ISーインフィニットストラトスー とある少年のドタバタ転生録   作:クロイツヴァルト

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転校生は中国人? ②

 

 

 「お前達のせいだ!」

 

 「貴方のせいですわ!」

 

 授業が終わり、昼休みになった時に箒は2人に、セシリアはヒレンに対して文句を言う。 午前中の授業だけで山田教諭に五回も注意され、織斑教諭からはそれぞれ三回も出席簿で叩かれていた。 彼女達には学習という単語は存在しないのだろうか

 

 「いや、そう言われても」

 

 「第一、何故俺達のせいになっている? そもそも授業中に上の空だったのはお前達二人だろう? 織斑教諭の授業程気を抜けないモノはないのだぞ? で、その上の空になっていた原因はなんだ?」

 

 困惑気味な一夏に対して素直な疑問をヒレンは言う。 そして後半は織斑教諭に理由を問いただされそうなものだが本人がいないため言葉にしている。

 

 「「そ、それは」」

 

 ヒレンのその質問に急に口ごもる二人

 

 「兎に角、その話は昼飯にしながらでも出来るだろ? 早く行って飯を食おうぜ」

 

 「む・・・ま、まぁお前が言うのなら、しかたないな」

 

 「そ、そうですわね。」

 

 「・・・一夏、この空気の状態でよくそういった話が出来るな」

 

 そんな二人の様子にお構いなしなのか本能の赴くままに昼食の事を切りだすが一瞬だが、不満そうに眉間に皺を寄せていた箒だが直ぐにヒレンを見て嘆息しながら一夏の意見に頷く。 続く様にしてセシリアが焦った様に頷く。 そんな三人の様子にに対してヒレンは呆れていた。

 

 「今日は日替わりランチにするかな、ヒレンは?」

 

 クラスの数名が加わった一行は学食に移動した。その中で一夏は毎回のように今日の日替わりランチメニューに決めていた。

 

 「洋風セットにかつ丼大盛り、牛丼特盛にステーキセットだな」

 

 ヒレンの言葉にセシリアと箒は唖然とし、食道内で働いている女性は苦笑していた。

 

 「君はよく食べる子だね」

 

 「わりと燃費の悪い体だからなるべく多く食べないともたないんだ。」

 

 「昔から良く食べると思ったけどさらに凄い事になってないか?」

 

 「そんな事は無いと思うが」

 

 ヒレンと一夏はそんな事を話しながら料理が来るのを待っていた。

 

 「はい、日替わりランチメニュー。 そっちの大食い君はうちの若いのがテーブルに直接持って行くから何処に座るか教えてくれるかい?」

 

 食堂のおばちゃんが一夏に日替わりメニューが載っているトレイを手渡しながらヒレンに聞く。

 

 「あそこの窓際にある大きめの席に頼みます。」

 

 「あいよ。 鮎川さん、向こうの奥のテーブルに持って行ってあげて」

 

 「は、はい! ただいま」

 

 鮎川と呼ばれた女性は白いコックコートを着たセミロングのブロンドをポニーテールにしており体躯はグラビアモデルの様なプロポーションで織斑教諭と良い勝負である。 ただし胸のみならば山田教諭がダントツである。 その女性は大量の料理が乗ったトレイを乗せたカートで運んで行く。

 

 「さて、俺は手ぶらになったがお前達の方はまだ時間が掛かりそうだな。」

 

 「そうだな」

 

 ヒレンの言葉に箒は相槌を打つ

 

 「なら、一夏と俺は先に行って席を取っておく。 流石に料理を持って行ってもらっておいて行くのが遅くなったら失礼だからな。」

 

 そう言ってヒレンは先にテーブルに向かってしまう。

 

 「二人とも、待ってたわよ!」

 

 しかし、そんな時にヒレンの前に立塞がるようにして、ラーメンを片手に鳳鈴音が仁王立ちで待ち構えていた。

 

 「・・・先程の会話を聞いていただろう、 通行の邪魔だ」

 

 「う」

 

 ヒレンのジト目に怯んだ形でよろめいて通路を塞いでしまっていた鈴は道を開ける。

 

 「話があるのなら待っていないで教室にくるなりあるだろうに」

 

 「そ、それはそうだけど」

 

 いつも無駄に快活でアグレッシブな少女なのだが、こうしていざ気になる異性のいる教室に行って食事に誘うなどの行動をとるというのに尻込みしてしまうのである。

 

