ストライク・ザ・ブラッド 蒼を継ぐ者   作:テルメン(白)

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二章

目が覚めるとラグナに担がれていた。

 

「親父、離してくれ」

「ん、起きたか」

 

ラグナにゆっくりとおろされる。

辺りを見回すと、遺跡の中ということがわかった。

 

「おはよう」

「おはよう!龍牙君!!それで、似合ってるかな?」

「似合ってるぞ」

「えへへ、ありがとう」

「寝過ぎなんだよ。ガキ」

 

なにが気に入らなかったのかわからないが牙城が文句を言ってきた。

 

「お前には迷惑かけてないだろうがオッサン」

 

かけたとしたら親父ぐらいだ。

 

「悪かったな。親父」

「点検のために夜遅くまで起きてもらったからな。このぐらいは当たり前だ」

 

牙城の方を向く。

 

「これが大人の対応というやつだ」

「あ?やっぱりお前、喧嘩売ってるだろ?」

 

牙城を無視して壁を触る。

 

「結構綺麗だな。何らかの魔術でもかかっているのか?」

 

壁を観察する。

発光していて、面白いな。

 

「おい、あまりベタベタ触んなよ。呪われても知らねーぞ」

「呪われるって、ここにヤバイ化け物でも封印されてんのか?」

「まあ、そんなとこだ」

 

牙城が言葉を続ける。

 

「第四真祖って言葉、知っているだろ?」

「眠っているとか?なら昨日の予想が当たってた訳だ」

 

牙城は驚いた顔をし、龍牙はどや顔をする。

 

「ま、あくまで可能性だがな」

「んで、どこに棺桶があるんだ?」

 

行き止まりのような場所を見渡すが特に気になるものはない。

いや一つだけあるな。

 

「やっぱりガキだな。この先にもうひとつ部屋があるはずなんだが、なにしろ封印が厳重過ぎて入り口がわからねえ。それで凪沙に来てもらったんだがーーーーー」

「入り口はあれだろ」

 

龍牙は扉を指差す。

 

「?」

 

指差したあと、後ろを振り向くと凪沙が指さした方向を見つめている。

そして、なにか呟きだした。

 

「なるほどな、降霊術で扉の開け方を調べてるのか」

 

しばらくすると魔術回路のようなものが浮かび上がる。

 

「博士!これは・・・・・?」

「遺跡が再起動したみたいだな。遺跡守護像の件もあったことだし、魔力源が生き残ってるだろうと予想はしてたが、思ったより派手だねェ」

 

遺跡の扉が消えた。

 

「戦王領域の魔導技師でも解けなかった封印なのに、こんな一瞬で・・・・・そんな・・・・・」

 

まあ、アプローチの仕方が違うから当然と言えるだろう。

 

「うお・・・・・しばれるな、こりゃ!」

 

強烈な冷気に当てられ、牙城が大げさに震える。

その冷気を無視して、凪沙は奥に進んでいく。

 

「凪沙っ!?」

 

古城が慌てて妹を止めようとした。

 

「止めておけ」

「待て、古城!近づくな!」

 

龍牙と牙城が大声で止める。

 

「下手なことをすると危険な目にあるのは凪沙だ」

「ぐ・・・・・」

 

龍牙はそれを言い終わると、凪沙の進んでいった方へ歩く。

それにつられるように、あとの全員が奥に進む。

進んでいくと、部屋があった。

祭壇が巨大な氷の塊に覆われていた。

その氷の柩の中には、小柄な少女が眠っていた。

 

「こいつが、第四真祖か?」

 

自分で自分を封印しているように感じた。

 

「まるで眠り姫じゃないか・・・・・」

 

古城が呟いた。

意外とロマンチストなんだな。

 

「眠り姫・・・・・フロレスタン王の娘オーロラーーーーーですか」

「いいねェ。味も素っ気もない数字で呼ぶよりは、詩的でイケてるな」

 

アヴローラか。

 

「そんな呑気なこと言ってる場合かよ!このままだと凪沙まで氷漬けになるぞ!」

「ああ・・・・・そうだな・・・・・」

 

柩の前に辿り着いた凪沙を、凍気の霧が覆い尽くそうとしている。

 

「ミス・カルアナ、ここは任せて構わないか?」

「親父ーーーーー!?」

 

古城は牙城を殴ろうと拳を固める。

しかし、殴ることはなかった。それよりも早く、遺跡全体が揺れたのだ。

 

「・・・・・地震か!?」

 

その古城の言葉は、強い風、火薬の臭いが混ざった爆風に否定された。

凪沙の憑依が反動によって解除され、凪沙が倒れた。

 

