惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】   作:むげんゆう

17 / 27
第2章 第3話 ジュリップ浜揚陸戦

 内エウロペ海とゼロス海の境界線近くにある内エウロペ海最大の島マダガスカル。南エウロペ大陸から目と鼻の先にあるこの島は古くから海にまつわる伝説の多い島である。

 

 内エウロペ海に住んでいる伝説の海蠍(うみさそり)が、生き絶える直前にこの島で産卵をしたと言う伝説もこの近辺の住民ならば知らぬものは無いほどの有名な話である。この海蠍が産卵したとされる地は、現在もこの島を治める部族によって立ち入りが禁止されているという謎の多い場所であった。

 

 この島で生きている古代遺跡の存在が確認されたのは昨年末の事で、西方ガイロス帝国への偵察機がこの島から高いエネルギー反応を突如検出した事が理由であった。

 

 この情報を入手したプロイツェンは、過去の古代遺跡とのデータの比較を行い、この地にオーガノイドが存在していることを確信していた。

 

 だが、問題があった。それはこのマダガスカル島が神聖ガイロス帝国の支配地域から余りにも遠く離れた所にある事だった。しかも南エウロペ大陸から目と鼻の先ということは、敵対する西方ガイロスの勢力圏と目と鼻の先にあることも意味していた。

 

 このためプロイツェンもこの島の恒久的な占領が目的ではなく、一時的な遺跡の制圧、すなわち強力な新型ゾイド部隊によって電撃的に遺跡を制圧し、目的のサンプルを回収、大陸側から敵軍が派遣される前に撤退するように指示を出していた。

 

 一方のヘリック連邦軍も諜報部からの報告により、マダガスカル島に古代遺跡が存在しているという情報を入手。すぐさま西方ガイロスに派遣していた部隊から1個大隊をこの島に派遣した。さらに遺跡からサンプルの確保のために、緊急に編成された新型ゾイドの実験部隊の投入を決定。こうして、ここマダガスカル島で両軍のオーガノイドシステム搭載機が激突しようとしていたのだ。

 

 

 マダガスカル島北東岸ジュリップ浜、切り立った断崖に囲まれたこのマダガスカル島で帝国軍の巨大輸送艇ホエールカイザーが唯一上陸可能な地点である。だが、この地に先に上陸したのはヘリック連邦軍第107大隊であった。第107大隊は帝国軍の上陸が予想されたこの浜辺に防衛線を構築し始めた。

 

「大隊長殿、陣地の構築及び地雷、機雷の敷設完了しました。」

 

 士官が作業の終了を上司に報告した。

 

「ご苦労、予想以上に作業が早く終了したようだが?」

 

「ええ、西方ガイロスから派遣されてきた義勇部隊のお陰です。彼らのゾイドはそのまま作業用にも使用することが可能でしたので、予定よりも早く作業は完了しました。」

 

 大隊の隊長は嬉しそうな顔をしていた。

 

「そうか、彼らにとっては生まれた土地を守るための戦いだからな。十分に例を言って、引き上げてもらうよう伝えたまえ。ここは戦場になるから、と。」

 

「しかし中佐殿、彼らもここに踏みとどまるつもりのようですが?」

 

「確かに、彼らのその気持ちには感謝したい。だが彼らには、まだこの島に残っている住民を脱出させる作業に当たってもらいたい。そう彼らに伝えて欲しい。」

 

 若い士官は彼の言葉に感激しているようだった。

 

「了解しました。彼らにはそのように伝えておきます。」

 

 見事な敬礼を返し退席した士官を、第107大隊長ヤー・チェン少佐はほほえましく思っていた。だが、もうすぐ出現するであろう帝国軍への不安は隠し切れなかった。

 

「敵の上陸を許さず2日も粘ることができれば、本土の援軍だけでなく大陸側からの援軍も到着する。帝国軍も遺跡以外にメリットの無いこの島を長期間占領することは出来ないだろう。その事がわからないほど帝国は馬鹿ではあるまい。」

 

「だとすれば帝国が差し向けてくるのは・・・。」

 

 設営された陣の外をヤーは見た。外には20台以上のカノントータスが構築された陣地に並べられ、約30台のゴドス、そしてゴジュラスの巨体が見えていた。現在配備されている連邦軍の戦力としては申し分ない戦力である。まして防衛陣地も完成し、この陣地を突破する事は常識的に見ても容易ではない事は明らかだった。だがそれでもヤーは、海の向こうからただならぬ気配を感じていたのだった。

 

 

