾという島、その島のとある遺跡の地下墳墓の発掘現場。
「なんで、俺だけが料理させられてんだ!チキショー!!」
「だって兄さん料理得意じゃないか」
「俺だって手作りなら綺麗なねーちゃんの方がいいぜ」
銀髪で目が赤、そして腰には大剣を刺している男とその男を兄という金髪で翠の眼で刀を腰に刺している男性、そして、長身でそれなりに体格がいい、いい加減なオッサン。
「んじゃ、テメーの飯は抜きだ。牙城」
「それは勘弁してくれよ、母ちゃん」
「誰が母ちゃんだ!気色悪い!」
オッサンの名前は暁牙城。
「ふん!こうなりゃ、やけ酒だ!」
と、鞄から容器を取り出す。
「っくー、旨いねェ、これでつまみと色っぽい姉ちゃんの一人でもいりゃ言うことなしなんだがな」
「ーーーーーなにが仰りたいんですか、博士」
「別料金で作ってやるよ」
牙城を咎めるように冷たく訊き返してきた、二十代半ばほどの白人女性と、銀髪の男、ラグナが睨み付ける。
「あー・・・・・つまりだな、ミス・カルアナ。こんなに天気もいいことだし、彼女たちをみならって、きみももう少しラフな服装をするべきではないか、ということだ。そのほうが発掘隊の士気も上がると思うんだがね。ラグナ、ケチケチすんなよ」
カルアナと呼ばれた女性は苛立たしげな歩調で牙城に近づく。それに牙城は気付き、読みかけの雑誌の水着グラビアを広げヘラヘラと笑った。
「生憎ですが、そのようなサービスは私の職務ではありません」
「そうだ、他のことやらせようとしてんだ。別料金ぐらい発生する」
カルアナが牙城から雑誌を乱暴に引ったくる。ラグナは紙の皿にベーコンとジャガイモ、チーズを焼いた物を盛り付けた物を兄と慕う男性、ジンと苦労している女性カルアナ、そして自分の席におく。
「あんたも苦労してるんだな」
ポンポンと肩を叩いて元気付ける。
「お堅いねェ。わざわざ地中海くんだりまで来てんだから、もっと陽気に行こうぜ。ラテンのノリでさ。そんなに気に病まなくても、俺の母国には〝貧乳は希少価値〟って金言があってな。胸が小さくたって、それはそれで根強い需要がーーーーー」
「ーーーーーセクハラ訴訟も手続きがいろいろ面倒ですから、これ以上は、私の仕事を増やさないでもらえるとありがたいのですけど。あ、フォークもらえます?」
カルアナはフォークをラグナに注文する。
「ん、ああ、悪いな。気が利かなくって」
ラグナはプラスチックのフォークを袋から取りだしカルアナに渡す。
「いえ、貴方には感謝しています。博士も見習ってこれぐらいしてもらえませんか?いただきます」
フォークで皿に盛り付けてあった料理を食べる。
「なあ、俺の分は?」
「欲しいなら金払え」
ラグナも食べ始める。
「酒のつまみにぴったりだな!」
「兄さん、おかわり!」
「おー、いいぞ。牙城は食わねえみたいだし」
「あー、払う!払うから寄越せ!!」
「1400円」
四人分の材料費である。
「高い!900円!!」
「よーし、ジン、皿寄越せ」
「あー、わかった。わかったから!!」
牙城は1400円支払いつまみを手に入れた。
「うお!確かにうめぇ!!」
「おかわりもあるぜ。牙城は有料だがな」
「クソ、なんで俺だけなんだよ!!」
ラグナが酒を飲もうとした瞬間、爆発音が聞こえてきた。
巨大な火柱が吹き上がり、大地が揺れた。
「兄さん!?」
ジンはラグナから闇が溢れ出ていることに気付きそちらを見る。
ラグナの服に酒と料理がぶちまけられていた。
「よーく見ておけ、これが闇の力だ!!」
三人は震えが止まらずその場で動けなくなっていた。
ラグナは揺れの元凶を探しに爆心地の方へ走っていく。
「ラグナ!?」
そう叫んだのは、遺跡調査団の警備担当責任者だ。
「よぉ、カルーゾ。揺れの元凶はなんだ?」
「ひっ!!あ、あの暴煙の中だ!」
「そうか、潰しても、構わねぇよなァ!」
「ああ、頼む!!」
暴煙が晴れ、蟹のような機械が姿を現す。
「カーネージシザー!喰われろ!!」
ブラッドサイズに闇を纏わせ斬りつけ蟹兵器に攻撃する。
蟹兵器はバウンドして戻ってくる。
「ブラッドカイン!!」
闇を増幅させる。
「闇に食われろ!!」
バウンドしてきた蟹兵器を丸々闇が掴み握り潰す。
蟹兵器はもう動けないが、追い討ちをかける。
