これを経て「最高への挑戦」に繋がります。
2013年6月。
ここは都内某所のとある大学。そこで何気ない日常を過ごす学生達。癖のある教師の講義を聞き終わり休み時間に入ったらクラスメイトと会話を始め出したり自販機にジュースを買いに行くなど僅かな時間を様々な形で過ごす。
「ふあぁ……」
「またバイト?」
「まーね」
「体壊さないでね」
「はいはい」
どうやらバイト疲れで眠そうな黒髪の少女とそんな彼女を気遣うピンク色の髪の少女。
2人は幼い頃からずっと一緒。いろいろと正反対だが2人の息はピッタリ。
「あたしの車が新しくなってちょっとなったけど次元が違うってまだ思うよ」
「うん。あの電子制御は私には設定できないし。R33だったら私でもできたけど」
「でもそっちができない事があるなんてすっごい車っても言えるじゃん?」
「そうだね。登場からもう5年くらいになるけど……まだまだ上を目指す事のできる車だよ」
女子大生の口からまず出ないであろうワードだらけ。明らかに普通ではない。
「GT-Rの維持は本当に大変だよ……バイトだけじゃお金足りない」
「持っていたお金がGT-R買う時にほぼ無くなってたもんね」
「人事のように言うけどさぁ……」
つい先月に19歳の誕生日を迎えた彼女達。学生はとにかくお金が掛かる。学費はもちろんの事、一人暮らしをしている彼女達は家賃やガス、水道代もある。
一人暮らしで車を持つ事は容易ではない。いくら乗らなくても必ず払わなければならない税金。それ以外にもガソリンやタイヤなどの消耗品がある。
それはいい。問題は彼女達の「車」だ。
「排気量は元々3.8リッター……からの排気量アップで4リッター……。8万近く取られるのがなあ……」
そう、彼女達の車は「改造車」である。
しかもスポーツカー。それもGT-R。車好きなら誰もがその名を知る車だ。
彼女達は「走り屋」である。
彼女達は公道を法定速度を上回る速度で走る。言うまでもなく法律に触れる行為。もちろん本人達もそれが犯罪行為とわかっている。しかしそれでしか得られない物があって走るのだ。
普通に走るだけなら日常生活では絶対に使われる事の無い大パワー。それは首都高を速く走るために与えられた物。利便性を捨てて得た他を寄せ付けない圧倒的な力。
「そもそもスポーツカー以外の選択肢ってないの?」
「ないっ!」
「即答かあ……」
元気良く即答する彼女に呆れるが自分自身も彼女の車を改造るくらいにはマトモではない。むしろ彼女の走りを楽しみにしている程。
本気で走るなら街中を走るような車では物足りない。走る事を見据えて作られたから「スポーツカー」と呼ばれる車を必然的に求めるのである。
「車に乗る、それは誰だって思うよ。乗れたら何でもいいってあたしは思いたくない」
「あたしは『車を買ってから運転席に座ってエンジンを掛ける』までが車選びだと思ってるから」
車という物は
一緒に付いてくる人生は買い手次第でいい物にも悪い物にも変わる。買い手の幸せにもなれば逆に買い手を狂わせてしまうだけの物にもなる。
初めて自分の愛車を買う時のドキドキとワクワクはそれだけでもいい思い出になる。
車は乗る人の愛が注がれていると分かる物。大切にされている車は長い間走ってもちゃんと整備してやれば例え半世紀前の車だろうと元気な走りをしてくれる。
「GT-Rのセッティングやメンテを実際にやるのは私だけどね」
「う……。でもそれだけあたしの車を知り尽くしてるっても言えるじゃん」
「所有者がメカに詳しくないってどうなの」
「それで希の車って今どうなってるの?」
「ボディ補強がもう少しで終わる。その後にエンジンやエアロ付ければひとまず見てくれは完成」
「自分の力で車を作れるってすごいよ、本当。あたしはどっか1つのパーツやるだけで音を上げそう」
「そんな事言ったらGT-Rの整備できないよ。日産の人達の技術を見たら明日翔はどうなるのかな?」
「だってー!」
「『紅のシンデレラガール』……原田美世さんに憧れてGT-Rに乗ってるけどあたしはどうしたらいい?美世さんのようにレースとか出てみたい」
彼女がイメージした紅い車。それは彼女が乗る車と同じ名を持つもう1つの「GT-R」。
(いつか……会えたらな)
強い想いは必ず動きを作り出す。
夢を追いかける者達が集まる時、走りでお互いを語り想いをぶつけ合う。
そんな動きの中心に彼女達がなる時がすぐ近くまで迫っていた。
グリッドに役者が揃った。
後は