 「・・・久しぶりというのだろうな。 約一年ぶりとなるのか・・・特に怪我病気とかはしていなかったか?」

 

 「あ、当たり前でしょ。 アンタこそ偶には怪我や病気をしなさいよ」

 

 「それはまた無茶苦茶な注文だな」

 

 ヒレンの言葉に少しだけ慌てた様に答える鈴であったがその返しの言葉に苦笑してしまっていた。

 

 その間にセシリア達も食事の乗ったトレイを持って来たのでそのまま先程指定しさせて貰ったテーブルに向かう。 現在の人数がクラスの女子とヒレン達に鈴が加わり丁度十人程になるが、十人位なら余裕で座れそうなテーブルを一応確保して正解である。

 

 「鈴、いつ日本に帰って来たんだ? おばさんは元気か? いつ代表候補生になったんだ?」

 

 「一夏、そう矢継ぎ早に質問してどうする。 ユックリと昼食をとりながらでも話は出来るだろう」

 

 「そうよ。 それにしてなにISを動かしちゃってんのよ。 ニュースを見てびっくりしたじゃない」

 

 一夏と鈴、そしてヒレンは中学時代のやり取りを思い出しながら話をしていた。 勿論周囲の女生徒に加えて一組の女子の昼食参加メンバーも同じくして聞き耳を立てていた。

 

 「ヒレンもよ、なによ篠乃之博士の護衛とかいってたけどアンタが紅天使の操縦者とか驚きが一夏の比じゃなかったわよ。」

 

 「それはすまない事をした・・・のか?」

 

 「アンタのその態度も久しぶりな気もするけどそのふざけた食欲も相変わらずみたいね」

 

 会話をしつつもヒレンのトレイにある料理の量が既に七割近く胃袋の中に消えていた。

 

 「燃費が悪い体だと昔に言った筈だ。」

 

 「・・・そうね、しかも確実に拍車が掛かっているわね」

 

 「一夏にも言われたが俺はそうは感じないのだが」

 

 「一夏、それにアスティ。 そろそろどういう関係か説明して貰いたいのだが」

 

 「ヒレンさん、まさかこちらの方と付き合っていらっしゃるの!?」

 

 疎外感を感じたのかどこか焦燥感を感じさせながらセシリアと箒は棘のある声で問い詰める。 そして聞き耳を立てている他のクラスの女子達も気になっている様子であった。

 

 「べ、べべ、別にあたしは付き合ってるわけじゃ・・・」

 

 「そうだぞ。 なんでそんな話になるんだよ。 第一俺達はただの幼馴染だぞ?」

 

 「俺は小中の付き合いで仲良くさせて貰っているだけなのだが・・・何故睨む?」

 

 「そうね、一夏の場合は幼馴染よね。 それにヒレンも含めてアンタ達の反応は昔からからだからもうあきらめているわよ」

 

 鈴の言葉に一夏が反応し、ヒレンもそれに便乗する形で発言をするが半目で睨まれてしまい本気で首を傾げていると大きな溜め息とともに鈴が項垂れる。 心なしかチャームポイントと自負しているツインテールも垂れていた。

 

 「幼馴染・・・?」

 

 怪訝そうな表情のまま、箒は一夏の言葉を聞き返していた。

 

 「ヒレンはどうか知らないけど、箒が引っ越したのが小4の終わりで、鈴が転校してきたのが小5の頭なんだ。 で、それと一緒になる様な形でヒレンも転校してきたんだ。中2の終わりに鈴は国に帰ったから、会うのは一年とちょっとぶりだな」

 

 「そうなのか・・・」

 

 一夏の台詞に箒は一応の納得を見せた。

 

 「で、こっちが箒。 ほら、前に話したろ? 小学校からの幼馴染で俺の通っていた剣術道場の娘」

 

 「ふぅん、そうなんだ」

 

 鈴はジロジロと箒を見ると次いでヒレンを見る

 

 「で、アンタは今まで何をしていたのよ?」

 

 「俺は元々、この学園に入るつもりは無かったのだが各国の対応に追われるのが面倒でな。 当初は紛争地域に赴いて戦闘ばかりしていたな・・・。 で、その後は篠乃之束の護衛をしつつこのIS学園に入ったって所だな。」

 

