「明日から家族旅行に行に行くからな」
「マジかよ・・・・・」
「んで、こいつを渡しておくぞ」
財布を渡す。
「五万円入ってるから、そんだけあれば大丈夫だろ」
「おい!なんで俺に・・・・・」
「お前な、アヴローラにいろいろと金がかかるだろ?あー、旅行の用意するからもう帰るぞ」
龍牙は行ってしまった。
「まあ、ありがたいけどさ・・・・・」
財布を確認する。この財布自体も素人目でも高価な物だとわかる。
「六万入ってる・・・・・メモ?」
一万多かった。
それとメモが入っていた。
「ピンチの時は花壇に・・・・・」
命令文が書かれていた。
「ありがたいけどさ・・・・・」
メモを財布に戻す。
「まあ、しかたねーか」
古城は不安になるが、友人の初めての家族旅行だ。父親と母親が揃うことも少ないと聞いている。しかも子供の頃からだ。
「がんばるか」
財布をポケットにしまい、アヴローラのいるクルーザーに行く。
「じゃ、そういうことだから、しばらく帰ってこないから」
「うむ・・・・・」
どうやら、アヴローラにも報告しているようだ。
「古城か」
「おう、アヴローラにも報告しに来てたんだな」
「ま、そうだ」
「んで、どこに行くんだよ?」
「アルディギア王国だな」
アルディギア王国
平和なところだと聞いたことがある。
「まあ、事件に巻き込まれないようにしろよ」
「起きたとしても、親父がいるから大丈夫だって」
龍牙の父親は腕が立つ攻魔官だ。
「そうだったな、じゃあ、体調崩すなよ、気候の急激な変化とかで」
「わかってるって、じゃあな」
龍牙は行ってしまった。
「・・・・・本当に大丈夫か?」
不安に思いながらクルーザーに乗る。
「古城!!」
「うお!?」
アヴローラがいきなり飛びついて来たので倒れそうになる。
「ど、どうした!?」
「古城、龍牙が・・・・・」
「あー・・・・・」
そういえば龍牙にもなついていたな
お菓子とか作ってきてアヴローラに餌づけしていたのを思い出した。
「あー、じゃあ俺が何か作ってきてやるから、龍牙よりは味が落ちるかも知れないけど」
アヴローラは一瞬目を輝かせたが、ブンブンと首を振る。
「寂しいってことか?じゃあ、また今度、浅葱や矢瀬を誘って買い物にでも行くか?」
アヴローラの頭を撫でてやる。
帰るまでずっとアヴローラの頭を撫で続けた。
「はぁー、やるか」
古城はエプロンを掛けて台所に立つ。
「型抜きは・・・・・あった」
星やハートの型抜きで生地を切り抜く。
「あとはオーブンに入れるだけだな」
エプロンを外して椅子に座る。
ピーンポーンとインターホンが鳴った。
「はーい、って、龍牙か」
「おう、最後にこれ、ケーキを作ってみた。こっちはお前と凪沙ちゃんの分でこれが明日のアヴローラの分、頼むぞ」
「あー、俺もクッキー作ってんだけどな・・・・・」
龍牙は気まずそうな顔をする。
「一緒に持ってけばいいだろ?喜ぶと思うぞ」
「まあ、そうだな」
「じゃ、俺は明日の為に寝るから」
「おやすみ」
「おやすみ」
龍牙は隣の部屋に帰る。
「っと、できたみたいだな」
オーブンが鳴ったので開ける。
「味は・・・・・いい出来だな」
袋に詰めて、リボンでくくる。
「古城君、私にも頂戴」
「あ、じゃあ龍牙から貰ったケーキ食べようぜ」
龍牙から貰ったケーキを冷蔵庫から取り出す。
「龍牙君ってハイスペックだよね。料理もできて強いし、お金ももってるし」
龍牙のケーキをパクリと食べる凪沙。
「って、おいしい!!店出せるよ!」
「まあ、家庭科の調理実習で一人で作るからな」
「え?そうなの?」
「ああ、那月ちゃんが献上させるんだ」
龍牙の料理を食べる那月の顔を思い出し、笑う。
