惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】   作:むげんゆう

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第1章 第7話 グスタフの巨砲(前編)

 オリンポス山周辺からの連邦軍の撤退は、巧妙なルート選択や義勇軍の参戦などもあり、予想されたほどの損害もなく完了しようとしていた。だが、危機が完全に去ったわけではなかった。レッドラスト北部に展開していた、強力な帝国軍の主力部隊が無傷で存在していたからである。

 

 西方大陸攻略の主戦力であるこの3個師団には、小型、中型ゾイドが1200台以上配備されており、大型ゾイドもレッドホーンが250台、そして最も恐るべき帝国の最強ゾイド、アイアンコングが70台も配備されていたのである。

 

 アイアンコングと同性能とされる、連邦軍最強のゾイド、ゾイドゴジュラスの西方大陸での配備総数が20台しかないことを考えると、この部隊の戦力は圧倒的であった。いかにミューズ森林地帯で防備を固めているとはいえ、準備が終わらぬうちにこれだけの大軍に攻撃されてしまってはひとたまりもない。この軍団をどうやって食い止めるのか、その事が連邦軍の撤退作戦を成功させるための最大の難問だった。

 

 押し寄せる帝国軍の総数は約7万、この圧倒的な戦力の帝国軍主力部隊に対し、投入された連邦軍の戦力はわずかに1個大隊。だが、連邦軍北エウロペ方面軍司令クルーガー少将には秘策があった。このわずかな戦力で圧倒的な戦力の帝国軍を足止めするための秘策が。

 

 迎え撃つ地点はグラム山岳地帯中央部に位置するアララート山の峠の一本道、この部隊がどこまで帝国軍主力部隊を足止めできるかに撤退する連邦軍の命運がかかっていた。

 

 

 帝国の北エウロペ方面軍司令マルクス少将は焦っていた。オリンポス山の頂上遺跡の破壊ならびに、オリンポス山崩壊に伴う帝国軍の損害は5万人にも上っていた。しかも攻撃を仕掛けてきた連邦軍部隊の損害は極めて軽微で、悠々と撤退を行っていたのだった。

 

 このままでは一連の帝国軍が受けた損害の責任は自分が取らなくてはならなくなる事を、皇帝直々に連邦軍撃滅の命令を受けた事で彼は悟っていた。彼にとって幸運だった事はレッドラストの北部に方面軍の主力部隊が無傷で残っていた事だった。敵の撤退するルートはこの部隊の位置からでも十分捕捉可能な地点にあった。名誉挽回の機会は今しか残っていない。そう判断した彼は主力部隊に対し連邦軍の殲滅を厳命したのだった。

 

 撤退する連邦軍の部隊はグラム山岳地帯の南を抜けるルートを通っていた。補足する地点はここが最適だと判断したヒンター・ハルトマン大佐はグラム山岳地帯を抜ける、最短にして唯一大型ゾイドが通行可能なルートである、アララート山越えのルートを選んだ。命令を受け進軍を開始してから5日後、先発隊がアララート峠に差し掛かった。

 

 

 先発隊のイグアンのパイロット、エディ・クレセント伍長は昨夜の賭けに負け・R>

「糞っ、本当に昨日は・はセント伍長は皇キがなかったな。まっ、今夜にでもしっかりと取り返させてもらうがな。」

 

「な~に言ってんのエディちゃ~ん。今夜もしっかり搾り取らせてもらうわよ~ん♪」

 

「へっ、勝手にほざいていやがれ。」

 

 他愛のない、同僚とのいつものだべりだった。

 

「お前ら、いつまでそんな会話をしている。任務に集中しろ、任務に。」

 お約束の上官からの説教が始まる。延々30分近くもかかるのがいつものパターンだった。

「いつどこから敵の攻撃があるやもしれんのだ・・・・」

 

(やれやれ、またいつもの説教かよ)エディは心の中で毒づいた。彼の上官はとにかく小うるさい人物だった。彼らの普段の行いを見つけては、しつこく注意していたのだ。

 

(まあ、任務中にこんな会話をしていた自分達にも責任があったわけだが。今日も大人しく説教を聞く事にするか)彼らはいつものように上官からの説教を聞く事になった。

 

 油断していたら不意打ちを受けて、と上官お決まりのフレーズが出ようとしたその時だった。峠の頂上から何かが光ったかと思ったその瞬間、閃光と共に、凄まじい衝撃が愛機を叩きつけた。

