惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】   作:むげんゆう

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第1章 第11話 レドラー大空中戦

 南エウロペ大陸では行方不明となっていた前皇帝ルドルフが発見されるなど大きく情勢が動いていた。一部報道によると、南エウロペ勢力はルドルフを擁立して新たに国家を建設するという動きを見せていた。

 

 一方、ここ北エウロペ戦線では逆に神聖ガイロス帝国が攻勢に出ていた。アレキサンドルの拠点ハルモンスクが陥落した事によって、アレキサンドル台地が完全に帝国軍の手に落ちたのだ。

 勢いに乗る神聖ガイロスは、北エウロペ大陸から連邦軍を駆逐するべく制圧作戦の第2段階を発動した。それは航空戦力による連邦の最重要拠点ロブ基地の無力化である。

 

 航空攻撃が選ばれたのには理由があった。

 現時点での陸上からの進軍は、アレキサンドル以上の抵抗が予想されたため見送られ、海上からの進軍は、圧倒的な連邦艦隊に対する対抗手段が無かったため極めて危険。

 ならば性能において連邦軍の主力戦闘機プテラスを圧倒するレドラーによって制空権を完全に抑えて、ロブ基地を空爆。その戦力が疲弊した所をついて一気に北上し、北エウロペ大陸を完全に制圧しようというものだった。

 

 作戦名はベータ、この大規模な空爆作戦の為に集められたのは通常使用のレドラー200機と爆装タイプが300機。合計500機にも及ぶ航空戦力が集められた。

 時にZAC2099年10月、後にレドラー航空戦と呼ばれる壮絶な大空中戦のはじまりであった。

 

 

 アレキサンドルのハルモンスクに建設された大規模な飛行場、そこに500機ものレドラーが集められた。

 一つの飛行場にこれほどの数のレドラーを集めた事など史上類を見なかったはずだ。事実、集められたパイロットたちも整備兵たちもその光景に圧倒されていた。

 

「これだけの数のレドラーが揃うとは・・・本当に壮観ですね。」

 

 整備兵の一人が女性パイロットに言った。

 

「ああ、確かに壮観だな。上層部のほうもそろそろ決着をつけるつもりかな。」

 

 彼女は答えた。スーリス・クラレット中尉は女性だけで編成されているレドラー部隊、ヴァレキューレ小隊の隊長である。彼女たちの部隊はすでに多くの戦闘に参加しており、撃墜数も西方大陸戦線の上位を争うほどのものであった。

 

「姐さんたちのことですから心配していませんけど、皆さん無事に帰ってきてくださいよ。この部隊のメンテを任されているっていうことは、いろんな意味で周りから羨ましがられるんですからね。」

 

「そう言って貰えると嬉しいな。では期待に添えるよう頑張ってくるよ。」

 

 その日の夕方、日が沈む頃に作戦は開始された。

 いかに航空戦力で優位にたっているとはいえ油断は禁物である。作戦開始から2時間後には全ての機体が離陸を完了し、ロブ基地へと翼を向けていた。

 しかし帝国側の行動は連邦側に事前に探知されていた。連邦の隠密偵察機ステラスが、すでにこの情報を掴んでいたからである。

 

 

 作戦開始から2時間が経過した。眼下はすでに連邦軍の勢力地域である。この夜は2つの月が両方ともに昇っていない夜が選ばれていた。レドラーの大編隊は高度1万5千を維持しながらひたすらロブ基地を目指していた。

 

 先頭を行くセピア小隊は、レーザー回線で会話をおこなっていた。

 

「バーニン隊長、今夜は連中、妙に静かですね。」

 

 バーニン大尉は静かに答えた。

 

「確かに今夜は静かだな。電探、逆探に反応はないな?」

 

「今の所反応は・・・いえ、感ありのようです。数は約20機ほど。飛行高度と大きさからするとサラマンダーではないかと思われます。」

 

「コースはどうだ?」

 

「このままいくと爆撃隊と上空で交差するようです。連中は爆撃機ですし、今の我々の装備ではあの高度まで届きません。我々としては通報されるのを警戒するくらいでしょうか。」

 

 彼らがサラマンダーに対してあまり警戒していない事には訳があった。

 サラマンダーが爆撃機だからである。戦闘機との空中戦を想定している機種ではない。旧大戦後期にF2タイプと呼ばれるが空中戦が可能なタイプが存在していたが、現在その技術が復活したと言う話も聞かない。

 まして数は約20機である。脅威ではないと判断されたのは当然だと言えるだろう。だが、サラマンダーとレドラー編隊が交差しようとした時、異変が起きた。

 