「博士、ラグナさん、今のは・・・・・!」

 

カルアナが背後を睨む。

 

「ああ・・・・・ちょっとばかり面倒なことになっているみたいだな」

「安全な社会見学のはずだったんだけどな」

 

牙城は背中に担いであったライフルを降ろして、安全装置を外す。

ラグナは龍牙の頭をぽんぽんと撫でる。

 

「今から仕事だからな。後で迎えに行く」

「わかった」

 

牙城も古城になにか言って外に走って行った。

 

「くそっ!なに考えてんだよ、あの男はっ!?」

 

古城は床を力任せに殴る。

 

「・・・・・巻きこんでしまったことはお詫びします。ですが、どうか博士を責めないでください。あの方がいちばん苦しんでいるんです」

「なんなんですからこの遺跡は?ただの地下墓地じゃないんですか?十二番目の〝焔光の家伯〟ってのは、いったいーーーーー!?」

 

カルアナに詰め寄りながら、古城が訊いた。

カルアナは突き放すように、殺気を放つ。

 

「第666拘束機関解放、次元干渉虚数方陣展開・・・・・」

 

龍牙が魔道書の起動コードを唱える。

龍牙の足元に紋章が浮かび上がる。

 

「その話はまたあとにしましょう。古城さん、龍牙さんも、下がってください」

 

カルアナは、登録証を外し、遺跡の入り口を睨みつける。彼女の瞳が真紅に輝き、唇の隙間から牙を覗かせた。

 

「コードS・O・L、碧の魔道書起動!!」

 

龍牙から黒く禍々しいオーラが放たれる。

 

「悪い」

 

禍々しいオーラは動く屍となった警備員を飲み込み、動かなくする。

 

「これが、碧の力だ」

 

彼らの魂を奪い取ったのだ。

 

「最悪の気分だ」

 

気分が悪い。

 

「・・・・・すみません」

 

カルアナがうつむいてそう言った。

自分が背負うはずの罪を背負わせてしまったことに罪悪感を感じていた。

 

「気にすんな。俺が勝手にやったことだ」

 

振り返りながら龍牙そういった。

 

「悪いが、すこし休む」

 

壁にもたれかかり、目をつむる。

体ではなく、精神を落ち着けるために

 

 

ラグナと牙城が外に出ると野営地は炎に包まれていた、というほどではないが燃えていた。

 

「こう広範囲だと、ジンも手こずるか」

 

冷静なようだが、ラグナは荒々しい殺気を放っている。

 

「ミス・カルアナの結界か破られたのか?そんなことができるとしたら、カルアナ家と同格以上の吸血鬼・・・・・ラグナもだが・・・・・いや・・・・・」

 

牙城が、妙だなと眉を寄せる。

関係ないと言わんばかりに腰からブラッドサイズを抜く。

 

「牙城、よかった、無事だったか」

「カルーゾか・・・・・なにがあった!?」

 

岩場の陰から現れたカルーゾを睨んで、牙城が訊いた。どうやらカルーゾは負傷しているらしい。

 

「すまん、不意を衝かれた。結界が破られて野営地はこの有り様だ。ジンのおかげでどうにかこの程度に被害を抑えられたが、負傷者が多い。牙城とラグナも手を貸してもらえるか?」

「そうだな。そうするよ・・・・・だが、その前にーーーーー」

 

牙城がカルーゾの胸元へライフルの銃口を向ける。

 

「牙城・・・・・!?」

 

ラグナはそれを無視して走っていった。

 

「なんの・・・・・真似だ、暁牙城・・・・・!?」

 

牙城は怒りを圧し殺した低い声を出す。

 

「下手な小芝居はやめとけよ、テロリスト野郎。本物のカルーゾが、俺の名前をまともに発音できるわけねーだろ・・・・・それに今のおまえからは、死体の臭いがプンプンするぜ」

「ぬ・・・・・」

 

カルーゾだった動死体が動揺したように短く唸った。

それと同時にジンが上からカルーゾを切り裂く。

 

「・・・・・生きて帰れると思うなよ、テロリスト・・・・・!!」

 

ジンが怒りを撒き散らす。

 

「人間の分際で!」

 

新な動死体が地面から出てくる。

ジンと牙城を囲むように出てきたため、ジンと牙城は背中合わせになる。

 

「だが、この数からは逃れられまい・・・・・!?」

 

近くの岩場から、叫び声が聞こえた。

 

「甘えよ」

 

ラグナが死体を操っていた魔術師にブラッドサイズを突き立てていた。

 

「これでチェックメイトだな」

「貴様・・・・・貴様らァ!人間の分際・・・・・グアアアアアァァァア!!」

 

