それからしばらく経ち、あたりは夜の帳にすっかり染まっていた。私はくぅ。くぅ。と可愛らしい寝息を立て私に抱きつきながら寝ている子狐を撫でる。
こういう感覚は初めてだが、なんだか守りたいという気持ちが湧いてくる。
「・・・すっかり、親の顔だね。」
時雨さんが子狐の寝顔を覗き込みながらそう言う。
オヤノカオ?それはどういう意味なのだろうか。
私には”オヤ”がいなかったから、そういうのは分からない。生まれつき、知識を持って生まれ、1人でも生きていけるように最初から肉体はこの姿だった。
「そこまで懐かれたなら、この子にも名前が必要だと思いますよ?」
と、バカ天狗が周囲の見渡しを終えて戻ってきたようでそういってくる。このバカ天狗に言われるのは癪だが、言っていることは確かだ。このままこの子が旅についてくるのは明白だし、何しろ時雨さんが連れていく気満々なのだ。
「じゃぁ、私からですね!」
ふふん。と無い胸を張るバカ天狗。
年下の私よりも小さいじゃん。
「あや?!言うて紫ちゃんは女性らしさなんてないじゃないですかー!」
「彩ちゃん。うるさい、起きちゃうでしょ?」
バカ天狗・・・
「彩ちゃんがうるさくしたのもそうだけど、元々は煽った紫ちゃんが悪いんだからね?」
まったくもぉ。といった感じで優しく怒る。
私も彩も反省の色で返す。
「よし、じゃあ名前を決めよう。玉藻、とか、どうかな?」
ワクワクしながらこっちを見る時雨師匠。
それはなんだか、聞いたことがある名前なので首を横に振る。
「えー・・・いいと思ったんだけどなぁ。」
「じゃあじゃあ、鈴鹿御前とかどうでしょう!」
それもなんだか聞いたことがあるので首を横に振りながら固くむすびすぎたおにぎりを投げつける。
あたっ。という腑抜けた声をあげながらそれを齧りだす。
「もぐもぐもぐもぐ(それなら、紫ちゃんならどんな名前を付けるんですか!!)」
「・・・どんなのなんだい?」
二人が機体の目でこちらを見てくる。
名づけなど私は自信がないんだけど、期待するなら応えるしかないだろう。
彩はともかく時雨師匠は特にだ。
「なんだか、私の事馬鹿にしてませんか?」
「・・・・・・?」
「その何の子って言う感じの顔、むかつくぅ~」
イラっと来たのでその辺の石を投げておく。
名前、この子の名前。どうしよう・・・自分の名前を与えてもいいのかな?
それなら、八雲・・・・・・そういえば、私の好きな色っていれば、あの色だ。
あの珍しい花の色・・・たしか、あの色の名前は。
「ら・・・ん。」
「「?」」
「やくも・・・らん。」
その名前を言った途端、時雨師匠はいい名前だね。と言って、頭をなでてくれた。
・・・なんだか、気恥ずかしい。なので、頭を振って手を振りほどき、時雨師匠をジト目で見つめる。
「あはは、ごめんね。」
笑顔でちょっとかわいく言ってもダメです。
「そんなー・・・」
そんなバカをやりながら、夜はさらに更けていった。