惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】 作:むげんゆう
帝国軍の上陸が完了した丁度その頃、島の南東部から北上する1機のゾイドがあった。
星明りに照らされた大地を颯爽と駆け抜けていくまさに一陣の疾風。アーサーの駆るブレードライガーである。その速度は時速300km以上。現在の惑星Ziにこれだけの速度が出せる陸上ゾイドは他にないはずである。
この夜、本当にアーサーは上機嫌だった。彼の新たな愛機の反応が楽しくて仕方がなかったからだ。そんな上機嫌の彼に上空のサラマンダーカーゴからレーザー回線を使った通信が入った。
「アーサー少佐、アーサー少佐。新型機の調子はどうですか?」
上空のオペレーター、リン軍曹からだった。彼は機嫌よく応えた。
「こちらアーサー・ボーグマン。こっちは見事に操縦不能だ。どうぞ。」
「了解しました。現在ブレードライガーは操縦不能・・・・って、ええっ!ちょ、ちょっと待って下さい少佐!それって一体どういうことなんですか!?」
あまりのことに驚いて慌てふためくリンを笑いながらアーサーは答えた。
「どうしたもこうしたも、コイツ恐ろしく気分屋でな、まっすぐ走らせることも簡単じゃねえんだよ。おまけに性格は凶暴と来ている。お陰でこっちまでひきずられそうになるからな。ガハハハ・・・。まあ、なるようになるさ。」
そんな彼の言葉に、上空で待機していた特殊実験部隊のメンバー全員が唖然とした。
「・・・・ホントに通り名通りのクレイジーだぜ。」
上空で待機している護衛用のガンスナイパーのパイロット、リチャード少尉がぼそっと言葉をもらした。
「おいリチャード、しっかり聞こえているぞ。それは上官への侮辱と見なしていいんだな。」
「しょ、少佐殿!申し訳ありません。以後、注意いたします。」
「おう!わかればよろしい。今後そういう愚痴は通信を切ってからにしろ!いいな。」
「イ、イエッサー!」
回線の向こうから全員の笑い声が聞こえてきた。
特殊実験部隊、通称モルモット部隊はその名の通り最新兵器の実戦テストを担当する部隊である。
この部隊には陸、海、空軍を問わず集められた優秀な各分野のエキスパートによって構成されている部隊である。今回彼らに与えられた戦力は、サラマンダーカーゴ2機、ストームソーダー2機、ガンスナイパー3機、そしてブレードライガーである。
この部隊がこの島に投入されたのは、言うまでもなくオーガノイドサンプルの回収、そしてオーガノイドシステムの実戦テストであった。
「ところで、こっちは見事に操縦不能なわけだが、目的地までの道は間違っていないのか?」
アーサーからの質問に少々動揺気味のリンは答えた。
「は、はい。信じられない事ですがほとんど間違っていません。若干予定コースからは外れてしまっていますが、予定していた時間よりむしろこのルートの方が早いくらいです。」
「ほう、こいつの野生の本能ってやつか?何はともあれ、こいつに任せっきりにしておいて正解だったようだ。まあ、このまましばらく行く事にする。以上だ。通信を切るぞ。」
「なあ、ライトどう思う?今の少佐の話。」
リチャードは同じガンスナイパーに乗る同僚のライト少尉に話を振った。
「少佐の新型ライガーに搭載されているオーガノイドシステムってやつの影響なんじゃないの?どうも実験段階のものを無理やりまとめて組み込んだらしいからね。シュンヤ、君はどう思う?」
同じくガンスナイパーに乗り込むシュンヤ・テンリョウ少尉は答えた。
「・・・・、俺たちの機体にも少佐の機体と同じシステムが搭載されている以上、十分注意する必要があるわけだな。」
ストームソーダーのマミ・ブリジット少尉もその話題に加わった。
「その話題、人事じゃないから混ぜてもらおうかしら?」
「日頃人の噂話にしか首を突っ込まないマミちゃんが入ってくるとは珍しいこともあるもんだ。こりゃあ二度目の大異変の前兆か?」
リチャードが茶々を入れた。
「リチャード、あんたは黙っていなさい!」
マミはリチャードを睨み付けて一喝した。
「で、話題のシステムのことだけど、確かにシュンヤの言う通りね。ある程度注意しておいた方が良さそうね。でも私の乗っているストームにもシュンヤ達のガンスナイパーにもそこまで極端な影響はでていないからそんなに心配しなくてもいいんじゃないの?」
ぞんざいに扱われたリチャードは不満そうに言った。
「まったくマミちゃんも酷いぜ。俺には黙ってろって言うくせに、シュンヤ、シュンヤってばっか。俺やライトの立場はどうなんのよ?」