突如、魔術師の体から闇が溢れだし、体を黒く染め、形を変えていく。

 

「なんかしたか・・・・・龍牙?」

「いや、まだ能力は使ってねえ」

 

ラグナとジン、牙城は闇に包まれた魔術師にそれぞれの武器を構える。

 

「なんかわかんねーが、今のうちだ!!たたみかけるぞ!」

 

ラグナが闇を纏い、魔術師へ走る。

 

「ウオオオォォーーーーー!!」

 

魔術師が吠えて闇が魔術師に吸収され、獣人のような姿となっていた。

獣人と違うところはひび割れがあり、そこから闇を覗かせていた。

 

「ふ、ふはは・・・力・・・い・・ぞ・・・みなぎ・・・真祖・・・もっと・・・感じる・・・!!」

「っち、パワーアップしやがったか!」

「貴様・・・ら・遊ん・・・!!」

 

死体が地面から這い出て来た。

それはラグナたちの行く手を阻むよう立ちふさがる。

化け物になった魔術師は遺跡へと走る。

 

「待ちやがれ!!」

 

ラグナへ死体が攻撃する。

 

「邪魔だ!!・・・・・っ!?」

 

先程と同じと見積り腕を振って退かせようとしたが、その腕を掴まれた。

 

「オラ!!」

 

掴まれていた方とは逆の腕で死体を殴り飛ばす。

 

「気を付けろ、死体もパワーアップしてやがる」

 

牙城は弾を確認する。

 

「ハンドガン効かねえのか?」

「あ?知らねえよ」

 

牙城はホルスターからハンドガンを抜き、死体の脚へ弾丸を放つ。

死体は関係ないとばかりにラグナへ歩いていく。

 

「なら、こいつはどうだ?」

 

次は目へ弾丸を撃ち込んだ。

死体は倒れる。

 

「急所は効くらしいな」

「援護は任せたぞ、牙城!行くぞジン!!」

「報酬は半分だぜ!」

「金より龍牙だ!!」

 

死体は次々と動かなくなっていく。

 

 

「いや、来ないで!!・・・・・恐い・・・・・古城君、龍牙君、逃げ・・・・・!」

「凪沙!?おい!?」

 

凪沙の叫び声で目を覚ました。

凪沙は気絶した。

 

「!?・・・・・俺のミスだ」

 

境界の力を感知した龍牙は謝る。

 

「どういうことで・・・・・」

 

カルアナの言葉を轟音が遮る。

 

「ククク・・・たぞ・・・・・碧・・・それをよこ・・・!!」

 

そこには境界の力に溺れた獣人がいた。

 

「下がってください。ーーーーー噛み裂け、〝日蝕狼〟!」

 

カルアナは眷獣を召喚するが、あの程度では足止め程度にしかならない。

 

「キサ・・・は用は・・・ガキ・・・寄越せ!!」

 

境界の力を取り込んだ・・・・・

 

「いや、飲み込まれたのは獣人の方か・・・・・」

 

完全に中毒になっている。

 

「下がれ、そいつは、俺が殺る!!」

 

斬魔・鳴神を召喚する。

 

「いえ、貴方こそ下がっていてください!ーーーーー喰いちぎれ〝月蝕狼〟!」

 

カルアナはもう一体、眷獣を召喚するが、獣人はもう一段階変身して、眷獣を吹き飛ばした。体のひびは全身に広がり九割をしめていた。

 

「あんたじゃ無理だ!!」

 

鳴神で獣人を斬る。

 

「グオ・・・なぜ!?・・・・・治らない!?・・・貴様の!!・・・」

 

鳴神は時を斬る刀。だから、怪我は治らない。

 

「オオオ!!・・・碧だ!・・さえあれば・・・・なぞ!!」

 

獣人は無茶苦茶に走る。

 

「どこを狙って・・・・・!?」

 

獣人の走った方向には古城たちがいた。

 

「虚空陣!!」

 

疾風を出そうとしたが、近すぎて巻き込んでしまう。

ベルヴェノクに変えていれば、結果は違っただろう。

 

「ーーーーーゴフっ!!」

 

そこには古城と凪沙はおらず、代わりにカルアナが血まみれで立っていた。

 

「カルアナ・・・・・!!」

 

龍牙が叫ぶ。

 

「すみません、龍牙・・・・・貴方に・・・・・」

「喋るな!!」

 

獣人を蹴り飛ばしカルアナを支える。

脈はもう無くなっていた。

 

「カルアナ、すまない」

 

龍牙はカルアナを優しくおろす。

 

「ーーーーーテメーだけは絶対に許さねえ!!」

 

氷剣・ユキアネサを召喚する。

鳴神とユキアネサの二刀流。

 

