あの日から百代は毎日河原に足を運び臨也の姿を探すがどこにも臨也の姿はなく
6日も過ぎると徐々に戦うことに対する欲求が溜まりイライラしていた
それは周りから見ても明らかで、川神院などの食事の時など多くの修行僧達がいるにも関わらず
誰も口を開かず黙々と食べ続け、重い沈黙が食事の間ずっと続くという日々が3日間くらい続いている
もちろん食事の時に話すことは決して行儀がいいとは言えないが、礼儀作法などにうるさい場所ではこれが当たり前かもしれない
だが別にこの川神院の総代である川神鉄心はそんなことを気にする人ではないので食事の時など賑やかなものだった
なら何故こんな重い沈黙があるのか?
原因はもちろん百代にあり、殺気にも近い闘気を放ち続けていて皆を黙らせているのだ
百代自身はそんなつもりはないのだが、そんな威圧感を受けた側はたまったものではない
「…ごちそうさま」
そうゆうと百代はさっさと自室へと向かって行った
残された者たちはというと
「ふぅーなんじゃモモのやつ、最近随分と機嫌が悪いのうー
誰か心あたりはあるかの?」
鉄心は顎の髭を撫でつつ理由を考えるが全くといって心当たりがなく困っていた
「確かに最近の百代は機嫌が悪いネ。何かあったのだろうカ?」
これに答えたのはルー師範代で同じ師範代の釈迦堂とは違い
血の滲むような努力を続け、師範代の試験に何回もチャレンジし
師範代になることができた云わば努力の人である
価値観の違いからかよくこの二人はぶつかることが多い
「ヘへっそんなことより俺はよ。お前ら全員、百代が喋ったときピタッと動きが止まったのは笑っちまいそうだったぜ」
釈迦堂はなんとなく理由は分かっていたので軽い調子で言うが
「釈迦堂!百代が心配じゃないのカ!?」
ルーが釈迦堂の言葉に反応するが
「うるせぇーなぁたくっ。大体百代もそこまで心配するような歳でもねぇだろうが」
「百代は強くてもまだ子供だヨ!」
「ええぃやめんか二人共!」
なんだか怪しい雲行きになってきたので鉄心は止める
「はぁ、モモをどうにかせんと明日家に来る子が可哀想じゃわぃ」
「明日誰か来るのか爺?」
「誰かくるのですカ?」
「うむ、ちと知り合いに頼まれての。川神院にしばらく住んでもらうことになるんじゃが、モモのやつがあれじゃ…どうにかならんもんかのぅ」
結局直ぐに何か案が出るわけもなく明日を迎えるのだった
突然だが俺、園崎臨也は迷子中である
それというのも朝起きると母さんに
「あ、臨也起きたのね。今日からしばらく会えないけど元気でね。
あとこれからお世話になる人たちの言うことをちゃんと聞くのよ?」
「うんわかってるってば。母さんや父さんも元気でね!」
そうニッコリ笑う臨也を抱きしめ囁くように問いかける
「ほんとに大丈夫?寂しくない?」
それに対し臨也は
「確かに寂しいけど大丈夫だよ!タマもいるしね」
「そうね、臨也を頼むわよタマ?」
「もちろん任せておくのじゃ!」
「向こうと話はついているから行けばわかるわ。
よしっ飛行機の時間もそろそろだし母さん達もういくわね」
「え、俺はどこに行けばいいの!?」
「あぁ地図をまだ渡してなかったわね。はいこれが地図よ
じゃもう行くわね」
「ち、ちょっと待っt」
待ったなしと言わんばかりに母さん達はさっさとタクシーに乗って行ってしまい
残された俺はきちんと戸締りを確認しタマを連れて地図に書いてある目的地へ向かっている最中というわけである
「主様、いい加減に現実を見るんじゃ」
そう、実は俺は迷子になった訳じゃない
きちんと間違いなく地図通りに目的地に向かっていたはずなのだが
なぜか到着した場所がばかでかい寺院
そう川神院である
「だってよタマー、絶対めんどくさいことになりそうだぜ?」
「まぁそうじゃろうが…仕方あるまい」
タマと会話していると何か仙人みたいな爺さんが近づいてきた
「お主が園崎臨也君かの?」
「あ、はいそうですが…」
「おぉよくきたの。これから暫く此処が君の家じゃよろしく頼むぞい」
そう優しく笑う鉄心に臨也は
「僕は園崎臨也でこっちが九尾の狐のタマ。
こちらこそよろしくお願いします。ええと…」
「よろしくしてやるのじゃ」
長い時間生きてきていろんなものを見てきた鉄心だったが喋る動物、しかも九尾の狐を見たのは初めてで驚いたが
そこは表情にはださず
「あぁすまんすまん、自己紹介がまだだったの。
ワシは川神鉄心、川神院のことはしっておるな?
ここ川神院の総代をしておる者じゃ」
この人が武神か…
なんとなく雰囲気がすごいな
「はい、僕もここに住むってことは修行とかするんですか?」
「ここに住むからといって別に修行をする必要はないぞ?
どうする?」
「いえせっかく川神院に住むんですから修行したいとおもいます」
臨也は確かに力は強い、制御もできている
だが人体の弱点や急所などがわからない
だからここで武術などを鍛えていたら自ずとわかってくるはずだと考えた
「ふむ、そうか。無理をする必要はないからの?きつくなったらいつでも言っていいぞい」
川神院に集まるものは才能溢れる者がたくさんやってくる
そして皆、川神院の師範代というとてつもなく険しい道のりを目指している
そうすると意識せずとも修行はハードになる
「大丈夫です。自分のことは自分が一番わかってますから」
「なに、余がそこは調整するので問題なしじゃ」
「ふふっそうか!ではワシの孫を紹介しよう」
百代の機嫌は朝になっても戻っておらず
鉄心は少し心配していたが歳も近い二人には仲良くして欲しいと思い百代を呼ぶことにした
「モモ!ちょっとこっちへ来るんじゃ!」
「なんだよジジイ」
鉄心の心配は的中し不機嫌そうに百代はやってきた
しかし鉄心の隣にいる人物を見ると目を見開きこちらへやってきた
しかもめちゃくちゃ嬉しそうに
「お前、臨也!なんでここに!?それよりもどうして河原にこないんだよ!」
さっきまで不機嫌そうだったのが嘘みたいに機嫌が良くなり、言葉こそ怒っているが百代の顔は嬉しそうだったので鉄心はやれやれと思いながらも様子を見ようと黙っていた
そんな百代とは対象てきに臨也は百代の姿を捉えると
鉄心や百代には聞こえなかったが
「うわーやっぱりいたよー」
と小さい声で嘆いたのであった
「いやなんでって言われても約束もなにもしてなかったし」
臨也の言うとおり約束も何もしていなかったが
本当のところ河原に行くと百代がいそうで行きたくなかったのだ
別に臨也は百代とは違い戦うのはそこまで好きじゃなく、むしろのんびりと過ごすことや昼寝が好きな人間なので行きたくなくなるのも仕方のないことだろう
そんな返答が気に入らなかったのか一瞬眉を顰めたが
次の瞬間には笑顔になりこう言った
「さぁ!早く戦おう臨也!」
嬉しそうに戦いたがる百代に臨也は
「言うと思ったよちくしょう!」
と愚痴を吐くのだった