惑星Zi西方大陸戦争録 【Zi-EX天神 ゾイド二次創作小説再掲(2002~2010)】 作:むげんゆう
オーガノイドシステム、それはゾイドの生命力、戦闘力を驚異的に飛躍させる画期的な技術である。
だがそれを人が操るためには致命的な何かが欠けている。その何かを神聖ガイロス帝国もヘリック連邦も先を争って求めていた。技術陣や上層部は物理的なものがあると考え、その何かを探していたが、アーサーは現状で欠けている何かを補う方法を考えていた。
問題は、激しすぎる闘争本能。ゾイドを操縦するにはゾイドとの繋がりが重要だが、オーガノイドシステムによって強化されたゾイドは、パイロットに強烈な精神的負担を与えてしまうため、パイロットが持たないのだ。
ならばそれを防ぐ方法は一つ、その激しすぎる闘争本能を受け流せばいい。精神的な繋がりを断ち、パワーだけを的確に引き出す操縦を行う。それがアーサーの出した結論であった。
もちろん口で言うほど安易な事ではない。ゾイドを操縦するにはゾイドとの相性が必要である。そして優れたパイロットほどゾイドとの精神的なつながりは強いからだ。だが、アーサーは自信を持っていた。「クレイジー・アーサー」ならやれると。レブラプターやセイバータイガーとの戦闘が彼に自信を持たせていた。
目標の遺跡は近い。頭上をガンスナイパーを再び搭載したサラマンダーカーゴが追い抜いていく。連絡によると、もう間もなくだという。
遺跡の入り口付近と思われる3つの地点にガンスナイパーがそれぞれ降下した。
「ビンゴ~!アーサー少佐、入り口はポイントP3-47です。」
リチャード機の降下した地点で入り口が発見され、ただちにその地点に全機が集合した。
「お前等ご苦労だったな。だが本番はこれからだ。リチャードとライトはついて来い。シュンヤはここに残って後から来る帝国の連中を見張っていろ。」
アーサーはそう言い残すと、リチャードとライトをつれて遺跡の内部に突入していった。
一方のリッツは彼等の到着する1時間ほど前に別ルートから遺跡の内部に突入していた。
「西方大陸の古代遺跡は巨大なものだとは聞いていたが、まさかここまで巨大だとはな・・・・。」
マダガスカル遺跡は島の中央部の山、その内部をそのままえぐりとったシェルターのような建造物であった。
センサーで内部を探ると、あちこちから熱源反応がある事に気が付く。微弱ながら明かりも見えている。こんなものがはるか古代に造りだされ、現代にまで残っている事は正に奇跡である。
目的の物はここにある、そう確信したリッツは迷路のように入り組んだ通路を伝って最深部に向かっていった。
ジェノの本能にまかせて進んでいくリッツ。自分の感覚が野獣のように研ぎ澄まされていき、だんだん自分がジェノザウラーなのかリッツなのかがわからなくなるような気分になってきている事に気が付く。
とその時、突然通路から機械の起動音らしいものがしはじめたのを彼は感じ取った。
「!!」
その直後、遺跡の壁からホースのような物体が飛び出し、その先端部分から紫色の光が放たれた。それはまさしくレーザーの光だった。
「何故遺跡にこんなものが?!」
驚くリッツ。彼の愛機の肩にはレーザー光線が照射されていた。だが、そのレーザーも威力が低く、ジェノザウラーの肩部装甲の塗装を少々焦がしただけであった。そしてそのレーザーも照射を開始してから2秒と経たないうちにジェノの巨大な爪によってむしりとられていた。
(まさかセキュリティーまでが活動しているとはな。つくづく古代人というのはとんでもない連中だったんだな。)
そう彼が思ったとき、ふいに何かの気配を感じ取った。どうやら目的の物は目と鼻の先にあるらしい。その時、急に彼は別のものを感じ取った。
敵、そう判断した彼と愛機は、瞬時に壁を突き破って目標へ向かった。そこで彼は出会った。シールドか?いや、違う。同じライオン型ではあるが。やつにも同じオーガノイドシステムが組み込まれているとジェノはその本能で感じ取って彼に伝えてきた。
一方のアーサーも敵の新型の存在を確認した。まるで旧大戦時のデスザウラーに酷似したその敵の新型からは、アーサーが今まで感じた事もないほどの強烈な殺気が放たれていた。
「ほう、こいつが連中の新型か。どうやらこいつと同じシステムを搭載しているようだな。だとすれば今までのように一筋縄じゃあいかないな。」
彼はモニターで後方を確認した。彼の後ろには随伴していた2機のガンスナイパーはなかった。途中分岐していた通路で分かれていたからだ。
