惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】   作:むげんゆう

13 / 27
第1章 第10話 アレキサンドルの嵐

 ZAC2099年7月、西方大陸の戦争の流れが徐々に変わり始めていた。

 それまで圧倒的に優位な形で戦争を進めてきた神聖ガイロス帝国が、マークス島沖海戦の敗北、そして南エウロペ侵攻作戦に失敗した事によって快進撃が止められてしまったからである。

 結果ヘリック連邦軍、南エウロペ勢力が俄然勢いづくことになり、前線では果敢に反撃が始まった。西方大陸の神聖ガイロスの支配地域では、それまで押さえつけられていた人々の抵抗運動も激化していた。

 

 この事に危機感を抱いた帝国軍司令部は、流れを再び引き戻すために大規模な攻勢を計画した。

 目標は北エウロペ大陸の完全制圧。そして侵攻ルートとして選ばれたのが南のアレキサンドル方面であった。

 

 この地域が選ばれたのには理由があった。

 ヘリック連邦の抵抗の拠点は大陸西部のミューズ森林地帯である。この地帯は森林地帯であるために大規模な部隊の展開が困難であった。さらにこの地帯には少数ながらも精強な部隊が配置されており、なによりロブ基地から潤沢な補給を受けられる体制になっていた。

 それらの要件が重なって、この地域の制圧は困難なものになっていた。

 その為、大規模な部隊が展開可能で、敵のゲリラ戦も困難。なおかつ政治的効果が十分に得られるこの方面への侵攻が決定されたのだった。

 

 

 最もこの大陸が暑さに襲われる8月、ついに帝国軍のアレキサンドル方面への侵攻が開始された。

 当初3週間もあれば制圧できると思われていたアレキサンドル台地であったが、侵攻は予想以上に停滞していた。理由は2つ、砂漠地帯独特の暑さと、連邦軍が放っていた無人攻撃機、スリーパー部隊の存在によってであった。

 

 スリーパーとは戦争時に兵員不足になることを考慮して連邦軍が開発した、自動攻撃システムを搭載した無人ゾイドの事である。

 連邦軍は西方大陸の防衛用にスリーパーに改造されたグランチュラやスパイカー、そしてガイサックを大量に持ち込み、それらを重点的にアレキサンドル台地に配備していたのである。

 スリーパー部隊の存在は帝国軍部隊にとって非常に脅威であった。スリーパーは疲れる事を知らず、いつ何時襲ってくるかも知れなかったからである。

 さらに厄介だったのはスリーパーに組みこまれていたプログラムが非常に優秀だったため、単純なおびき出し作戦に引っかかる事がなく、掃討しようとすれば帝国側も大きな損害を強いられていた。

 

 損害を減らすために帝国軍が取ったのは、空からの攻撃だった。

 ある程度の数をまとめた部隊を囮にしてスリーパーを誘き出し、出現したスリーパーを空から叩くのだ。

 だがこの任務には、帝国軍が誇る空戦ゾイド、レドラーには不向きなものだった。レドラーは低空かつ低速での活動には向いていなかったからだ。また爆装型の数の不足も問題であった。

 

 そこで白羽の矢が立てられたゾイドがあった。カブトムシ型ゾイド、サイカーチスである。

 

 サイカーチスは我々の世界で言うところの戦闘ヘリとしての役割を持たされたゾイドである。航空機との戦闘はできないが、優れた機動性と圧倒的な火力で、地上の敵を撃破することが任務である。

 この事を証明するように、ミューズ森林地帯での戦闘で最も活躍し、恐れられたのは、コマンドウルフでもシールドライガーでもなくダブルソーダだった。

 この方面に投入されたダブルソーダは両翼の下にミサイルランチャーや、上部にワイルドウィーゼルユニットを装備しており、神出鬼没の機動性と圧倒的な火力で侵入してくる帝国軍部隊を撃破していたのだ。

 アレキサンドル方面に配備されたサイカーチスも、ミューズのダブルソーダ同様にボマーユニットを装備する事で、さらに火力の向上が図られていた。

 

 

 帝国軍強襲戦闘隊に所属するルター伍長は、故郷とまったく異なる異様な暑さと戦いながら歩みを進めていた。

 足元の大地は焼けるように熱く、吹き付ける熱風は体力と共に気力まで奪い取っていった。

 彼の部隊の任務は、この地に出没するスリーパーゾイドの掃討であった。

 彼らが任務を行っている地帯は地図上ではすでに帝国が制圧していた地域であったが、完全にスリーパーを掃討していたわけではなかった。つい先日も前線への補給部隊がスリーパーに襲撃され、補給物資のほとんどを失う事件も起きていた。

