その後百代と川神院にある一番耐久力のある道場で3時間にも及ぶ勝負をし、引き分けという形で終わらせておいた
「流石だなリンヤ!まさか私と引き分けるとは思わなかったぞ。手を抜いて…だが」
「ありゃりゃ気付かれてたか。怒ってるか?手を抜かれて」
「いや、お前に全力を出させられなかった私の責任だ」
始めた当初は気を使うつもりがなかったが、百代に使ってくれなきゃ毎日組み手に付き合ってもらうと言われたのでしょうがなく気を使うことにした
「そうか…それならよかった。でもよ」
「ん?」
「百代…負けて悔しいのは当然のことだ」
「どうしたいきなり」
さっきの勝負は引き分けに終わったが、手加減して引き分けなら俺の勝ちみたいなもんだ
「今この場には俺たち二人しかいない。だから……素直になれよ百代。いつでも胸貸してやるから」
百代はいままでたくさんの武道家を相手にしてきて、百代くらいの実力なら本気を出せば大抵の奴らなら一発で終わっていたはずだ
俺が旅に出てから負けるなんて経験したことがないはずだ
でも今は本気で戦ったにも関わらず相手に手加減までされていたとわかったら?
くやしくない?そんな分けあるはずがない
百代は驚いた顔をして俺を見ていたが無言で近寄ってくると
「…今は絶対に顔みるなよ!」
「わかってるよ。俺は笑ってる百代の方が好きだしな」
「…弱ってる時に…反則だぞお前」グスッ
それから百代がまた顔を上げるまで暫くお互い無言で俺は百代を抱きしめていた
………………………………………………………
「絶対さっきのこと言うなよリンヤ!」
「わかってるって。そのかわりお前と引き分けたこと秘密な」
「なぜだ?」
「考えてもみろ?いまだ無敗の武神さんと引き分けたなんて知れ渡ったらどんなことになるか」
今の俺の顔はさぞ青ざめていることだろう
それをみた百代はニヤリと笑うと
「どうしよっかなー。あー勝負の後だし少しお腹すいたなー。誰かさんが私にパフェかなんか奢ってくれたら言う気もなくなるんだろうけどなー」
卑怯なやつめ!こっちチラチラ見んじゃねぇ!
「なら俺はさっきのことを風間ファミリーのみんなに、いや全校生徒に言う」
「残念だが。リンヤがそういうこと言わないのはわかってる」
無念なり…
「はぁ、でももうすぐ晩飯だろ?」
「なら今度奢ってくれ」
「はいはいわかったよ。俺はこれからワン子の特訓に付き合うがお前はどうする?」
「今日は疲れた。気が空っぽだから瞬間回復も使えないし…」
瞬間回復か…一応釘さしておくかな
「そうか。百代は瞬間回復に頼りすぎだ。攻撃もそのせいか雑になって隙ができやすい。格下相手なら何も問題ないが実力が近しい者なら必ずその隙をついてくるから気をつけとけよ。じゃあな」
「…あぁ」
………………………………………………………
百代side
負けた…か
結果的には引き分けだったがリンヤはまだまだ余裕があった
さっきの勝負に私は自分の全てを出し切ったと思う
でも、それでも全然リンヤには届かなかった
小さい頃からはずっと負けてが、大きくなった今では負ける気なんてこれっぽっちもなかったんだがな
自分でも想像していなかったくらい悔しかったらしく、リンヤに抱きしめられて泣いてしまった
私としたことが恥ずかしい…
でもリンヤの腕の中にいたことを思い出すとどうしても顔が緩んでしまうのがわかる
久しぶりにリンヤにあったが何も変わってなくて嬉しかった
私をちゃんと女の子扱いして優しくするところ、面倒くさがりつつもなんやかんやで私を構ってくれるところ
今の私ではリンヤは振り向いてくれないかもしれない
だからまだ気持ちを伝えることはしない
ま、容姿は自信あるがな
取り敢えずは……最近サボリ気味だった修行を頑張ろう!
待ってろリンヤ!
