ISーインフィニットストラトスー とある少年のドタバタ転生録 作:クロイツヴァルト
「今日の授業はここまでだ。 ヒレンとデュノアは私と一緒に職員室に来てもらうからついてくるように」
今日の授業が終わった後、ヒレンとデュノアが織斑教諭に呼び止められる。
「? 織斑先生は僕達になんの様だろう?」
「多分だが、寮の部屋の事では無いのか? お前も男だろうに・・・俺は今、2人部屋の所を一人で使わせてもらっているからそこにお前を入れるのかもしれん。」
「そうなんだ。」
「言っとくがこれはあくまでも俺の予想だ。 確信を持って言っている訳では無い。」
ヒレンとデュノアはそんな会話をしながら職員室に向かう。
「来たか。 デュノアはヒレンと同じ部屋となる。 鍵は山田先生から受け取るように。 デュノアはそのまま部屋に行け。 ヒレンに少し話があるのでな」
「は、はい。」
デュノアはそのまま山田教諭の下に行き、鍵を受取るとそのまま職員室を後にした。
「・・・で、織斑教諭話とは?」
「お前はシャルル・デュノアをどう見る?」
「・・・いやにストレートに聞いて来たな。 俺の感想は本当に男なのかという所だな。 後はおいおいと言った所か 」
「そうか・・・。 私もこの時期に三人目というのがどうも気になっていてな・・・何か企んでいなければいいのだが」
「万が一の時には俺が動く。 IS学園は無関心を貫いた方が身のためかもしれん。 もし俺の仮定が正しければ大きな事になるかもしれん。」
「そうか・・・。 お前には迷惑を掛けてばかりだな。」
「生まれてから何度もトラブルには巻き込まれてきているから慣れていますよ。 主に織斑教諭の関わっている所で。 酔っぱらったりした時なんかも俺が迎えに 「昔の事を持ち出すな馬鹿者」 了解」
少し空気が重くなりかけている所にヒレンは茶々を入れると思いのほか顔を赤くした織斑教諭は少しきつめの目を更に吊り上げてそれを咎めるが、ヒレンは悪びれもしない態度であった。
「まったく、空気の換え方をもう少し他の事で出来ないのかお前は」
「さぁ、俺には分からないな」
「まぁ、いい。 話はそれだけだ。 一応だが、デュノアには気を付けておけ。」
「分かりました。 それでは失礼します。」
そう告げてヒレンは職員室を後にした。
「デュノア、遅くなってすまない・・・風呂か? そう言えば・・・シャンプーが切れそうだった筈だが」
部屋に戻ったヒレンは室内に響くシャワーの音でデュノアが風呂に入っている事が分かると思い出したように引き出しからシャンプーの代えのボトルを出す
「シャルル・デュノア、シャンプーが切れそうだと思って持って来た」
「あ、ありがとう」
そう言ってすりガラスのドアが開いて出て来たデュノアを見てヒレンはその場で硬直してしまう
「・・・あ」
遅れてデュノアの方もヒレンの反応を見て今の自分の状態を見下ろす形で確認すると急いで恥かしい場所を隠す。
「・・・シャンプーの代えだ」
「あ、うん。 ありがと」
短いやり取りをした後にシャンプーを手渡したヒレンは回れ右をしてシャワールームから出て行く。 その後姿を見送った後に浴室のドアを閉めてシャルルはその場で座り込んでしまう。
(ど、どうしよう・・・転校初日でもうバレちゃったよ・・・せっかく仲良くなれるかと思ってたのに。 しかも裸を見られちゃったしどう話しをしたら)
(俺は馬鹿か!? シャルル・デュノアは男かどうか疑わしいと言っておいてこの体たらくとは! 千冬にも進言して注意して貰うはずが最初に俺が地雷原に踏み込んでどうするというのだ!?)