「これだけ美味しければ納得だよ」
「だよな」
ケーキが無くなる。
「ご馳走さま」
「ご馳走さま」
ケーキを食べ終わり皿を洗って眠る。
翌日、龍牙たちはもう行ったようだ。
「ネラプシ自治区で・・・・・大規模感染の徴候・・・・・?」
早朝のリビングで食パンをかじりながらテレビを見ているとゾンビの映画のような冗談みたいな映像が流れた。
「新種の吸血鬼感染症なんだって。恐いよね」
龍牙が旅行する場所とは違うので、安心するが、最近聞いたことがある地名なので、怪しく思う。
「・・・・・吸血鬼感染って、どういうことだ?吸血鬼に血を吸われたら、吸血鬼になるってのは迷信なんじゃなかったのか?」
「世界保険機関でも、まだよくわかってないらしいよ。ネラプシって最近あちこちと戦争してたし、生物兵器の流出じゃないかって説もあるみたい。これ以上感染者が増えないといいんだけどね」
古城の疑問に凪沙が解説する。情報があまり多くないのか、ワイドショーのアナウンサーも、だいたい同じようなことを繰り返しているだけだった。
「じゃあ、古城君。あたし、先に行くね」
身支度を終えた凪沙が、スポーツバッグを片手の声をかけてきた。
「あー・・・・・チア部の朝練か。あんま無理すんなよ」
「大丈夫、大丈夫。最近は体調も良くなったし。古城君も遅刻しないでね」
おぅ、と適当に妹を見送り、古城はソファにだらしなくもたれた。
「第一、第二、第三のいずれの真祖の型にも該当しない吸血鬼・・・・・か・・・・・」
疑問に思いながら、登校する。
昼休み
「出張中?」
『はい。研究主任の暁 深森は本日、島外に出張中です。ご用件があれば承りますが』
「あー・・・・・いえ、わかりました。なるべく早く俺・・・・・息子に連絡するように伝えてください」
お願いします、と言い残して古城は電話を切る。
「クソ、どうなってんだよ!?こんな肝心な時に両親揃って連絡が取れないってのは!」
古城は乱暴に廊下の壁を殴りつけた。
近くを歩いていた年輩の教師に睨まれるが、それを気にしている余裕もない。
九番目が知らせにきた〝宴〟とやらの指定日は、おそらく今夜ーーー四月最後の満月の夜だ。
「これはもう意地を張ってる場合じゃないかもな。那月ちゃんに泣きつくしかねえか・・・・・」
迂闊に彼女に頼ってしまうと、あとでどんな見返りを求められるかわかったものではないが、あれでも那月は学校専属の攻魔カウンセラーだ。警察や特区警備隊かも顔が利く。
「いや・・・・・そうか・・・・・」
土下座する前に試してみるべき手段を思い出して、古城は表情を引き締めた。
ザハリアスに対抗できそうな人材は、あと一人いる。それはほかならぬアヴローラ自身だ。彼女が九番目と同等の力を扱えるようになれば、ザハリアスも力ずくでアヴローラに危害を加えることはできないはずだった。
「凪沙・・・・・か」
結局そうなるのか、と息を吐き、古城は中等部のほうへ歩き出した。
「古城?どこ行くの?」
いったん教室に戻って帰り支度を始めた攻撃に、声をかけてきたのは浅葱たった。
「悪い、浅葱。俺は午後の授業でないから、なんか上手いこと誤魔化しといてくれ」
「ちょっ・・・・・あんた、どこに行く気よ!?」
制止しようとする浅葱を振り切って、古城は教室の出口へと向かった。そんな古城の態度でなにかを察したのか、浅葱の表情は厳しくなる。
「アヴローラになにかあったの?」
「いや、大丈夫だ。なにもねーよ、あってたまるか・・・・・!」
「龍牙もいないんだし、無茶しないでよ」
「わかってるよ」
凪沙の教室に向かう。
途中で顔見知った凪沙の同級生から、凪沙が病院に戻ったと訊いて、アヴローラの元へ急ぐ。
