「?」
こんな暗い森を歩くなんてよっぽどの酔狂か先ほどの「八雲 紫」なる者位しかいない。
そう判断した俺は物陰に身をひそめる事にした。
カツ・・・・・カツ・・・・・
近づく一定の足音。妙に音が軽いのは恐らく履物が日本古来の下駄のようなものだったからだろう。
息を呑みつつ、ひたすら通り過ぎるのを待つ。
カツ・・・・・・・・・・・
はずだった。
足音が止み、俺は完全に危機的状況であることをなんとなく感じていた。
その答えは寸分の狂いも無く目の前に現れた白刃だった。
時間にしてわずか1秒足らず。
ガサッと音がした事を察してはいたが早すぎた。
「立って」
白刃の持ち主は声音からして女らしい。刀身をぺちぺちと肌に触れさせる仕草からは到底想像はできないが。
というか、刀なんて持ってる女に見つかるとはつくづく運が無い。
女であるだけまだまだマシなのだろうが、それでも武装していることには変わりはない。
だが、このまま動かなければいい事が無いのは明白なので仕方なく俺は物陰から姿を現した。
「・・・・外界の人か。」
姿を現した俺を見て早々に白刃の持ち主が放ったのはぶっきらぼうにそう言った。
とうの俺は白刃を向けられた事すら忘れ、持ち主の容姿をマジマジと見つめていた。
巫女服に忍装束を足したような服装何よりも尻尾?らしきものと獣耳が余計に目立つ。
髪色が白いだけに犬?か何かと思ってしまう。
「あの・・・・八雲 紫さんてご存知ですか?」
とはいえ何もしゃべらず叩き斬られるのはごめんなので、例の八雲 紫、その人の名前を言ってみることにした。
するとどうだろうか。先ほどまでの無愛想は一転し、その少女?は剣を収めた。
「ああ・・・。そうなんですか。と言うと身寄りはないですよね。」
口ぶりからしてこのような事は日常茶飯事なのだろう。
俺がその言葉にうなずく。
「では、ついてきてください。離れですが寝るくらいならちょうどいいでしょうから。」
俺の反応をみて、彼女が先導する。当然、俺と彼女以外の者はいない。
ひたすら歩みを進めていくだけだが、実は獣の唸り声が所々で聞こえていた事に気がつく。
・・・一体あの人物はどういう神経しているんだか。
恐らく、彼女に会わなかったら間違いなく、見えざる声の持ち主に餌にされてしまっただろう。
それにしても、先を行く彼女はよく先が見えていると思う。
確かに灯篭を持っているのである程度は先が見える。
しかし灯篭が照らすのはあくまでも足元。御世辞にも先を照らしているとは言い難かった。
そんな心配をよそに、少女はひたすら進む。
しばらくすると、昔の民宿のような場所にたどり着いた。