「連中、俺たちが爆撃機だと思って油断してやがるな。まあ、無理も無いか。」

 

 上空のサラマンダー部隊の隊長、カーチス中佐は呟いた。

 

「全機、ミシン撃ち用意!連中に目に物見せてやれ!」

 

 突然サラマンダーに搭載されていた多数のガトリング砲が下へと向けられた。その数は何と1機につき8基というとんでもない数だった。

 

「テッ!」

 

 カーチスの号令と共にサラマンダーのガトリング砲が唸りを上げて回転をはじめた。と、同時に毎秒十数発もの速度で弾丸が撃ち出された。そして弾丸によって作り出された弾幕は豪雨のように爆撃隊に降り注いだ。

 重たい爆弾を抱え動きが鈍っていた爆装レドラーには急激な回避運動は困難であり、瞬く間に40機以上のレドラーがその名のようにミシン撃ちにされ、次々に葬り去られていった。

 

「いかん、全機回避しろ!」

 

 無線封鎖を破って各機が次々と連絡を取りながら散開していった。サラマンダー隊に見つかった以上、無線封鎖は意味を持たない。それならば衝突を避けるために無線回線を開く必要があったのだ。

 

「助けてくれ!翼が吹き飛んじまった!!」

 

「うああ・・・!落ちる、落ちる、落ちる・・・・。」

 

 あらゆる回線から悲鳴が伝わってきた。だがそれをあざ笑うようにサラマンダーの攻撃はなおも続いていた。

 

「おのれ!」

 

 いくつかの部隊がサラマンダーの飛行高度へ向かって上昇した。

 彼らが上昇してくる事に気が付いたサラマンダー隊は一目散に撤退していった。

 追撃したレドラー隊はサラマンダーの撃退に成功したのだ。だが彼らのレドラーは急激な上昇のため、みるみる燃料を失い、ついには帰還する燃料さえ失ってしまっていた。

 

「遺憾ながらこれ以上の援護はできん!我々は撤退せざるをえなくなったが、残った各機には作戦の遂行を願う。以上だ!」

 

 バルジ大尉率いるカスミ中隊からの通信であった。彼らは翼を振りながら向きを変えると、基地へ帰還していった。

 

 爆撃機40数機を失い、戦闘機20数機が戦線を離脱してしまった攻撃隊だったが、戦力にはまだ問題は無かった。攻撃隊は編隊を組みなおすとロブ基地に向かっていった。

 

 基地まであと30分を切った所で、ついに基地からの迎撃機が姿をあらわした。

 

「バーニン隊長、ついに本命が来たようです。数はおよそ250機・・・・。」

 

 そこまで言ったところでスコルフ少尉は異変に気がついた。

 

「待って下さい、先頭の約100機、異様に速度が速いです。この速度はプテラスではありません!」

 

「まさかレイノスか!?だが、あの機種はまだ数が十分に揃っていないはず。では?!」

 

「隊長、敵機下方より、来ます!」

 

 答えはすぐにわかった。そして姿を現した機体は、彼等にとってあまりにも見慣れた機体だった。

 

「たっ隊長!連中の機体はレドラーです!間違いありません!」

 

 

 連邦軍の主力戦闘機はこの時点までプテラスであった。

 最高速度マッハ2.2を誇り垂直離着陸可能な名機ではあったが、レドラーに対しては明らかに力不足であった。

 しかし旧大戦でこのプテラスの後継機種であったレイノスは、大異変以降数が激減しており、現在も十分な数をそろえることが出来ないままであった。また、新型機の開発もまだ間に合わない状況だった。

 

 だが、戦線の推移はそれを許してはくれなかった。そこで連邦軍は、ゼネバス公国直属の空軍からの支援を受けるという決定を行った。

 ゼネバス公国空軍の主力戦闘機、それはガイロス帝国の主力機と同じレドラーであった。

 

 ゼネバス公国の機体にはヘリック連邦の印はマーキングされていない。その代わりマーキングされているのは、旧大戦でゼネバス帝国を象徴していたあの旗印であった。

 旧ゼネバス帝国軍機と同じ旗印に同じカラーリング。これこそが栄光あるゼネバス公国空軍所属のレドラーである。

 

 ロブ基地の防空部隊司令、シュテッツ大佐からの激励が飛んだ。

 

「諸君、我々ゼネバスの騎士達の力を見せつける時が来た!ガイロスの連中に我々のレドラーの力を見せてやろうではないか!」

 

 たちまち大空一杯に青のレドラーと赤のレドラーによる空中戦がはじまった。

 ガイロスのレドラーは直進の加速性能において秀でていたが、ゼネバスレドラーは旋回性能に秀でていた。

 総合性能においては五分と五分、だが、ゼネバスレドラーのどれもが腕の立つ猛者ばかりであった。

 