 「・・・中々に壮絶な生活してるのね。 中学の時にもたまに学校に来ないと思ったらそんな事をしてたわけか」

 

 ヒレンの言葉に頬を引き攣らせながらも鈴はなんとか声に出す。

 

 「所で、一夏がクラス代表であってるのよね?」

 

 「正確に言うのなら・・・な。」

 

 「・・・どういう事?」

 

 「一課は確かにクラス代表になったが未だにISに関してド素人だ。 だからこの馬鹿に何かあった時・・・まぁ、病気や怪我といったものか? そういったものが発生した場合は予備に俺がクラス代表代理をする事になっている。」

 

 ヒレンの言葉に鈴は目を丸くするが、直ぐに納得する。

 

 「そうね・・・確かに一夏の事だから無茶をして体調を崩すかもしれないし・・・妥当かも知れないわね」

 

 「ンンンッ! 私の存在を忘れて貰っては困りますわ。 中国代表候補生、鳳鈴音さん?」

 

 「・・・誰?」

 

 話をしている中でセシリアが食事中に立ち上がり、鈴に声を掛ける。 が、本気で誰だかわからないという表情をして聞く鈴

 

 「なっ!? わ、私はイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存じないの?」

 

 「うん、あたし他の国の事とか興味無いし」

 

 「な、な、なっ・・・!?」

 

 鈴の言葉を聞いて言葉に詰まりながらも怒りからなのか顔を赤くしていくセシリアは鈴に向けて指を指して

 

 「い、い、言っておきますけど、私あなたのような方には負けませんわ!」

 

 「そ、でも戦ったらあたしが勝つよ。 悪いけど強いもん」

 

 セシリアとは対照的に鈴は冷静にそして不敵に笑う。 しかし、鈴の性格をしる者ならば分かる事だが他人からすれば挑発に取れる言葉なので怒る人間というものは必ずいるものである。

 

 「・・・・・・」

 

 「い、言ってくれますわね・・・」

 

 その挑発とも取れてしまう言葉に篠乃之は自ら持つ箸を止め、セシリアはわなわなと体を震わせながらも拳を震わせていた。

 

 「・・・御馳走様、俺は先に戻る。 一夏、この場の収拾は任せた」

 

 「は? ってあの量をもう食べきったのか!?」

 

 「そう言う事だ。 じゃあな」

 

 「って、この状況で俺を見捨てて行くのか!?」

 

 「・・・なにを当たり前な事を聞く? お前が招いた事態だ」

 

 それだけ言ってヒレンはトレイを持ってテーブルから離れる。

 

 「御馳走様。」

 

 「はい、お粗末様。 良い食べっぷりだね」

 

 「この食堂で作られている料理はとても美味しい物ですから」

 

 「うれしいこと言ってくれるねェ」

 

 食堂のおばちゃんと会話しながらトレイを返却したヒレンはそのまま教室に戻る。

 

 そして、授業の方は滞りも無く放課後へと場面は移る。 そして、IS学園の第3アリーナに専用機持ち3人と新たに人物が現れる。

 

 「・・・篠乃之も訓練に参加か?」

 

 「だ、ダメか?」

 

 「いや、そうは言わないがこうも早くに訓練機の貸し出し申請が通ったな」

 

 ヒレンの前にはIS学園に配備されている訓練用IS【打鉄(うちがね)】を装着、展開をしていた。

 

 打鉄は純国産ISにして定評のある第二世代機の量産型であり、安定した性能を誇るガード型で初心者にも扱い易い様に設計されている。 その為、多くの企業に各国、そしてこのIS学園にも訓練機として配備され使用されている。 IS学園の教科書より抜粋

 

 「前から申請していた物が今回回されてきたからな」

 

 「そうか、いや助かる。 俺の近接戦闘のレベルでは中々対応出来ていないからな」

 

 「そ、そうか?」

 

 箒の言葉に心底助かると言った表情をして告げるヒレンに対して照れるような表情のままそっぽを向く。 しかし、そこへ不満を抱く者がいた。

 

 「まさか、こんなにも早く訓練機の使用許可申請が下りるなんて・・・これではヒレンさんとの訓練が」

 

 俯き何かを呟くセシリアだが、気を取り直してヒレンの方を向く。

 

 「ではヒレンさん訓練を「一応、今の篠乃之の実力を見たいから軽く模擬戦をするか」 ・・・なんでですの!?」

 