「ーーーーーヴェルさん!?」
クルーザーの近くが騒がしいので行くと、アヴローラが気絶していた。
「なにやってんだよ、あんた・・・・・アヴローラになにをした!?」
息釜弾んでいるが、どうってことはない。
「あなたには関係ないの。黙ってて」
ヴェルディアナが冷たくいい放つ。突き放すようなその口調に、古城は戸惑う。
「ヴェルさん!?なにを言って・・・・・!?」
「あなたも知ってるでしょあ、古城。ネラプシ自治区で今、なにが起きているのか。私の故郷なの。あそこに住んでいるのはカルアナ領民だった人たちなのよ!」
ヴェルディアナの憎悪のこもった眼差しで古城を睨む。
「私はザハリアスを許さない。私から父様も姉様も奪って、その上、領民まで奪おうとしているあの男を。殺してやるわ・・・・・絶対に殺してやる!」
「・・・・・そのためにアヴローラを利用するのかよ!?」
ヴェルディアナの憎悪に圧倒されることなく、古城が言い返す。
「なにを馬鹿なことを言ってるの?」
気絶したアヴローラの髪をつかんで、モノを扱うようにぞんざいに持ち上げる。
「当然でしょう。だってこれは兵器なのよ。殺して壊すために造られたんでしょう?」
「ーーーーーっざけんな、てめえ!」
荒々しく吼えた古城が、岸壁を蹴ってヴェルディアナへと殴りかかってくる。その予想外のスピードと古城の体を纏う黒いオーラにヴェルディアナは戦慄した。
禍々しいオーラ、あれは危険だ!
「ーーーーー〝ガングレト〟!」
古城の前に出現したのは、炎をまとう魔犬だった。巨大な前肢が古城をとらえ、そのまま吹き飛ばした。
「ーーーーーってな」
地面に叩きつけられた古城は立ち上がる。
「〝ガングレト〟!!」
もう一度己の眷獣に命令する。
手加減なんてしたのは間違えだった。殺す気で攻撃する。
「うおぉぉぉ!!」
古城は吠えながら眷獣の腕を殴りつけて止める。
だが、もう片方の腕に切り裂かれ、鮮血を撒き散らす。
「はは・・・・・あははははは・・・・・あなたが悪いのよ、暁 古城。あなたが私の邪魔をするから・・・・・!あははは・・・・・あははははははははは!」
ヴェルディアナは狂ったように笑う。
古城を纏う黒いオーラが眷獣の生命力を吸収するのを知らずに・・・・・
夕陽の眩しさにうなされて、目が覚めた。
「生きているのか・・・・・俺は・・・・・?」
手脚が動くことを確認して、古城は無理やり身体を起こした。予想していた傷の痛みはない。
「これが血の従者の力ってやつか・・・・・参るな・・・・・」
だが、この身体なら凪沙とアヴローラを救える。二人を助けるのに人間を止めるなんて、願ってもないことだ。
「〝焔光の宴〟か・・・・・行くしかないか」
会場へ急いで走る。
「邪魔だ!」
吸血鬼感染症発症者を薙ぎ払い進む。
黒いオーラが殴った発症者の生命力を奪う。
そして、ウォーツゲートにたどり着いた。
そこには妹と吸血鬼の少女がいた。
「アヴローラ!」
妹ではなく吸血鬼の少女の傍に駆け寄ったのは、単純に近くにいたから、というのが理由のひとつ。そしてもうひとつの理由は、凪沙が、明らかに尋常ではない気配を撒き散らしていたからだ。
「古城・・・・・」
アヴローラが頼りなく唇を震わせていた。
「なにがあった!?ヴェルさんは!?」
アヴローラ細い肩を両手で支えて、古城が訊く。ひうっと小さく呟いて、アヴローラが視線を地面へ落とした。
そして古城はそれを見た。銃弾を浴びたヴェルディアナが、血まみれの姿で倒れている。
ヴェルディアナの隣に屈みこんでいるのは、遠山だ。MARの医師であるはずの彼女は、しかし手の施しようがない、という風に無言で首を振る。