 

 気が付くと彼の愛機のコクピットは焼け爛れて路外れに転がっていた。必死に這い出した彼は、辺りに散乱するかつて仲間達だったと思われる物体と、その機体の残骸に言葉を失った。彼は自分達に攻撃してきた連中がいると思われる方向、峠の頂上を見た。そこには、まるで物干し竿のような巨大な大砲を背負ったグスタフらしい機体が見えた。これこそがクルーガー少将が帝国軍主力部隊の足止めのための秘策の要、遠距離砲撃型に改造された改造グスタフ、グスタフ・カールであった。

 

 

 元々グスタフは輸送用ゾイドである。大量の物資を輸送できる輸送力を持ち、走破性も良好、何より整備性の高さと強靭な防御装甲による生存性の高さから、両軍を問わず配備されている優良機種だ。そのため両軍共にグスタフの戦闘用への改造が検討されていたが、今回連邦軍が投入したグスタフ・カールはその一つの結論であった。

 

 グスタフ・カールには上部レーダーの代わりに、380mmリニアキャノンが搭載されている。このリニアキャノンは連射性に優れ、380mmもの口径にもかかわらず、毎分4発もの速度で弾丸を発射する事が可能なものである。

 

 さらに第1後部コンテナには自動次弾装填装置並びにリニアカノン用の発電機、冷却装置が装備されており、380mm砲弾の毎分4発という装填速度の実現と、それらのシステムをまかなうための電力を自ら作り出す事を可能としている。第2後部コンテナには、予備砲弾が備えられており、グスタフ・カール単体で1時間の連続発射が可能となっているのだった。

 

 

 先発隊の短時間での壊滅を知ったヒンター大佐は早速空軍に偵察を要請し、上空写真を入手した。そこに映し出されていたのは峠に頂上に居座る、巨大な大砲を備えたグスタフらしき機体だった。さらに、熱源反応を示したものには、護衛と思しき小型ゾイドが多数映されていた。

 

「これは厄介な事になったな・・・・。」

 

 冷静な彼はこの事態を理解していた。連邦軍が居座っている峠道は大型ゾイドがせいぜい2台通れるかどうかの狭い一本道であり、大軍が一度に通れないようになっていた。また、峠の両側はかなりの高さの絶壁になっており、空からの攻撃を困難なものにしていた。そして最も厄介な事に、この場所ではこちらからの重火器による攻撃がほとんどできない状況になっていた事だった。

 

 ただ単に敵を撃破するだけであれば、サイカーチスによる爆撃を行うだけで十分であり、排除そのものは半日で可能であろう。だが彼らの目的は迅速な進軍であり、そのために重火器を使用して峠を埋めてしまえば、膨大な土砂の撤去に多くの時間を費やす事になり、その間に連邦軍は安全地帯に逃げ込んでしまうだろう。

 

 ヒンター大佐は部下たちを招集し、協議を重ねた。だが何ら対策は浮かばなかった。そして進軍停止から数日が経過した頃、マルクス少将が直々にこの陣地を訪れたのだった。

 

「こんな所で時間を食っていては連邦軍に逃げられてしまう。直ちに攻撃を開始せよ!」

 

 幕僚たちはこぞって反対したが、マルクスの姿勢は変わらず、ついに明朝から攻撃が開始された。

 

 第1陣として突撃を開始したのは50台ものモルガ隊であった。だが突撃したモルガのほとんどはモルガの射程圏内に届く前に、わずか7発の榴弾攻撃によって無残な鉄くずの山と化したのだった。

 

 50台ものモルガをわずか数分でただの鉄屑に変えられた帝国軍だったが、マルクス少将は突撃を止めようとはしなかった。

 

「モルガが駄目なのならば、レッドホーンやライモスを向かわせろ!」

 

 翌日、第2陣として攻撃に向かったのはレッドホーン15台とブラックライモス30台、確かにこの戦力ならば十分に突破可能と思われた。

 

 

「モルガが1分そこらでやられたからといって、我等突撃隊の怒涛の進撃は止められまい。相手はたかがグスタフ1台。一瞬にして踏み潰してやるわ!」

 

 先頭のレッドホーンを駆るバンズ大尉は吼えた。事実彼らの部隊は、レッドラスト会戦においてゴジュラスを撃破したほどの猛者たちであった。

 