………………………………………………………
「待たせて悪かったなワン子」
俺は百代と分かれた後、川神院にある他の道場でワン子と約束していた修行を見ることになっていたが遅れてしまっていた
道場ですでにワン子は修行を始めていて一心不乱に薙刀を振っていた
どうやら俺が来たことに気付いてはいないらしい
「凄い集中力だな」
いい機会だしゆっくりと観察してみるとしよう
まだ荒削りだがよく振れていると思う
けど何か時々大振りになる時があるんだよなー
暫く観察しているとどうやらワン子がこっちに気付いたらしく
「あ!リンヤ!来てたなら声かけてくれたらよかったのに」
一度声をかけたことは黙っておこう
あの集中力はホントに凄いと思う
「遅れて悪かったな」
実際百代との勝負が自分が思ってる異常に楽しかったらしく時間を結構過ぎてしまっていた
やっぱり怒ってるよなー
ところがワン子は笑顔で
「ううん!来てくれただけでも嬉しいわ!ありがとうリンヤ!」
…なんて優しいんだろワン子は、これが百代なら暫くの間パシリにされた挙句殴られるからな
ワン子に今度なんか買ってやろう
「随分遅くに来ちまったがいつまで修行するんだ?」
「来てくれたリンヤには悪いんだけど…。今日は金曜集会があるから早めに修行を打ち切らないといけないの」
「金曜集会?」
なんか暴走族とかの集まりみたいだなー
「あはは…。たぶんリンヤが考えてることと違うわ。金曜日にある集会で風間ファミリーの皆が秘密基地に集まるの!」
「へー、秘密基地まであるとは本格的だなー」
どんな秘密基地か気になるなー
「そうよ!リンヤも来ればいいんだわ!」
これぞ名案!みたいな自信満々の顔で言ってくるが
「いや、ファミリーでもない俺が行くのもなー」
「あ…、そうか。リンヤはファミリーじゃないのね。なんかリンヤと話してると昔から友達だったみたいでうっかりしちゃったわ!」
「そう言ってくれると嬉しいな」ナデナデ
「あ……、頭…」
「ん?嫌だったか?」
「そんなことないわ!!」
「おおう!?」
「あ…」
突然大声だすからビックリして手を離しちまった
「ご、ごめんね!いきなり大声だしちゃって!でもリンヤに頭撫でられるの全然いやじゃないの!だから…その、また撫でてもらっていいかしら?」
そんなふうに言われたら断れないじゃないか
ま、断る気なんてないがな!
「もちろん!遠慮なんてするな」
そう返事をして再びワン子の頭に手を置き丁寧に撫で始める
「ふぁー、気持ちいいわー」
「それはよかった。どうやら俺は撫でるのが好きなようだな」
「な、ならまた今度撫でてくれる!?」
「いつでもいいぞー」
こっちとしてもありがたい話だ
「やったわー!リンヤに撫でられるとね。なんだか不思議だけど懐かしいなーって思うのよね!」
どうやら俺の撫でテクはずっとタマを撫でてたことでそんな効果をいつの間にか生み出していたらしい
「そうなのか?…ってやばいワン子!時間大丈夫か!?」
どうやらいつの間にか結構な時間が経っていたようだ
「あぁ!もうこんな時間に!?リンヤに修行みてもらえてなーい!」
「そんな泣きそうな顔すんなって!また見てやるから」
「ほんとに?ありがとうリンヤ!じゃ、またね!ダーーッシュ!!」
目にも止まらぬ速さで慌ただしく出て行ったワン子だったが何故かこっちにまた戻ってきた
すると懐から携帯を取り出し
「リンヤ!携帯の番号を交換しましょ!」
「あぁなるほどな」
そういえば交換してなかったな
その後お互いの番号を交換し、再びワン子と別れた
その夜、俺の携帯が鳴ったと思ったら相手はワン子だった
「えへへ。いきなり電話しちゃった」
なんか付き合い始めた初々しいカップルみたいな電話だな
「おうワン子か。なんかいいことでもあったのか?」
「そうなの!今日の集会でリンヤの話になってね!私がずーっとまた会えないかなーと思ってた男の子がいたんだけどね。それがなんと、なんと!」
「おいおい、えらく引っ張るじゃないか」
「リンヤだったのよ!!」
「え…俺?」
「そうなの!私達って小さいころ何回か会ってるのよ?」
「あぁ、覚えてるけど?」
「私も今日リンヤと会った時に昔会ったことあるかなーと思ってたんだけど……って覚えてたの!?」
「あぁ物覚えはいいほうでな(ていうか絶対にわすれないし)」
「今日私が聞いたら初対面だって言ったじゃない!」
「他の奴らは忘れてたし、別にいいかなーって」
「言ってくれてもいいじゃない!全くもう!…………ぷ、あははは!」
そっからどっちも何故か笑いが止まらなくなり暫く話をした後
「じゃ、明日修行に付き合ってくれるの?」
「あぁ遠慮すんな!俺を頼ってくれていいからな」
「じゃ、明日8時に河原で待ってるわ!」
「わかった。楽しかったよ、じゃあおやすみワン子」
「私も楽しかったわ!電話でこんなに笑ったの初めてよ!おやすみリンヤ!」
そういうことで俺の明日の予定は決まった