fateにあの仮面ライダー達が参戦したら、という妄想です。一場面のみ切り取った単発、「いずれ連載するかも?」という構想の一部ですので、お気に召しましたら幸い。

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Fate/ staynight ifルート──戦士の生き様

side 『S』

 

「はぁ!?お前、今何て言った!?」

 

薄暗い洋館、その一角。

一人の少年が青年に詰め寄る。

 

 

「何度でも言ってやる。お前のやり方は到底承服出来ん。」

 

怒りに任せ睨み付ける少年に対し。青いライダースジャケットに身を包んだ青年は、顔色一つ変える事無く逆に彼を睨み返す。

 

「そもそも、兄のクセに妹を平然と傷付けるお前の性根が気に食わん。俺を従えたければ、先ずその腐った根性を叩き直してやる。」

 

「お前、自分の立場分かってんの?僕はマスターでお前は所詮サーヴァント!お前がどう思っていようが、僕なら……!」

 

「───その令呪を用いて無理矢理従わせられる。だろう?好きにすれば良い。」

 

少年の言葉を遮り、青年は彼の肩を掴んで押し返す。

決して力を込めたワケではないものの、それだけで少年の恐怖心を煽るには充分だったらしい。少年はビクリと身体を震わせ、先の勢いが嘘の様に押し黙る。

寧ろ、目の前の存在がどういう物か理解して尚、気丈にも睨み続ける点は大したものだ───そう思いつつも、無論口には出さない青年。

 

「殺したければ殺せ、それで困るのはお前自身だ。命令を遂行させたければそれも構わん。─────だが、その後お前がどうなるか…までは俺には責任は持てんぞ。」

 

冷たく、酷く威圧的な声音で青年は告げる。

 

暫しの睨み合いの後───先に折れたのは少年の方だった。

 

「……クソッ!後で泣いて詫びても知らないからな!」

 

不快感を隠しもせず、忌々しげに悪態を吐いた少年は。肩に置かれていた青年の手を払い退けると、そのまま彼の脇を通り過ぎ、自室へ戻って行った。

 

「……そんな事態になれば、俺は二度とタケルやアランやカノン…龍さんに顔向け出来ん。死んだ方がマシだ。」

 

フン、と鼻を鳴らすと、彼もまた身を翻し歩き始める。

と言っても、目的地は目と鼻の先だ。数歩進んだ後、とある部屋の前で立ち止まった彼はその扉をノックする。

自分が召喚(・・)されて直ぐ、普段の感覚でノック無しに部屋へ入ってしまったが為に──────本当のマスター(・・・・・・・)が着替えている場に入室してしまった。普段は温厚な彼女(・・)に珍しく本気で説教されて以降、彼もその辺は気を使う様になった。

 

「……はい。」

 

「────桜。俺だ、マコ…ライダーだ。今は大丈夫か?」

 

「あっ…はい、大丈夫です。ちょっと待って下さいね。」

 

ドア越しにそんなやり取りを交わした後、中で人が動く気配がする。そこから数秒と経たず、目の前の扉が開かれた。

 

「……お待たせしました。」

 

「敬語は良い、と言っただろう。俺はお前に召喚されたサーヴァントで、お前は俺のマスターだ。」

 

「あ、はい…それでも、染み付いた癖というか。それに、ライダーは私より歳上ですし。」

 

部屋の中から顔を覗かせたのは、はにかんだ笑みを浮かべる一人の少女。 ストレートの紫髪に、赤いリボンの髪飾りがよく映える。

優しく、何処か儚げな雰囲気を纏ったこの少女こそ。

 

サーヴァント───人智を越えた存在として新たな生を受けた深海マコト(スペクター)の、本来の主だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side『B』

 

一面の雪景色。美しく、何処か恐ろしいまでの静寂を感じさせるその場に、獣の咆哮が響き渡る。

 

「はぁ、はぁ…。いや…止めて、来ないで…!」

 

雪の様に美しい銀髪の、まだ年端もいかぬ少女。そんな彼女を取り囲む、文字通り飢えた狼の群れ。

 

「誰か…リズ!セラ!…バーサーカー!助けて!」

 

その場に居ない誰かに助けを乞う。だが、そんな少女の叫びも虚しく、応える者は誰一人として居ない。

 

「ウォォォン!」

 

群のリーダーらしき一匹の雄叫びを合図に、狼達は一斉に少女へ襲い掛かる。

噛み付かれ、爪を立てられ、まだ小さな彼女の柔肌からいとも容易く血が流れた。

 