「見せてやるよ。闇の力を!恐怖を教えてやる。地獄はねぇよ、あるのは無だけだ。これが、闇の力だ」
蟹兵器は原型どころか、粉々になって修復不可能な状態になっていた。
「ヒデェ・・・・・」
カルーゾがそう呟いた。
黒刀龍牙は父の仕事を見学に、イタリア半島ーーーーー自治領ローマ空港に降り立った。
「なあ、もしかしてお前ら、暁牙城の知り合いか?」
親父に暁牙城というやつに割りに合わない仕事を頼まれたと報告してきて、牙城という単語が聞こえたから、聞いてみる。
「親父の知り合いか?」
「俺の親父が知り合いだな。ま、目的は同じようだし、一緒に行こうぜ。古城と凪沙」
「ねぇ、なんで名前わかったの?」
凪沙という名であろう少女が疑問をぶつけてきた。
「そりゃ、古城君って君がいってたし、凪沙って、古城が言ってたからだよ」
「おお、見事!!」
パチパチと拍手する凪沙。
「それで、お前の名前は?」
「黒刀龍牙だ。よろしくな」
古城と凪沙と握手する。
「ねぇ、あれ、ビスコッティ食べたい!!」
「いいぜ、俺の奢りだ」
屋台でビスコッティを6つ買う。
「ほら、古城の分もあるぞ」
「あー、なんか悪いな」
「龍牙君、ありがとね!」
ビスコッティを食べながら移動する。
「迎えがくるまで暇だな」
「んー、そうだねー」
暇なので本を読むことにした。
「Scusiーーーーー」
なぜか謝っている地味な服装の男性がいた。
小脇に古城が持っていた鞄を持っていた。
「おいおい、謝るぐらいならそんなことすんなよ!」
謝っている男性の腕をねじり鞄を落とさせる。
「Ooooooh!!」
「お、おい!なにしてんだよ!!」
「あ、待って、鞄!!」
古城の質問に凪沙が答えた。
「さて、どこに突き出すか」
「ーーーーー」
警備員らしき人に話を聞かれ、それに答えると敬礼して引き取ってくれた。
「いやー、手間が省けた」
「凄い、凄いよ!あの動き!!なにかしてるの!!」
「親父が攻魔官だからな。自然にだよ」
「へぇー、そうなんだ。あ、攻魔官ってなにしてるの?」
凪沙のマシンガントークに押されかけた時、
「ーーーーー失礼ですが、暁 凪沙さんと黒刀 龍牙さんではありませんか?」
見知らぬ女性から声をかけられた。この人が迎えだろうか?
「ああ、そうだ」
「そうですか、リアナ・カルアナと申します。黒刀ラグナ様と暁牙城博士のご依頼で、お迎えに上がりました」
凪沙が驚いて目を丸くする。
「え!?じゃあ、お姉さんが牙城君・・・・・いえ、父のお友達なんですか・・・・・?」
「はい。第四次ゴゾ遺跡調査団の統括顧問を任されています」
龍牙はカルアナを見る。
「そこの遺跡には何か仕掛けがなかったか?例えば、ゴーレムとか」
「ええ、ありましたけど、ラグナ様が倒してくれました」
「その他にもそれがある可能性があるから警備を固めた方がいいと思うぜ」
暁兄妹がこそこそ喋っている間、警備について話し合う。
「わかりました。相談しましょう」
カルアナは携帯電話でどこかに連絡をとった。
そして時間はたち、
ゴゾ島に到着した龍牙たちを待っていたのは、軽装甲を施した軍用の四輪駆動車だった。
カルアナの運転でゴゾの中心地ヴィクトリア市街を抜けて、島の反対側へと移動する。
「今から五千五百年以上も前ーーーーー新石器時代に建設された世界最古の神殿のひとつです。伝承によれば、神殿を建てたのはサンスーナと呼ばれる女性の巨人だったといわれています。ジュガンティーヤという名前は〝巨人の塔〟という意味ですね」
「それは、女性であることになにか隠されているんじゃねーか?男性ではなく女性ならではの理由とか」
「面白い考え方ですね。考古学者に向いてますよ」
「攻魔官を目指しているんだがな」
暁兄妹はついていけてないようで?マークを浮かべている。
「例えば、新な世代を産むという意味ならその〝巨人の塔〟は新時代の始まりのシンボルになる。つまり新時代になるため、革命のようなものを起こしてその拠点がその塔、あるいは革命後に作られた城のようなものだとも考えられる」
「ふむ、面白いですね」
後部座席の暁兄妹をほったらして長話になってしまった。
「通りすぎたが、いいのか?」
話題に上がっていた神殿を通りすぎたので警告する。
「構いません。私たちが調査しているのは、このジュガンティーヤ神殿ではないんです」