 「? いや、これからの訓練参加を視野にしれて篠乃之の実力を確認する事も必要だ。」

 

 セシリアの言葉に被せる様にしてヒレンが告げると非難の声を上げるが至極当然とばかりの言葉に目に見えて落ち込むセシリア。

 

 「さて、では始めようか。 お前が訓練機で近接装備と補助程度の射撃兵装のみだからな・・・こちらは近接装備のみで戦う。」

 

 「・・・それは私を侮辱しているのか?」

 

 ヒレンの言葉にムッとした表情で箒は言葉にする。

 

 「そもそも搭乗時間も違えば場数も違う。 それに俺に本気を出させたければそれだけの腕を持て」

 

 バッサリと斬り捨てたヒレンはエクシアを展開し、直ぐに左腕に装着されている遠近複合装備からGNブレードを展開する。

 

 「では・・・参るっ!」

 

 劈く様に叫び、ヒレンに箒は迫る。

 

 「・・・直線的すぎるな。 一夏にも言ったが近接戦は虚実を交えないと上級者とはまともにやりあえないぞ?」

 

 「くっ!」

 

 上段からの唐竹割をGNブレードで勢いを殺さずに受け流す。 そして勢いを殺されずにそのままつんのめる箒に対してヒレンは横合いから左脚を軸にして右脚でミドルキックを入れてその場から吹き飛ばす。

 

 「どうした? まだ始まったばかりだ。 俺に本気を出させたいのだろう?」

 

 「このっ・・・舐めるなぁ!」

 

 「焦りや怒りという感情に流されるな。 流されればそれだけ動きが単純となり対処されやすい。」

 

 近接用ブレードを振りまわすがヒレンはそれを紙一重で躱しながら箒にアドバイスをする。

 

 「ならばこれは・・・どうだ!」

 

 「良い突きだが・・・まだまだ甘いな」

 

 ヒレンは何事も無かったかのように右手にはいつの間にか握られていたGNロングブレイドで突きを反らして告げる。

 

 「・・・こうも簡単にあしらわれるとは」

 

 「だから先に言ったはずだ、場数が違うと。 ふむ、大体の実力は把握した。 当分の間は一夏と共に近接戦闘のノウハウを叩き込む。 これからセシリアのBT操作の訓練に移行する。 一夏は射撃兵装の特性を覚える為に見学。 箒も同様だ。 一応は知っていると思うが全方位(オールレンジ)で使用されるBTの動きは操縦者の意のままに操ることが出来る為に見ておくのもいいが」

 

 「・・・私も見学させて貰う。」

 

 ヒレンの言葉に箒は素直に従うが、その瞳にはありありと不満が満ちていた。

 

 (これは矯正が必要か。 強大な力はその人間を狂わせるからな・・・束が箒の専用機を作ると言っていたがまだ時期尚早だな)

 

 それをちらりと見たヒレンは内心で答えを出すがこれからの事を考えて疲れそうになる。 が、今はセシリアのBT操作の訓練だと思考を切り替える。

 

 「さて、早速だが前回のお浚いをする。」

 

 「分かりましたわ。 行きなさい!」

 

 セシリアを見て告げるのと同時に手元に表示したコンソールを操作して(ターゲット)を出現させるのと同時にセシリアはブルーティアーズを周囲に展開しつつ、スターライトMk-Ⅲを目の前の的に照準を合わせて撃ち抜く。 そしてその流れのままBT兵器を操作しながら自身は銃で的を次々に撃ち抜いて行く。

 

 「そこまで!」

 

 「はぁはぁ・・・」

 

 暫くしてヒレンの言葉に構えを解いたセシリアは玉の様な汗を浮かせて息も上がっており肩で呼吸をしていた。 BT兵器を操作するにあたってイメージインターフェースに意識を向けながら自身も動くという訓練は以外にも神経を使う為である。

 

 「動きは悪くは無いがもう少しBT兵器へ向ける意識を自身の体に向けろ。 最低ラインでもあの状態では撃墜されるぞ」

 

 しかし、そんな状態のセシリアにヒレンは容赦のない言葉を言う。

 

 「わ、分かりましたわ。」

 

 息も切れ切れの状態のセシリアはそれだけ言うとISを解除してそのまま座り込んでしまう。

 

 「・・・セシリア、見ておく様に。 これが俺の機動だ。」

 

