ISーインフィニットストラトスー とある少年のドタバタ転生録 作:クロイツヴァルト
「あれから既に一月か・・・」
ヒレンと一夏に加えて箒、セシリアそして鈴の五人で集まり朝食を摂っていた。
「だな・・・思いのほか長く感じたな」
感慨深く呟く一夏
「そろそろの筈だが・・・」
「なにがそろそろなんだ?」
「一夏、分かってて言っているのか?」
「?」
本気で分からないとばかりに不思議そうな表情をする一夏に対してヒレンは溜め息を吐き
「学年別個別トーナメントだ」
「あぁ、そんな物があったっけな!」
「そんな物・・・お前は俺と比較しないでもそれなりに注目を集めているのに呑気な者だな」
学年別個別トーナメント・・・文字通りの意味でこれを一週間かけて行うのだが、一週間もかかる理由は単純なまでに各学年の全員が参加するからである。 各人の能力把握の他に前回駄目になった調査をする為に再び各国の代表や、各企業のスカウトマンが見学に来るのである。
「俺が注目されるって・・・」
「前にも言ったと思うが俺には紅天使という肩書があるが、お前は俺と同じ男性操縦者だ。 注目されない訳がない」
「そうだった・・・」
「IS訓練の方も順調な様だし何よりも織斑教諭たちになにやら師事しているみたいだから問題は無いと思うが・・・無理だけはするなよ?」
「分かってるって」
「勿論だが、他の三人も同様だからな?」
「うっ・・・バレテいらっしゃいましたの?」
「バレないとでも思ったか? あれだけこそこそしていれば逆に目立つってものだ」
味噌汁を啜りながらヒレンはそう言った。
「「あ、あははは・・・」」
ヒレンの言葉に乾いた笑いをする鈴と一夏
「私はヒレンの隣に立てるようになりたいからな・・・多少の無茶など構いはしない」
「だからといって体調管理を怠るなよ? どこかのお馬鹿なクラス代表の様にな」
「わ、悪かったって・・・」
「まぁ、過ぎた事は仕方ないが・・・そろそろ時間だな」
「「「「え?」」」」
「御馳走様・・・先に行っているぞ?」
それだけ言って食器を片づけるヒレン
「や、やばい!」
「今日は最初の授業は織斑先生ですわ! 遅れたら・・・」
「遅れたら?」
「「「殺される!」」」
「あの人だから納得だわ」
ヒレンが先に行った後にそんなやり取りで蒼い顔をしながらも急いで支度をしに行く三人と呆れた表情をする鈴であった。
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今月に行われる学年別個別トーナメント戦の内容だが、一年は浅い訓練段階での先天的才能評価を、二年では一年での訓練からどれほど成長した彼の成長能力評価。 そして三年はより具体的な実戦さながらの実戦能力評価である。 三年の能力評価はIS学園を卒業した際の就職先を自ら勝ち取りに行くような物であり、試合も大がかりな物と自然となるのである。
「うーん、やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」
「え? そう? ハヅキのってデザインだけって感じしない?」
「そのデザインがいいの!」
「私は性能的に見てミューレイの方がいいかなぁ。 特にスムーズモデル」
「あー、あれねー。 でもモノは良いけど高いじゃん」
朝食を終えてそれぞれの教室に着いたヒレン達の耳に女子達がカタログを片手に会話しているのが聞こえてくる。
「あ、そう言えば織斑君やヒレン君のISスーツってどこのやつなの? 見た事無い型だけど」
「えーと、俺のはどこのだっけ? 確か男物は無いからって特注した物だったはずだけど・・・」
「一夏のISスーツは元々はイングリッド社のストレートアームモデルの物だ。 俺のは特に括る物は無いから束博士が設計したISスーツのテスターをしている状態だな。」
一夏がうろ覚えな事を言い、それを捕捉しながらヒレンも自分が着用しているスーツの事を述べる。
「ヒレンって物知りだなぁ」
「この位の事を碌に覚えていない事に俺は驚きだ」
「そうですね。 ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知する事によって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。 また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の弾丸程度なら完全に受け止めることが出来ます。 あ、だからといって衝撃までは消せませんよので悪しからず」
教室に入って来た山田教諭は生徒達の話声を聞いていたのかスラスラとISスーツに関する事を説明する。
「山ちゃん詳しい!」
「一応先生ですから。 ・・・って、や、山ちゃん?」
「山ぴー見直した!」
「今日が皆さんのISスーツ申し込み開始日ですからね。 ちゃんと予習してきてあるんです。 えへん。 ・・・って、や、山ぴー?」
様々な愛称で呼ばれる事が多い山田教諭だが、生徒達に乗ってなのか知らないがその事に一々反応してしまい更にからかわれるという悪循環に陥るのである。
「あ、あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと・・・」
「えー、いいじゃんいいじゃん」
「まーやんは真面目っ子だなぁ」
「ま、まーやんって・・・」
「あれ? マヤマヤの方が良い? マヤマヤ」
「そ、それはちょっと・・・」
「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」
「あ、あれは止めて下さい!」
珍しく語尾を荒げて拒絶する山田教諭も珍しい事だが本人からしたら何か琴線に触れるものでもあるのか・・・本人にしかわからない事である。
「と、兎に角ですね。 ちゃんと先生とつけて下さい。 分かりましたか? 分かりましたね?」
山田教諭の必死な? 説得に応じてなのか教室にいる生徒たちは返事をする。 が、このクラスはこんな事で直るような者達ではない事を此処に記しておく。
「諸君、おはよう」
「お、おはようございます!」
それまでざわついていた教室が織斑教諭の登場と共に一瞬で静まる。 先程の山田教諭とのやり取りが嘘の様であるが織斑教諭の雰囲気がなせる業であると思うしかない。
「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。 訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締める様に。 各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使う様にな。 忘れたものは学校指定ので訓練を受けてもらう。 それもないものは、まぁ、下着で構わんだろう。」
「織斑教諭、一応自分達男子がいる中でその発言はどうかと思うが」
「ふ、冗談に決まっている」
織斑教諭の発言にヒレンが反論をするがそれを鼻で笑って冗談だというがその目は冗談に見えないのは気の所為では無いのだと思いたい。 ちなみにIS学園の指定水着は既に絶滅危惧種となっている紺色のスクール水着である。
「では山田先生、ホームルームを」
「は、はいっ」
連絡事項を言い終えた織斑教諭は山田教諭にバトンを渡して腕組みをしたまま教卓の脇に外れる。 山田教諭は眼鏡を拭いている最中だったのかワタワタとして眼鏡をかけ直していたが、その慌てる姿が小動物の様に見えたのはご愛嬌である。
「えぇとですね、今日はなんと転校生を紹介します!」
(この時期に転校生? しかし・・・政府の息が掛かった者か? ・・・そもそも一夏を含めこのクラスには男性操縦者もいる事から考えても情報収集が目的で捻じ込んで来たのかも知れんな。 どちらにしろ警戒するに越しらことは無いか)
山田教諭の言葉にクラスが震撼する中でヒレンは一人難しい表情をして思案していた。
そして入って来た転校生は驚きの男子であった。
「シャルル・デュノアです。 フランスから来ました。 この国では不慣れなことも多いかと思いますがみなさんよろしくお願いします」
ブロンドの髪を後ろに束ねた男子、シャルル・デュノアはそう言って綺麗な一礼をした。