「虚空陣・疾風・弐式!!」

 

ユキアネサで斬撃を放ち、凍らせて動きを止め、鳴神の斬撃が獣人を真っ二つにする。

 

「グアアア!!・・・・貴様!!・・・・すま・・んぞ!!」

 

謎の言葉を言い残し、獣人は粒子になって消えていく。

 

「やった・・・・・のか?」

「なんとかな、だが、カルアナが・・・・・」

 

カルアナは死んだ。

 

「チクショウ・・・・・」

 

龍牙は嘆く。あのとき判断をまちがえなければ、カルアナは死んでいなかった。

 

「リアナさん!!」

 

古城が突如叫ぶ。

 

「な・・・・・!?」

 

カルアナが立ち上がったのだ。

 

「龍牙、ハザーロフを倒したのですね」

 

腹から血を流しながら、聞いてきた。

 

「ああ、あそこで倒れている」

 

獣人を指差しそう言う。

 

「すみません、また、貴方に背負わせてしまいました」

「気にするな」

 

もっと重いものを背負ったのだから。

 

「悪い、本当に」

「ーーーーー覚悟はできています」

 

鳴神を構える。

 

「手向けだ。最高の技で送ってやる」

「どういうことだよ!!」

 

古城が龍牙とカルアナの間に割り込む。

 

「古城、カルアナはもう・・・・」

「私はもう死んでいるのです。古城、そこの獣人の術で動いているだけなのです。だから、今のうちに」

 

龍牙は頷く。

 

「虚空陣奥義・・・・・」

 

世界が白に染まる。

 

「悪滅・・・・・!!」

 

龍牙が鳴神を振ると無数の斬撃がカルアナを襲う。

 

「ありがとう、龍牙ーーーーー」

 

カルアナは消えていく。

そこで、一発の銃声が響いた。

銃弾が龍牙の肩を貫通した。

 

「っぐ・・・・・お前本当に最低だな!!」

「フハハ・・・・馬鹿な・・だ・・・この体・・・脆い・・・・貴様の・・・よう!!」

 

こいつは、カルアナを囮に隙を伺っていたのだ。技の終わる瞬間を・・・・・

 

「古城、下がってろ」

 

ユキアネサを杖代わりに体を支え、立ち上がる。

 

「おい!そんな体で・・・・・」

 

古城はその先を言えなかった。

銃を持った動死体が大量にわき出たからだ。

 

「撃て・・・!!」

 

先程の獣人が乗り移った警備員が命令すると、銃弾を一斉に放った。

 

「凍てつけ!!」

 

龍牙は自分を中心に氷の壁を生み出し、身を守る。

 

「古城!!」

 

いつのまにか、古城がアヴローラを守るために己の身を盾にした。

 

「・・・・・そういうことか」

 

一か八かの賭けだが、古城はそれに勝ったようだ。

 

「アヴ・・・・・ロー・・・・・・ラ・・・・・・」

 

古城の血に染まった少女が起き上がる。

 

「馬鹿な!!・・・・・・・真・・だと!?」

「残念だったな!!」

 

部屋全体が冷気に包まれる。

今の龍牙では出せない冷気だ。

 

「アヴローラ!!」

 

膨大な魔力により虹色に輝く少女の髪が逆巻き、眷獣を召喚する。

 

「すげえな」

 

少女の背後に現れたのは上半身は人間の女性に似ており、下半身は魚、背中には翼が生え、指先は猛禽のような鋭い鉤爪の生物、妖鳥

 

「眷獣・・・・・だと・・・・・!?」

 

その眷獣が絶対零度で獣人を凍りつかせようとする。

 

「グオオオ・・・・・死ぬわ・・・・・・・かん!!」

 

動死体を壁にし、境界の力で体を無理矢理獣人に作り替える。

 

「オオオ!!・・・・・・・が境界の力!!」

 

その獣人は眷獣の冷気を押し返した。

 

「凍牙氷刃!!」

 

隙ができた獣人を氷の斬撃で凍らせる。

 

「術式解放・・・・・!」

 

地面を凍らせて獣人の脚を止める。

その間にアヴローラの眷獣の力で獣人の全身を凍らせる。

 

「クソ・・・・・・・碧・・・蒼さえあれば・・・!!」

「お前には無理だ」

 

望み通り碧の魔道書の力で葬った。

倒れる前にやることがある。

 

「古城、生きろよ・・・・・」

 

ポケットから碧の魔道書の模造品を埋め込む。

龍牙の体から力が奪われるのが分かる。

 

「っ!!」

 

そこで完全に意識を失った。




用事があるので来週と再来週は更新できないかもしれません。
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