 ヒレンは実体化させた長大なライフルを肩に乗せてからセシリアを見て飛び出す。

 

 「・・・これが、BT兵器の動きだというのか」

 

 「この程度の事はヒレンさんに取っては造作も無いと言われましたけど、正直次元が違いますわね」

 

 箒はその先程までのヒレンの動きがいかに手加減されていたのかと痛感する。 出て来た的に対して即応する反射の速さに加えて16基ものBT兵器を使用した縦横無尽にアリーナ内を飛び回り的を一つ一つ的確に射抜くその射撃能力の高さセシリアと共に箒はにただ脱帽するだけであった。

 

 「・・・ただの的だと味気ないな。 セシリア、的にランダム回避と攻撃行動を入力してくれ。 レベルは最高難易度のSだ。」

 

 「そ、そこまでしますの?」

 

 「この俺の竜騎兵はまだ調整中でな。 完成されればこの倍の量は制御できるようにしなければ話にならない。 俺という存在は最強であり、不動のものでなければ世間には認められない」

 

 そう言ってヒレンはGNスナイパーライフルを取り回しながらBT兵器で的を撃ち抜く速度を上げて行く。

 

 そして

 

 「こんな物か・・・しかし、調整中の竜騎兵だとSランクは厳しいか」

 

 「いやいや、逆に俺らから言わせれば凄すぎだっての。 途中から姿が視認できなくなっていたぞ?」

 

 「・・・しかし、反応がコンマのレベルだが遅れている。 もう少ししたらまた機体整備と調整をしないとならないな。 今日の訓練はここまでにしよう。 十分にアイシングをしてから各自部屋に戻るように」

 

 それだけ言い残してヒレンは足早にアリーナから更衣室に向かう。

 

 「・・・ふぅ、ティエリア。 そっちの捜査状況はどうだ?」

 

 《駄目だ。 あの一件以来それらしい行動は見られないし紛争が起きている地域の裏にもそれらしい痕跡は残っていなかった。》

 

 「そうか、あの変態キチガイ博士はいったい何処に消えたのか・・・亡国企業の一員だと分かっているが本拠地が全く出て来ないからな・・・」

 

 《裏の組織の人間だからな、そう簡単には尻尾は出さないだろうな》

 

 「気長にとは行かないが襲撃されても大丈夫なように準備はしておかないとな。」

 

 そう言って更衣室から出ると丁度、というかタイミングを計ったように鈴と鉢合わせる

 

 「一夏の所に行くのか」

 

 「あ、うん。 そういうアンタは?」

 

 「訓練が終わったから部屋に戻る所だ。 一夏なら今の時間帯なら更衣室でアイシングをして休憩している筈だ」

 

 「そう・・・でもアタシはヒレンにタオルとドリンクを持って来たんだけど一夏の分はオマケみたいなもんよ」

 

 「そうなのか? だが俺はこの後部屋に戻って機体データの確認などをしなければならない。」

 

 「そう・・・ならドリンクだけでも受け取りなさいよね」

 

 「あぁ、有り難く受け取らせてもらう」

 

 そして受取ろうとした時、不意に鈴の手と接触した時に鈴が瞬時に顔を赤くさせるのと同時にヒレンの方に向けていたスポーツ飲料が床に落ちてしまう。

 

 「大丈夫か? 顔が赤いようだが」

 

 「だ、大丈夫よ! そ、そそそれじゃアタシは一夏に差し入れを持っていくわね!」

 

 そういって鈴が脱兎の如くヒレンの目の前から逃げる様に走り去り、ヒレンは首を傾げていたが気にしても仕方ないと意識を切り替えて自室に帰ると備え付けのPCを起動してエクシアのスペックデータを画面に移しだす。

 

 

 「・・・やはり俺の反応にエクシアが追い付いていないか。 高機動用装備を付けても反応速度が追い付かないか・・・追加装甲の案件(プラン)を早く煮詰めないとだな。 出来ればクラスリーグマッチまでに仕上げれればいいのだが」

 

 そう言ってヒレンはPCを操作していく。

 

 「ヒレン、今の時間は大丈夫か?」

 

 夕食も終わり、自室で休んでいる所にノックの音と共に篠乃之の声が聞こえたためにヒレンはドアを開けて応対する。

 

 「どうした? こんな時間に」

 

 「いや、昔に姉さんと一緒に助けて貰った時の礼をちゃんとしていなかったからな」

 