 そのためその付近一帯のスリーパーの掃討命令が彼の部隊に下されたのだが、いまだに肝心のスリーパーを発見できずにいた。

 

 昼過ぎ、日陰を見つけたマイアー隊長は部隊の小休止を命じた。隊長である彼の搭乗していたイグアンはとにかく、行軍を強いられていた部下達の疲労がピークに達していたからであった。

 同僚のカルバン伍長がルターに言った。

 

「やれやれ、ようやく休憩か。あやうく干物になるところだったぜ。」

 

 水筒の水を一口飲んで、ルターは答えた。

 

「まったくだね。だけどうちの隊長は僕達のことを考えてくれているからいいほうだよ。」

 

「おいおい、あれでかよ?!」

 

「そうだよ。同じ任務に回された僕の友達は、昼の間中行軍させられているそうだからね。なんでもそいつの部隊の隊長は手柄を立てたがっているかららしいけど、外で歩かされている部下のことも少しは考えて欲しいっていっていたからね。それに比べたらうちの隊長は人が良い方だね。」

 

「そうかい・・・・。」

 

 そう言うとカルバンはルターから水筒をひったくると、一気に飲み干してしまった。

 

「おいっ!何やってんだよ!!」

 

「悪ぃ悪ぃ。今日の分はもう全部飲んじまったんでね。」

 

「そういう問題か!!だからって僕の分に手を出すなんて!」

 

「悪かったって言ってるだろう。この仕事が終わったらちゃ~んとお礼はするからさ。」

 

「そういってツケにするんだろう。まったくおまえってやつは・・・・。」

 

 その時2人の背後に、一人の士官が現れた。この部隊の若き隊長、マイアー中尉である。

 

「何を楽しそうに騒いでいるんだお前たち?」

 

 半ば呆れ顔でマイアーは2人に言った。慌てた2人はあわてて姿勢を正すと敬礼をしながら答えた。

 

「た、隊長殿、これは・・・その・・・水のことで少々ルター伍長と・・・」

 

「ハハハハ、知っているさ。後ろで見ていたからな。カルバン伍長がルター伍長の分まで飲んだのだろう。」

 

「は、はぁ」

 

 力なくカルバンは返事をした。

 

「ルター伍長、君にはとりあえず私の分をわけてやろう。私はイグアンのなかで楽をさせてもらっているからな。」

 

 そういうと、マイアーはルターの水筒の中に自分の分の水を入れた。

 

「も、申し訳ありません!」

 

「いいんだ、気にするな。君は日頃からまじめに任務についているからな。」

 

「それからカルバン伍長、君が飲んだ分の水は、君の明日の分の支給から引かせてもらうからな。」

 

「た、隊長~。そんな殺生な・・・・。」

 

「これに懲りたら、明日からは自分の分を大切に飲む事だな。」

 

 すると周りでその会話を聞いていた部隊全員が爆笑した。

 

「そういうわけで諸君、それだけの元気を任務にもしっかり当ててもらいたい。後30分で出発するから準備をしてくれ。以上だ。」

 

 

 準備が終わり、出発しようとした時だった。突然あちこちから砂塵が舞った。

 出現したのはスパイカー4機、スリーパーの襲撃である。

 

「全員戦闘準備、来るぞ!」

 

 スパイカーは散開しながら彼らに襲いかかってきた。

 

「全員下がっていろ!イグアンで仕留める!!」

 

 マイアーのイグアンはスラスターの出力を最大限に上げると、一気に間合いを詰めた。

 

「食らえ!!」

 

 マイアーは必殺のキックをスパイカーに放った。パイロットが乗っていれば反応できただことだろうが、スリーパーにはそれは出来なかった。

 キックを胸部に受けたスパイカーは一撃で背骨を砕かれ吹き飛んだ。他のスパイカーも、部下たちのイグアンの前に次々に撃破されていった。

 スリーパーは知能が備わっていたが、攻撃パターンは限られており、傾向さえつかんでしまえば比較的楽に撃破することができたからだ。

 

 わずか10分少々の戦闘で彼らを襲ったスパイカーは全滅したが、油断するわけにはいかなかった。マイアーは通信機のスイッチを入れると、直ちに航空部隊の支援を要請した。

 

「こちらγ特別任務部隊。先ほどスリーパーと接触した。増援が出現する可能性が高いので至急援護されたし!」

 

 スリーパーは撃破されると、信号を送って付近に潜伏している仲間を呼び出すようにプログラムされていた。その為、今目の前に敵がいなくても援護を要請しておく必要があったのだ。

 

 案の定、援護要請から1時間と経たないうちに大量のスリーパーが出現した。

 

「隊長!敵スリーパーは大量にいます。スパイカータイプ10にグランチュラタイプ15、それにガイサックタイプが20もいます!!」

 