「ほう、で、どんな場所なんだ?」
「ここから二キロほど離れた丘陵で、地下墳墓です。正式な名前は、まだありません。私たちは〝妖精の柩〟と呼んでいますが」
「柩っていうぐらいだから、墓か?」
「ええ。おそらくは〝聖殲〟前後の遺跡ではないかと考えられています」
「〝聖殲〟って・・・・・たしか、親父が研究していたやつでしたっけ」
知っている単語が出たので古城がすかさず話す。
「そうですね。世界各地に残された原因不明の大量虐殺と大破壊の痕跡ーーーーー第四真祖が引き起こしたと伝えられている大いなる災厄の総称です」
「確か、世界最強の吸血鬼だったか?ただの伝説ならいいが、火のないところに煙は立たないっていうからな」
龍牙は肩をすくめる。
そして一つのことに気づく。
「もしかして、今向かっている遺跡に第四真祖が眠っているなんて言わないよな」
「それはわかりません」
カルアナが前を向く。
「見えてきました。調査団の野営地です」
起伏の大きな岩場に乗り入れたせいで、車が激しく揺れた。
進んでいくと、ゲリラ部隊の拠点みたいなものが見えた。
「調査団より、ゲリラって言った方が似合ってるな」
車から降り、荷物を車からおろす。
「おいおい、マジそっくりだな!!」
いきなりオッサンが話しかけてきた。
「オッサン、誰だ?」
オッサンが怒った顔になった。
「誰がオッサンだ、ガキ」
「はっ、お前なんかオッサンで十分だ。オッサン」
「よーし、喧嘩売ってんだな。買うぞゴルァ!!」
「上等だ!!」
そこに、凪沙が割り込んでくる。
「もう!止めてよね。牙城君!!恥ずかしいでしょ!」
「おおっ、凪沙ァ!こんなところに天使がいると思ったら、俺の娘じゃねェか!ハハッ、よく来てくれたな。ちょっと見ないうちにますます美人になったじゃないか?」
凪沙とオッサンの顔を見比べる。
「遺伝子のイタズラってやつか。よかったな、父親に似なくて」
「あん?どういう意味だ!」
「そのままの意味だ。オッサン」
龍牙は牙城の首にナイフを当て、牙城は龍牙の眉間に銃を突きつける。
遠くから知っている声が聞こえた。
「テメー!!俺の息子になにしやがる!!」
「うぇ!?ラグナ!!」
牙城が龍牙から銃の標準を外す。
「ウロボロス!!」
龍牙が叫ぶと魔法陣のようなモノから鎖が出てきて、牙城を拘束する。
「はっ」
「この、ガキィ!!」
牙城はバランスを崩し倒れた。
それを龍牙が見下している。
「なんか、むなしいわ」
牙城を解放し、ラグナに渡す。
「なにされた!!」
「ガキって言われた。あと銃を突きつけられた」
「テメッ!!」
牙城は図ったな!という顔をしている。
「そうかそうか、あっちでお話ししようか」
牙城はラグナに引きずられていった。
「よーし、お前ら、何が食いたい?」
このあと、調査団のほぼ全員の酒のつまみを作らされた。
「親父、ブラッドサイズの点検、終わったぞ」
「悪いな。こんな夜遅くまで」
「気にすんなよ」
星空も見れたし。
「それにしても、多才ですね」
カルアナが褒めてきた。
「そうか?」
「ええ、武器の点検、そして先程の発想に、聞いてみれば大の大人をあっさり拘束したとか」
照れ隠しに頭を掻く。
「そうだろそうだろ。この武器は龍牙が俺の誕生日にくれたんだぞ」
「ったく、物騒なガキだな」
牙城がテントに入ってきた。
「お前に言われたくねーよ。オッサン」
「なんで俺だけ、態度が違うんだよ!」
「いい加減なオッサンだから」
ラグナとカルアナが笑う。
「っぷーーーーーそうだ。あれがなっちゃいけない大人の例だ」
「おい!!親だったらちゃんとしつけろ!!」
カルアナが冷たい目で牙城を睨む。
「兄さん、龍牙が来たって!」
「おう、ジン、久しぶり」
「久しぶりだね、龍牙。また大きくなったね!」
夜でも元気なジンに挨拶する。
「あー、もう寝る」
「おうおう、ガキはとっとと寝ろ」
「おやすみ」
大人たちに挨拶して自分のテントに入り寝袋に入る。
「あのガキ、かなりの腕だな。流石死神の息子といったところか」
「頭の回転も早いみたいでした」
「そうだろそうだろ。俺の息子だからな!」
「ま、凪沙には及ばねぇがな」
「ああん?龍牙の方が優秀だぞ!」
親バカ二人の口論が始まり、朝まで続いたのだった。