 猛然と突進をかけるレッドホーン突撃隊。グスタフからの洗礼の榴弾攻撃が開始されたが、数多くの小型ゾイドを葬ってきた砲弾もレッドホーンに対しては火器を破壊するだけで本体にダメージを与える事まではできなかった。突撃する彼らの眼にグスタフの姿が飛び込んできた。

 

「いくら、あんな仰々しいもん背負った所で、所詮グスタフはグスタフよ。さあ、もうすぐあの世に・・・・」

 そこまでバンズがしゃべった瞬間、彼のレッドホーンは一瞬にして爆散した。彼は自分の機体に何が起こったか、理解する間もなく消し飛んだ。バンズ機を撃ち抜いた砲弾はさらに後続のレッドホーンも貫通し、この機体は上半身を失い、もんどりうって転がった。グスタフ・カールが必殺の徹甲弾を放ったのである。

 

 

「まったく愚かな事だ・・・・。」

 

 グスタフ・カールの指揮を担当しているビショット少佐はつぶやいた。この機体に搭載されている380mmリニアカノンの性能は正に悪魔的なものだったからだ。

 

 突撃を仕掛けてきたレッドホーン部隊は、わずか30秒の間にレッドホーンを隊長もろとも4台も失い完全に恐慌状態に陥っていた。隊列を崩して壊走する帝国軍に、もう1発徹甲弾を打ち込むと、今度はブラックライモスが3台まとめて弾けとんだ。

 

「もういい、撃ち方止め!これ以上の攻撃はただの虐殺だ。」

 

 ビショット少佐は砲撃を止めさせた。敵の指揮官が部下の事を思う心をもっているならこの一方的な損害を見て、これ以上の突撃の無意味さを悟ることだろう。彼らの目的は帝国軍の足止めだからだ。なぶり殺しにも等しい攻撃など彼の望むところではない。

 

 

 一方帝国軍の陣中は重い沈黙に包まれていた。報告では敵の徹甲弾の前にレッドホーンが2台まとめて撃ち抜かれたという。マルクス少将はアイアンコングの投入を叫んでいたが、レッドホーンを2台まとめて貫通するの砲撃の前には、帝国軍最強ゾイド、アイアンコングでさえも撃ち抜かれてしまうのは目に見えていた。

 

 正面からの突撃は損害を出すばかりと結論付けた彼らは、興奮するマルクス少将をなだめ、ゾイドによる攻撃ではなく有志を募った少人数の歩兵部隊によるグスタフの爆破という作戦を立てた。

 

 作戦の決行はその日の深夜であった。選ばれた30名の勇敢な兵士たちは強力爆薬を手に持ち、肉薄攻撃を行おうとしたのだった。

 だが連邦軍には十分に予測済みのことであった。決死隊30名は密かにグスタフに接近していたが、護衛のステルスバイパーのピットセンサーに全員が発見され、誰一人としてグスタフまで届くことなく夜の闇に散っていったのである。

 

 その後も帝国軍はサイカーチスやレドラーによるピンポイント攻撃を行ったが、どの機体もすべて、潜んでいた小型ゾイドに撃墜されてしまったのだった。

 

 

 主力部隊がアララート峠に釘付けにされてから、ついに1週間が経過しようとしていた。マルクスの苛立ちは爆発していた。彼の口からはただただ突撃せよとの怒声が飛ぶだけだった。幕僚たちの制止も限界に達していた。もはや無駄に部下たちの命を散らすしかないのか、そう思われた時、一人のアイアンコングのパイロットから奇想天外な作戦が提案されたのだった。

 

 彼の名はマシュー中尉、後に帝国軍の中でも指折りのエースとして名を馳せることになる、若いパイロットだった。

 

「我が部隊にはコングの機動性を向上させるマニューバスラスターがあります。不必要な武装、装甲を全て取り外し、スラスターの最大の推力を持ってすればコングを500m近くジャンプさせることができるはずです。」

 

「君が提案している作戦とはつまり・・・・。」

 

 幕僚の一人が言った。マシュー中尉は自信を持ってそれに答えた。

 

 陣中はどよめいた。だが今取れる作戦はそのくらいしかないようにも思えた。ヒンター大佐は立ち上がって発言した。

 

「少将閣下、彼の作戦に私も賭けてみようと思います。もはや我々に残された時間はほとんど有りません。」

 

 マルクス少将はうなずくしかなかった。今の彼には手段を選んでいる時間は残されていなかったからである。

 




初出 2002年3月29日
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