─────自分はここで死ぬのか。

 

聖杯の器として作られ。

聖杯を手中に収める為の道具として育てられ。

漸く召喚したサーヴァントは、想定していた大英雄(ヘラクレス)とはかけ離れたハズレサーヴァント。オマケにそんなサーヴァントからすら見限られるという屈辱の果てに───最期は、狼の餌として一生を終える。

そんな自分のこれまでを振り返ると、溢れ出る涙が止まらない。

 

────嫌だ。

まだ、自分は何もしていない。自分の意思を示した事が無いまま終わるなんて、絶対に嫌だ。

 

彼女は悪足掻きに過ぎぬと知りつつも、咄嗟に雪を掴んで手近な狼目掛けて投げ付ける。それは狼の顔面に命中し、思わず怯んだ一匹が後退った。

 

だが所詮焼け石に水だ。この程度で狼達を退ける事など出来る筈も無い。────それでも、何もしないで殺されるよりは…!

 

「─────合格だ。」

 

不意に辺りに響き渡る、男性らしき声。それと同時に、一匹の狼が宙を舞った。

反射的に少女がそちらへ目を向ければ。

赤いコートを身に纏い、鋭い視線を向ける一人の青年の姿。

その姿こそ以前少女が召喚し、彼女を見限った筈のサーヴァント。

 

「……バー…サーカー……?」

 

「フン。随分と時間が掛かったが…漸くだ。貴様は自らの意思を示し、敵に立ち向かう強さを見せた。意思を持たぬ操り人形という弱者から抜け出したワケだ。」

 

彼はコートを翻すと、狼の群れへと突撃する。

蹴り上げ、飛び掛かって来るそれを殴り飛ばし、瞬く間に無力化させた。

 

「…ドライバーを使うまでもない。」

 

「…何よ。私の事、マスターとして認めないとか言ってたクセに…!キリツグと同じように、私の事捨てたクセに!何で今更…」

 

「キリツグとか言う奴の事など知らん。俺が一度貴様を見限ったのは、貴様が詰まらん弱者だったからだ。───年端もいかぬ子供だというのは関係無い。俺を召喚し、聖杯戦争なんて戦場に向かうつもりの人間に…普通の子供と同じ扱いを期待する方が御門違いだろう。」

 

睨み付けるイリヤの視線を真っ直ぐに見詰め返しながら、さも当然とばかりに語る青年。その口調に迷いは無い。

 

「だが、貴様は強さを示した。───主に従うなど本当なら死んでも御免だが…特別だ。」

 

言いながら彼は少女の傍へと歩み寄り、ゆっくりと身を屈め。所謂お姫様抱っこで少女を抱え上げた。

 

「ふえ…!?ちょ、ちょっと…何するのよ!?」

 

「イリヤスフィール…お前は強い。お前の強さに敬意を表し、俺はお前をマスターと認めてやる。」

 

彼が険しい表情を緩める事は無かったが。不思議とその声音は少し穏やかだった。

 

 

 

 

 

「……あれから随分経ったけど、バーサーカーの偉そうな態度は変わらないね。」

 

「フン。俺がそう簡単に変わるものか。」

 

「ハイハイ。知ってるわよ。私のサーヴァントは何時も上から目線で、自分のルール絶対で面倒臭くて、でも偶に何も無い所で足挫いたりする変なサーヴァント。」

 

「なっ…!?」

 

尊大な態度でソファに腰掛けていた青年は、少女の言葉に思わず顔を顰める。

 

「時々気晴らしに踊ったりしてるけど、妙に上手だし。でも偶に足上がってない時もあるし。如何にも俺様って感じの割に、お菓子作り上手で変な所女子力高いし。───あ、あと何故か亀好きだよねー。」

 

「───喧嘩売ってるのか?」

 

「え?まっさかー。」

 

口元をひくつかせる青年に対し、少女は白々しく言い放つと。

花開く様な満面の笑みを浮かべ──────。

 

「バーサーカーは…カイトは、私の最強のサーヴァントでしょ?ちゃんと分かってますよーだ!」

 

悪戯っぽくウィンクしながら、上機嫌そうに鼻歌を奏でるのだった。




色々溜まってる小説は多いので、もし連載するとしたらかなり先になると思います。特にオーズ先に進めようとは思ってますので。その際は二人ともではなく、どちらか片方を出そうと思いますので、どちらが好みだったかなども教えて頂けると参考になります!
御意見や御感想、fate×仮面ライダーで組み合わせの御提案などありましたらお気軽にどうぞ!(全部書けるとは言ってない)


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