「ゆかりしゃま!」
「・・・?」
藍が私の名前を呼びながら、私の周りをグルグルと走り回る。そのしっぽはブンブンと千切れそうな勢いで、それはそれは楽しそうだ。
「・・・」ちょいちょい
「??」
私がちょっと手招きすると、私の足に抱きついてくる藍。可愛いと思い頭を撫でると、えへへ。と、可愛らしい笑みを浮かべてしっぽをブンブンと振る。
「師匠、なんですかアレ。尊いんですけど」
「いいことじゃないか。」
それをバカ天狗と時雨さんは、微笑ましいと言わんばかりに見つめてくる。
バカ天狗はともかく、時雨さんに見つめられると気恥しさも感じられて、なんだかとっても恥ずかしい。
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ついさっき、昨日まで山賊の住処だった洞窟を立った私たちは、バカ天狗の故郷だと思われる山を目指して歩いていた。なんでも時雨さんの実家はあの山の向こうにあるらしい。確か、モリヤとか言っていたような気がする。
「んー・・・中々、妖怪の山に近づかないね。」
「あや?確かに道はあってるはずなのですが・・・」
「まあ、ゆっくりと行こうよ。」
そんな会話を、バカ天狗と時雨さんはする。
なんだかあの二人が会話をしていると胸の辺りがザワザワするのだ。なんというか、不快であった。
「さて、そろそろ夕方だし。野営の用意しようか」
「えーこのまま行って宿屋でも探しましょうよー!いい加減に柔らかいお布団で眠りたいですー!」
「ハイハイ文句言わないの。じゃぁ紫ちゃん、彩ちゃん。焚き火用の枝を取ってきてくれないかな?」
「はーい・・・」
「・・・」コクッ
「らんはー?」
「じゃぁ藍ちゃんは、紫ちゃんのお手伝いね」
「はーい!」
可愛い。そんなことを考えつつ、藍と手を繋いで森に入っていくのであった。
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「いーっぱい、ひろえましたね!ゆかりしゃま!!」
「・・・」ニコニコ
ええ、確かにいっぱい拾えた。
多分、あのバカ天狗は枝を集めずに、木の上で昼寝でもしているだろうから、藍と協力して2人分の枝を集めてきたのだ。この量なら、今日の夜の分ちょうどだろう。
クイックイッ・・・
「?」
どうしたの?藍・・・と言ったぐわいに藍を見ると。
「しぐれしゃまのほかに、だれかがいます」
そういう、獣の感はこういう時はよく当たる。
なので枝を音をたてないように置いて木の影から見えないように時雨師匠がいると思わしき場所を見てみる。
「な・・か・・・・つ・・・・・とこ・・・・か。」
「それ・・・・して・・、お・・さいてい・・・・・よ。」
片方は、そそくさと野営の準備をしている師匠。
もう片方は、赤髪でまっすぐな刃の鎌を持つ巨乳な女性。
「ゆかりしゃま・・・」
「・・・」ナデナデ
「・・・っ」
不安そうにしている藍の頭を優しくなでてあげる。
・・・何を会話しているのかが気になる。もしかしたらと言うこともあるかもしれない。
なので耳に妖力を集中させて、機能を強化し・・・会話に耳を傾ける。
「アンタは、この二カ月の間にどれだけ罪を重ねるつもりなんだい?」
「・・・紫ちゃんに関しては、父さんがこうするだろうなって思ったから・・・」
「・・・なるほどね。確かに、雄吾の旦那ならやりそうだ。でもアンタはアンタだ。」
「やめてください小町さん、俺は・・・父さんのマネでしか、自分の生き方を見つけられないんですから」
「・・・そう、かい。」
・・・何の会話をしているのか全く分からない。
最初から耳に妖力を集めていればよかったかな・・・
「じゃあ、要件を言う。ついにアンタの裁定が決まったよ。」
「・・・いつまでですか?」
「二か月後、あんたは地獄に放り込まれる。」
・・・・・・えっ?
「随分と、長いですね。」
「映姫さま曰く、執行猶予期間と、心の整理をつけるための時間だとさ。アンタにゃぁ丁度いい罰だとも言ってた」
「ええ、俺には十分すぎる罰です。」
さっき、聞いてしまったことで頭がいっぱいだが、小町さんと呼ばれた女性と、時雨さんは会話を続けている。
「むしろ、大和の自己中な神々は今すぐにと言ってきたけど、閻魔様たちは無視したね。」
「・・・そう、ですか。」
「・・・・・・二か月後だ、そん時にアンタの前にまた現れる。その時になったら、あんたが一人になってることを望むよ。」
「わかりました。じゃあ、お仕事頑張ってくださいね」
そう言って、小町さんはそそくさとどこかに消えていく。
「ゆかりしゃま・・・なかないで。」
大粒の涙をためる藍にそう言われてようやく、自分が泣いているということに気づく。
藍が小さな両手で私の目からあふれる涙をすくいあげている。
・・・私は、その悲しさに押しつぶされるように藍を優しく抱き静かに涙を流すのであった。