 「・・・そうか。 立ち話もなんだから部屋に入るか? お茶をしながらのほうが篠乃之もへんに気負う事も無いだろ」

 

 「あ、ありがとう」

 

 少し顔を赤くする箒を部屋に招き入れた後にヒレンはリビングに行き急須に茶葉を入れてお湯をゆっくりと注ぎ、茶葉がひらくのを待つ。

 

 「・・・ここがアスティの部屋か。」

 

 「篠乃之、そのアスティとファミリーネームで呼ぶのは止してくれ。 呼ばれ慣れていないからファーストネームのヒレンで構わん」

 

 きょろきょろとしながら椅子に座った箒はヒレンの部屋を見ていた。

 

 「そ、そうか? なら私の事も箒と呼んでくれて構わないぞ」

 

 「そうか、しかし男の部屋など見回しても面白い物など見られんぞ?」

 

 「いや、ジロジロ見る様な真似をしてしまいすまない。 しかい、ヒレンの部屋はどこか生活感を感じさせないというか置いてある物が少ないな」

 

 「生活するうえでの必要最低限の荷物さえあれば事足りるからな。」

 

 「・・・そうだ、あの時に借りていた制服だが返しておく」

 

 そう言って机の上に紙袋に入った制服を箒は出すとヒレンに手渡す。

 

 「そのまま捨ててくれて構わなかったのだがな」

 

 「命の恩人の物をぞんざいに扱うなど出来るか!」

 

 そう言って怒る箒にヒレンは苦笑する。

 

 「それはすまなかったな。 俺はそういう人の感情の機微に疎いからな」

 

 「そうなのか?」

 

 「そうだ。 一夏といて人の感情という機微にある程度は理解をしていたつもりだがまだまだのようだな。」

 

 そう言って自分で入れたお茶を啜り、一息つく。

 

 「これからは箒も訓練に加わる様だが、それは一夏が要因か?」

 

 「そ、それもあるが・・・いや、一夏がどうとかではなくてだな」

 

 ヒレンの言葉に箒は俯きながらチラチラとヒレンを見る。

 

 「訓練にそういった気持ちで入るのも良いが、力というものをよく考えておけ。 ISもまた力であり、人を簡単にかえてしまう。 今の世の中の女尊男卑がいい例だ。 今までの扱いに不満がありそれが反動になっているのも要因だと思うがな」

 

 ヒレンの言葉に箒はどこか呆れた表情をする。

 

 「俺の場合は紛争地域に赴きISとの戦闘をした事が何度もあるがああも簡単に人を変えてしまうのも考え物だがな。 箒はそういった輩の様には絶対になるなよ? ってどうした?」

 

 「いや、ヒレンも一夏と同じ人間なのだなと思っただけだ。」

 

 憮然とした表情で箒はヒレンを見る。

 

 「・・・まぁ、俺が一夏と同じだというのはなんとなく分かるが・・・先程の話だが俺の言った事が分からなくともいつか分からなければならない場面に会うだろう。 その時になってから感じても遅い。 今の内に心構えだけでもしておくといい。」

 

 ヒレンの言葉に漠然とした考えしか思えなかった箒はいつの間にか一夏と同じ部屋に戻って来たのか覚えていなかった。 しかし、手元には何時の間に渡されたのか紅い宝石が付いたアクセサリーを持っていた。

 

 「・・・私は何時の間に部屋にもどったのだ? それにこの宝石の付いたアクセサリーは」

 

 箒はうろ覚えながらにヒレンの言葉を思い出す。

 

 『お前は世界が注目している篠乃之束の妹でもあるからISに乗るのは必然であり、運命なのかもしれない。 だが、それをネタにしてまた襲われないとも限らん。 だからこのアクセサリーを渡して置く。 後日、一夏にも渡すかもしれないが、今の所専用機も持たない箒の方が危険度で言えば優先される。 これは万が一の事もあるから肌身離さず持って置く事だ』

 

 そう言っていたのなんとなく覚えていた箒は首に掛けて鏡をみる。

 

 「・・・中々センスがあるな。」

 

 楕円形の紅い宝石がキラリと箒の胸元で光る。それを見て箒はなんとなく触れて頬を緩める。あの時よりも大人びた少年と再び話せたこともそうだが異性からこうやって形のある物を送られるのは一夏以来でもあるからかもしれないが自然と笑っていた。

 

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