二人は内心で焦り、シャルルは羞恥心も出ているのか顔を僅かに赤らめて己の胸に手を当てて早鐘を打つ動悸を抑えようとしていた。 そしてしばらくしてジャージに身を包んだデュノアがシャワールームから出てきてベッドに腰掛けた。
「・・・あのヒレン君」
「先ずは何か飲み物を出そう。 そのままでは何かと言い難いだろう」
「あ、それなら僕が」
「シャルル・デュノア、お前は今は心の整理をしておけ。 なにを話すのかもそうだがお目の顔を見ると何か諦めの色が垣間見える。」
ヒレンの言葉にベッドから腰を上げたシャルルではあったがヒレンの言葉により再びベッドに座る事になり手持無沙汰になってしまう。
「・・・まったく、俺の不注意から始まってしまった事だがどうしたものか」
《彼女の事だが、一応情報の方は集まった。 やはり社長の妻が彼女を男装させて送ったようだ。 そもそも彼女はデュノア社長の実の娘では無く愛人との間に出来た子供のようだ》
「・・・愛人の子か」
ティエリアの言葉にヒレンは目じりをきつくさせる。 そして何故シャルルがこのIS学園に突如編入されたのかも理解してしまった。
(俺達男の男性操縦者の事が公に出て、俺という異分子の事もあり、開発途上で座礁しかけている第三世代機の開発への糸口を妻の方が見い出してシャルルを男装させたと言う所か? だが、その前に多少のいざこざがあったのは確実かも知れんが・・・解決の糸口はやはり千冬とあの会長に頼むしかないか)
自分自身はコーヒーを淹れ、シャルルの方は茶葉が開くのを少し待ち、アールグレイをカップに注ぎながらヒレンは思案していた。
「待たせたな」
「あ、ありがと」
ヒレンからカップを手渡されてシャルルはそれを受取ろうとしてヒレンと手が当たった瞬間に慌てて手を引込めてしまう。
「大丈夫か?」
「う、うん」
手を引込める瞬間にヒレンがカップの持ち手を何とか落とさない様にしたおかげか両者ともに火傷をする事はなかった。 カップを手渡したヒレンは備え付けの椅子に腰かけ、シャルルに視線を固定する。 普段はさらしか何かで覆っている胸部はなんの拘束もされていない為に女性特有のふくらみを見せていた。 そんなシャルルの容姿の変化をみつつもヒレンは冷静にシャルルを観察していた。
「・・・」
「少しは落ち着いたか?」
「・・・理由を聞かないんだね。」
「本人が喋らない事はあまり聞かない主義だ。 それに喋りたかったら喋ればいい。 ただそれだけだ」
「やけに冷たいんだね。 でもそれが普通だよね」
そう言って手に持ったカップに口を付けるシャルル
「美味しい・・・紅茶ってこんなに美味しいんだね」
「それなりに嗜んでいるからな。 一人で暮らしているとそういった技能は知れずに上達する物だ。」
「え? 親は」
「俺に両親という存在はいない。」
何気なく聞いたシャルルはヒレンのその言葉に気まずく視線を逸らす
「ごめんなさい」
「何を謝る? そもそもシャルル・デュノアは俺の出自に関しては知らないのだから仕方ないだろう?」
「それでも、気まずい事を聞いちゃったから」
「ふむ・・・俺もお前が男装しているという気まずい事を知ってしまったからお互い様ということにしておこう」
「うー、ヒレン君って意外と意地悪って言われない?」
「・・・確かに、一夏達に偶に言われるな」
ジト目で見て来るシャルルに対してヒレンは愉快そうに笑みを浮かべる。
「ヒレン君」
「君付けなどしなくても呼び捨てで構わん。」
「じゃあヒレン、なんで僕の事を聞かないの? その」
「男装の事か? それともISの機密を探ろうとしていた事をか?」
シャルルの言葉にヒレンが被せる様に告げればシャルルは驚き、目を丸くしていた。
「・・・気付いていたんだ。 けっこうバレない自信があったんだけど」
「あぁ、先に行っておくが並の人間なら気付かなかったかもしれないが俺はお前が転校してきた時から訝しんでいた。 男という割には線が細すぎたし反応が一々女性のそれだったからな」
「そ、そうなんだ」
ヒレンの言葉にシャルルは若干だが落ち込んでしまう。