 何故神聖ガイロスは古代遺跡にこだわりつづけるのか?それには理由があった。帝国のオーガノイド研究は開始されて約20年が経とうとしていた。その結果そのオーガノイドを利用したシステムの開発、それによるゾイドの大幅な進化、ゾイドコアの増殖などに成功していた。しかし量産兵器において最も重要な要素、扱いやすさという課題は未だに解決されないままだった。無論ようやく正式採用が決定したジェノザウラーも例外ではなく、操縦するためにはパイロット適正、そして強靭な精神力を要求するため、ほとんど配備できないままだった。

 

 本来ならばこの欠陥だらけの次期主力機の計画は見直されるべきだっただろう。だが、上層部、特に宰相プロイツェンらはこの計画の更なる推進を命じていた。実の所オーガノイドシステムによって強化された機体を完全に制御する手段は見つかっていたのだ。その鍵となるのはいくつかの遺跡から発見された、有機質の特性も併せ持つ金属生命体、オーガノイドであった。元々オーガノイドシステムはこのオーガノイドによる通常のゾイドの活性化作用を摘出したシステムであった。つまり本来のオーガノイドシステムとはオーガノイドとゾイドが両方揃った上で完成するシステムであったのだ。恐らく古代の文明を築いた人種はこのオーガノイドを利用して繁栄していたに違いなかった。

 

 だが、このオーガノイドには問題があった。オーガノイドを有効に利用するためには、オーガノイドとパートナーとなるパイロットとの相性が決定的に重要だった。オーガノイドがパートナーと認めなかった場合、制御システムは完全に発動しないのだ。しかもオーガノイドはどうやら設計段階から文明を担った古代ゾイド人以外を選ばないように組み込んであったらしく、有効に活用できる人材は現在の人種にはまったくといって良いほど存在していなかった。そのため、わずかながらもオーガノイドの複製に成功していた神聖ガイロス技術陣であったが、絶望的なほどの適応者不足に悩まされていたのだ。

 

 この状況を打破するためには、とにかくオーガノイドやそれに関するデータを入手する必要があった。でなければオーガノイドシステムの本格利用という計画は頓挫してしまう。計画を遂行するためには何としても多くのサンプルを入手する必要があったのだ。

 

 

 神聖ガイロス帝国軍オーガノイド大隊を搭載したホエールカイザー3隻は、マダガスカル島沖合に迫っていた。

 

「今回の作戦はマダガスカル島の古代遺跡の発見、そして存在していると思われるサンプルの回収である。偵察機からの情報によると、我々の上陸予定地点にはすでにゴジュラスを含む連邦軍1個大隊が展開しているとの事だ。質問は無いか?」

 

大隊長からの作戦説明である。

 

「質問が無いならば以上だ。作戦開始は3時間後、各員は所定の部署につき準備されたし。以上。」

 

 ホエールカイザーの格納庫の中にはジェノザウラーの姿があった。リッツの機体である。

 ジェノザウラーへ向かうリッツにドクトルFが声をかけた。

 

「このジェノザウラーにとってもテストパイロットだったお前さんにとっても今度がはじめての実戦じゃ。まあ、連邦にこいつに対抗できるゾイドがあるとも思えんが、サンプルとデータは確実に持って帰ってきてくれよ。」

 

「言われるまでも無い。」

 

 そう一言返すとリッツはジェノザウラーのコクピットに乗り込んだ。彼の目は殺気に満ち満ちて、もはや“アイスマン”と呼ばれた頃の面影は微塵も残ってはいなかった。

 

 

 帝国軍の上陸作戦は日没直前に開始された。一斉に上陸を開始したのは帝国軍新鋭小型ゾイド、レブラプターであった。

 

 それに対し待ち受けていた連邦軍が攻撃を開始した。こうしてのちにジュリップの虐殺と呼ばれる戦闘が開始された。

 

 

「各機攻撃を開始せよ!1機たりとも進撃を許すな!」

 

 ヤー少佐の号令と共に防衛拠点の全ての火砲が帝国軍めがけて放たれた。だが、その猛烈な弾幕の中を見た事も無い黒いゾイドが突っ込んできた。そのゾイドは砲弾を、かわし、弾きながら瞬きする間に、陣地の手前まで突っ込んできたのだった。

 

「進路をさえぎるならば排除するまでだ!」

 

 リッツの叫びと共にジェノザウラーは口から強烈な閃光を放った。拡散荷電粒子砲である。

 まるで榴弾のように飛び散った荷電粒子のつぶては瞬時に陣地を魔女の釜の中に変えた。カノントータス瞬時に穴だらけになり噴火したかのような爆発を起こした。装甲の厚いカノントータスでさえこの結果なのだから、ゴドスにこの攻撃が耐えられるはずも無かった。まるで台風になぎ倒された電柱のように倒れ伏していた。そして塹壕の中に篭っていた兵士達は、その体を宙に舞い上げられ、打ち砕かれて、その変わり果てた姿を浜の真砂に撒き散らしていた。

