東方獣々録   作:旧世紀の漂流者

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前回の続き物です。
part1を見てから見ていただけたら幸いです。


第一章 part2

 数分後、俺はどこの地区かも解らぬ駅を後にその辺を散策することにした。

 勿論街灯などほとんど無いような田舎道、目印も無い。そんな場所に行くのは大抵死に場所を探し求める者位だろうか・・・・・・だが、それが逆に駅の灯を目立たせており良い目印になった。

「・・・・・・というか」

車一台通らない暗がりに映える舗装道路は新鮮だった。いや、あまりに静かすぎて逆に恐怖だったが。

いくら歩いても民家すらない様相は、最早自分一人が暗闇に放り投げられた感覚に等しかった。

「帰ろう。」

いくら歩いても無意味。そう悟り振り返った。

刹那。駅の電灯がプツリと消えた。

「!?」

驚愕とそれに伴う焦燥感が一気に身体を迸る。

 駅の電灯が切れた。ただそれだけなのだが・・・何故だかもう帰れないような気に襲われ、俺は走り出した。

孤独というのは時に恐怖すらも増幅させるものなのだろうか。

そんな思慮を頭に抑えながらも、俺はひた走った――――――――――――

 

「はあ・・・・・はあ・・・・はあっ!」

どれくらい走っただろうか。正直、実感がない。そもそも、なんの目印も無いのにどうやって駅を目指そうものか。

 地べたに座り込み呼吸を落ち着かせる。それと同時に携帯の電源を入れる。

というか、最初からこうするべきだったのだが。しかし、それもつかの間だった。

――――ピピピ!

不意に発せられる電子音。

それは携帯の充電切れを知らせるアラートだった。

「っ?!・・・・マジかよ・・・・」

ある意味タイミングはジャストではあるが、こんな所でタイミング云々などどうでもいいが。

というか、まるで何かに図られたかのような状況に俺はただただ頭を抱えるばかりであった。

「ふふ・・・お困りのようね?」

暗闇に発せられた誰の物でもない声が問いかけた。

「誰だ!」

その声に問うように紛糾する俺。だが、辺りを見渡しても人影はない。

相手が普通の人間ではない―――――そう判断した俺の行動は早かった。

即座に立ち上がり再び闇の中を疾走する。

しかしそれも束の間だった。

ドンッ!

「!?」

不意に何かの落ちる音がし、俺は歩みを止めた。

歩みを止めた先には、誰の物かも解らぬ墓石が無造作に道のど真ん中に佇んでいた。

あまりの非現実に呆然とする俺。

そしてとうとう、一連の行動をしていた主が常闇から現れた。

「はい。こんばんは。」

気の抜けた挨拶で姿を現した主は俺の想像していた霊とかとは程遠い人物だった。

ただ、格好といい様々な点で浮いていた。

田舎に似合わぬ西洋風のドレスは暗闇だというのに、農紫を基調とした生地をはっきりと映している。

腕まであるレースのあしらわれた手袋、洒落なのかわからないナイトキャップ、そして極めつけは日傘。

一言でまとめてしまえば「昼下がりの散歩中の貴婦人」とでも言いたい。

腰まであるブロンドの髪と藍色の瞳を見るに明らか外人さんである。

「えと・・・・・こんな時間に何か?」

唐突に出た第一の質問はその浮いた服装からだった。

だが、その貴婦人からの返答は簡素だった。

「見ての通り、散歩よ。」

そう言うとふわりとドレスを揺らしニコと澄まし笑顔を浮かべた。

・・・まるで宝物を見つけた子供のように。

笑みに見とれていると、今度は貴婦人から質問が飛んできた。

「貴方は?」

「あ・・・・ああ。僕は・・・まあ僕も似たようなもんですかね。」

流石に暇だったから適当にこんな田舎に来て、しかも駅にたどり着けないなど恥ずかしくて言えたものでは無かった。

その為、俺は咄嗟に言葉を濁した訳なのだが・・・

貴婦人の次の言葉で俺は絶句した。

「へえ。全力疾走が散歩なんて随分体育系なのね。」

「!?」

どういう事だ? まさにその一言に尽きる発言だった。

それもそのはず、それは貴婦人と会う前の話であったからだ。

何故それを?

そう口走る前に貴婦人は可笑しそうに種明かしをして見せた。

「だって、見てたもの。」

「それはどういう・・・・・?」

見ていたとはどういう事なのか。

返答の意味が解らず、俺はクエスチョンマークを出すことで精いっぱいだ。

だがそれも束の間、貴婦人は慣れたように話を続けた

「解ってるわ。貴方が此処の世界に退屈してるって事。貴方が電車で此処まで来た時からずっと見てたもの。」

悪戯にほほ笑む貴婦人。それがより不気味さを醸し出す。

「貴方は一体・・・・・・?」

何者なのか。そう問いたかった訳なのだが、それすらも見透かされたような口ぶりで貴婦人は口を開いた。

「こんなの日常茶飯事だもの。いいわ。そんなにこの世界が退屈なら連れていってあげるわよ。貴方の退屈しない世界にね。」

そう言い終え、口元を緩めたかと思うと何もない空虚を指先でなぞり、不可思議な空間を開けて見せる。

そこは、明らかに入ってはいけないという雰囲気を醸し出す、無数の眼の漂う朱色の空間。

最早、何一つ質問する事など無い。そう思ったのかその貴婦人は俺の意識が狂う寸前にやっと自身の名を明かした。

「私の名は紫。八雲紫よ。貴方が目覚めた世界でもし誰かに出会ったなら私の名前を言うといいわ。」

紫と名乗る人物はそう言い残し俺の手を引き空間に誘った―――――――――――――。

―――――――――――――第一部完――――――――――――――――――――

 

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