一刻も早くサンプルを押さえる必要があったから念の為リチャードたちをもう一方に向かわせたアーサーだったが、遺跡に突入した時からかつてない強敵と出くわす予感がしていた彼はわざと彼等を戦場から遠ざけたのだった。
「リチャードたちには悪いが、こいつとはサシで勝負させてもらう!」
目の前の敵を睨み付けるリッツ。今の彼にはもはや敵である蒼い機獣しか見えていなかった。だが彼は別のもう一つの気配を感じ取った。ふと横を見ると何かがカプセルの中に閉じ込められている。目標の物はそれに違いない。彼は時計を見た。撤収のためのタイムリミットがせまっていた。
リッツ=ジェノザウラーが吼えた。目の前の蒼い機獣を討ち倒し、カプセルを持ち帰るのだと。蒼い機獣・ブレードライガーも応じるように吼えた。コクピットのアーサーにはブレードの咆哮が、強敵と出会えた事への歓喜の歌のように聞こえていた。
先手を打ったのはジェノザウラーだった。
この時リッツは荷電粒子砲を撃ちたいというジェノと己の衝動に必死に耐えていた。密閉されたこの空間で荷電粒子砲を発射すれば、相手のみならず自分や目的のサンプルさえ傷つけかねないからだ。
だが、彼は考えた。相手は高速機動を得意とするゾイド、この狭い空間では能力が制限されるのはあちら側も同じである。ならばこのパルスレーザーでやれる。一撃でレッドホーンさえ撃ち抜く威力である。たとえシールドライガーと同等のE-シールドであってもこの至近距離ならばひとたまりもなく貫通されるだろう。
「行けっ!」
トリガーを引くのと同時に、強力なパルスレーザーがブレードライガーめがけて撃ち込まれた。
「甘い!」
だが、アーサーはブースターを吹かすと、強引に壁を駆け上り照射されたレーザーを全て回避したのだった。
「逃すか!」
ゾイドの高速機動を可能とするマグネッサーコーティングが施されているジェノザウラーの砲塔は、リッツの反応に合わせ急速に旋回、そしてついにブレードライガーを捕らえた。
次々に命中するパルスレーザー。通常のシールドライガーならばE-シールドを展開していたとしても、この距離からの攻撃では瞬時に蜂の巣になっていた事だろう。
しかしリッツの目の前で起こったのは、彼の予想外のことだった。必殺を期して放ったパルスレーザーは出現した光の壁に阻まれて次々に無力化されていった。ブレードのE-シールドは彼の予想を上回る強靭さを持っていたのだ。
「何だと!?」
リッツがひるんだのはわずかに一瞬。だがその一瞬の隙をアーサーは見逃さなかった。強烈に壁を蹴りこみ、E-シールドを展開したままジェノザウラーの懐をめがけて突撃。そして間合いが詰まった瞬間、ブレードライガーのレーザーブレードが閃いた。
「ちぃぃ!」
リッツはとっさの判断で機体を横滑りさせ、右腕を使って反撃を試みた。だが、ブレードの刃はジェノザウラーの右腕と右側の砲塔を一撃で断ち切っていた。恐るべきレーザーブレードの威力である。
ジェノザウラーと一体化しているのも同然だったリッツに、まるで自分の腕が切り落とされたような強烈な痛覚が走った。と同時に強烈な憎悪と屈辱感が湧き上がってくるのを感じていた。
――荷電粒子砲で!!
強烈な怒りが彼の冷静さを失わせていた。発射トリガーに指をかけた直後、リッツは気が付いた。自分がカプセルの真横に滑り込んでいた事に。
「抑えろジェノザウラー!」
まるで自分にそう言い聞かせるように叫ぶと、彼は愛機の左手で強引にカプセルを掴み取った。彼は不本意ながら勝負よりも任務の遂行を選んだのだ。
「そいつを渡すわけにいくか!」
アーサーは再びブレードライガーの機首をジェノへ向けるとスロットルを吹かそうとした。だが、リッツはすでに次のアクションを起こしていた。
「荷電粒子砲、発射っ!!」
リッツは荷電粒子砲のトリガーを引いた。遺跡の天井へ向けて。まるで押さえつけられていた感情を光の奔流に変えて撃ち出したかのように。そして遺跡は解き放たれた強烈なエネルギーに耐えきれず、轟音を立てて崩壊をはじめた。
崩落するガレキを必死によけるブレードライガーを、怒りに燃えるジェノザウラーはじっと睨み付けていた。
「赤い紋章のライガー、憶えておくぞ!!」
そう言い残すとリッツはジェノザウラーのバーニアに点火すると凄まじい跳躍力で天井めがけて飛び出していった。
「ちぃ!逃がしたか!」
アーサーは崩れ落ちるガレキを避けながら、脱出するジェノザウラーをただ見送るしかなかった。その直後、別ルートを進んでいたガンスナイパー2機がようやくこのフロアまでたどり着いた。
「アーサー少佐!こいつは一体!?」
「話は後だ!とっとと脱出するぞ!」
彼らは慌てて来た道を全力で戻るしかなかった・・・。
初出 2002年7月14日