「ま、そう言った人間を誤魔化すにはもう少し線を太くするなり男としての立ち振る舞いをもう少し意識するべきだというだけだ。 幸いにも俺にしかばれていないのが幸いしたな」
「それってどういう」
「つまり俺が黙っていれば済む事だろう」
「なんで? 僕はルームメイトではあるけれどヒレンを騙そうとしていたんだよ?」
「確かに・・・だが、それではお前は連絡されて本国に強制送還されるだろうな。 だがお前は・・・シャルル・デュノアという存在はどうなる? 俺はそんな事を良しとしない」
「そんな事を言っても」
「IS学園特記事項の一つにある事だが・・・この学園にいる限りあらゆる国や組織からの接触及び介入を禁ずるという項目がある、つまり第三者の干渉を一切受けない事となる。 つまりこの三年間はどんな事があろうとシャルル・デュノア、お前にちょっかいを掛けようとしても学園外の奴らは手出しが出来ないということだ」
「それって」
「お前が来てしまった原因の一因は男であり紅天使の俺にもあるからそれを解決させる為の手段を講じる。 その間の三年間はこの学園ですごせばいい」
「ヒレン、それでも君は僕とは知り合ったって言うのも短いのにどうしてそこまでしてくれるの?」
「今、言った通りに外的要因だとしてもこの俺にも一因はあるからその罪滅ぼしみたいな事になるのかもな」
「ありがとう」
「ふん」
ヒレンの言葉にシャルルは安堵した様な表情で笑顔で礼を言うとヒレンはそっぽを向く。
「まぁ・・・なんだ、何か困った事があれば俺に言え。 大抵の事ならば力になる」
「ヒレンって意地悪なのか優しいのか分からない人だね」
「それもよく言われるな・・・俺は優しくなど無い」
「ほんとに? こんな僕でも親身になってくれているのに?」
「お前は・・・」
その続きを口にしようとした所で部屋のドアをノックする音と共にある人物の声が聞こえる。
「ヒレンさーん。 セシリアです、今大丈夫ですか?」
「・・・タイミングの悪い奴。 少し待て! 今着替えている途中だ」
「そ、そうでしたの!?」
「シャルル・デュノア、早く着替えろ。 その状態をセシリアに見られる訳にはいかないだろう」
「う、うん」
そう言ってシャルルはシャワールームの方へと消える。
「まったく、ほんとに間が悪いというかなんというか」
「着替えたよー。」
そう言って出て来たシャルルは先程と同じジャージ姿ではあるが胸元はサラシか何かを巻いたのか男装時と同じ様になっていた。
「セシリア、今着替え終わったから入って来て構わないぞ」
「そ、それでは失礼しますわ!」
そう言ってセシリアはヒレン達の部屋へと入ってくる。
「こ、ここがヒレンさんのお部屋ですのね」
「シャルル・デュノアも同室なのを忘れていないか?」
「オルコットさんはどうしたの?」
「私の事はセシリアと呼んでくださって構いませんわ。 今日はお夕食にお誘いに来たのですわ。」
「そうなのか・・・シャルル・デュノアはどうする?」
「僕も行くけどさ、ヒレンって僕の事いつまでフルネームで呼ぶの?」
「変か・・・?」
「私も最初はフルネームでしたけどいつの間にかセシリアとお呼びになっていましたわね」
「たまたまだ。 しかし、確かに未だにフルネームで呼ぶのは失礼だな・・・ファミリーネームは聞くまでも無いか。 シャルルで良いか?」
「え、う、うん。」
少し不意を突かれた形でヒレンがシャルルの名を呼ぶと何処かよそよそしい態度というか戸惑った表情をする。
「? いやか?」
「そ、そそそんな事無いよ!」
「そうか、なら夕食に行こうか。」
セシリアとシャルルを伴い部屋を出て食堂に向かう一向の正面から箒が食堂の方から出て来る所であった。
「っむ! ヒレン、何故オルコットと腕を組んでいる」
「いや、それが 「あら? 殿方がレディをエスコートするのは当たり前ですわ」 だそうだ。」
「・・・なら私はこっちを貰うぞ」
そう言ってヒレンの空いている右腕に腕を絡ませる箒
「な、なんですの貴女は!」
「私はまだ少し食い足りないと感じただけだ。 しっかりと案内しろ」
「うー!」
「ぐぐぐぐぐ!」
「食事を食べるのではなかったのか?」
いがみ合いそうな雰囲気の中でヒレンは呟くがその言葉は虚しく消えてしまうのであった。