暑い暑い、夏の日。
私、八雲紫は・・・蝉時雨で騒がしい雑木林の中を歩いている。
この獣道の先にあるのは、私の恩人のお気に入りの場所、人里に近いと言えば近いし遠いと言えば遠い場所である。
そんな場所に私は・・・彼が好きだった彼岸花の花束を持って向かっている。
「ふぅ・・・流石に真夏日。とっても熱いわね・・・」
恩人のお墓参りということで、歩きで向かっているけど・・・どうにも暑くて、スキマから扇子を取り出す。
この扇子も、彼と旅した際にもらったものだ。とっても硬くて、便利な扇子。今でも私の大切なものだ。
良さげな石に座り込み、スキマから麦茶入りの水筒を取り出し飲む。
「ごくっ・・・ごくっ・・・ぷはー。つめたくておいしいっ」
スキマに水筒を戻して日傘を取り出す。
そして、しばらく木陰で蝉時雨の音を聞く、そういえば彼と出会ったのは・・・蝉も鳴いていない梅雨入り前だったなぁ。そう思いながら、立ち上がり獣道を奥へ奥へと進む。
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そして、獣道を抜けると・・・そこには幻想郷が一望できる平原に出た。
平原と言っても、端っこが崖となっている崖上の平原だ。
「早いですね、映姫さま」
そして彼のお墓に線香を供えつけている閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥがいた。
彼女は彼に罰を与え・・・その最期をみとった一人でもある。私の、恋敵だった人でもあるけど・・・
映姫さんは土ぼこりを払いつつ、立ち上がり私を見つめる。
「そう言う貴女は・・・おめかしして、堂々なまでに白ですね」
「お褒めに預り、光栄ですわ。映姫さま」
私がいつもの営業スマイルで、すこしだけ嫌味を言ってきた映姫さんに様づけて返す。
「やめてください、二人きりなんだから呼び捨てでいいですよ」
少しだけ気恥ずかしそうにしつつ、ジト目で私を見てくる。
こういうとこがあって映姫はかわいい。
「・・・じゃあ、遠慮なく・・・映姫は。今日は非番なの?」
そう聞けば、映姫はええ。と頷く。
今日はお休みなのね。ということは
「新しい閻魔でも派遣されたの?」
「私の有給休暇ときの派遣閻魔ですよ」
「サボり魔のあの人には苦労しそうね」
「そうですね。たまには本部の閻魔を困らせないと」
その愚痴に私は思わず笑いだしてしまう。
映姫も私につられたからか、笑い出す。
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「じゃあ、私はこれで。これから人里で買い物するので」
「その服で?」
「私服に着替えてから、ですよ。」
私は、そう。と返して手を振った。映姫もそれを手を振って返して、私が来た獣道を引き返していった。
映姫が見えなくなるのを見送り、お線香が供えられているお墓に向き直る。そっと・・・前のお彼岸で供えて枯れた花々を片付け、彼岸花をそっと挿し、持ってきたお線香に火をつけ供える。
そしてそっと手を合わせ目をつぶり、安らかに眠れるように祈りをささげる。
(師匠、師匠が望んだ・・・妖怪と人が手を取り合う世界・・・まだ土台だけど・・・できましたよ。)
この幻想郷は、師匠が望んだ妖怪と人が手を取り合う世界の・・・ほんの土台だ。
師匠が望んで、私に託さなければ・・・今頃、私はただ死んだように人間社会を見ていただけだろう。
もしかしたら、会社を立ち上げて・・・妖怪ということを隠しひっそりと人間として生きたかもしれない。
・・・そもそも、師匠にあの時出会わなければ・・・おそらく私は、死んでいたかもしれない。
お墓から離れて、お花畑に座り込み。空を見上げる。
「師匠、また・・・あの時みたいな旅。してみたいですね・・・」
私は目をつぶり・・・あの時のことを思い出すのであった。
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浅い洞窟の入り口付近で、足を抱えてじっと動かないようにする。
ここのところ梅雨入り前のせいで食べられるものが少なく、せっかくとった猪も雨のせいで腐った。
・・・まぁ、腐ってまだ3日だから。大丈夫だろう。なんか青白い苔生えてるけど。
そう考えながら、少ない力で目線が通るようにする。
梅雨入り1日前だと言うのに、忌々しく雨が降っている森、私は生まれてこのかたこの森から外に出たことはない。ましてや、この森では私より強い奴はいない。
だからだろうか、私は生まれてからずっと一人だ。別に孤独なんて感じてない、一匹狼でいい。だけど、こんなところに居たんじゃぁ強くなることも何かを知ることもできない。
生まれて5年間、人間ならもう色恋の一つでもしている時期ぐらいだろうか。
そんなの心底どうでもいい。そう思って、無意味に息を続ける。
金髪のぼさぼさで長い髪も狩りの邪魔だし、そろそろ短く切りそろえようか。切り落とした髪は布団かなんかにでも使えそうだ・・・今年の冬はそれで越すか。
「・・・」
この森の入り口付近から侵入者の気配がする。
珍しいな、ここは人里からかなり離れてるし人間なんてめったに通らないただの無駄な道なのに。
私は腐った肉を頬張って力をつけ、洞窟から雨が降る森へと跳んだ。
木々をサルみたいに渡って入り口に移動する、途中になんか変な鳥がいたけど気にしないでおこう。
「変な鳥とは失礼な。これでも天狗ですよ!!」
「・・・!!!」
なっ、此奴いつの間に。しかも、私の考えを読み取れるのか。
並走してきた天狗とやらを避けつつ、地面に着地する。そいつもカラスみたいな翼を広げつつ安全に降り立った。
姿から見て知性あり、言葉を言えたってことは野良じゃない、相当いいもん食って肉付きがいいなこいつ。
・・・今晩の為に殺るか。
「ままま、待ってくださいよぉ!私そんな戦いとか苦手なんですからぁ!!」
よく息を吐くみたいに嘘をつけるもんだ。野生の勘から見てこいつは、まったく隙のない強者だ。
爪を妖力で硬化させ足に力を入れる。腕を地につけて四つん這いになってそいつを睨みつける。
そいつは何か、信じられないようなものを見たかのような顔をして二、三歩後ずさる。
・・・いや、油断はしない。
力を貯めた脚で地面をけり、そいつの後ろに回って首に噛みつこうとする。
そいつは前を向いたままで、棒立ちのままだ。・・・やれた。しばらくは鶏肉だな。
「なーんて、うそぴょーん」
瞬きした次の瞬間には私は地面にたたきつけられていた。
(なに、なんだ、いったい、なにをされ・・・)
私はそのまま意識を失うのであった。
Q,映姫と紫の仲
A,本編で
Q,紫の野生児化
A.この世界ではぬらりひょんに拾われませんでした。
Q,青白い苔のついた猪の肉
A,紫は特別な訓練を受けています
Q,天狗
A,あややではないです。