「ゼネバスのレドラーというわけか!だがそれだけにしては数が多い。まさか連邦は主力機をレドラーに代えたとでも言うのか?!」

 

 爆撃隊に近づけさせまいと奮戦するバーニンの頭にその考えがよぎった。

 事実、純粋なゼネバス公国所属のパイロットは全体の4割にすぎない。それ以外のパイロットたちは、連邦軍の所属である。

 理由は2つあった。1つはバーニン大尉の予想とほとんど違わず、現状でプテラスの上位機種がこの機体しかなかったということ。

 2つ目の理由は連邦空軍の次期主力戦闘機にゼネバス公国系技術班が開発したレドラーの後継機、ストームソーダーの正式採用が決定されたためである。

 この新型機ストームソーダーは従来のプテラス、レイノスと続くヘリック共和国系の戦闘機と異なり、ゼネバス系の技術で開発されたレドラーの格闘戦能力をさらに発展させた機体である。

 そのため、操縦に際して射撃が主体であったプテラスなどとは異なった操縦技術を要求する機体になっていた。

 

 そこで空軍上層部が決定したのは、速やかなるストームソーダーの戦線投入のために、適正のあるパイロットたちをレドラーに乗せ、あらかじめ格闘戦主体の機体の空戦経験を積ませておこうというものだった。

 わずか3ヶ月の期間であったが、彼らのほとんどが今までとまったく異なる機体を自在に駆ることに成功した。

 そして彼らの腕前は決してガイロス空軍のパイロット達に劣るものではなかった。

 

 

 激しい戦闘が続く中、隙を突いたゼネバスレドラーがガイロスレドラーの直衛機を突破した。

 

「スピアー小隊、全機突破したな。一気に切り込むぞ!」

 

 シェイン中尉らのレドラーは、まるでカミソリのように爆撃隊に切り込んでいった。同じレドラーとはいえ爆装して動きが鈍っている爆装型レドラーでは彼らの攻撃を回避することができず、次々と落とされていった。

 

「ヴァレキューレ小隊!奴らを逃すな!」

 

 その事に気が付いたヴァレキューレ小隊のスーリス中尉らは猛然と反撃に転じた。

 

「アックス小隊、ハルバード小隊は引き続き攻撃を頼む!今来た連中は俺たちスピアーで何とかする!」

 

 真っ先に激突したのはシェイン機とスーリス機であった。レドラーの切断翼同士が空中で激突した。正につばぜり合いである。お互い多少バランスは崩したものの、数秒とかからず立て直した。

 

「ちぃぃ、どけ!」

 

「おっと、お仲間に仕事をさせなくちゃならないんでね。もうしばらく相手をしていてもらうぜ!」

 

 スーリス・クラレットと、シェイン・マクトミンの一騎打ちは、一連の大戦全期を通じてその後何十回と繰り返される事になるが、それは又、別の話である・・・・。

 

 

 結局、この日の帝国空軍による空爆作戦は、ロブ基地に多少の損害を与えたものの、100機以上のレドラーを失う事になり、事実上失敗した。

 また撃退に成功した連邦軍も、損害こそ少なかったものの、依然として防空戦力の不足が目立ち、互いに課題を残す結果になった。

 

 この戦いはそれから1ヶ月近く繰り広げられたが、必死の抵抗を見せる連邦空軍をついに帝国側は打ち破る事ができなかった。

 そして11月中旬、その損害の大きさから空軍は後方での再編成を余儀なくされ、ベータ作戦は中止された。

 

 その為、地上部隊の進撃もネーベ川で止まったままになっていた。結果としては神聖ガイロス帝国軍の第2次侵攻作戦はアレキサンドル台地を制圧するにとどまったのだった。

 

 その後、12月に入っても戦線は膠着したままで動きを見せる事はなかった。多少の小競り合いはあったものの戦線が動き出すほどの事は起こらなかったからだ。

 

 こうして年が暮れていこうとしていた大師走、再び南エウロペ大陸で大きな動きがあった。ガイロス帝国前皇帝ルドルフが旧国防派と南エウロペ諸部族の同意を得て、新国家の樹立を宣言したのだった。

 

 国号は正式にはガイロス帝国ではあるが、便宜上、西方ガイロス帝国と呼ばれる新たな国家の誕生であった。ヘリック連邦は、ただちにこの国家の成立を承認し、それまで以上の援助を約束した。

 

 ZAC2100年、戦局は新たな段階に移行しようとしていた・・・・。

 




初出 2002年4月18日
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