「う、うっさいわね!ライトはともかく、あんたは殺したって死にそうにないじゃないのよ!どこに心配する必要があるっていうのよ!」
再び回線の向こうから笑い声が響いていた。
「あ、あの~。よろしいでしょうか?」
リンが回線に割り込んできた。
「おう、今度はリンちゃんかい。今日はずいぶんにぎやか・・・・。」
リチャードの話をリンはさえぎって叫んだ。
「いい加減に、し・て・く・だ・さ~い!!みなさん任務中なんですよ!いつ戦闘になるかわからないんですよ!確かに皆さんの機体に搭載されているシステムにことで不安になっているのはわかります。それをどうにかしようと会話をしているのも仕方がないかもしれません。でもあまりにも緊張感がなさ過ぎです!」
それまで会話を笑って聞いていた上空待機メンバーの責任者、ブラッドレー大尉が口を開いた。
「確かにリン軍曹の言う通りだ。緊張感でガチガチになっているというのも問題があるが、今のお前らは確かにおふざけが過ぎるようだぞ。」
「それに我々が相手にしなければならないのは通信にもあった通り、ゴジュラスを配備していた1個大隊を1時間足らずで壊滅させたほど強力な帝国軍部隊だ。そろそろ気を引き締めておけ!」
上空であまりにも砕けた会話がされていた頃、アーサーは相変わらずブレードライガーをライガーの望むままに駆けさせていた。思い通りに操れないならゾイドのしたいようにさせる、それを実践していたのだ。
不意にブレードが緊張したのをアーサーは感じ取った。すぐさまセンサーをチェックする。
「レーダー、熱源反応、共になし。だが・・・。」
アーサーは計器よりもブレードライガーの本能を信じる事にした。
スロットル入れブースターを吹かし宙に向かって跳躍。不思議なほど素直にブレードライガーは反応した。すると眼下に遺跡に向かうレブラプターの一団を発見したのだった。
「悪いがこいつの性能をテストさせてもらうぞ。」
突然の真横からのブレードライガーの奇襲に、さしものレブラプター部隊も狼狽した。部隊の態勢を整えようとしたものの、機動力に勝るブレードライガーの前に次々と撃破されていった。
さらに上空からサラマンダーカーゴがうなりを上げて急降下、そしてシュンヤ達のガンスナイパーを投下した。
「2人ともいくぞ!」
シュンヤの叫びと共に上空のガンスナイパーからミサイルが発射され、レブラプター部隊に襲い掛かった。次々と炎上していくレブラプター。さらに態勢の整わぬレブラプター達にガンスナイパー隊は正確な射撃を浴びせ沈黙させていった。
「おいお前等!そいつらの相手は任せた。俺は先に行くぞ!」
ブースターを吹かしてブレードライガーは遺跡に向かった。小型ゾイドがここまで来ていると言う事は敵の本命はすでに遺跡の間近にまで到達している事だろう。急がねばならなかった。
渓谷に差し掛かったとき、アーサーは敵の気配を感じ取った。ブースターを吹かし大きく跳び上がる。と、次の瞬間、足元が爆発を起こした。何物か狙撃してきたのだ。
「おい、そこに隠れている奴!とっとと出てきたらどうだ!?」
着地したブレードは谷の上に向かって吠え掛かった。すると3機の黄色のセイバータイガーが姿を現し、ブレードの前に立ちふさがった。
「見た事もないライガーやな。どうやら敵の新型っぽいで。」
「つーことは兄貴、こいつをぶっ潰したら大手柄やがな。」
「そういういうことや。お前等いくで。いてこましたれ!」
3機のセイバーが次々に襲い掛かってきた。見事な連携プレーであったが、アーサーのブレードはその攻撃を巧にかわしていった。
「こいつの扱いにようやく俺の体になじんできたみたいだな。いきなりで悪いがケリをつけさせてもらうぞ。」
攻撃をかわされたタイガースが攻撃パターンを変更しようとしたその瞬間、ブレードライガーは必殺のレーザブレードを起動させ、セイバーに突っ込んだのだった。
まさに達人の居合切りである。3機のセイバーはパイロットたちが反応する間もなく瞬時にして真っ二つに切り裂かれていたのだった。
「な、何が起きたんや!?」
切り飛ばされたコクピットから這い出したカークランド中尉は呆然としていた。
そんな彼にアーサーはスピーカーから声をかけた。
「ようお前さん方、感謝するぜ。お陰でいいテストになったぞ。」
「ふ、ふざけんな~!」
「じゃあな、機会があったら又戦場で会おう。」
そう言い残すとアーサーは遺跡があると思われる方角へ向かって急いでいった。
「赤い獅子の紋章、よく憶えとくで~!いつかリベンジしたるぞ~!」
星明りに黄色のセイバータイガーの残骸が照らし出される渓谷に、タイガースのメンバーの叫びがむなしく木霊していた・・・・。
初出 2002年7月7日