拝啓
この頃はすっかり冬も深まり、日本でお過ごしの父と母と生意気な妹におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
さて、この度は、異世界に迷い込んだ私めの近況を報告したいと文をしたためた次第であります。
私、
「完璧な動きニャ!」
「ナイスだニャア!そのまま続けるニャア!」
「グルグルアームに逃げてるんじゃないニャン!」
リングコンでモンスターと渡り合っております。
どうして私が異世界くんだりまで赴いたのかはとんと分かりませんが、なぜコミカルなドラゴンみたいなのとバトルしていると言いますと、食うに困っているからでありました。
はじめに気が付いたのは偶然でしたが、フィットバトルで勝つと食べ物が手に入ることがあるのです。
ゆえに私は苦しい想いをしてトレーニングしつつコミカルドラゴンを謎エネルギーでしばきまわしているのです(負荷30)
そしてもう一つ。私は今、獣人っぽい三姉妹を養っています。
「やったれニャ!」
「筋肉が喜んでるニャア!」
「スワイショウに逃げるんじゃないニャン!」
思い思いのヤジを飛ばしてくるネコミミ三姉妹のクロ・ベッコウ・シロ。個人的にKBS三姉妹と呼んでいる彼女らは命の恩人であり、居候先の家主でもあります。
というのも異世界に来たばかりの私は右も左も分からず、水も食料もないまま森の中を彷徨い、スムージーのみで数日過ごしていたところを彼女たちに拾われたのです。彼女たちに世話をされ、久しぶりの固形物を口にできた私は感激から、ついうっかり口を滑らせてしまいました。
私にできることでしたらなんでも仰ってください、と……。
バトルをすることで食料を得られると知られていたのが運の尽き、それからは毎日がフィットバトル三昧でした。
やれバナナを出せだの、ミルクを飲ませろだの、お前の苦しむ顔が見たいだの…。毎日が彼女たちに翻弄されております。書いていて気づきましたが文に起こすと結構えっちですね。
異世界に来たからにはチートが付きものだと思っていたのですが、実際にはそんなにうまい話はありません。
リングフィットの顔ともいえるリング君もドラゴ何某もいなければ髪が炎っぽくなることもなく。できることと言えばリングコンを振り回したり押し込んだりすると、ゲームで見たような謎エネルギーで敵を攻撃したりガードできたりするくらいです。代償はもちろん言うまでもなく私の体力。
「スーパーガードニャ!」
「筋肉が喜びの悲鳴をあげてるニャア!」
「ちゃんと守るニャン!ここで耐えたらあとでヨシヨシしてあげるニャン!」
ドラゴンは運悪く強敵で、炎のブレスを防ぐために腹筋と太ももを酷使しております。
KBS三姉妹は楽観しておりますが、直撃すればまず助からないでしょう。
自分の安全…ごほん。三姉妹の安全のため、ここで倒れるわけにはいけません。
ぬおおおおおおおおおおお!!(負荷30)
ぐおおおおおおおおおおおおお!!(負荷30)
んがああああああああああああああ!!(負荷30)
勝ちました(虫の息)
1分近くドラゴンブレスに耐えました。私は勝ったのです。
「何休憩してるニャン!とっととレッグレイズでアイツを倒すニャン!」
鬼畜な事を言い始めた三女にリングコンによる空気砲で抗議しつつ、モモアゲコンボで攻撃していきます。
「やっぱレイは最高ニャ!」
「汗が輝いてるニャア!」
「モモアゲコンボに逃げるんじゃないニャン!」
私は筋トレよりもエアロビクスが好きなので、選ぶのはもちろんそっち系ですね(意地っ張り)
そのあとドラゴンとターン制フィットバトルを行い、ほうれん草100%のスムージーをがぶ飲みしつつも、なんとか勝利をもぎ取ることに成功。
生まれたての小鹿にジョブを変えた私は、三姉妹の「アレやって!」コールによってもう一度スクワットを行います。
今までの運動を
腰を下げて……
全身を伸ばす!!
「ビクトリー!」
「ビークートーリー!」
「超カッコイイニャン!じゃあさっさとハサミレッグを始めるニャン!」
そのあと沢山のねぎらいの言葉と約一名の文句を浴びながらクールダウンを行い、本日のバトルはお開きとなりました。
色々と書きましたが、このような毎日が続いており、退屈とは無縁の生活を矜持しております。
文句もそれなりにありますが、敵を倒しつつも食料が手に入り、さらに筋肉まで付くこの生活は正直言って楽しいので、そこまで心配しないでください。
末筆になりますが、筋肉は一生の相棒らしいのでトレーニングでもしながら私の帰還を健やかにお待ちくださると幸いです。
敬具
王歴78年 猫の月 22日 近戸 零
プロットはガバながら存在しているので続く可能性が微レ存です。