「たった一撃で大隊が壊滅したと言うのか!?」

 

 荷電粒子砲の散布界に巻きこまれた部隊のなかで、かろうじて生き残る事が出来たのはヤー少佐のゴジュラスだけであった。彼は部下たちに呼びかけたが誰一人として返事するものはなかった。

 

 部下たちのほとんどを失った事を悟った彼だったが、ここで任務を放棄するわけには行かなかった。撃退する事ができないのであれば、せめて1台でも多くの敵に損害を与えなければならない。すぐさま彼は愛機の状態を確認した。装備していた火器のほとんどは破壊されていたが、ゴジュラスそのものにはほとんど損害らしい損害はなかった。

 

「ゴジュラスならば奴の荷電粒子砲の直撃にも数発は耐えられるようだな。ならば荷電粒子砲を放った隙に格闘戦にもちこめばまだ勝機はある!」

 

 彼の決意に愛機は答えるように咆哮をあげた。彼の愛機は自らの傷の痛みに、そして仲間の多くを失った事への怒りに燃えていた。そしてその怒りはヤー少佐の怒りでもあった。怒りの咆哮を上げ、唸りを上げて襲いかかるゴジュラス、だが黒いゾイドはゴジュラスを無視するかのように機体を前進させた。

 

「先を急ぐぞ、ジェノザウラー。やつは俺たちの相手ではない。」

 

 そう呟くと、リッツはブースターを吹かし奥地へ向けて前進した。

 

「待て!これ以上島の奥地に侵入させるわけにはいかん!」

 

 だが次の瞬間、ジェノザウラーに目を取られていたゴジュラスの目の前に大量のゾイドが出現した。レブラプターである。限定的とはいえオーガノイドシステムを組み込んだこの機体の闘争本能は凄まじく、目の前の敵めがけて、地雷原を踏みつけながら来たのだ。

 

 しゃにむに腕と尾を振り回すゴジュラス、次々とレブラプターは叩き伏せられ、握りつぶされて撃破されていく。だがレブラプターたちは鬼神のごときゴジュラスを恐れるどころか、引く事もなく襲い掛かってきたのだった。

 

「馬鹿な!こいつらには恐怖心というものがないのか!?」

 

 さしものゴジュラスも火器を破壊されてしまった状態では圧倒的な数のレブラプター押し留める事も出来ず、全身を切り刻まれていった。そしてついにゴジュラスは力尽き、断末魔の悲鳴をあげたのだった。

 

 火花を吹き、爆発寸前のコクピット。薄れゆく意識の中、ヤー少佐は気力を振り絞り、最後の力で通信を送った。

 

「敵の新型は圧倒的に強力。後に続く諸君は十分に用心されたし・・・。」

 

 その通信が終わると同時に、コクピットは爆発し、炎に包まれたゴジュラスは完全に崩れ落ちたのだった。後に残されたのは見るも無残な残骸だけであった。

 

 ゴジュラスを仕留めたレブラプターは僅かに生き残った兵士達に襲いかかった。逃げ惑う兵士達を踏み潰し、半壊しながらも抵抗を続けるゴドスをコクピットごと打ち砕いた。

 

 そして戦闘開始からわずか1時間足らずが経過する頃には、この浜辺に動くものはなかった。優位な立場にいたはずの連邦軍第107大隊は圧倒的な戦闘力の新鋭ゾイドによって、抵抗らしい抵抗も出来ずに1時間足らずで全滅させられたのだった。この戦闘での連邦側の生存者は誰一人としていなかった。

 

 

 ジュリップの浜辺は徹底的に破壊され尽くしたゾイドの残骸と、焼け焦げたかつて人間だったものとで埋め尽くされていた。その浜辺をまるで血で染めるかのように夕日が照らし出す。幻想的と言うにはあまりにも凄惨な光景であった。

 

 だが、この光景を振り返る者は兵士たちの中には誰一人としていなかった。オーガノイドシステムの影響を受けたパイロットのほとんどは、ただただ闘争心にかられて前進するだけであった。

 あの人を殺す事を嫌っていたがためにテストパイロットの道を選んでいたはずのリッツでさえ、ジェノザウラーとともにひたすら目的の遺跡に向かって機体を進ませていた。以前の彼であればこの惨状に心を痛め、静かに黙祷を捧げていたに違いない。

 だが、“誰も殺さず自分の命だけを賭ける”その事を信条としてきた冷徹なテストパイロットはオーガノイドシステムの影響を受け、わずか数ヶ月で殺戮マシンと化していたのだった。

 




初出 2002年6月16日
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。