 ゲーターからの報告は悲痛だった。今の彼らの戦力はイグアン3機にゲーター1機、コマンドゾイド8機に歩兵が50人であった。この戦力ではとても長時間持ちこたえられそうにない。

 

「全員物陰に隠れて応戦しろ!なんとしても援護が来るまで持ちこたえるんだ!!」

 

 この時彼らは比較的守りやすい窪地や岩陰に陣取っており、何とか防戦に努めることが出来た。

 だがスリーパーとはいえ圧倒的な数の敵の前には、この部隊の戦力では太刀打ちできず、次第に追い詰められていった。

 

 やがて日が暮れ始めるころになると、兵員の2割が戦死し、残った者たちも3割が負傷、無事な者たちも極度の緊張と暑さで疲れ果てていた。ゾイドも無事なゾイドはマイアーのイグアンだけであり、他の機体は多かれ少なかれ損傷を受けていた。

 

 頼みの援護は今だ到着せず、γ隊に絶望感が漂い始めた時、沈み行く夕日に、いくつもの黒い影が映し出された。

 

「γ特別任務部隊応答せよ、こちら第4航空騎兵隊。これより貴公らの部隊を援護する。」

 

 それは待ちに待った援護部隊のサイカーチスボマーであった。

 

 

 この日、第4航空騎兵隊をはじめとするサイカーチス部隊は、アレキサンドルの要所に構えていた連邦軍部隊の攻撃にあたっていた。

 塹壕やトーチカを利用して頑強に抵抗する連邦軍の為に、北エウロペ方面軍は苦戦を強いられていたが、サイカーチスボマーはその圧倒的な火力で防衛施設やゾイドを撃破していった。

 その攻撃を終えたところで、援護要請があったため、彼らは一度基地に帰還してから出撃したのだ。

 

 連日の出撃に疲労の色が隠せない彼らではあったが、出撃回数が多いということは、それだけ自分たちが頼りにされているということでもあった。その為かこの任務に弱音を吐くものは誰一人としていない。

 

「目標のスリーパーを捕らえた。直ちに攻撃を開始せよ。」

 

 この部隊の隊長であるゲルドリング大尉の静かな声が全機に伝わった。

 

「撃てっ!!」

 

 その瞬間、背部に装備されていたボマーパーツから、次々と空対地ロケット弾が発射された。この1度目の攻撃で、30機近くいたスリーパーゾイドのほとんどがただの鉄屑えと姿を変えていた。

 

 空からの攻撃を探知したスリーパー達は、次々と砂の中に潜り撤退を始めた。

 

「お前達を取り逃がすわけにはいかん!!」

 

 だが、砂の中に潜り始めたスリーパー達はすでに彼らに補足されていた。

 強化されていた機首の連装ビーム砲が次々と発射された。その威力はゴルドスクラスの大型ゾイドの装甲をも撃ちぬくほどの威力を持っており、砂の中に逃れたスリーパーゾイドでさえ、簡単に撃破してしまった。

 

 

 わずか20分ほどの戦闘でスリーパー部隊は全滅した。鮮やかな手際で任務を果たした彼らは、γ任務部隊の声援を受けながら帰還していった。

 

「こちらγ任務部隊隊長、マイアー・ロウガン中尉です。貴公らの援護に感謝します。」

 

「こちら第4騎兵隊隊長、ミッター・ゲルドリングだ。礼には及ばない。それよりも貴公たちの奮闘に敬意を表する。オーヴァー。」

 

 

 8月下旬、アレキサンドル台地最後の拠点を陥落させた北エウロペ方面軍は、アレキサンドル台地の完全制圧に成功した。

 予定より1ヶ月ほどの遅れが生じたものの、この結果は連邦軍や南エウロペ勢力に、戦争の流れはまだ変わっていないことを思い知らせるには十分だった。

 

 北エウロペ方面軍は直ちにアレキサンドルの拠点、ハルモンスクに大規模な飛行場の建設に取りかかった。北エウロペ制圧作戦の次のファイズ、ロブ基地攻撃に移るためである。

 

 この事態を察した連邦軍は、再びアレキサンドルに大量のスリーパーを放ったが飛行場の建設を僅かに遅らせる事ができても、阻止するまでには到らなかった。

 ウルトラ艦隊による上陸攻撃も検討されたが、沿岸部はともかく内陸部には強力な装甲師団が控えている事もあって、攻撃は断念された。

 

 9月下旬、連邦軍の必死の妨害工作にもかかわらず、ついにアレキサンドルの荒野に巨大な飛行場がその姿を現した。

 北エウロペ大陸に再び嵐が吹き荒れようとしていた・・・・。




初出 2002年4月18日
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。