「ちょ、どういうことなのよ、古城!」
藍羽が古城に問い詰める。
「話しは後だ!」
古城は凪沙の病室へ走る。
「凪沙!!」
古城が凪沙の病室で見たのは眠っている凪沙と、その隣に鏡映ししたように眠る一人の少女だった。
その少女を包んでいるのは、氷の塊だ。
かつて〝妖精の柩〟と呼ばれていた氷塊を、古城は無言で見つめていた。
「こんなところに居たんだな。アヴローラ」
古城は優しく氷塊を撫でる。
「それで、なんの用だ」
後ろに立っているヴァトラーに殺気を放つ。
「心配して見に来たのさ。ずいぶん強くなったね古城」
ヴァトラーもそれに負けじと殺気を放つ。
「それで、そいつと知り合いか?」
古城はヴァトラーの後ろに立っている淡い緑色の髪に翡翠色の瞳の女性を指差し聞く。
「中央アメリカの夜の帝国〝混沌界域〟の領主。二十七体の眷獣を従え、無数の化身へと姿を変える無貌の第三真祖ーーーーー〝混沌の皇女〟」
「そのような仰々しい呼び名は好かぬ。ジャーダと呼ぶがよい」
古城はなるほどという顔をした。
「アヴローラに変身してたのか」
「非礼は詫びよう、暁 古城。貴様を愚弄するつもりではなかった」
古城の言葉に、ジャーダが神妙な口調で答える。
「たが貴様に本気を出させるには、こうするのが最も容易であろうと思ってな」
「・・・・・統制機構があるのによくこんなことができたな」
ジャーダを憐れむような視線を向ける。
「・・・・・ああ、六英雄に攻撃されるという珍しい体験ができた」
やるんじゃなかったと呟く。
「哀れなる十二番目の亡骸を弄んだMARとやらーーーーー此奴らには、相応の報いを与えてやるべきかと思うがーーーーー」
「へぇ、こんなことをしておいてよく言うね」
ジンがジャーダの首にユキアネサを当てる。
「いつの間に」
ユキアネサの恐ろしさを知っているジャーダさ冷や汗をかいていた。
「ここで〝混沌の皇女〟に恩を売るのも悪くないかな?」
リベンジのため眷獣を召喚し合体させ、ジンへジャーダごと襲わせる。
「凍てつけ!」
ジンは腕を前につきだし、氷の獣の頭を生み出し眷獣を凍らせる。
「感謝するぞ、ヴァトラー!暁古城。いずれ我が〝混沌界域〟でまみえようぞ。それまでなくしたものを取り戻しておくがいい」
ジャーダは逃げていた。
「っち、公務執行妨害で、拘束する!」
ジンはヴァトラーの眷獣を全て凍らせた後、あっという間に魔力を封じる手錠をかける。
「まだダメだったか。さすが六英雄だね」
手錠をかけられたヴァトラー初めての体験なのか楽しそうにしていた。
「脱走しそうだな」
古城は素直に感想を言う。
「それも楽しそうだ。六英雄の目をどこまで欺けるか、か」
本当に楽しそうに護送されていた。
「古城!」
「先輩!」
自分を呼ぶ二人の声が聞こえた。
「姫柊に浅葱」
二人の名前を呼ぶ。
二人が病室に入る。
「先輩、彼女は・・・・・」
姫柊は氷塊を見て古城に問う。
「・・・・・本物のアヴローラ。十二番目の〝焔光の夜伯〟だ」
藍羽が裾を掴んできた。
「眠ってるの?」
古城は首を振る。
「こいつはもう死んでるよ」
少女の胸を、銀色の杭が貫いていた。
「俺がこの手で殺したんだーーーーー」