「遠山さん・・・・・いったいなにがあったんです?」
「〝焔光の宴〟です」
〝焔光の宴〟がどんなものか知らない。
「ザハリアス卿が仕組んだ第四真祖覚醒の儀式のことです。ネラプシ自治区に居住する一般市民は約二百六十万人。そのうちの約十五パーセントが、すでに大規模感染によって疑似吸血鬼化しているといわれてます。彼らから供給される魔力で第四真祖を覚醒させたのです」
ああ、本当に屑だな。ザハリアス・・・・・
「・・・・・どうして凪沙を巻きこんだ?あいつは〝焔光の夜伯〟とは無関係なはずだろ!?」
別人のように酷薄に笑う凪沙を指して、古城が遠山を問い詰める。
「お気づきになっていなかったのですか?」
「なにをだよ・・・・・!?」
「凪沙さんが第四真祖だったのです。素体ではない、本物の第四真祖です」
「なにを、言って・・・・・!?」
「世界最古の〝魔族特区〟ゴゾ島で封印されていたのは、あなたの知っているアヴローラーーーーー十二番目ではありません。彼女はただの監視者に過ぎない」
古城の動揺を無視して、遠山は続けた。
「・・・・・監視者?」
「遺跡に封印されていたのは『魂』。それこそが第四真祖の本体です。三人の真祖と〝天部〟の人々が協力して生み出した、人工の〝呪われた魂〟ーーーーー我々はそれを仮に〝ルート〟と呼んでいます。原初のアヴローラと」
「凪沙に取り憑いているのは、そいつか・・・・・原初のアヴローラ・・・・・!」
ようやく話がつなかった。
同時に自分自身の誤解を知る。
「やはり・・・・・そういうことでしたか・・・・・・」
「ザハリアスゥ!!!」
古城は立ち上がったザハリアスを殴る。
「ゴハッ!?」
「てめえのせいで妹がな・・・・・」
ザハリアスを一方的に殴る。
殴るごとに黒いオーラがザハリアスの生命力を奪う。
「貴様、それは我の魂を飲み込んだ闇・・・・・」
ザハリアスが動かなくなったので、凪沙の方を向く。
「おい〝原初〟!!凪沙を返しやがれ!」
「っぐ!?」
古城はあり得ないほど跳躍し、凪沙の頭を掴む。
「その身体は凪沙のものだ!」
黒いオーラは凪沙の身体からアヴローラの生命力を奪う。
「離せ!」
古城は殴られて吹き飛んだ。
「我の力を奪うとは・・・・・忌々しい」
原初が睨む。
そして、原初のの背中から巨大な翼が生える。その翼が、六体の〝焔光の夜伯〟の胸へと突き刺さった。十一番目、九番目、八番目、七番目、二番目、そして一番目ーーーーー六体の〝焔の夜伯〟の全身が包まれ、翼の中へとゆっくりた消えていくのが見える。
「翼の・・・・・色が・・・・・」
漆黒だった翼の色が光に包まれ虹のように色を変えていく。淡く美しい輝きは。まるで極光を見ているようだ。
その極光の翼が、古城を目がけて刃のように伸びた。
その翼を古城を護るように地面から突き出した無数の氷柱が、極光の翼を弾いたのだ。
「・・・・・なんの真似だ、十二番目?」
原初がアヴローラを睨む。
「眷獣に操られた人形ごときが、宿主たる我に逆らうかーーーーー」
原初のが放つ圧力が増した。解き放たれた魔力は暴風となり、ウォーツゲートのガラスの壁を軋ませる。
その魔力さえ強欲に奪う黒いオーラ。
「よかろう。せいぜい我を愉しませろ」
新しいおもちゃを手に入れた子どものように、原初は歓喜の表情で言い放った。
極光の翼が荒れ狂い、巨大な鞭と化して辺りを薙ぎ払う。膨大な魔力が竜巻を生み、ガラス張りの天井を砕いて、破片の雨を降らせる。純白の閃光が炎となって、古城と、古城を庇うアヴローラを呑み込んだ。
「ーーーーーっ!」
アヴローラを抱きかかえながら、吹き飛ばせれた。
今日も遅れました。
後、古城を強くしすぎたかな?